ト.夏の陽の思い出

職業柄、不規則ではあったものの数日間の休暇を得た8月は半ば。
今一つはっきりしない今年の夏空は、肝心の日に台風の接近も重なり
予定していたあの場所への再訪も少々心配になってきたのは事実だった。

でも、菜園の向日葵の様に明るいダヴィッドさんの笑顔と彼が作る愛情たっぷりの
美味しいパンに魅せられた僕は、天候の好転を信じて予定の時間に足利を出発した。

それに今回のつくばツアーにはどうしても訪れたい場所があと二箇所もあるんだ!
それは、Elvis Cafe を綴る僕にとって夏の思い出を作るのにぴったりの場所・・・

そう、“夏の陽”の思い出に・・・


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さわさわと風にたなびく薄黄金色をした麦の穂の遥か向こう、
緑に覆われたなだらかな裾野の中腹に小さく見え隠れする朱色の鳥居。

筑波山の麓までやって来た僕は、流れる雲が山の頂上を覆ってゆくのが
とても気になって、付近の駐車場に車を停めて暫くの間眺めていた。


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白・・・黒・・・緑・・・何本もの直線が一点に集まるその先に小さく見える筑波山。
この何処までも果てしなく続いてゆくかの様に思われる深緑の回廊を進み、
つくばの街を縦断しきった頃に辿り着くダヴィッドさんのパン屋さん・・・

彼が此処を訪れた際、この街路樹は必ずと言ってもいい位紹介されていたっけ・・・

ダヴィッドさんと(そしてご家族の皆様にも!)素敵な再会を果たした僕は、
筑波山の方から南下してきたこの国道を筑波大学の辺りまで戻って来たのだ。


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つくば植物園


この通りを隔てて大学の真向かいに位置している国立の植物園こそ、
今回僕がどうしても訪れてみたかった最初の目的地だったのだ。

非常に大きな植物園は、屋内外を合わせ約3000種類もの世界の植物が
栽培されており、広大な敷地は当然の事ながら生息環境ごとに区分けされていた。


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ヤマユリ


まだ十回にも満たないこのElvis Cafeだが、お気に入りの花であるのは勿論、
初夏にスタートしたという事もあって百合の仲間を紹介する機会が多かった。

大きく開いた純白の花弁の真ん中に入った黄色いラインと茶色の斑点、
更にその表面を漂うオレンジ色の細長い葯とまるで恒星の様に鎮座する柱頭。
その全てがあたかも計算しつくしているみたいな完璧なフォルムとバランス。

そんな、夏の花の王様と形容したくなってしまうこのヤマユリだけれど、
僕が真っ先に思い出すのは、やっぱり彼のあの日記の中だった。

兄弟と父の“ひと夏の思い出”・・・僕も思い出を求めて此処まで来たんだ!


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キヨスミギボウシ


この植物園では、普段お目にかかる事の出来ない希少な植物に出会えたりもする。
その名の通り清楚な淡紫の君を見掛けた僕は、先日の“清く澄んだ”日を思い出していた。


そして中央広場では、この季節の野草としては非常に人気の高いあの花が咲いていた。


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サギソウ


透き通る様な白い翼を大きく開いて可憐に羽ばたこうとしている白鷺の花は、
同時にあの悲しい物語をも連想させる悲哀に満ちた表情をも覗かせている様だった。

その美しく舞う姿に、一年のほんの一時だけ酔いしれてしまうのだ・・・


綺麗な白鷺に別れを告げた僕は、温室の方に行ってみる事にした。


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熱帯資源植物温室


まるでジャングルの中に突然現れたガラス製のピラミッドみたいな大きな三角形の温室は、
一瞬でアマゾンかインドネシアの熱帯林にワープした気にさせる不思議な空間だった。

でも、そんな非日常的な、ドキドキする感覚を期待して僕は中に入った。

非日常?・・・ドキドキ?・・・此処はディズニーランドでも映画館でも無い単なる
植物園の温室で、いくら珍しいと言っても唯の植物が並んでいるに過ぎない。
でも、どういう訳か今の僕には此方の方がずっと魅力的に感じるのだった。

此処にあるモノたちが・・・“リアル”だからかな?


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そう、此処はリアルな植物に覆われた“ジャングル”なんだ!!

そして真っ先に僕を出迎えてくれたのが・・・



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バナナ


まるで此方に手招きしているみたいなコミカルな風貌の萼の付け根からは、
この姿から想像もつかない可愛らしい花が咲き、やがて例の黄色い実をつける・・・

Cindy、君の日記には幾度となくバナナが登場するけれど、こっちは見た事無いんじゃない?


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カカオ


更にもう一つ、君の大好物の“本来の姿”を紹介しておくよ。

それにしても、これがあの甘くとろける魅惑のチョコレートの元の姿だなんて、
初めてチョコレートを作り、食した人々には驚きを通り越して感嘆の念を覚えるよ。

君もそう思うだろう・・・いや、そんな事は考えないよね・・・(褒めているんだ!)


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ウツボカズラ


思わず微笑んでしまいそうなユーモラスな植物を見た僕は、
先日遊びにきた甥っ子が持っていたポケモン図鑑を思い出した。

今思うと、あのアニメには珍しい花や植物をイメージしたキャラクターが
少なからず登場していたけれど、最近まで全く気にも留めていなかったっけ・・・


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温室を後にした僕は、この広い植物園を更に散策してみる事にした。
敷地内には池や湿地もあって、其処に生息する希少な植物にも出会えた。

そんな中、絶滅危惧植物が植栽されているエリアで見つけたのが・・・
今回のイニシャルでもある、「ト」の花だった。


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「トラノオスズカケ」


細長い茎から等間隔に付いた葉は一枚ずつ左右交互に出ていて、
葉の付け根から小さな円錐状の紫の穂がちょこんと伸びていた。

淡い紫の付け根と爽やかな黄緑の穂先のコントラストが清々しいけど、
この可愛いフォルムとツートーンのバランスから僕が連想したのは・・・

何を隠そう“アポロチョコ”だった!!
彼に負けじと、僕もチョコやお菓子が大好きなんだ・・・


本来は山伏が修行の際に身に付けた鈴懸と太くて荒々しいイメージの虎の尾が
名称の由来なのだと言うのだけれど、僕の中ですっかり“アポロ”になってしまった
イニシャル「ト」の君には恐らくこの様な場所でしか会う事が出来ないのかも知れないね。

本当の虎だってもう動物園でしか見る事が出来ないんだ、21世紀の現代では・・・


中央広場から入り口までのプロムナードを歩いていた僕は頭上を覆い尽くす
街路樹の無数の黄色い葉っぱと、木漏れ日の優しい日差しをぼんやりと眺めた。


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「トチノキ」


僕の地元、栃木県の県木がこのトチノキである事は小学生の頃から知っていた。
でも、こんな形の木でこんな色の葉っぱをつけるなんて、今まで意識した事も無かった。

植物のブログを始めて僕が知ったのは花や草の事だけでは無くて・・・

そう、僕が住んでいる土地の風土や歴史、いつも見ていた(筈の)木や空の色、
更には空気や土の香り、風の心地良さまで新鮮な感じがした・・・


トチノキのプロムナードを渡り正門を出た僕は、もう一つの目的の場所に向かった。
僕が忘れていた自然の恵みを思い出させてくれる、もう一つの場所に・・・


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市街地に位置しながらも大きな通りからはかなり奥まった場所に位置していた。
周りを竹林に囲まれ、すぐ側にはお寺もあって、本当に此処が開発著しい
研究学園都市の街中なのだろうか?と感じてしまうロケーションだった。

このスタイリッシュな外観と、全く相反する様なお店の名前・・・
都市と自然、現代と歴史が絶妙に溶け合った、そんな印象が此処にはあった。


そして一歩中に足を踏み入れると・・・


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目の前に広がるカウンターを彩るスイーツの数々に僕はすっかり舞い上がった!

これは彼がウットリとするのも無理は無いだろう・・・僕もそうなのだから・・・


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スッキリとした印象の洗練された店内は奥のカフェスペースまで続いていた。
真っ白な背の高い壁と無垢材のテーブルは、意図的に装飾を極力排していた。

その訳は・・・視線を上の方に向けてみると・・・あっ!!


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そう、此処では“本物”が店内を飾ってくれているのだ。


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先程“何の装飾も無い”と告げた店内だが、二つばかりの例外があった。
一つはワインを陳列している棚の上に掛けられた非常に大きな葡萄の絵画、
そしてもう一つが、カフェスペースの真っ白な壁に掛けられた4枚の植物の絵。

四季だろうか、それとも此処つくばの自然だろうか、同じサイズの正方形の4枚は
其々が個性的でありながら一枚の絵巻物の様に繋がっている風でもあった。
それらの絵画があたかも4つの窓越しに覗く風景の様に自然に存在していたので、
部屋を飾っているというよりこの建物の必要不可欠な一部といった印象がした。

そんな4枚の絵の中で一際僕の目を捉えた一枚があった。
全てを受け止めてくれるカンバスいっぱいに広げた大きな白い花弁、
そのゆったりで泰然自若な佇まいは穏やかで落ち着いた気分にさせてくれた。


そして、“それ”は店内に陳列されていたワインの木箱の中で休んでいた。


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あぁ、見つけたよ・・・
僕は“夏の花”を求めて、此処つくばにやって来たのさ。

実は事前に取り置いてもらっていたのだが、こうして木箱に入った
彼を見ていると何だかこっちまで安らいだ気持ちになってくるんだ・・・


知る人ぞ知る自然派ワインとスイーツのお店ではあったが、
更にもう一つ、このお店で忘れてはならないのが・・・


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クマさん、キミもお腹が空いていたんだよね。
大好きなチョコレートパン・・・あっ、彼の大好物でもあったよね。


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まずサーヴされたのはひんやりとしたこのスープだった。

ぽってりとした舌触りは、野菜の質感をなめらかに感じられるギリギリの
バランスを保っていて、スープでありながら野菜そのものを食している気分だった。

以前、このブログをスタートさせるきっかけになったあのお店で
最初にスープが運ばれた際に店主が言ったひとこと・・・

  先ずこのスープで身体をチューンナップして下さい

一口、また一口、僕はその言葉を思い出しながらスプーンを口に運んだ。
野菜の甘みとコクがまるで身体の隅々に沁み渡っていくのを感じながら・・・


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キッシュと塩味パウンドケーキのお皿


キッシュ・・・パウンドケーキ・・・サラダ・・・そして、デザートまで!!

思わず歓喜の声をあげてしまいそうな、バラエティーに富んだこの一皿は、
更にキッシュとパウンドケーキを好みに応じてチョイスする事も出来た。

メニューに踊る魅力的な食材の数々から一つだけを選ぶ時のワクワク感に、
プレートが運ばれるまでのドキドキ感とテーブルに置かれた際の感激と言ったら・・・


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キッシュプロバンサル


なす、トマト、ズッキーニといった夏野菜がたっぷりと入ったキッシュの、
ふんわりとした卵のまろやかさの中から溢れ出すジューシーな野菜たち。

ほど良いやわらかさとギュッと詰まった食感の野菜本来が持っている
甘み、酸味、コクと旨みの全てrがサクサクの生地とふわふわ卵にマッチして・・・

太陽の恵みをいっぱいに受けたプロヴァンス地方の郷土料理を
そのまま頂いている様な、陽気で元気な夏に相応しいキッシュだった。


更にパウンドケーキも夏らしいひと品に決めていた・・・


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ケーク・オリーブシトロン


このお店のスペシャリテと呼ぶにピッタリの塩味のパウンドケーキは、
そのまま頂いても勿論最高なのだけれど、このプレートに合わせた際の
他の料理との絶妙の相性は他では決して体験する事の出来ないものだった。

ふんわりでしっとりとした食感の生地から仄かに薫るレモンの爽やかな香りと
心地良いほろ苦さ、そして微かな塩味が生地の優しい甘さをも一層引き立てていた。
思わず夢中で頬張っていくと、所々にオリーブの実がゴロっと散りばめられて、
ムギュっとした食感と共にオリーブ特有の香りが丁度良いアクセントになっていた。


キッシュがプロヴァンスならパウンドケーキはイタリア南部だろうか、
共に地中海のそよ風をいっぱいに感じさせてくれるプレート・・・


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ハーブティー


食後にのんびりと頂く温かいハーブティーは胃腸の調子を整えてくれるばかりか、
食事での興奮を穏やかな気持ちに誘ってくれ、とてもまったりとした気持ちにしてくれる。

香り立つハーブの心地良さに、僕は暫くの間席を立つ事が出来なかった。


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つくばで出会った2回目の向日葵は、竹林に覆われた“フランスの田舎”の、
ピュアな空気がゆったりと漂っている、この真っ白な建物の中だった。

足利を出る際の何処か不安を掻き立てる様な鼠色の空模様は、
何時しか真夏の抜ける様な青空と雲へと変わっていた。


まるでビールやソーダの様に栓抜きで開栓すると、ポンっと響く軽やかな衝撃と共に
キラキラと輝く白金色の液体がシュワシュワと音を立てながらグラスに満たされていく。

暑い休日の午後、やや強めに冷やされたワインはスッキリとしたのど越し、
爽やかな味わいはそのままに、夏の薫り・・・大地の薫り・・・太陽の薫り・・・

葡萄と自然と作り手の情熱が一つになった綺麗なグラスをぼんやり眺めながら、
僕はこの1ヶ月の、そう、Elvis Cafeが始まったこの夏の思い出を噛み締めていた。


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ポタジェとカンパーニュ・・・
向日葵とヒマワリ・・・
パンとワイン・・・

この夏つくばの地で二つの“夏の陽の思い出”を作った僕だったけど、
まだまだ暑い夏は終りを告げてはいなかった・・・恋焦がれる様な褐色の・・・
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# by mary-joanna | 2009-08-16 13:35 | 色は匂へど

ヘ.清く澄んだ街角にて

 何処に向かっているんだい、そっちは街中じゃあないか!!


勿論分かっているさ、でもね・・・

此処には森林に負けない深い緑がある。
此処には庭園に負けない華麗な花が咲く。
此処には草原に負けない爽やかな風が吹く。

此処、清住に向かう大通りには・・・


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先日の日食では何ともロマンチックな太陽のかくれんぼを見る事が出来たが、
この日、お天道様を隠していたのは空一面を覆い尽くしていたどんよりとした雲。

とても7月の終わりとは思えない空模様であったが、僕は栃木県宇都宮市にやって来た。


JR宇都宮駅から続く市街地の中では随一の大通りは、商業施設は勿論、
付近の通り一帯も含めると裁判所や地方銀行の本店、美術館に学校などの
政治、経済、文化に渡るまさに街の大動脈とも言えるメインストリートとなっていた。

そんな市の中心に位置する大通りに沿って進んでゆくと、例のコンビニが現れる。
彼がこの街で大のお気に入りの、“あのカフェ”へと続く曲がり角だ!


勿論僕だってあの穏やかな時の流れを体験したくてこの街を訪れたのだが、
この中々右折出来ないコンビニを曲がる前に、もう一軒行く場所があった。

そう、今の僕にとっては本題とも言うべきその場所は、コンビニのすぐ先なのだが・・・


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しっかりと舗装された片側2車線の通りには途切れる事無く車が往来し、
広めにとられた歩道には街路樹すら備わっているものの、ぐるりと見渡して
目に飛び込んでくるのは数階建てのコンクリートの建築物や店の看板ばかり・・・

と、これまでお腹一杯なくらい目にしてきた“今の”市街地に有りがちな情景に、
一杯の爽やかな涼茶が差し出された様な、清々しい出で立ちの古民家が一軒。


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この大通りにあっては明らかに異質な存在なのに、何故か全く違和感無く、
この風景のこの場所に無くてはならない存在としてマッチしている様に思えた。

更に、この建物の軒先を埋め尽くさんばかりの大小様々な夏の草花は、
まるでこの古木の柱やトタンの赤屋根に寄り添う様に自然と溶け込んでいて・・・

そんな優しさすら感じさせる繊細な野草たちの中に、最近様々な紙面で
目にする“あの白鷺”より小さくて可愛らしい“鷺の群れ”が飛び立とうとしていた。


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建物の正面には何とも存在感のある重厚な扉が備わっていた。

昔ながらの伝統的な蔵戸をリフォーム時に合わせたとの事だったが、
みんなをしっかりと支え、守ってくれる大事な扉が頼もしく見えたりもした。


実は此処こそが、僕が今回どうしても訪れてみたかった場所・・・
つまり、“お花屋さん”なのだが、此処は本当には花屋さんなのだろうか?

この重厚な扉の向こう側でまず始めに出迎えてくれたのが・・・


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そう、やっぱり花屋さんだもの、暖簾にだってちゃんと描いてあるじゃ無いか!

そして、建物の中をぐるっと見回した僕は思わず感嘆の声を漏らした。
確かにこの建物は、取り壊しを免れた築数十年の古びた家屋かも知れない。

でも、この空間を満たしているものと言ったら・・・


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そう言えば、これまでの僕のブログで紹介してきた草花はどれも皆、
太陽の下でのびのびと咲き誇って、生い茂っていたよなぁ・・・

花屋なのだから建物の中は当たり前だって?

うん、でもこの花屋さんの草花たちを見てごらんよ!

適度に抑えられた仄かな明かりの下でのんびりと寛ぐ草花たちは、
まるで此処が建物の中とは思えない程とっても生き生きとして楽しそう。


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例えば・・・ほら、水色の玉とピンクの玉がプカプカ浮かんで仲良く遊んでいるよ。

まるで、サイダーの泡を見ているみたいに・・・キラキラ輝いているみたいに・・・


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まるで道端にひっそりと咲いているかの様に何処か控えめで、
でも、立ち止まってくれた人に笑顔になって欲しくって・・・


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トリック


栃木県一の街の、しかも市の中心の大通りで、こんなにも外の喧騒を忘れて
穏やかな気持ちにさせてくれるなんて・・・何かトリックでもあるのかい?


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「ベロニカ(トラノオ)」


店員さんに僕のブログの主旨を打ち明け、今回のイニシャルについて
相談すると、奥から紫色の穂をした細長い花の束を持ってきた。

一目で気に入った僕は、直ぐに購入する事を店員さんに告げた。

突然の僕の申し出にも、非常に親切かつ丁寧に説明をしてくれた、
二人の店員さん、そして店長さんにはこの場でお礼を申し上げたいと思う。


さて、少々長居し過ぎたかも知れない。時刻もお昼を回り、僕のお腹も空いてきた様だ。
購入する花の取り置きをお願いした僕は、先程のコンビニを予定通りに曲がって進んだ。
恐らくCindyが何度と無く通ったであろう例の細い路地に入って、そう、あの場所へ・・・


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その細い路地を右に左に2回ほど曲がると見えてくる、あの平屋の一軒家。

さっきの花屋にも劣らない、正真正銘、まさに“昔の”家屋に着いたよ。


そして、僕はこの場所で再び昭和にタイムスリップするんだ!!
懐かしいセピア色で満たされた、けれども未だ一度も体験した事の無い・・・


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初めまして、牛さん。
これからは彼に代って僕が君を紹介させて頂くよ。

まだまだ僕は“ちっちゃい”けれど、何時かきっと、君の様にどっしりと
腰を落ち着けていたいんだ・・・そうすれば彼だって・・・


中に入った僕は店長さんのご厚意で部屋を見せて貰った。


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この部屋は確か昨年の夏、“シェーブル”が残した手記を
物語にした際にあの人が食事した場所・・・

部屋の中央を占めている長テーブルに掛けられたクロスは・・・


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そうだね、君たちもしっかりと紹介しておかなきゃ、ね!


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無数についた柱の傷が、この建物の歴史を物語っていた。

現在の住人はというと、細長い腕と緑色の可愛らしい手を
いっぱいに伸ばして僕に挨拶をしてくれている様にも見えた。


そしてまた一つ、この柱に生きた証が加わってゆくのだ・・・


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柱にはもう一つ、昔の家の大黒柱には必ず掛けてあったボンボン時計も。

ねぇ時計クン、お願いだからもっとゆっくりと時を刻んでくれないか!


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このお店の店長さんはとても研究熱心だ。

でも、その根底には非常に柔軟な発想と・・・
何よりもワインやチーズに対して大きな愛情を注いでいらっしゃる。

だからこのお店は安らぎや温もりで満たされている気がして・・・


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まるで大正時代の洋館の一室と彼が語っていたのも頷ける、
このダイニングで、僕もロマンチックで優雅な食事を堪能したいな。

でも、僕が座るべき席は最初から決めていたのだった。


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昔風なら縁側の廊下とでも呼びたくなる(実際に呼ばれていた?)、
部屋と庭とを隔てるスペースに配された円テーブルとラタンのチェアー。

そう、この席こそ彼、Cindyの大のお気に入りだった席でもあり、
“Little”と称する僕が紹介する事をずっと夢見てきた席でもあったのだ。


雲に遮られた緩やかな白い光が硝子戸から差し込んで、
この空間にある全ての物に微妙な陰影を作り出していた。

何て、ゆったりとして落ち着いた気持ちになれるのだろう・・・

日々の事が遠い彼方へと消えていきそうだよ・・・
いや、それはこの清住の地にやって来た時から感じていた事、
先の花屋さんから此処へと繋がる路地は時空をも超えてしまうのかな?

そんなとりとめの無い妄想に駆られそうになっていた時だった。


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あの頃のスパゲティミートソース


最近の凝った作りではなく、とてもシンプルで子供の頃お母さんが
手づくりで煮込んでくれたあのミートソースの、あのスパゲティ。

たっぷりの挽き肉と野菜が入った、味も栄養もスタミナも満点のスパゲティ。

でもこのお店のミートソースには、仕上げのひと手間があるのだ!
店長さん自らその場ですり下ろしてくれるたっぷりのハードチーズの
コクと風味が、ミートソースの旨味をも更に引き出しているみたいで・・・

そう、此処は美味しいチーズのお店なのだものね!!


絶妙の茹で加減でつるつるしこしこのスパゲティに良く絡んだミートソースに、
まるで子供の頃に戻ったかの様に僕は我も忘れてパクついてしまった。


そして他では味わう事の出来ないスペシャルなチーズは、
勿論追加でオーダーしたスイーツにだって!!

このお店の夏のスイーツと言ったら・・・


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自家製アイスクリーム


蒸し暑い曇り空の、ちょっぴり物憂げな午後の窓辺で、
涼しげな籐の椅子にのんびり腰掛け、ひんやりとしたアイスを一口。
ミルキーな優しい甘さの中に、アイスの冷たさで抑えられたチーズの香りと
チーズの刺激が舌先にちょこんと伝わってきて思わずビックリ、そしてニッコリ。

やがて口内の体温で溶けて広がるチーズ本来のふんわりとした芳醇な風味、
更にまったりとした舌触りは、このアイスを最高のスイーツに仕上げてくれた。


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アイスティーのグラスに付いた水滴が滲んでいくのを眺めながら、
この時間が何時までも続いてくれればなぁ・・・って思う僕だったけど、

さっきの花屋さんとこのチーズ屋さん、それにこの細い路地の風景は、
何十年も前からずっと変わらずに、そしてこの先もずっとずっと
このままでいてくれる様な気がして・・・

そう、この清住の路地裏の、古びた一角は・・・


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「ベロニカ(トラノオ)」


ピンと真っ直ぐに伸びた茎の先、フサフサした青紫の小さな花の穂は、
ピョコっとコミカルに曲がってて何とも可愛らしいトラさんのしっぽ。

きっとキミだったら、吠えられても微笑んでしまいそう。

何処か懐かしくって、でもこれまで目にした事の無い花屋さんから連れて帰った
可愛らしいトラさんは、偶然草むらで出会えそうな親しみに溢れながらもハッと
見惚れてしまう綺麗な紫の尾っぽを軽やかに揺らしているのだった・・・


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これまで湿原や森、高原など自然の中で野の花を中心に紹介してきた
“Little”Cindyでしたが、今回初めて“花屋さん”のお花を紹介しました!!

勿論、野草にはこだわらず、これからも花屋さんやそのお店で購入したお花、
更にはガーデニングなどなども載せていきたいなぁ~って思っていますが、
最初に紹介する花屋さんはココってブログ開始前から決めていました♪ (≧∇≦)b

Cindyの大好きだった清住のチーズ屋さん(&路地裏の雰囲気)にも
ピッタリとマッチするコチラの花屋さん・・・

これからもこの“清く澄んだ”ツアーが楽しみなLittleクンなのでした♪  ( 〃∇〃)ノ
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# by mary-joanna | 2009-08-12 21:44 | 色は匂へど

ホ.祇園の宵を照らす華

  こんばんは・・・コチラでは初めましてですね♪ ( 〃▽〃)ノ

  そして何よりも・・・
  “Elvis Cafe”のスタート、本当におめでとうございます!! ヾ(≧∇≦)〃

  先月の、渡良瀬遊水池に撮影に行かれたとのメールを頂いて以来、
  メリジョナさんのブログの完成を心待ちにしておりましたが・・・
  いつの間にか4回も綴られていたなんて!! Σ(〃▽〃;) オオッ!!

  しかも、ブログ完成の旨を知らせて頂いたメールまで送って頂いたのに、
  今日までお返事できなかった事、本当にお詫び申し上げます m(_ _)m

  言い訳になってしまうのですが、ある事情がありまして、実はこのコメントを
  送るまで、ブログはおろかメリジョナさんのメール(3回来てました!)も
  拝見する事が出来ない状況にあったのです・・・(´・ω・`)ゞ

  それにしても・・・スゴイ、スゴイですよ~~~!!! O(≧▽≦)O
  とってもキレイなお花と・・・パン&スイーツの数々♪
  もう、“Little”なんて外しちゃいましょう!! (≧∇≦)b




“メリジョナ”って・・・まあ、それは普段と変わらぬ口調で語られていたのだった。
でも、今の僕にとって彼、“Edger”からの鍵コメントは何よりも嬉しかったしホッとした。

コメントにあった通り、“Elvis Cafe”をスタートさせる前後から
事実上音信不通の状態になっており、それは僕を不安にさせていた。
でも、必ず何処かで、そして何らかの理由でこっそりと見ていてくれたと
僕は心の底で思っていたし、そう思い込ませながら綴ってきたのだった。

“メリジョナ”こと、mary-joannaというID(彼にはこの名でメールを送っていた)
にしても、彼のもう一つの名前“Edger”が在籍するバンドの曲名から拝借した
名前だったし、maryといえば、そう、mary-chain・・・“Cindy”にも関わっているんだ!!

僕にとっての憧れの存在だった彼が、(ネット上ではあるが)遂に交流を持つ事になった彼が、
この僕のブログにコメントを入れてくれるなんて・・・僕の夢だったじゃないか!!


そんな僕の感傷的な気持ちを知ってか知らずか、何と彼のコメントは2通になって届いていた。
(単に長くて1回では入り切らないというのもあったのだが・・・)



  ところで・・・メリジョナさんに折り入ってお願いがあるのですが・・・

  実は本来でしたらこの時期にどうしても紹介したいお店があるのです!!
  Edgerが敬愛しております、月の夜に現れる輝く水面のような目を持つ
  ネコさんに是非とも見て頂きたい夏限定のスイーツがあるのですが、
  もうEdgerには紹介する事が出来ないのです・・・(´・ェ・`)

  そこでなのですが・・・




分かっているよ・・・僕は直ぐに彼にOKの返事を送り、そのお店の紹介を読み直した。

貴方のブログに登場するあのネコさんに紹介したい特別なお店とスイーツ・・・
そして、何故この時期(7月半ば頃)なのかだって大丈夫、承知しているって。
だって、僕は"Cindy's WALK”なら貴方に負けないくらい見ているんだよ!

だから、そう言う事なら・・・と、僕が向かった先は・・・


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そのお店は僕が住む栃木県足利市のお隣り、群馬県桐生市の
市街地からやや奥まった路地沿いにあるのだが、その前にどうしても
訪れたい場所があった僕は、市街地を抜けて山の方へと車を走らせた。


かなり山の方までやって来ただろうか、直ぐ手前の駐車場に
車を停めると、上の写真にある階段までは徒歩での移動となる。

そして、左右を緑が眩しい木立に囲まれたこの階段を上った先には・・・

四季折々の植物を眺め、自然な姿の動物や昆虫に出会い、
そして里山の森の中で自然を五感で触れ合う事のできる空間・・・


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階段を上り切ると、散策の起点となるネイチャーセンター前の広場に到着し、
此処でガイドマップを手に入れた後、様々なルートへと別れて観察を開始する。


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麓のなだらかな場所に位置しているとは言え、里山の中腹にある森では
舗装の無い剥き出しの坂道は勿論、所々にこの様な階段が設置されており、
全くの軽装だった僕も靴だけはちゃんとトレッキングシューズに履き換えていた。

最近の運動不足が解消されるかな?なんて軽い気持ちでいたのも束の間、
森の中を歩き続けるにつれて自分の体力の無さを痛感させられる羽目になった。


しかし、そんな代償を差し引いても此処に来た甲斐は十分にあった!


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見渡す限り木々に囲まれ、遠くの方で・・・いや、僕の直ぐ近くでも
はっきりと聞こえる“複数の”鳥の囀りや植物のスッキリとした匂いは、
本やパソコンの画面で見ていたのでは決して体感できないものだった。

そして、今の僕が一番関心を持っていると言っても過言では無い
様々な植物との出会い・・・そうだ、僕はこれを楽しみにして来たんじゃないか!


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それは何も視線の下の方にばかりあるとは限らなかった。

木漏れ日の差し込む木々の枝を目を細めながら見上げてみると、
プックリとした十文字とでも形容したくなる変わった形の実が生っていた。


今回紹介する予定の花は、当然“例の”イニシャルで始まるのだけれど、
その他にも非常に魅力的な花々に出会う事ができ、夢中でシャッターを切っていた。

そんな緑の中で揺らめく淡い炎の様な花たちのテーマは・・・ズバリ“橙色”!!


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まず入り口付近で群生しているこの花を偶然見掛ける事ができた。


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花時に葉見ず、葉時に花見ず・・・

こんなにも可愛らしい花なのに、僕はキツネにでも化かされているのだろうか・・・


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ヤブカンゾウとノカンゾウ


先日の渡良瀬遊水地で会う事ができた君と、会えなかった君。
今日は二人仲良く会う事ができたね。

八重の君は貴方のスマートな姿をとても羨んで、
一方、六枚の花被片は彼の華麗な出で立ちに嫉妬する・・・


僕にはどちらの君も最高に美しいのだけれど・・・



さて、此処に到着してから既にかなりの時間が過ぎていた様だが、
“例の”花を求めて森の中を彷徨う僕は何時しか当初の目的を忘れ、
緑の下での偶然の出会いが待っているこの散策を楽しんでいた。


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鬱蒼と生い茂る木々や一定のリズムで合唱する蝉の鳴き声に囲まれながら、
水色の身体を軽やかに翻しながら飛び交う蜻蛉の池に設けられた木道を通り・・・


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小高い斜面に沿った小路を上り、進んでゆくと道端には・・・あっ!


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やっぱり此処は自然の宝庫。君だって立派な森の住人だものね。


歩き始めた頃に心配していた運動不足や疲れも忘れて
この森での自然探検にすっかり夢中になっていた僕だったが、
だからと言って日が暮れるまでずっと此処にいる訳にはいかなかった。

もう一箇所、本来の目的でもあるEdgerと約束した大事な場所に
今日、行かなければならなかったのだ・・・あの花を僕のカメラに収めて・・・

楽しみから不安へと変わりかけたその時だった。
もう一度地理を確認しようとネイチャーセンターに戻った僕の下に、
突然の予期せぬ訪問者が現れた・・・舞い降りたと言った方が良いだろう。


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オオムラサキ


この地には“オオムラサキの森”と称された場所もあり、この季節はガイドによる
観察会も催されるとの事ではあったが、此処で見られるのは非常に稀であり、
センターの方からは「宝くじを買った方がいいよ!」なんて冗談も言われた。

でも、君に会えたのだから(しかも僕の足で“休憩”していくなんて!)
宝くじはともかく、きっとこの場所で“例の”花にも出会えるよね!


そして、その想いが通じたのだろうか・・・


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「ホタルブクロ」


 ほ、ほ、ほ~たるこい 
 あっちの水はに~がいぞ 
 こっちの水はあ~まいぞ 

 ほ、ほ、ほ~たるこい 
 行燈のかげから笠着てこい

 ほ、ほ、ほ~たるこい



 やっと捕まえる事ができたよ!
 僕だって兄さんみたいに捕まえられるんだ!!
 そう言えば兄さんは捕まえた蛍を紫のお花に入れて、
 両方の手でそっと包むように僕に見せてくれね・・・

 指と指の間からもれる蛍の光は花びらに透けて
 ほんのりやさいい紫色をしていたっけ・・・



探していたイニシャル「ホ」の君にも本当に出会う事ができたよ。

提灯花の別名もある蛍たちよ、今宵の祭も華麗に照らしてくれないか?
そうそう、そして今宵の祭りには無くてはならない花があったね・・・


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ヒオウギ


平安京の貴族に愛された檜の薄皮で作った扇に由来するというこの花は、
時代を隔てた現在でも、祇園祭の際に生けられる風習があると言う。

美しい橙色に紅色の斑点の入った、まさに扇の様な楕円形の花弁には
雅な歴史の情緒を花で伝える古人の繊細な感性に触れる事ができる様で・・・


さぁ、そろそろ僕も山を下りて祭を堪能しに行こう。



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そのお店は幹線道路から外れた古い住宅街の細い路地の中にあった。
目の前にはお寺もあり、本当に祇園の小路に迷い込んでしまったかの様だった。

この趣きのある外観を目にすれば、そんな錯覚を抱くのも無理はないと僕は思った。


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古都京都の情緒を湛えているのは外観だけでは無かった。

門をくぐり店の敷地に入ると日本庭園が設えてあり、目の前の東屋に腰掛けながら
鹿脅しから流れる水の音に耳を傾け紅葉の若葉を眺めながら寛ぐ事ができるのだった。


そして勿論この空間が作り出す情趣は店内へと続いてゆくのだ・・・


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まるで平安の物語や大和絵に出てきそうな板張りの室内、
突き当たりの格子戸からは石灯籠が顔を覗かせている。

更に中央に盛り上げられた白砂の、頂点の切り取られた円錐の様は、
銀沙灘と共に銀閣の側に鎮座しているあの向月台を強く連想させた。


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其々の座敷を隔てる御簾から仄かな淡い明かりが漏れている。
何て心地の良い、落ち着いた気持ちにさせてくれる空間だろう。

此処には京都の・・・そして、平安の雰囲気が息づいていた。
こんな情景をまさに“いとをかし”と表現するのだろう・・・


ところで、彼が僕にその任を託した、ネコさんとの約束の一品とは、
“この季節限定”のかき氷との事だったのだが・・・


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「祇園祭」


濃い緑が眩しい大きな山の頂は、日光に照らされキラキラと輝いている。
山の向こう側は真っ白な雪で覆われ、夏の木々とは違った景観を見せていた。
更に麓には白と緑と小豆色の楼閣が建ち並び、まるで東山が凝縮されている様だった。


宇治ミルク金時のかき氷の中には黒蜜アイスや抹茶の寒天が忍ばせており、
その稀に見る極上の味わいも然る事ながら、上品な遊び心で愉しませてくれる・・・

豪華にして優美、絢爛でありながら繊細な“祇園の祭”にピッタリの涼菓・・・
夏の京都に想いを馳せ、甘く冷たい夢に酔い、涼やかに彩る一時の贅沢・・・


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そしてまた今年も祭の季節がやって来る。

梅雨明けも近い7月半ばの茹だる様な暑さの毎日、
夜の帳が下りた後も、ギラギラと照り付けた太陽の熱気が
未だ冷め切らずに僕らの身体に粘りつく様にまとわりついてくる。

そんな鬱陶しさを忘れさせてくれるほんの数日の一陣の風。
そう、全てを吹き飛ばしてくれる風に僕らは身を委ね、舞ってゆく。


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あぁ・・・

お囃子の小気味良いリズムが聞こえてくる。
大きな鉾を乗せた山車がゆっくりと近づいて、自然と心も躍り出す。

そして何時までも途切れる事無く続かんばかりの華やかな祭の情景は
何時しか静寂の闇に包まれ、絢爛たる一団も四条の通りを去ってゆく・・・

千年を隔てた悠久の平安の都へと・・・


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湿原に高原、そして今回、森の中での草花との貴重な出会いは
僕の視野を大いに広げ、感性をも豊かにしてくれる気がした。

でも、草花を紹介するブログを綴っていこうと決めた僕は、
これまで訪れる機会が殆んど無かったある場所への訪問を計画し、
そしてその日がやって来るのを心待ちにしていたのだった・・・


其処は山でもなければ森でもなく、直ぐ目の前には車が引っ切り無しに
走り去ってゆき、視界の上方は見渡す限りコンクリートで覆われている・・・

でも、僕の心を捉えて離さなかったのは、“キヨクスンデ”いるからなのかな?
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# by mary-joanna | 2009-08-08 01:12 | 色は匂へど