ひと頃は忘れ去られたかのような存在になっていたこのElvis Cafeのコメント欄であったが、
先日の“ブライアンのカフェ”と再びリストの店を紹介した事により、俄かに賑わってきたようだ。 尤もその数たるや世間のブログから見れば取るに足らない微々たるもので、しかもその大半は 招かれざる客たち ~ 例のグループ及び(恐らく)その関係者 ~ による鍵コメントであったが・・・ そんな折り、更に僕の心を大きく揺さぶるコメントがそっと寄せられていたのに気付いたのは、 この記事をupする頃には既に始まっているであろう、僕が講師として勤務している学習塾の 冬期講習の準備で通常より遅く帰宅した、12月も後半に差し掛かった某日の夜中の事だった。 先日upしたリスト2軒目の店となる“えんや”の記事にやって来た何とも不可解な鍵コメントから 更に一日が経っていたが、此方のコメントの送り主は馴染み(2回目であるが)のある名前だった。 そう、このコメントの送り主こそ僕がその返事を待っていた人物・・・つまり、ハニーその人だったのだ。 返事が遅れてしまって本当にごめんなさい! m(_ _)m ある事情でパソコンを見ることが出来ませんでした・・・ Littleさんの宇都宮のレポ、楽しく拝見させてもらいました♪ しかも、3回も紹介してもらえるなんて・・・(〃▽〃)ノ お礼と言っては何ですが、実はプレゼントを予約しておきました! Littleさんに是非とも受け取って頂きたいのです!! ヽ(≧▽≦)ノ ただ・・・そのプレゼントには引き換え期間が決まっていてまして、 しかも、そのお店は(またまた)宇都宮にあるのです・・・(#^.^#)ゞ 急ではありますが、予約の締め切りまで時間があまりありませんので、 お手数ですがご覧になりましたらなるべく早くご返事頂けないでしょうか? 前回のコメントもそうだったが、相変わらず唐突な方だなぁ・・・一方的な決定への不快感はおろか、 呆れる事さえ忘れて半ば感心しつつ、コメントの最後に付け加えられたプレゼントの引き換え期間と その店の名前を見た僕は、驚きと嬉しさのあまりパソコンのモニターを前に思わず声をあげてしまった。 勿論、直ぐに了解と感謝のコメントを入れた。加えて指定された期日から都合の付く日を添えて・・・ そして、待つ事数日・・・いよいよ約束の日の朝がやって来た・・・うん、とても良い天気の朝だよ!! 50・・・4・・・123・・・自宅のある足利からこの宇都宮の東の外れまでは、大きな国道を 三つも乗り継いで行かなければならず、家を出発してから一時間半は過ぎようとしていた。 その3番目の国道からこの真っ直ぐに伸びた路地に入って暫く進むと見えてくるのが・・・ そう、“暮らしのリズム”の地との分岐点にもなっているこの坂道へとやって来たのだ。 この前やって来てからもう3ヵ月が過ぎたが、早いもので季節は秋から冬へと移ろいでいた。 あの時は坂道の周りに沿って青々と雑草が生い茂り、イガイガの栗の実や何処か切なさをも 感じさせる一輪の彼岸花、直ぐ側には美味しそうな実を沢山付けた柿の木等が出迎えてくれた。 まだそれ程経っていないかとも思っていたが、目の前には寒々とした冬の光景が広がっていた。 花は枯れ、木々は実を落とし、地面は所々剥き出しになって・・・でもこれも自然の大事な一コマ、 訪れる度にまた違った姿で出迎えてくれ、そして来年には思い出だった光景に再び出会えるのだ。 少々の間感慨に耽っていたが、この分岐点に暫しの別れを告げて坂道を上ると、まるで迷路の様に 縦横に細い路地が入り組んだ住宅街へとやって来る。此処は地図やナビも役に立たないとばかりに 入り組んでいて、初めて訪れた際は目的地に辿り着けるばかりか此処から出られるのかと本当に 頭を抱え込んだものだったが・・・そうこうしながらも、細い路地をクネクネと進んでゆくと前方に・・・ そう、目の前には“ウッドハウス”と呼びたくなる非常に印象的な外観の2階建ての家屋が見えてくる。 そして、建物の向かい側にある駐車スペースに車を停めると、隣りでは既に“先客”が寛いでいた。 キャロル、久しぶりだね・・・隣りに彼氏を連れているなんて、やっぱりクリスマスだね・・・ スカイブルーのボディーに寄り掛かっていたのは可愛いイラストの看板。 この前お邪魔したInside Garageでは現在・・・Cankichi工房が来ているのか! 気合が入りすぎてかなり早めに到着してしまった為、2階がオープンするまでの暫くの間、 可愛いキャロルたちを眺めたり近所の店まで散歩をしたりしながらのんびりと過ごしていた。 そして定刻より少し前に店主が下りてきて、オープンになったので2階へどうぞと案内された。 忙しそうな足取りで階段を駆け上がる店主に続いて僕もこの階段を再び上がる事にした。 やや急な錆びた階段を一段一段上る度に響き渡るカンカンとというやや甲高い鉄の音。 恐らく他の場所で聞いても何て事は無いのだろうが、何故か此処では心地良いリズムを 刻みながら僕の耳を刺激してくれて・・・階段を上るこの間にもだんだんワクワクしてくるんだ! Cucina Vegetale Maruyoshi クッチーナ・ベジターレ・・・新鮮な野菜を美味しくモリモリと頂ける店の証なんだ! ほら、その証拠にこのドアを開けて店の中に入ると一番初めに出会うのは・・・ そう、入り口で出迎えてくれたのは・・・地元栃木で採れた新鮮な野菜たち!! それにしても、人参の鮮やかで綺麗な朱色と言ったら・・・逸る気持ちを抑えつつ、 通路の先に目を向けると、先日一瞬で僕を魅了したあのダイニングが静かに待っていた。 真冬の晴れた昼時には、2階の大きな窓からやや低めの陽射しが眩いばかりに差し込んで、 午前中ずっと外の空気に晒されて冷え切った僕の身体がポカポカしてきて気持ちがいいんだ。 それに何と言っても、これからの時期は・・・え~っと、あった!! Cindyが初めてこの店を訪れたのも確か12月に入った肌寒い昼の事、 確か向こうに見える赤い達磨ストーブにも煌々と火が灯されていたっけ・・・ さっきのキャロルもそうだけど、あのコロッとしトコがまたキュートなんだよ。 そして、この明るく開放的なダイニングは直ぐにお腹を空かせたお客さんで一杯になる。 一人でやって来た僕は、店主の計らいで気兼ねしなくて済むカウンターの席へと案内された。 実はもし許されるなら是非カウンターにして欲しいと、店主にお願いしようと思っていたのだ。 さあ、今日のランチも決まったし目の前のカウンターの様子を拝見させてもらう事にしよう。 何と言っても此処からの眺めを独り占め出来る事こそが、カウンター席の特権なのだから! 何枚も高く積まれた皿や食器、色とりどりの洋酒やワインの瓶、吊り下げられたグラス、 そんなキッチンの必要な全てのものが一枚の絵の中にギュッと収まったような光景・・・ そう、このワクワクしてくる光景こそ、僕が思い描く“クッチーナ”のキッチンなんだ!! この店の拘りは食材だけには留まらない・・・カウンターにはさり気無く自家製のオイル。 さて、いよいよ今日のランチの最初の料理が運ばれてきたようだ。 マリネした黄色人参のサラダ ボリュームも満点のシャキシャキの瑞々しい白菜とたっぷりかかったザクザクの香ばしいシリアル。 マルヨシサラダ定番の名コンビは、何時食べても新鮮な驚きだけれど、あのシリアルの間から 見え隠れしている艶やかに潤んだ黄色の・・・もしやあれが先ほど説明された“黄色”人参・・・ 絶妙に冷やされた黄色い野菜はもぎ立てのフルーツを冷蔵庫で冷やしてそのままカットしたような、 フルーティーな瑞々しさと柔らかさ、まろやかな口当たりと仄かな甘みを感じながらとろけてゆく。 これは本当に人参なのかい?人参特有の、あの独特の臭みが全く感じられずすっきりとしていて、 僕の(豊富とは言い難いが)人生の中でも未体験の美味しさ・・・人参の概念が変わった瞬間だ! 季節野菜のミネストローネ 熱々の真っ赤なスープをひと口すする度にポカポカと体の芯から温まってくる。 トロリと溶け込んだトマトのコクと酸味は濃厚でありながら一方でさっぱりとした味わいで、 スプーンを持つ手が止まらない。艶やかなトマト色のスープの中から顔を覗かせているの ゴロゴロっとたっぷり入った滋味溢れる冬野菜たち。牛蒡、大根、ジャガイモ、サツマイモ・・・ それぞれの野菜がそれぞれの持ち味を感じさせながらもスープと一体になって溶け込んでいて、 スープの味わいを更に一層深いものにしてくれていた。そしてもう一つ・・・スープには赤い人参!! トマトのコクに負けないようにしっかりと人参の旨みが楽しめるばかりか、お互いが調和して美味しい。 丁度この“温かい気持ちになれるスープ”が恋しくなっていたんだ・・・こんな冬の寒い日には・・・ さて、いよいよ今日のランチのメインディッシュがやってくる頃だが、実は此処に今日の拘りがあった。 圧力煮込みした子持ち鮎と芳賀町産キノコのプッタネスカ 今回此方の店を紹介に際して、僕は自分自身にある一つのテーマを課す事にしていた。 唯でさえイロハ順のイニシャルの花と共に紹介するという“難しいお題”を出していたが、 この日記にはもう一つ、如何しても拘りたかったテーマがあったのだ・・・それは・・・ 僕の地元、“栃木県の魅力を伝えるクリスマス”の紹介をする事だった。そんな折、ハニーからの サプライズプレゼントは、まさに僕の考えを察知していたかのようなタイミングで届けられたのだった。 栃木県人の僕が幼い頃から慣れ親しんできたあの鮎の、全く未知なるブラン・ニューな体験!! 目の前に置かれた大きな白い皿の中は赤と緑に彩られており、まさにクリスマスの色彩ではないか。 ウキウキした気分で湯気の立ち上る真っ赤な皿にフォークを運ぶ。先ず最初に刺すのは勿論・・・ 柔らかく煮込まれた鮎!ぶつ切りにされた身のふわふわした食感から広がる鮎の爽やかな風味、 淡白ながら深い味わいが十分に感じられ、頬張る毎にホクホクとした食感と鮎の旨みが堪能出来る。 大きく孕んだぷくぷくっとした卵はプチプチとしながら口中に広がって溶けていき、更には中心の骨まで 柔らかくて、その香ばしい風味と一緒にバリバリと食べる事が出来た。そんな鮎を一層美味しくするのが ジューシーで濃厚なトマトソースであり、鮎の仄かな苦味と香ばしさが染み込んで旨いソースになっていた。 ゴロゴロと入った“あの芳賀町産の”プリプリの肉厚キノコを噛むとキノコの旨みがジワァ~と広がり、 さらに豊かになったトマトソースがシコシコの太麺パスタに良く絡み付いて口の中に押し寄せる・・・ この店のマエストロと隣り街のマエストロ・・・仲良しな二人の天才が切磋琢磨しているからこそ、 何時訪れてみても見た事も聞いた事も無い全く新しい衝撃と感動が、此処にはあるんだよね・・・ これぞ僕が如何しても紹介したかった地元栃木県の素敵なクリスマス・・・いや、まだあるんだ! そう、デザートを頂く為に此方のカウンターを後にして、1階のカフェへと向かう事にした。 錆びた鉄の階段を下りた所に見え隠れする、あの良く見慣れた赤い箱は・・・ RHYTHBLE クリスマスも勿論だけど、もう今年もあと僅か・・・そう言えば、年賀状の時期でもあるんだよね。 小鳥クン、今年はキミに縁があったけれど、これからみんなの所まで年賀状を運んでくれるかい? みんなが幸せな新しい一年を送れるような、素敵な新年の挨拶をのせて・・・ サンタさん、このRHYTHBLEにはアナタの他にもワクワクしてくる“赤と白”があるんだ! それはね・・・ “キッコーパン”の赤と白のパンの棚!! 今日はどのパンにしようかな?・・・あっ、この前食べたアレがパンになってる!! 2階は“赤”で、こっちは“白”・・・クリスマスの雰囲気にぴったりだよね・・・ 1階にはRHYTHBLE専用のカウンターがあって、クラシックショコラやマルヨシプリン、 その他にも沢山の美味しいパンとスイーツがこのカウンターから運ばれてくるんだ。 そして今回、僕は此方のRHYTHBLEの方で席の予約を入れていた。 そう、前回涙を呑んだ、彼のお気に入りのあのコーナー・・・ このストライプのソファーこそ、RHYTHBLEで僕が如何しても座りたかった席なのだ。 ミッドセンチュリーを連想させるグリーンとホワイトの細いストライプのファブリック。 隠れ家みたいな所に置かれた何処かレトロでモダンなソファーの座り心地は・・・ 窓からの緩やかな日差しを浴びながらゆったり出来てとても気持ち良いよ! そうそう、ゆったりしていると言えば・・・ ポインセチア クリスマスには華やかな雰囲気を更に盛り上げてくれる真っ赤なキミは欠かせない・・・ んっ、でも・・・“ポインセチア”と“ゆったりしている”って、何の関係があるんだい? ・・・ポインセチアのベッドでゆったりするのもいいけれど、そろそろ起きて年末の大掃除だよ! やぁ、ジョン、それにポール、楽しそうだね!・・・そうか、此処ではずっと一緒だね・・・ 遂に窓際のソファーでデザートを頂く事が出来るんだね・・・夢がまた一つ・・・ ココファームワイナリーのぶどうジュース ワインで乾杯!っていきたいところだけど、車でやって来た僕のドリンクはこのぶどうジュース。 でも、単なるぶどうジュースじゃあないんだ・・・だって、ココファームは僕が住んでいる街の、 そう、足利にあるワイナリーなのだから!!それに、このクリスマスを祝う為にちゃんと・・・ その前に、このぶどうジュースで乾杯しようか・・・うん、すっきりで、でも濃厚で・・・美味しい!! りんごの赤ワイン煮とチョコプリン 真っ白な器にちょこんと乗った真っ赤な苺はまるでろうそくに灯された炎みたい。 添えられたグリーンもとても鮮やかで・・・可愛い可愛いクリスマス・スイーツ。 説明は受けていたけど見えなかったのでそれほど気にならなかったんだ。 でも、スプーンを刺した瞬間にフワッと広がってくる赤ワインの芳醇で甘い香り。 苺とクリームとクッキーに隠れていたけど、ワインで甘く煮込まれているリンゴの シャクシャクっとした歯触りの中から広がるジューシーな風味にキュンとなりそうだよ。 しかも、リンゴの下には滑らかな舌触りのチョコプリンが隠れているなんて・・・ プリンのつるんとして舌先に吸い付いく感触とミルキーな風味、仄かなチョコの甘さ・・・ ちっちゃな可愛いカップの中に、沢山詰まった甘いご褒美・・・まるでサンタさんの袋みたいに・・・ おやきカレーパン あの“マルヨシ特製かぼちゃのミルクカレー”が入ったおやき風カレーパン。 前回の訪問で僕がチョイスしたメニューこそ、Cindyも初めてこの店を訪れた際にも 数ある最高のメニューから“指名”した、この“かぼちゃのミルクカレー”に他ならなかった。 その特別思い入れのあるカレーが何とカレーパンで手軽に頂けるなんて、嬉しいじゃないか! まるで大判焼きのような円柱型の表面にはうっすらと焼き色が付いて食欲がそそる。 パリッとしたかと思うと中の生地はふっくらとした味わいでそれだけでも十分美味しい。 でも何と言ってもこのパンの主役と言えば、中に入った“かぼちゃのミルクカレー”なのだ! そんなミルクカレーは勿論パンとも相性は抜群、かぼちゃのこっくりとした甘さに ピリッと辛いカレーのアクセントがミルキーに溶け合って、パンの中に収まっていた。 更に可愛らしいサイズのパンにもかかわらず、かぼちゃがゴロっと入っているなんて・・・ 片手で持てる“マルヨシ特製かぼちゃのミルクカレー”・・・これも嬉しいサプライズだね!! さて、ハニーが僕の為にオーダーしておいてくれた“プレゼント”というのは・・・ まぁ、時期が時期なので大体の察しはついていたけれど、それならば尚更、 この店での“プレゼント”というのは僕にとって最高の贈り物となった。 苺のブッシュドノエル この日の為に彼女が選んだ“プレゼント”は・・・大好きなRHYTHBLEの特製ノエル!! 真っ赤なお山ががとってもキュートなコロコロ苺は甘酸っぱいけど何だか切ない。 ふわふわしていてとってもしっとりなショコラの生地は優しい甘さで、でもほろ苦い。 雪のように白いホイップクリームは、ぽってり&まったりなのにさっぱり感もバッチリだ。 まるで絵本に出てくるお菓子の切り株、ママの手作りの温かさが伝わってくるような、 見ていて思わず顔がほころんできそうな、可愛いらしさでいっぱいのショコラのノエル。 いつもよりちょっぴり厚めにカットして、熱い紅茶をお気に入りのカップにたっぷり注いで、 仕事の事も、ブログの事も、みんな忘れてこの小さなサンタさんを眺めながらまたひと口・・・ そして、他ならぬこの店という事で僕自身が追加でオーダーしておいた物があった。 彼のように“第一楽章”とはいかないけれど、彼の“兄さん”が選んだ、あの・・・ 田舎式醗酵ワイン のぼっこ この特別な日に、是非とも僕の地元でもある足利の魅力を紹介したかったんだよ! シャンパンの製法よりも更に古典的な製法で作られた“田舎式”の微発泡赤ワインに 用いられているブドウの品種は、何と国産品種の、その名もズバリ“小公子”との事。 小粒の山ブドウで造られたその香りと味わいは何とも素朴で自然の滋味が溢れる、 そう、自然に山で生っているブドウを一粒もぎって口に含んだ時に感じるみたいな 木の実本来の風味と酸味、渋みが一つになって伝わってくるような印象だった。 しかも、その仄かな野性の果実味が心地良い刺激の微発泡と共に喉に伝わり、 エレガントな口当たりとなって口中に華やかに広がってゆく様は、可哀想な 境遇から持ち前の純粋な優しさでもって幸福へと導く“小公子”そのもの! キリリと冷やして頂くフルーティーでスパイシーでエレガントな“足利の”赤ワイン。 残暑の夜も良いけれど聖なる夜のディナーと一緒もまた格別だよね、“兄さん”・・・ 「ケショウザクラ(プリムラ・マラコイデス)」 今にして思うと、何だか寂しいクリスマスを送っていた・・・でもそれが普通になっていたんだ。 ハニーから貰ったクリスマスプレゼントは・・・そして彼が教えてくれた夢のような世界は・・・ クリスマスの寒い夜に、僕の心を去年までよりも少し温かくしてくれたみたいで・・・ 今回は、そんなクリスマスの夜を“ホワイト”クリスマスにしてくれる真っ白な花を・・・ 雪の結晶みたいな形の、可愛い小さな白い花がいっぱい集まったキミたちを・・・ 僕に笑顔をプレゼントしてくれたサンタさんに捧げる事にしたかったんだよ!! そう、まるで雪のように真っ白に“お化粧”したちっちゃなキミたちをね・・・ メリー・クリスマス!! 記事の冒頭に上記の文句と彼女への感謝の意を添えて、今回のイニシャルの花の紹介と一緒に 今回の僕の素敵なクリスマスのひと時を、ある企画によって予定していた通りの日付にupした。 だが、あまりの嬉しさに肝心な事を僕はすっかり見落としていたのだ・・・それは・・・ ハニー、貴女は一体あのグループの一員なのかい?・・・それとも・・・ 本日12/27は、mary-joannaが大変お世話になっている栃木+近県を紹介するグルメブログ、 りりさん&こジジさんの“Let's お届け”による、1ヵ月に一度の「ブログ交流企画」の公開日なのです。 前回まではもう一つのブログで紹介させて頂きましたが、今回はこのElvis Cafeでの紹介となりました。 今回のテーマは『あなたのおうちのクリスマスケーキを紹介』との事で、mary-joannaが思い描いていた クリスマスケーキとして、そして本企画の趣旨として、是非マルヨシさんのケーキを紹介したかったのです。 (もう過ぎてしまいましたが・・・)一年に一度のワクワクする特別な日・・・ ご覧になって下さったみなさんに・・・メリー・クリスマス&ハッピー・ニュー・イヤー!! #
by mary-joanna
| 2009-12-27 00:26
| 今日越えて
僕の初めての(そして恐らくは最後の)ブログであるこのElvis Cafeも7月の後半に
イロハの「イ」の花でスタートしてから、早いもので彼是5ヵ月が過ぎようとしていた。 尤も、このブログを始めるようになってから少ないながらも目にするようになった 他の方たちのブログみたいに毎日の更新という訳にはいかず、約半年近くの間で 未だに30回にも満たないスローなペースでの半ば忘れ去られた存在と化していた。 それは、あのCindyの紹介によって言わば鳴り物入りで開始した際のアクセス数や はじめまして&期待している系のコメントも直ぐに鳴りを潜めて、相当早い段階から その両方共すっかり落ち着いてしまった事実からも容易に察する事が出来たのだ。 そんな、開始時の好奇の目に晒されていた時期に一段落したのを見計らったかのように 僕にコンタクトを取ってきたのが、Brit Boyやパピヨンといった例のグループだったのだ。 彼等はコメントやメール等の仮想世界に留まらず、実際に僕の目の前に現れてきた・・・ つまり、僕は彼等グループに顔を晒してしまった事になるが、それは彼等とて同じ事。 そしてCindyという共通の目的の為に、遂には彼等との取り引きに応じてしまった・・・ Littleくん、俺とはあの時VIRONで会って以来だけど、元気にしてた? な~んてね・・・君のブログはもちろん毎回チェックしてるから大丈夫だよ♪ 相変わらず本家のCindy並みにあちこち駆け回っているみたいだね~!! ところでさぁ、この前パピヨンと交わした約束だけど、どうなったのかい? 先月、浅草の天国に行ってきたんだね・・・ブログは見せてもらったけど、 それっきりじゃん!他の店もバンバンと紹介してくれなくちゃ困るよ~! しかも肝心のリストの方はほったらかしにして・・・よりによって・・・ “ブライアンのカフェ”に行くなんて!!あれにはマジでビビったぜ!! あまり時間は無いんじゃないか?・・・宜しく頼んだよ、“二代目”さん。 Brit Boyから上記(原文通り)の鍵コメントが届いたのは、同郷のパン好きとして彼ならずとも 何時か訪れてみたいと思っていた、益子町にある憧れの森のパン屋を紹介した夜だった。 早かれ遅かれ彼等からの催促のコメント(またはメール)が来るのは時間の問題だろうと 思いながらも、あえて僕はリスト以外の店を紹介していたのである程度予想はしていた。 尤もジョンと兄との物語のパン屋の直後だというのも、後から考えると感慨深いのだが・・・ 実は次にリストの店を訪れるのは、彼等が痺れを切らして催促してからの事にしようと 前もって決めていたので、この結果は想定の範囲であって次に行く店も決めていた。 それは・・・その前に、僕も彼に倣って市販のチョコレート菓子の紹介から始めようか。 近所のスーパーで購入したこのチョコレートには国産シングルモルトウイスキーの 山崎が中に入っており、チョコの中からフワッと広がる芳醇な香りと奥深い味わいは まさにプレミアムウイスキーそのもの・・・勿論、チョコレートとの相性も抜群だった。 今回僕が紹介する例のリストに名を連ねた店であるが、そのリストの元にもなった 彼のあの物語でのこの店の紹介もこんなチョコレート菓子の写真から始まっていた。 チョコレートと洋酒の優美なマリアージュ・・・でも、その後の文章の中には、その後の 物語のヒントとも取る事の出来る記述が含まれていた・・・そして、今回紹介した後にも・・・ 彼の紹介では6月半ば、物語の主人公でもある語り手の青年が勤務している学習塾の 1学期中間テスト対策補講も終わったごく平凡な一日の遅い朝、という設定になっていた。 如何やら彼も僕と同じ学習塾の講師という職業に就いていたようだ・・・意外と近くにいるのかな? それなら、今回僕が訪れたのは2学期期末テスト対策補講が終わった12月の中旬の一日。 ただし、こっちには来月(来年!)早々に控えている高校入試があるので、“緩く”は無いが・・・ そしてやって来たのは県を越えて足利の隣りに位置している群馬県館林市の郊外。 大きな都市という訳では無い為、市の中心から10分も車を走らせると長閑な田畑の 風景が辺り一面を覆っていて、収穫を終え剥き出しになった大地を眺める事が出来た。 見渡す限り雲一つ無い青空の下、視界の先には雑木林が小さく見てとれた。 この感じは、何処となく“あの橋のムコウ側”にも通じなくも無い気がしたが・・・ 農道の脇に流れる用水路の側の草むらで、ピンク色に輝く小さな花を見つけた。 ホトケノザ 先日金山で出会ったヤマツツジは本来は5月前後に花を咲かせるそうで、実際、 駐車場から神社までの決して短くは無い行程で見掛けたのはあの群生だけだった。 今僕の目の前で、まるでお辞儀をしかけているように可愛らしい姿を見せてくれる この濡れて滲んだみたいなピンク色の小さな筒状の花も、本来の花期は早春との事。 これまで花期の関係で散々奔走し紹介を諦めた僕の苦労などお構い無しとばかりに、 全くの季節外れに可憐な花を咲かせている光景に、やはり無心で魅入る僕だった。 えんや 件の物語の語り手であるWilliam青年がArnoldとの距離を近付けるきっかけとなった、 “群馬県T市の市街地からやや外れた場所”に位置する喫茶店・・・館林市と既に書いたが・・・ 今回僕が例のリストの中から選んだのは、足利市の隣り街にある紛れもないこの店だった。 それは、先の語り手が憧れていた人物と交流を築く事になったこの場所に現を担いで、 僕もあの人物に一歩でも近付きたいとの願いを込めての選択であるのも、無論確かだが。 自家焙煎珈琲の店 そんな、William青年に大胆な一歩を踏み出させたのは本格珈琲が楽しめる店。 こんな周りに何も無い所に?・・・いや、これまで彼が紹介してきた店には 得てしてこの様なロケーションに溶け込んでいる店が少なくは無かったのだ。 目の前に広がる畑は剥き出しになった黒々とした土が僕の視界を占めていた。 物寂しい風景ではあるが、また新しい恵みに備えてジッと待っている大地の姿は、 この地でずっと続いてきた自然と人間との共同の営みである事を改めて感じさせる。 煉瓦を積んだ門柱の上に置かれた鉢の白い花が、時期を過ぎて枯れかけの潅木と 生気を失いつつある芝生の寒々とした庭に控え目で可憐な印象を与えてくれていた。 また春になったら青々とした庭園に魅了される事だろうと思いつつ石畳の上を歩いた。 でも、そんな芝生の中でさり気無く訪問者を出迎えてくれるモノがいたのだ。 こんにちは黄色い花さん、他のみんなはもう往ってしまったのかな? 石畳の小路からウッドデッキを上がった先に菱形に組まれた木の扉が待っており、 組み合わせた板自体がスタイリッシュなデザインとなった扉がこの店の入口だった。 キミはそのダイヤの目で、目の前の大地をずっと眺めていたんだね・・・ 扉と店内とを結ぶスペースで見つけたのは勿論・・・珈琲の専門店なのだから・・・ 入ると直ぐにケーキのショーケースが控えていて、その中でまるで宝石のように キラキラと輝くチョコレートケーキやいちごのタルトに・・・思わず唾を飲み込んでいた。 ケーキに見惚れてしまった僕だったが、振り返った光景は心安らぐ喫茶店の姿だった。 重厚な木製の天板が素晴らしいカウンターの奥には煉瓦造りの“焙煎室”も備わり、 ガラス越しに覗う事の出来るその部屋の中ではマスターが焙煎をしている最中だった。 更にもう一つ、珈琲専門店に無くてはならないものと言えば・・・ 背面の棚に収まり切らない珈琲豆の瓶がカウンターに沿って綺麗に並んでいた。 生産国はもとより産地によって最良の焙煎が施された、黒く輝く珈琲豆の瓶を ぼんやりと眺めながら、豆の故郷に想いを馳せ・・・いや、僕が考える事と言えば・・・ 恐らく珈琲の店にとっては命とも言える、この存在感抜群の焙煎機・・・ そして、それを証明するかのように与えられた専用の部屋の前には・・・ そう、キミがこの店の看板を背負っているんだよね・・・ 珈琲で勝負するって意気込みとプライドを掛けた看板をね・・・ プライドと言えば、マイセンの歴史と誇りを誇示する双剣のサイン。 更にカウンターの端のキャビネットに目を向けると、その中で厳重に陳列されていたセットは・・・ 金の装飾の描かれた澄んだコバルトブルーに輝くセーブルの、何と気品に満ち溢れている事だろう。 このキャビネットにはセーブルの他にもギャラリーや美術館クラスの逸品がディスプレイされていた。 更にキャビネット以外にも僕の目を釘付けにするプレミアムカップが至る所に置かれていた。 ドラゴンメロディー 猟師のほら話 括り付けられた棚で見掛けた、現代マイセンのマイスターの一人であるハインツ・ヴェルナー氏に よって息吹を吹き込まれた、まるでおとぎ話のワンシーンを見ているような作品にも出会えた インドの花を筆頭に、マイセンの栄華を極めたマスターピースが所狭しと並べられており、 それは正しく宝石や美術品が放つオーラを帯びた輝きにも全く引けを取らないものであった。 これまで紹介した作品も勿論そうであるが、この他にもマイセンには花をモチーフにした作品が 沢山存在し、それは現在花を紹介しながらカフェを回る僕にとって大きな刺激となってくれた。 アーモンドの樹 ローズ・シリーズ 清楚な純白の地肌に緻密に描かれた潤んだ花弁たちが可憐に舞っていて・・・何て美しいんだ!! アーティストと呼ぶに相応しい熟練の絵師たちによる、全てが手作業の一点ものである。 そんな貴重なマイセンのカップが街の外れの喫茶店にここまで集められているなんて・・・ ヘレンド(2枚目はフォーシーズンと名付けられたカップ&ソーサー) ドイツのマイセン・・・フランスのセーブル・・・そして、ハンガリーのヘレンド・・・ セレブリティのステータスの一つとして、この様な陶磁器のセットをコレクションするのは 欧州各国の貴族階級によって寵愛され続けてきたのだろうが・・・何て優雅な意匠なんだ! 店内を彩るカップ&ソーサーを最大限に引き立てる為か、店内はシンプルにまとめられ テーブルやチェアー等も、上品な印象を醸しながらも落ち着いた雰囲気で統一されていた。 勿論、カップやコーヒー、スイーツをより楽しんで頂きたいという配慮もあるのだろうが、 木目の輝きが美しいカウンターやカップがディスプレイされた棚も含め、控え目ながらも この木の温もりの中でまったりとした気分に浸りながら緩やかな時間を過ごす事が出来た。 此処までカラフルな作品を見せて頂いた僕が今回オーダーしたコーヒー&ケーキは何と・・・ 全く色が無いのだ!!そんなカラーレスの注文にどんな色が添えられるのかと思っていたら・・・ マスターのセンスと感性の高さに、僕はもう完全に脱帽するしか無かった・・・ ガトー・クラシック・オ・ショコラ(チョコレートケーキ) 極上のカップとコーヒーを提供するこの店の事だから、ケーキは勿論、 コーヒーと共に頂くスイーツやパンも、最高に拘り抜いたものばかりだった。 そんなスペシャルなスイーツの中で今回僕が選んだのが此方のケーキだった。 定番中の定番でもあるガトー・ショコラをチョイスしたのは、ケースで目にした際に 一目惚れしてしまったのが正直な処であるが、この店が“例の物語のリストの店” という事も勿論考え、その物語で言及された方に捧げる意味合いもあったのだった。 ほんのりと色付いた、まさにミルクチョコレート色とも呼べる表面はふんわりと焼かれた 軽い感触でサックリと仄かな香ばしささえ漂ってくるが、その感覚は一瞬でしか無かった。 と言うのも、フォークを口の中に入れた際に感じられる表面の内側のギュッと詰まった質感と、 中心に進むにつれ増してゆくしっとりとした滑らかな食感、中心はクリームの様にとろけていた。 この様々な顔を見せてくれる食感を、ミルキーなチョコレートで味わう事が出来るのだった。 ややほろ苦く香ばしい表面から、段々と口の中で溶けたチョコレートの濃厚な風味と甘さが そのクリーミーな舌触りと共にゆっくりと広がってゆき・・・それはそれは、幸せなひと時だった。 そんなチョコレート・ケーキと共に頂くのも、この白と青のカップ&ソーサーに映えるコーヒー。 グァテマラ(中深炒り) 僕がカップに夢中になっている間、カウンターの向こう側ではマスターが豆を挽き、淹れていた。 何一つ変わる事は無いその無駄の無い動きは、まさにマイスターだけが手にする事の出来る技だ。 寡黙なマスターが淡々と珈琲を入れる間の静寂した凛とした雰囲気の中、コポコポというポットから お湯の流れ出る微かな音が部屋全体に響き渡り、同時に芳しいふくよかな薫りが鼻孔を擽り始めた。 そうして運ばれてきた至極とも言える一杯の珈琲のブラックオニキスのような輝きといったら! 舌に付けた瞬間、心地良い熱気の中から滑らかでややとろみすら感じられる口当たりのコーヒーから 口の中を刺激するインパクトのある苦味。そのビターな風味から感じる酸味とコクに唸ってしまった。 仄かなローストの薫りが落ち着きと安らぎを与えてくれる。ゆらゆらと不規則な軌跡を描きながら 立ち上る湯気と共に広がる、仄かに甘さと芳ばしさを帯びながらも何とも言えない豊かな香り。 この香りに包まれていると、此処だけが外界から隔絶され時がゆるやかに流れてゆくようだ。 そして、この最高の一杯が注がれているカップ&ソーサーはマイセンを象徴する・・・ ブルー・オーキッド “花を紹介するブログを綴っている”という僕の申し出にマスターが粋な計らいをしてくれた。 前出のハインツ・ヴェルナー氏の代表作の一つでもある此方のモチーフは・・・ 何と、白地の表面にシンプルな青色の釉薬で描かれた“蘭の花(オーキッド)”! 生き物の手足の様にくねらせた枝振りからデフォルメされた大きな蘭の花は、 青一色の濃淡だけで花弁の繊細な表情を完全に表現し切っている様にも思えた。 彼のブルー・オニオンと並んで現在のマイセンでも1・2を争う人気シリーズであるが、 何処か日本古来の焼物にも通じる部分もあり、それでいて西洋の優雅さをも兼ね備えた、 そんな現代マイセンの逸品を恐る恐る手にしながらも、何時までも飽きる事無く眺めていた。 えんやでの甘い余韻にもう少し浸っていたかった僕は、焼き菓子を買って帰る事にした。 まるで花弁みたいなひらひらとした形の可愛らしい焼き菓子と一緒に合わせるのは・・・ 「マーガレット」 今シーズンの花期は既に終了し、専門店では早くも来春に向けての花が準備されるとの事だが、 偶然にも近所の店でほんのりと淡いピンク色を付けた此方の鉢植えを手に入れる事が出来た。 マイセンの花柄の中にはこのマーガレットも存在するのだが、唯でさえ入手困難なマイセンの、 しかも市場に中々出回らないレアな絵柄との事で、残念ながら実物を見る事は叶わなかった。 だが、今僕が目にしているのは、紛れも無い正真正銘“本物の”マーガレットの花ではないか! 白い花弁とはまた違った、仄かな甘い香りと共に可憐な少女の様な姿を見せるピンクの花弁。 しかし、こんな可愛らしい花がもう少しで儚くも散ってしまうのだから、カップの絵柄に留め、 この美しさを後世に長く残してゆきたいという人々の想いも十分に頷けてしまうのだった。 今回のBrit Boyによる鍵コメントは気の短い彼が焦って送ったものか、それともパピヨンか・・・ あるいは僕が未だ知らない他の(彼の物語にはあと数名の登場人物の名が出てくる)メンバーが 彼に送らせたものなのかは定かでは無いのだが、大丈夫・・・僕だってちゃんと考えているのだから。 そう言えば、このえんやの紹介をUPしてから2~3日経ったある日、二つの鍵コメントがあった。 一つは匿名の、それもたったのワンフレーズ、“咎無くて死す”とだけ書かれていたのだが・・・ コメント欄を見た瞬間ドキっとしたが、これが紹介に対する彼等からの報酬なのだろうか? もしそうでないとしたら、このいろは歌の暗号を引用した謎めいたコメントは一体誰が・・・ そしてもう一つは・・・何とあの人物からの誘いのコメント、しかもプレゼントもあるなんて! #
by mary-joanna
| 2009-12-22 13:12
| 有為の奥山
彼、Cindyの物語への憧憬をこの二つの眼にしっかと焼き付ける僕の密かな試みも、
(元々50回にも満たないのだが)もう既に折り返し点を越えて後半へと差し掛かってきた。 そんな12月も半ば、先日のあのカフェへの二度の訪問に触発されたからという訳でも無いが 僕の心の奥底から今まで禁断にしていたあの店を紹介してみたいという欲求が湧き上がっていた。 それは、もう残り少ない“イロハ計画”の中で紹介したい店が限られてきた事は勿論、 例のリストに記載された店も、未だ浅草の天国の一軒しか訪れておらず、その為だろうか 一時期あれ程頻繁だったグループからのコンタクトもここ最近パタリと途絶えてしまった様で、 “彼の情報を得たい”という本来の目的をも頓挫しかかっている不安も、多少なりに存在していた。 それに何より、今回のイニシャルでもある「ヤ」のイメージに何処かピッタリな感じがして・・・ 能書きはこの位にして、早速出発する事にしようか・・・今回訪れる街には可愛らしい・・・ たった一両のこの電車が僕を連れて来てくれる筈になっていたんだ! 尤も、残念ながら諸事情によりこの真岡鉄道を利用するプランは今回は見送る事となり、 益子の街へと入る手前の踏切で、のんびりと眺めているだけになってしまったけど・・・ 可愛らしい電車クン、僕の目の前を過ぎ去るスピードなら新幹線より速かったよ! 陶芸の販売店が左右に立ち並ぶ益子焼きのメインストリートとも呼べる大通りを抜けて、 更に小高い山の方へと細い路地を入ってゆくと辺りはすっかり里山の景色を見せる。 この秋は様々な場所の紅葉を紹介したけれど、今、僕は山吹色の中に立っていた。 で、果たしてこの先に目的の店はあるのか、と少々不安が過り始める頃なのだ・・・ この数本の大きなドングリの木に守られている、可愛らしい小さな山小屋を目にするのは・・・ pain de musha musha and coffee 遂に僕は、この森の中でかくれんぼする小さなカフェ兼パン屋にやって来た。 彼が“兄”と慕っていた隣り街のマエストロが、親交の深いこの店でイベントを行ったのは 今年の1月、もう彼是1年近くが経とうとしているのだが、それまで彼は自身の日記の中で ほんの2~3の例外を除いてこの種のイベントを紹介するのを極力避けている様に感じられた。 唯一、これ以上は無い程の情熱を傾けて紹介したイベントこそ、この店と“兄”とのコラボだった。 その物語で、決して川のムコウ側には出ようとしなかった少年を引っ張り出したのだから・・・ もう、ジョンとポールの物語の続きに触れる事は出来ないの?・・・なぁ、どうなんだい? 朝から飲まず食わずでの長いドライブと今年一番とも言える朝方の冷え込みの為に 兎に角温かいものが欲しかった僕は、ドングリの木の横を通り抜けて石段を駆け上がった。 あの真っ白な木枠の引き戸の側の、直ぐ目の前に大きなドングリの木を眺める事の出来る 四角い卓の場所こそ、彼があの物語でチョイスした席だった・・・外の日差しが気持ち良さそう・・・ とても優しくて物腰の柔らかな店主夫妻と過ごすひと時は、心安らぐ気持ちに誘ってくれる。 その会話の中で偶然出てきた話題が、お気に入りの椅子についてだった。 実は、最近掲載された雑誌の中にデザイン&建築関連のものがあったのだ。 僕は嘗て、イームズやプルーヴェなどのチェアーを追い求めていた時期があった。 今でこそレプリカ製も数多く出回り、カフェの椅子としても定番になったが、あの頃は、 程度の良い中古品に脚や座面のファブリックをカスタムしてもらうのが凄く楽しみだった。 その事を伝えると、ご主人が穏やかな口調で僕に語った。 貴方に見て頂きたい自慢の椅子があるのです。 果たしてその椅子はカフェの奥の、2畳程の板敷きのスペースに置かれていた。 写真での印象以上に小さな椅子は、まるで子供用と見紛うばかりであったが・・・ 勿論大人だって座れますよ・・・どうぞ、腰掛けて下さい! その言葉に恐る恐る腰を下ろすと・・・何てしっかりとした椅子なのだろう!! その華奢なビジュアルとは裏腹に、座った際に腰に伝わってくる安定感と言ったら、 まるでこの椅子が切り出される前の、まだ大きな樹木に優しく包まれている感じだった。 柔らかな発色が美しい淡い赤色のフレームに、微妙な反り具合が腰に自然とフィットする 桜の古木を使用した座面に映る枯れた色合いの木目からは、木の温もりが直接感じられる。 イベントではあの方が着かれていたのも納得だが、僕はこの椅子がすっかり気に入ってしまった。 このスペースはギャラリーとしても活用され、側のカウンターには陶器がディスプレイされていた。 そう・・・僕も心の中で誓ったドングリの約束を果たしに、この森の中のカフェに来たんだ。 クグロフ 可愛らしいクグロフ型で焼きしめられた、伝統的な焼き菓子のクグロフをオーダーした。 先日のシュトーレンでも感じたけれど、クリスマス当日の華やかな食事を迎えるまでの間、 素朴な焼き菓子を少しずつ頂きながら過ごす・・・なんて素敵なクリスマスの過ごし方だろう。 バターをたっぷりと練り込んで焼き上げたブリオッシュ生地と伺っていたのだが、 ふかふかの生地は口の中でふわっと溶けてバターの心地良い風味に包まれてゆく。 ラムレーズンの豊かな香りとねっとりした食感、噛んだ際に広がるフルーティーな風味、 ナッツ香ばしさとカリっとした歯応えがふんわりしたブリオッシュにアクセントを加えていた。 レモンのほろ苦くも爽やかな薫りが微かに漂って、この素朴なパンに奥深さを与えていた。 このクグロフを食べていると、本当にクリスマスが待ち遠しくなってくるよ・・・ コーヒー (カメルーン・カプラミ・ジャバ・ロングベリー) 3種類の産地(カメルーン、エクアドル、そして中国!)から、中焼きのカメルーンをオススメして頂いた。 先ず注目して欲しいとサーヴされたのが、カフェでのコーヒー用にと特注された此方の専用カップ。 縦長の筒状になっているのはコーヒーの香りをダイレクトに感じて欲しいとの配慮からだったが、 コーヒーの芳醇な香りは勿論の事、店主のコーヒーへの情熱や拘りをも感じ取れるのだった。 早速香りを堪能させて頂くと、柔らかなローストのまったりとした心地良い香り・・・ この中焼きのロースト感から、てっきりマイルドな味わいを連想していたのに・・・ パンチのある苦味の中から広がる円やかな酸味と微かな甘みが作り出す複雑な味わい! しかも、冷めてくると内側かすっきりとしたら酸味が段々顔を覗かせてくる感じがした。 唯、豆を焼いただけの飲み物なのに・・・何て奥深い飲み物なのだろう・・・ このコーヒーの魅力にウットリとしながら惹き込まれていると・・・ ・・・この日のメインは大き目のカップに入ってやって来た。 冬野菜のクリーム煮・ポットパイ とっても“ホット”な“ポット”パイ!! 大きなカップを覆い尽くすパイの蓋はほんのりとしたこんがり小麦色。 アイボリーのカップからモコモコとはみ出して・・・まるでキノコの傘みたい。 そのカップを覆った何処か愛らしいパイの蓋を暫く眺めていた僕だったけれど、 冷めてしまわないうちにと、名残惜しくもスプーンを刺すとパイ生地はサックリと 崩れて熱々の湯気がいっぱい立ち上り、僕の食欲も一気にヒートアップするんだ! サックリと焼かれた表面は、仄かに粉の香ばしさが感じられクリスピーな美味しさ。 それでいて内側の方はむにゅっとして柔らかな食感と素朴な味わいが何処か懐かしい。 大きなカップを更に大きく覆ったボリューム満点の、二つの美味しさのパイ生地の中には キノコの豊かな香りとほんのりとクリーミーな風味が抜群にマッチしたシチューがたっぷり! クリーミーなシチューには、とろとろに煮込まれた甘いネギにシャキシャキでほっこりした蓮根、 そして何と言っても、ムニュっとした食感から広がる旨みたっぷりのキノコがたっぷりと入っていた。 スプーンで崩し入れたパイ生地はシチューを吸い込んで絡み合い、更に一層美味しさを増していく。 全て具材を包み込む優しいシチューは素朴で優しい味付けとたっぷりのミルクの、 小さい頃、寒い夜に作ってもらった、あのママの優しい温もりがいっぱい感じられて・・・ 森の中の小さな小屋のカフェで頂く野菜とキノコがたっぷり入ったあつあつパイシチューは それまでの僕の、冷え切った身体と心をゆっくりと優しく、そして、暖かく包み込んでくれていた。 身体も心もすっかり温まった僕はこのカフェを後にして、“もう一つの”入り口に向かった。 カフェだけじゃない・・・ずっとこの“ムシャムシャパン”の小屋に憧れていたんだよ! まるで何処かの惑星の生き物みたいな何とも名状し難いオブジェにも遂に出会えた。 真っ白な扉のノブに手を掛ける前、僕はこの小屋の屋根を暫くの間眺めていた。 この時期に訪れる機会があったら、是非ともその目で確認して欲しいのです・・・ この“ムシャムシャパン”の小さなお店の屋根の色は何色かって・・・ クリスマスのカラフルなイルミネーションも良いけれど、このパン屋さんにぴったりだよね? クリスマスって言えば・・・サンタさん、この前は綺麗な花と懐かしい思い出をありがとう・・・ 中に入ってみると、丁度パンが焼き上がったところだった。 ちっちゃなまん丸パンに、しっかりしたハードパンに・・・季節の野菜のキッシュもあったよ!! 棚の向こう側にいる店主と相談しながらお気に入りのパンを選ぶって、ちょっと嬉しいよね。 やっぱりキミたちは此処にも遊びに来ていたんだね・・・ あれっ、キミたちが向かっているは、上の方にあるちっちゃな丸いぼんぼりを付けた・・・ そう、その白くてまん丸が寄り添った花・・・その周りには優しい“おてて”が守ってくれて・・・ 金山城跡 (群馬県太田市) 数日が過ぎたある日、森の小さなパン屋さんで再会した小鳥クンに教えてもらった僕は、 彼が慕っていたマエストロがそうした様に、隣り街のとある場所までやって来たのだ。 街の中心から北に向かっていくと、“呑龍様”で名高い大光院という浄土宗の寺院に辿り着く。 更に車を走らせる事数分、辺りは直ぐに山道へと変わり、くねくねした細いを登ってゆく。 そして、展望台付近の駐車場に車を停めてからは、この石段を徒歩で登る事になる。 全く舗装のされていない山道の左右からは壮観な太田の街並みを見下ろす事が出来る。 それまで息を切らしながら重い足取りで進んでいたが、この景色に爽快な気持ちになるのだ。 そして、道中ではこんな美しい偶然の出会いもあったりするから嬉しい。 ヤマツツジ 何と、返り咲きのヤマツツジの群生が枯れた木々の間で華やかさを添えていた。 この可憐な薄紅色の花弁にすっかり心も癒されて、更に先へと進む意欲も出てきた。 歩き始めて20分は経っただろうか・・・目の前には重厚な石垣が圧倒的な存在感で迫ってきた。 金山城跡・・・そうか、此処は嘗て難攻不落の堅固な山城として近隣に名を馳せていた様だ。 この聳え立つ石垣の間を通り抜けると、一番奥には元本丸が置かれていた神社がある。 だが、僕が目指していたモノは、神社の境内に向かう緩やかな石段の脇にあった。 「ヤツデ」 寒い北風に吹かれながら真っ赤に腫らしたちっちゃな紅葉の“おてて”の前で、 緑色した大きな“おてて”が優しく包み込むようにその“手のひら”を広げていた。 僕の手よりも大きさのあるくっきりとした輪郭の濃いグリーンの葉は、 まるでお父さんのような力強さとお母さんのような優しさの両方の手で、 向こうの木で寄り添っている沢山の小さな手を温かく見守っているみたい・・・ 真っ白でちっちゃな丸いぼんぼりを付けたヤツデの花・・・ 小鳥クン、やっと僕も見つける事が出来たよ!! くるみパンとアン・ノア 素朴な粉がしっかりと焼きしめられて、香ばしくてパリッとしてそれだけでも美味しい。 中を割ると胡桃の風味が皮からは想像もつかないくらいふんわりしっとりの生地と 一緒に口の中でふわっと広がって、本当に自然で優しい気持ちになれるんだ。 ちっちゃな丸パンの中には優しい甘さの粒あんがたっぷり入っていて、 思わずちっちゃな子どもに戻った様に無邪気な笑みが零れそうだ。 季節の野菜のキッシュ マットな印象でサクサク感いっぱいのパイ生地の中いっぱいに詰まったアパタイユ。 ふんわりとしてミルキーな風味と卵の優しい風合いが何ともマッチして美味しいけど、 何と言ってもたっぷり入った野菜の食感や旨みがキッシュを更に美味しくしていた。 次回は是非とも、ホールで購入したくなるキッシュだった。 マフィン スイーツかと勘違いしそうな可愛らしいマフィンだけれど・・・ トッピングのリングは何とオリーブの輪切りで、赤色はトマトだと言うのだから・・・ そう言えば、このパン屋さんの工房の壁の色はショッキングピンクに染められていて、 森の中の可愛らしいパン屋さんは、時にアバンギャルドなブーランジェリーになるのだった。 彼が“森の中の幻のパン屋さん”と言って紹介してからもう3年近くが過ぎて、 この店自体はパン屋のみの頃から含めて何と5th Aniversaryを迎えたとの事・・・ でも、何時までもおとぎ話に出てくる森の中の可愛いちっちゃな小屋であって欲しい・・・ そんな事を願いながら、可愛らしいまん丸パンをムシャムシャと頬張っていた。 遂にジョンとポールの物語に登場する店まで紹介してしまったけれど、 その為もあってか、UPした夜、久しぶりに鍵コメントを貰ったのだ・・・彼等から・・・ #
by mary-joanna
| 2009-12-18 13:52
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