明確な記述は無いものの、Cindy(William?)が綴ったArnold日記に因れば
物語の主人公であるArnoldは自身の日記の中で地元・足利の店も紹介していた。 本当によく此処まで続いたなと我ながら感心してしまうこのElvis Cafeであるが、 良く考えてみると、20数回にも及ぶ記事の中で僕自身の地元の足利市に軒を 構える店については、今までのところ唯の一度も紹介してはいなかったのだ。 足利市内のとある企業に勤めて3年目を迎えるが、これまで転勤?はおろか 市外に出向する事も全く無かったので、仕事に関して足利を出る事は無かった。 しかも家族と共に暮らし、偶然ではあるが現在交流の深い友人や・・・彼女までも 足利市に住んでいる為、今年の夏までは日常生活は殆んど市内で事足りていた。 確かに休日は近隣の街だけでなく県外(足利市は栃木県の外れに位置する)等にも 頻繁に出掛けていたし、GWや盆正月には更に遠出の旅行に行く事もあったけど・・・ だからと言ってこれまで足利市内にある店を全然紹介していなかったという事実は 全く意識していなかった分だけ余計に、そして意外と言うか不思議な気分だった。 彼の日記(Cindy's WALK)にも素敵な足利のカフェやパン屋が登場して、 その中の何軒かは実際に僕も訪れた事があった・・・いや、通っていたのだ。 更に、宇都宮の紹介をリクエストしておきながらこれまで沈黙を続けるハニーも 同じ足利市に住む人間という事は、もしや知らずに何処かで会っている事も・・・ あのリストに書き記された・・・あの物語の舞台となった・・・そして・・・ 恐らく僕が追い求めている何かを解く鍵となるかも知れない一連の店の一つを 遂に、このElvis Cafeで紹介してしまった僕にとっては、今後の“イロハ計画”を 続けていく上でも、このタイミングで地元の足利の街と・・・店と・・・イニシャルとを 載せてみたいと強く決心したのは、勿論単なる気紛れだけでは無いと思っている。 尤も“満を持して”って表現は、少々大袈裟かも知れないけれどね・・・ 11月も半分が過ぎてそろそろ身の回りも本格的な冬支度に様変わりする頃、 この日はそんな季節の変わり目をより一層強調する、どんよりした曇り空だった。 僕の勤務先は市内の中心に位置する通りに面した場所と、更に北の方角に 進んだ場所との2ヶ所にあり、行き来するのに目の前の大通りを移動していた。 その通り沿いには、市内の観光名所の一つでもある鑁阿寺(通称“大日さま”)に 向かって伸びる石畳の路地の曲がり角があり、通勤途中に幾度と無く目にしていた。 地元住民として恥ずかしい事であるが、この路地に入るのは一体何時ぶりだろう? Elvis Cafeを始めてから様々な街の様々な路地裏を歩いてきたが・・・灯台もと暗し・・・ 細い路地の左右には、昔から営まれたであろう地元の商店や路地の雰囲気にマッチした 情緒溢れる飲食店と土産物を売る店に交じって、少数であるが僕の気を惹く店が見られた。 例えば、まるでパリの街角からやって来たこの白い窓枠の建物は、どうやら雑貨屋らしい。 残念ながら・・・この日、店内に明かりが灯される事は無かった・・・ スプレー菊 その代わりなのだろうか、路地沿いの花壇には可愛らしい赤紫の花が僕を出迎えてくれた。 寺社に飾られた大輪の菊も素晴らしいけれど、さり気無く路地に彩りを添えるキミたちも素敵だよ。 通りの片隅に花があるだけで、無味乾燥で忙しなかった“移動”が・・・ 視界の片隅に花があるだけで、気にも止めていなかった“背景”が・・・ ゆったりとした“散歩”に・・・華やかな“絵画”に変身するんだ。 この路地の終点に控えているのは大日さまの愛称で親しまれている鑁阿寺の、 正面の堀に架かる、これまた誰からも愛され此処のシンボルにもなっている太鼓橋。 この橋を恋人と並んで渡ると別れてしまう・・・なんて学生時代に噂されていたなぁ・・・ 手前の蔵とのツーショットも、歴史の街である足利の雰囲気を一層盛り上げてくれた。 確かに大日さまの周りには、この手の歴史を感じさせる漆喰の蔵が点在していたが、 “鑁阿寺と蔵”と言えば今は無きあのカフェの存在が思い出されてならないんだ。 彼の紹介にあった様に・・・あれは全て夢の中の出来事だったのかなぁって・・・ 彼の物語を抜きにしても、この空間にいると、まるで無声映画のワンシーンに 迷い込んだみたいな、とても凛とした佇まいの静寂の中に包まれてゆく。 広々とした境内の彼方此方には様々な種類の木々が植えられており、 11月も半ばに差し掛かった今日、此処足利でも紅葉のピークを迎えようと 鮮やかな赤や黄色で境内の仏閣に彩りを添える木々もちらほら出始めてきた。 そんな綺麗な木々の中でも、紅葉と言って真っ先に目がいくのは真っ赤な・・・ 紅葉(モミジ) 可愛らしい星型の赤い葉っぱが寄り添う様に集り大きなキャンバスを埋め尽くしていた。 目にも鮮やかな朱色から落ち着いた感じの深紅へ微妙なタッチで仄かに変わりゆく様は まるで燃え盛る炎の一瞬の揺らめきを捉えた印象絵画を鑑賞している様にも思えた。 やがて情熱的な炎は完全に消えて、後には寒々と焦げた真っ黒な枝が残るのに・・・ 塔と銀杏 だが、今回此処に来たのは如何してもこの時期に見ておきたい木があったからだ。 その木を探す為に境内を彷徨い暫く歩き続けていたが、あの塔の向こうに見えるのは・・・ 「イチョウ(銀杏)」 これが、とちぎ名木百選に数えられている“鑁阿寺の大いちょう”、か。 根元から二手に分かれて大空へと伸びていくこの巨木は、直径約9メートル、 高い所では約30メートルにもなるという、まさに足利随一の“大いちょう”だった。 これまで何度となく大日さまに訪れこの木を目にしてきたが、気に留めた事は無かった。 そんな地元の魅力を改めて僕に教えてくれたのも・・・そう、やっぱり彼なんだよ・・・ 今年の初め頃だったかな、彼の日記に今は無きあのカフェが登場したのは・・・ まるで時間を越えて古き良き足利の蔵の街に降り立った様な不思議な物語に 僕は(時々訪れていたのに)非常に新鮮で、でも何処か懐かしい気分にさせられた。 そんな彼の蔵の店の物語では、裏手の路地で繋がった直ぐ近くこの鑁阿寺と、 今僕の目の前に聳える此方の大いちょうも、非常に印象的に紹介されていた。 彼の日記では丸裸で寒そうだったこの大木も、今は綺麗な黄色い葉っぱを ふんわりと体いっぱいに身に纏って・・・とてもお洒落で温かそうだよね・・・ だれかさんが だれかさんが だれかさんが 見つけた 小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた 目隠し 鬼さん 手の鳴る方へ 澄ました お耳に 微かに沁みた 呼んでる口笛 百舌の声 小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた ほらっ、僕も見つけたよ・・・大きないちょうがくれた小さい秋を・・・ cathette 元来た路地を旧市街地の方に戻って大通りに出ると車の量もぐっと増えるが、 通り沿いには駐車スペースが殆んど無く、また他の地方都市の市街地同様、 郊外の大型商業施設に客足を取られている感もあり、通りに面した建物は 何処か暗い空気が漂っている様な、活気が欠けている様な印象だった。 そんな通りにあるのが、このグリーンの瓦屋根の白い建物だった。 普段はシャッターが下りていて、あぁ、この店もか・・・と、先の懸念を 連想させてしまいそうではあるが、木曜日のこの日は気持ちの良い 大きなガラス張りの外観を通して穏やかな印象の店内が窺えた。 nico + shuan 見た目以上に広々と感じるのは、アンティークのドアやテーブルなどの調度品を、 まるで彼らが気持ち良く寛げる様にと考えてゆったり配置しているからであって、 それは同時に、この場所にいる僕にとっても、十分寛げる空間になっていた。 nico そんな緩やかな空間を提供してくれる店だから、パンのディスプレイだって・・・ どのパンも、のびのびとして、心地良さそうで、そして・・・美味しそうだよ! パンが置かれたテーブルの反対側にはレディースの洋服やアクセサリーが 此方もまたゆったりとディスプレイされ、きっとまったりと選ぶ事が出来るだろう。 この空間にはパンや服などの“商品”だけが置かれている訳ではない。 可愛い絵描きさんのアトリエだってちゃんと用意されているんだ! それに、その奥の木の椅子にちょこんと腰掛けているのは・・・ 君だって、此処でのんびりまったり寛いでいるんだね。 shuan cathetteと名付けられたこの店は、パン職人の店主ことnicoさんと、 もうひと方、リネン素材のレディース服を主に手掛けているshuanさんの 二人の店主が営む非常にユニークな形態のショップで、先程も紹介した通り・・・ さらりとした肌触りの良さそうな風合いの、シンプルで落ち着いた印象ながら 一目で作家の高いセンスと感性が伝わってくる、リネンの服が飾られていた。 単にお洒落というだけでなく、着る人が自然と和やかな気持ちになりそうな・・・ 更に、アクセサリーがディスプレイされた、こんな素敵なブリキのケースや・・・ 所々錆びたクリーム色の傘立てを眺めているだけで、穏やかな気分になってくるんだ。 蔓編みの篭たちと一緒に吊るされた古びたランプシェードから零れ落ちる 仄かに揺らめく蜜柑色の明かりがぼんやりと店内を照らし出していて・・・ ファインダーを覗くのを止めて、思わずウットリしてくるよ・・・ 君たちを連れて旅に出たいんだ。 篭の中にはいっぱいのお菓子とパンと・・・ まるで彼みたいな事を言って・・・段々似てくるのかな? お菓子系のパンを3個ほど購入する事にした。 実はこの他にも色々と迷っていたパンや焼き菓子があったのだが、 この日は2週間ぶりの販売日であるばかりか、今後冬期に限ってだが、 1~2週間に一度(木曜日)しかパンの販売を行わなくなってしまうそうで、 オープン直後にお邪魔したにもかかわらず、次々と訪れるお客さんによって パンは見る見るうちに売れていき、考えている間も無くほぼ完売してしまった。 撮影のため、特別にアンティークの台の上にプレートを置かせて頂いた。 あんバター 元気なあの子のゲンコツ位のコロコロ可愛いまん丸白パン。 あのパックマンが3Dになったみたいにパカッと口を開けて、 その中にはまるで和菓子みたいに落ち着いた印象のしっとりした 紫色のつぶ餡が口の端っこからはみ出さんばかりにサンドされていた。 小麦粉のふんわりとした薫りにすっきりな酵母の優しい香りが ミックスされて、思わずひと口食べるとホロホロっと崩れながらも もっちりとした食感が感じられてこの白パンだけでもとても美味しい。 でも、ホクホクに炊かれた餡の滑らかな舌触りから伝わる自然な甘さと 柔らかな粒の感触、餡の奥でキラキラ輝くクリーム色のカルピスバターが ミルキーな風味が生地とつぶ餡にとろりと絡んで一つになって・・・ 僕もモンスターみたいにキミを追いかけてしまうんだ。 ベーグル(チョコ) 艶やかな焼き色のぷっくり膨らんだベーグルも購入した。 ほど良い厚みのリングに比べて表面の皮は薄くパリパリ・・・とても香ばしい! 中の生地は表面の皮からは想像出来ない位ふっくらでもちもちしていた。 ひと口噛み締める毎にギュッと押し返す様な弾力感が何とも堪らない。 そんなリング状の生地に沿ってぐるりと巻かれた濃厚なチョコレートの、 芳しいほろ苦さと仄かな甘さが口の中いっぱいに溶けて広がっていった。 おからバナナマフィン やぁ、こんがり茶色のもじゃもじゃ頭のキャベツ君・・・ 彼の大好きだった君にやっと僕も会う事が出来たんだね・・・ サクサクのカーリーヘアは、中がふんわりしっとりしていて、 もぎゅもぎゅした食感から自然なおからの風味も加わってくる。 更には、ふんわり広がるバナナの甘い香りにうっとりしていると、 もじゃもじゃ頭の真ん中のトロトロになったバナナの、濃厚で ジューシーな甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がって・・・ どうやら僕も・・・君に恋しそうだよ。 街で見つけた小さい秋は・・・ やっと見つけた小さい秋は・・・ 来たかと思ったら、直ぐ何処かに行ってしまって・・・ 会えたと思ったら、もうさよならを告げてしまって・・・ だれかさんが見つけた小さい秋は・・・一瞬だけ手のなる方へ・・・
by mary-joanna
| 2009-11-26 10:33
| 有為の奥山
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