遂に・・・と言うか、やはり僕はまた彼等との交流を持ってしまった。
ネットだのブログだのといった類いは個人の自由だし、彼の場合、若干個性的ではあるが 単なるカフェ&パン屋を紹介するグルメガイド的なものに過ぎないと思っていたから、 見ず知らずの僕をわざわざ呼び出す事までする執着心には驚きを隠せなかった。 でも・・・彼の跡を辿っていくブログを作って彼に近付こうとしている僕は・・・ ・・・彼も頻繁に訪れていた街、栃木県鹿沼市にやって来た。 この街の古い市街地には歴史を感じさせる建物が点在し、僕の目を惹いていた。 そして、今日僕が訪れる事にしていた店も、そんな歴史情緒溢れる建物の中にある。 視界いっぱいに左右に広がった大きな建物は恐らく当時、蔵として所在していたと、 その風貌からも容易に想像がつくのだが、何と言っても圧巻なのはその外壁であった。 煉瓦よりも遥かに大きな直方体の石材を大量に積み上げて建てられた、まさに蔵。 近寄ってみると淡いアイボリーの表面はゴツゴツとし、所々に大小の気候が開いていた。 そんな長年の風雨に曝されて現在に至る重厚で圧倒的な存在感の外壁に取り付けられた 店の木の扉を被っている大きな庇は、何ともビビッドなオレンジ色だが不思議と調和していた。 アカリチョコレート 扉の横に付いたアイアン製の外灯は、年月を経て風格を増した大谷石と相まって、 まるで中世ヨーロッパの城下町にタイムスリップした様な気分になってくるのだ。 外灯の下に掛けられた小さな看板の主人公は、何とも可愛らしいカメさん。 背中にはリボンのかけられたプレゼントを乗せて、てくてくてくと・・・ チョコレートに特別大きな思い入れを持っていた彼の事だから、 この可愛い看板を見ただけでウキウキしてきたんじゃない? さあ、僕もこの大谷石で出来た蔵の中に入ってみよう。 蔵の内壁も勿論この外壁から続く大谷石によって積み上げられていたが、 屋根まで吹き抜けになった高い天井と大胆かつシンプルな間取りの内部は、 控え目に配された照明により仄かに照らし出され、幻想的な空間になっていた。 大谷石の壁は外の明るい日差しとはまた異なった魅力的な色彩を醸し出していて、 他では体験し難い圧倒的な存在感に僕は暫くの間声も出さずに魅入ってしまっていた。 でも、非常に広々としているのに不思議と温かみがあって落ち着いた空間でもあった。 それは、周りを取り囲む大谷石の質感も然る事ながら、天然の木材によって作り出された 無垢材のテーブルやチェアー、アンティークの調度品等が良くマッチしていたからでもあった。 石の温もりと木の温もり・・・大谷石に守られて、そして木に包まれているから・・・ 此処にゆったりと座っているだけで心から安心した気持ちになれるのかな? ゆったりと配されたテーブルに置かれたランプは、まるで此処だけを 周りの空間から切り取とってしまうかの様にオレンジ色の明かりを照らし、 背景の暗闇にぼんやり浮かんだアナタだけの特別な空間を完成させていた。 更に僕が気になったのが、壁に備え付けられた幾つかの梯子だった。 そのうちの一つは、高い所に付けられた窓に向って伸びていた。 Catch the sun ! そろそろ僕も光に向かって挑戦してもいいんじゃないかな? 今まで彼の眩い光に両手で目を覆っているばかりだったじゃないか・・・ この広い空間を贅沢に使った1階のカフェスペースの奥にあるのは勿論・・・ チョコレートの工房と美味しそうなチョコレートが並んだ“可愛いお店”!! まるでパリやリヨンの街中にあるお菓子屋さんのスタンドみたいで、 この可愛らしい木の扉で出来たガラス窓の向こう側に並んでいるのは・・・ 板の上いっぱいに敷き詰められたチョコレートは、 流石ショコラトリーといった、壮観な光景だったけど・・・ 思わず手に取ってしまいたくなる衝動に駆られるよ。 更に敷き詰めると言えば・・・ 大谷の石畳 このお店のショコラティエが地元栃木県の魅力をチョコレートで表現しようと、 素晴らしい感性と卓越した技術によって完成させた他では味わえないスペシャリテ。 こんなに洒落た石畳の上を歩いて・・・いや、無理だね・・・ だって、歩くそばから口に入れてしまいそうで・・・ 大谷の石畳と並んで、この店オリジナルのチョコレートが・・・ チョコロ コロコロとちっちゃくて可愛らしいチョコのサイコロ・・・ 先程紹介したシックな印象の大谷の石畳とはまた違った、 そう、まるで子供たちの楽しみなおやつの時間にピッタリな、 思わず微笑んでしまいそうな、素朴な可愛らしさが感じられた。 あぁ、それにしても、こんな風に積み上げられたチョコロを見ていると・・・ どうしても僕は思い出してしまうんだよ・・・ あの物語の一番最初を・・・全ての始まりを、ね・・・ 何時だってハートの中は甘くとろけそうなキミへの想いでいっぱいなんだ! 口の周りをチョコレートでいっぱいにして・・・此処だったらお腹も心も大満足だよね。 2階にはこの広々とした蔵の空間を見渡す事の出来るカウンター席があって、 彼がブログでそうしていたのに倣って僕もこの木の階段を上る事にした。 おや、階段の脇に寄り添う様に2軒の家が並んでいるのを見つけたよ。 きっと、とっても仲良しのお隣りさん家族が住んでいるんだね・・・ 2Fはロフトの様な細長い空間になっていて、大谷石の壁際のテーブル席と・・・ ・・・この、カウンターのテーブル席から成っていた。 ロフトの突き当りには本棚があり、気になった僕は待っている間に一冊眺めてみようと・・・ やぁ、こんにちは・・・ちっちゃな図書室の管理人さん・・・ネコさんだって? アナタのイチオシは・・・えっ、後ろを見ればわかるって!? どれも最高にイチオシだって・・・確かにそうだけど・・・ 全部チョコの本じゃないか!! カウンターに腰掛けた僕は、思わずその先に広がる光景に見惚れてしまった。 だって、この建物に入っただけでも魅了されていたっていうのに、此処からの眺めは・・・ ・・・こんなにも素敵な眺めと一緒にチョコレートを頂けるなんて・・・ ねぇ、リスくん・・・ キミが背負っているのは木の実かい、それとも・・・カカオの実だったりして! だって此処にいたらキミだってきっと甘いチョコレートの虜になっちゃうよ。 この可愛らしいイラストをぼんやり眺めながらそんな事を想像していると、 店主がドリンクとケーキの乗ったプレートを持って階段を上ってきた。 長方形のプレートの上にはお揃いのマグカップとケーキ皿が置かれていた。 素朴で落ち着いた印象の容姿は、まるで大谷石で出来たこの蔵をイメージさせた。 ホットチョコレート ふんわり泡立つベージュに輝く表面は柔らかくて温かくて・・・ それでいて、スムージーな食感が何とも新鮮な気分にさせてくれる。 しかし、泡の中には・・・何て濃厚なチョコレート!! カップに顔を近付けると温かな湯気と一緒にチョコレートの薫りが フワッと広がって、もうそれだけで心地良い気分に誘われる。 とろりとした舌触りから伝わる仄かにほろ苦い濃厚なチョコの風味が、 甘さと一緒になって柔らかな喉越しの後、口の中にまろやかに残っていた。 チョコの余韻が何時までも続いていくみたいに・・・ ガトーショコラ 一面真っ白な雪化粧のチョコレート広場に描かれているのは、 まるでフィギュアスケートのリンクに残されている優雅な弧の軌跡。 最高得点の演技を終えた後のリンクにフォークを刺して一切れ分けると、 しっとり焼かれたチョコのケーキはギュッとした弾力からふんわりホロホロ崩れて・・・ そして口の中でふんわり溶け出してミルキーな甘いチョコが豊かに広がる頃には、 僕はもうこの濃厚なチョコのケーキに夢中になって次の一切れを刺していた。 カウンターからの眺めと共に、のんびりとしたひと時の最高に演出してくれる。 まったりとして・・・温かくて・・・此処にいると心からホッと出来るんだ・・・ だから、これからもずっとこの石の蔵のチョコレート屋さんで・・・ これまで積み重ねてきた大谷石の歴史に甘い香りの1ページを・・・ 「ネメシア・メロウ」 “金魚草”の和名でも親しまれているゴマノハグサ科の多年草で、 此方はミルキーピンクと言う商品名の比較的小さめの2色咲きとの事。 ふんわりと広がった薄桃色のひらひらとした花弁は、水中を優雅に漂う金魚の 背びれや尾びれを連想させるけれど・・・真ん中でキュッと結んだ黄色い帯と、 左右に広がったピンクとホワイトのリボンを見ていたら何だかとっても・・・ そっけない茶色のチョコレートを可愛くラッピングしたくなるよね!! そう、普通のチョコレートだったらね・・・でもね、このお店は・・・ この、石の蔵のチョコレート屋さんの特別なチョコなら・・・ アカリチョコレートで購入したチョコをお気に入りのグレーの皿に乗せると、 今回のイニシャルの花を一本取り出して、その隣りに添える事にした。 だって、チョコレートに良く映えるピンクの可愛らしい花だから・・・ 店主のご厚意で頂いたのは淡いピンクが麗しいカカオポッド型のひと口チョコ。 艶やかなホワイトチョコの中にはストロベリーがふんだんに使用されていて、 クリーミーなチョコの甘さとストロベリーのフルーティーな甘酸っぱさが このひと口の中で切なくも麗らかな気持ちに誘ってくれる様で・・・ 真っ白な肌の貴女がほんのり恥ずかしそうに仄かに頬を赤らめると、 手にした淡い紅紫の花と艶やかさを更に増して僕は見惚れてしまうばかり・・・ オーガニックフェアトレード板チョコレート(32%) 板チョコと言えば明治や森永でお馴染みの例の形を真っ先に連想してしまうけれど、 最近は各ショコラティエからオリジナリティに富んだデザインもよく見かける様になった。 そんな中で、思わずウットリしてしまうこの優美な曲線の中に描かれたカカオやリーフ・・・ チョコレートに対して並々ならぬ熱い情熱を注ぐショコラティエが一枚のチョコのカンバスに 施したこの意匠は、極限までシンプルでありながら同時に芸術的なな作品に仕上がっていた。 だから、僕はこのチョコレートの葉に今回のイニシャルの花を添えたかったんだよ!! 彼のお気に入りのチョコレート屋さんのアカリチョコレートにすっかり魅了された僕は、 これまで以上に彼に対する大きな大きなシンパシーを感じる様になってしまった。 だからこそ、如何にかして彼の近況を知りたい、少しでも彼に近付きたいという、 何処か後ろめたさも漂う抗しがたい感情が湧き上がってくるのだった。 そんな僕が次に目指した場所は・・・宇都宮の入り組んだ路地裏。 彼が特別な想いで訪れるあの店に行けば、何かヒントが・・・ それにね、また貰ったんだよ・・・彼等からの・・・ これは挑戦状なのかな?・・・それとも・・・
by mary-joanna
| 2009-11-03 23:29
| 常ならん
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