「ほっ」と。キャンペーン

<   2010年 02月 ( 4 )   > この月の画像一覧

メ.廻り廻って・・・

それは、全く以って僕の記憶の中から完全に打ち消されていた頃にやって来た。
あれは確か2月の最初の日の事だっただろうか、いや、それとも2日だったかな?
今こうして改めてその経緯を辿ろうと耽ってみても、具体的な日付の記憶等は直ぐに
曖昧になってしまうというのに、前の晩は雪が降る程の天気だったのが嘘だったように
一転して、穏やかで長閑な日差しが心地良い一日だったのは良く覚えているんだ・・・

兎に角、その日の午後の事だった、ポストの中に例の封筒が紛れ込んでいたのは。
まるで何も入っていないのでは?と不安になる位に薄っぺらい封筒に入っていたのは
一枚の小さな紙切れ。でも、この紙切れこそ僕の下に舞い降りたスペシャル・チケット!
スペシャル?・・・そう、この一度限りのスペシャル・チケットを僕は追い求めていた。

だから僕は喜びを噛み締めるのもそこそこに、そして逸る気持ちをも抑え切れずに、
直ぐに出掛ける予定のつく日を探し出して、気づいた時には既にこの小さな紙切れに
書かれている店の電話番号に電話をかけて、ランチの予約を入れてしまっていたのだ。
受話器を置くや否や、その小さな紙切れを丁寧に元の封筒に戻し、更に何時も持ち歩く
お気に入りのトートバッグの中に大事そうに仕舞った。あと前もってやって事といえば・・・

この、神様のお導きかも知れない“廻りあわせ”に思いを馳せる事?
いや、神様というよりも・・・自然の恵みとの“廻りあわせ”なのかな?

そんな事をぼんやりと考えながら次の週になり、早くも約束の当日がやって来た。
奇しくも雪の降った翌日の、穏やかで・・・長閑で・・・何と心地の良い朝日だろう!
これも廻りあわせかな?なんて言ったら流石にこの先訪れる店を意識し過ぎだって
揶揄されるかも知れないが・・・こうして待ちに待った日光ツアーがスタートしたのだ。


e0183009_1359160.jpg



ただいま、背高のっぽの緑の回廊たち。あの玉藻小路への小旅行以来、
僕は君たちが作り出す緑色のトンネルを進むのがすっかり気に入ったんだ。

でも今日は君たちの更に先に用事があってね。だから、名残惜しいけど今回は
再会の挨拶だけにしておくよ。この最後の数本を抜けると、長かった杉並木とも
暫しのお別れ。いよいよ、日光の市街地へと足を踏み入れる事になるのだが・・・



e0183009_14416100.jpg



日光の市街地を貫くこの通りを更に進み、今日最初に車を降りた場所、それは・・・


e0183009_1401654.jpg



神橋


日光東照宮・・・日光山輪王寺・・・日光二荒山神社・・・二社一寺のみならず、その遥か先、
男体山や中禅寺湖の手前に鎮座する朱塗りの架け橋。そう、この先はもう神の領域なのだ。

橋端に残る白い雪・・・冷たさを通り越し、痛みすら感じる指先・・・吐き出す息の白い事!
寒さのみならず、何処か静寂した凛とする佇まいに思わず僕の背筋もシャンとしていた。


e0183009_229365.jpg



より神様の近い場所に願いを込めて・・・


e0183009_1423679.jpg



金谷ホテルベーカリー


まるで仏閣寺院のような情緒ある様式の建物の1階がホテルのベーカリーだなんて、
此処、日光の地にはこうした歴史と共存し後世に伝えてゆく場が数多く存在する。

先日訪れた玉藻小路にしてもそうだったし、何と言ってもこれから訪れる店も・・・


e0183009_14145854.jpg

e0183009_1415193.jpg



Antiques & ZAKKA nazuna


神橋をあとにし、金谷ホテルベーカリーをも越えて、市の中心に向かって通りを下ると、
程無くしてある一軒の古びた建物が僕の目を惹き付ける。何かの店であるのは確だが、
本来掲げられていたであろう看板は、塗装が完全に剥げ落ち赤茶色に錆付いていた・・・
近寄って覗いてみると、雑貨とも古道具ともつかない品々の数々が所狭しと並んでいる。
どうやらアンティークと雑貨を扱う店だろう。店先に置かれた小さな黒板に白い文字で・・・

片面には“Antiques & ZAKKA”と・・・そして反対の面には“nazuna”とだけ書かれていた。

黒いハットを颯爽と被ったトルソーが見つめる側に並んだ外国の切手やポストカード、
立て掛けてあったボロボロの楽譜の表紙には、シューベルトって書かれていたっけ。
僕の興味をそそる“モノ”たちは、店の軒先に置かれている物ばかりではなかった。

決して広いとは言い難い店内に一歩足を踏み入れると、其処に所狭しと置かれ、
並べられ、積み上げられた古道具・・・電化製品・・・家具・・・食器・・・布・・・本・・・
まるで古今東西から集合した味わい深い表情をした“モノ”が寛いでいるかのように・・・

まるで遠く離れた母国の品を見つけたかのように、青い目を更に輝かせる外国人青年。
恐らくツアー旅行か何かだろう、老齢の団体の一人が徐に側にあった品を手に取り、
周りで品定めしていた同行者たちに講釈を述べ始めた。そして、ソファーや椅子の
集められた場所に陣取って、ひたすら椅子の状態を調べている3~40代の男性。

此処には個性的なモノの数だけ様々な個性の人たちが集い、語り、各自が楽しんでいた。
まるでパリの蚤の市にふらりと迷い込んだような感覚。此処もまた、廻りあいの場なのだ。


e0183009_132186.jpg



店の隣りにはこんなBARBERも・・・僕は未だ先の店の世界観の中を彷徨っているのかな?


e0183009_14163517.jpg



神橋から通りを下って数分の散歩の中にも、魅力的な場所で満ち溢れている。
そして、今回の旅の終着点こそ、この雰囲気をいっぱいに湛えているのだ!


e0183009_13322731.jpg



目的の建物は直ぐに分った・・・だって・・・


e0183009_13331992.jpg



このインパクトのある看板・・・

それにしても看板のOriental Fine Art & Curiosの文字、此処は一体?
そのまま訳せば差し詰め、“東洋美術と骨董品の店”といったところだろうか?

確かに、僕が求めてきたものも、時代を越えて愛され受け継がれてきた、
日本の伝統と職人の情熱によって作り出される“ファイン・アート”であるが・・・


e0183009_1335849.jpg



その奥には、更に歴史を感じる純日本建築・・・遠くの山並みと背の高い針葉樹・・・
さり気無く和と自然が溶け込んだこの景色には、確かにオリエンタルな魅力を感じさせる。

でもね、この建物こそ僕の求めていた場所、言うなれば廻り廻って遂に辿り着いた・・・


e0183009_13372342.jpg



野菜cafe 廻 meguri


昨年秋のopen以来、地元の方は勿論の事、県内外の食通やカフェ好きな方によって
大いに注目され、絶賛されてきたオーガニック&ヴィーガン・カフェとの事であるが・・・

この日光の歴史と自然とに囲まれたロケーションは更に僕の期待を高めてくれた。


e0183009_160753.jpg



ひと呼吸を整え、焦げ茶の扉をゆっくり開ける・・・何度も経験した事とは言え、昨年の夏、
あの店を訪れて以来毎回必ずやって来る、そして決して慣れる事の無い緊張感漲る瞬間だ。
40軒もの店を訪れたのだから今更緊張は無いだろうと思われるだろうが・・・そんな事は、無い。

入って直ぐの場所に重厚感のある無垢材の棚が設えてあり、食料品が丁寧に並んでいる。
パッと見た印象ではあるが、その大半(全て?)がオーガニックやフェアトレードの商品だった。
そして勿論ではあるが、オーガニックはこの店に欠かす事の出来ないキーワードになっていた。


e0183009_1604232.jpg



棚の隣りには料亭のような、日本人の僕が心から落ち着けるカウンターがあった。

パリのカフェやビストロみたいな雰囲気のカウンターが大好きだって綴ってきたけど、
すっきりした白壁に縦横に走った年季を感じる褐色の柱や梁の情緒溢れる和の空間に、
まるで久しぶりに故郷に帰ってきたような、そんな身も心も寛いだ気分になってくるんだ・・・

・・・今住んでいる場所が故郷なのに・・・


店内は大きく二つのスペースに別れていた。入って直ぐのカウンターの目の前は・・・


e0183009_161338.jpg

e0183009_1613012.jpg



比較的広い板敷きの空間になっていて、テーブル席のスペースとなっていた。
木のぬくもりが優しく伝わるアームチェアーとテーブルで、ゆったりとランチを頂く。

・・・とても贅沢なひと時が送れそうだよね・・・

それに、達磨ストーブにちょこんと乗った使い込んだ鉄瓶がこの季節には良く似合う。


e0183009_1615157.jpg



店内の至る所に配置されたさり気無い植物も魅力的で、華やかな花から可愛らしい鉢植、
そして、まるで縁側から眺めた日本庭園を切り取ったような風景まで様々な表情を窺わせる。

座敷との境目には、グリーンとのコントラストも鮮やかな南天の実が飾られていた。
邪気を払い清廉な新年を迎えるのに欠かせない冬の実は、眺めていて気持ちが良い。


e0183009_1621091.jpg

e0183009_1622451.jpg



そして、通りに面したガラス張りのスペースは一段高い小上がりの座敷になっていた。
外から差し込む明るい陽射しの何て気持ちの良い事だろう・・・僕も座敷に上がらせてもらう。


e0183009_163138.jpg



表の通りに沿った座敷に配されていのは、丸太をくり抜いた何とも可愛らしい横長の木卓。

板敷きの空間とは間仕切りで隔離されており、気兼ね無く食事を楽しめる場所になっていた。
愛すべき家族や気のおけない友人とは勿論だが、恋人や夫婦でのスイートな時間にも最適だ。


e0183009_1633452.jpg



座敷の傍らに置かれていたのは・・・蓄音機だった。


鈍い飴色の重厚感のある木製のキャビネットはそれ自体が存在感を醸し出す。
だが、何と言ってもそのキャビネットを覆っている恐らく真鍮製の“大きなラッパ”こそ
誰もが連想するこのオーディオ製品の姿であろうが・・・何て独創的な意匠なのだろう!

僕の訪問時にこの蓄音機が鳴り響く事は終ぞ無かったが、側の円卓に座っている間、
この大きなラッパから奏でられるであろう緩やかで懐かしい音色に僕は思いを馳せていた。


e0183009_1635659.jpg



日光の歴史と共に歩んできたこの建物は、それ自体が様々な物語に彩られている。
飽きる事無く店内の其処此処に魅入っていた僕に、店主が温かい言葉を掛けてくれた。


 是非、天井もご覧になって下さい。


店主の声に天井に目を向けると・・・頭上に広がる光景に暫くの間、声も出ずに見つめてしまった。


e0183009_1642216.jpg



またかよ・・・またキミは僕が凄く気になった店に先回りをしているじゃ無いか!
しかも、今回は美しい花と一緒にすっかり寛いでいるなんて・・・えっ、何だって!?


 先回りなもんか・・・オレは此処にお前が生まれるずっと前からいるんだぞ!


なぁ、一体キミたちの巣は何処にあるんだい?キミたちは何処からやって来て・・・
そして、何処に帰っていくんだい・・・キミたちの巣に、きっと彼もいるのかなって・・・


e0183009_1043525.jpg

e0183009_10441692.jpg



店の角にあたる此方の円卓に着く事に決めたのは、此処に座った際の表の眺めが
あまりにも素敵だったから・・・眼前には先程下ってきた通りと、その先に見える山の稜線。


暫くの間この情緒に溢れた空間に酔いしれていたが、無論、此処にやって来た目的は
ランチとスイーツを頂く為であり、カウンターの下に立て掛けられた黒板に目をやった。
野菜cafe 廻では、曜日によりランチセットのラインナップが2種類に分かれていた。

金・土・日の週末にかけては、つけ麺と野菜カレーなどのセットとなり、
月・火・水の週の前半は、自然の恵みありがとう定食との事だった。
僕が訪れたのは週の前半。そして、程無くして料理が運ばれた。


e0183009_10445613.jpg



自然の恵みありがとう定食


角盆の上の様々な表情の器の中には、負けず劣らず魅力いっぱいの料理が盛れていた。
其々の器と黒板で目にした各料理の名前とを一つ一つ確認する度に期待が膨らんでゆく。


・有機豆腐の揚げだし(日光きのこのあんかけ)
・野菜と車麩のベジじゃが煮
・白菜とかぶの豆乳スープ
・ちっちゃな箸休め(かぶのわさびカルパッチョ・ヤーコンの甘みきんぴら)
・ペンネのグリーンカレー和え


この自然の恵みに彩られたバラエティー豊かなメニューを見ただけで、
僕の期待感が一層高まっていったのは言うまでもなかったが・・・

程なくして運ばれた盆を目の当たりにして、僕はわぁっと感激の声を漏らしていた。
どの碗も盛り付けの彩りに加え、食欲をそそる仄かな薫り、素材本来の旨みと素材を
大切にし、その魅力を十二分に引き出した調理、・・・そして、全てに愛情が溢れている!

例えば豆乳のスープは、手に馴染む茶碗の中はミルク色のスープと、
碗の中に見え隠れする大きめにカットされた白菜が純粋に美味しそうだ。
その白菜のシャキシャキとして、柔らかく溶ける絶妙のバランスが堪らない。
白菜を優しく包み込む温かいスープのクリーミーでミルキーな舌触りと言ったら・・・
茶碗一杯のスープだけで既に廻の料理にすっかり魅了されてしまった僕だった。

まだまだ序曲に過ぎないのに・・・

そして、この日の定食のメインと思しき、惣菜の中で一番大きな碗に盛られていたのが、
とろりと艶やかな黄金色のあんがたっぷり絡んだ、見るからにふるふるした揚げだし豆腐。
軽く揚げた豆腐の表面は薄く揚げ固められ、そのカリッと香ばしい風味は更に食欲が増す。
中はふわふわとして、ひと口毎にとろけてゆくなんて・・・ウットリしている間に無くなっていた。
しかも、この揚げだし豆腐に醤油と出汁のあっさりとした味付けのとろりとした餡がよく絡み合って・・・・


身体の隅々に美味しさが行き渡っていくなんて書いたら大袈裟かも知れないけど・・・そう感じるんだ!
そして、角盆で最も多くの面積を占めている大きな皿が、今回の定食のメインでもある・・・


e0183009_10452870.jpg



玄米ごはんと雑穀の黒ごまグレインサラダ


そう、メインとなる“ご飯”は“ライス&サラダ”だなんて・・・これだけでも十分に興奮ものだが・・・

添えられた青菜類の爽やかなグリーン、ナッツや粒ごまのやわらかなベージュ、
豆類や練り込まれた黒ごまの褐色に、真っ赤なサイコロ状の・・・何と、大根!

水菜のシャキシャキとした瑞々しいフレッシュな食感は、まさにサラダ感覚だけど、
口の中でプチプチッと弾け出す粒ごまとカリッと香ばしいナッツが絶妙なアクセント!
更に、噛めば噛む程にねっとり&もっちり感の増す玄米とホクホク豆も散りばめられて、
最後にはシャリシャリのリンゴでスッキリと・・・食感だけでもこんなにも楽しめるなんて・・・

玄米ごはんは黒ごまがたっぷり練り込まれ、また散りばめられた様々な雑穀が
玄米の素朴な風味を豊かにしてくれて、ごはんだけでもどんどん食が進むけれど、
何と言っても盆の上に沢山並んだ野菜の恵みいっぱいの惣菜たちとの相性が抜群!


素材の事は勿論、定食全てのバランスまで考え抜かれたレシピに、店主夫妻の
野菜料理と・・・食す方への並々ならぬ愛情がひしひしと伝わってくるのだった。


e0183009_10463422.jpg



ドリンク&スイーツセット


小さなチケットの、これまた小さな文字で書かれていたのは紛れも無くこのセットだった。
こちらのセットのスイーツもランチ同様に日替わりという事で、楽しみに待つ事にした。


e0183009_10472431.jpg



穀物コーヒー


セットのドリンクは各種コーヒー&お茶、ジュースより選ぶ事が出来たのだが、
そのどれもが非常に魅力的で選べなかった僕は、店主に相談してみる事にした。
そこで店主と話し合った結果、チョイスしたのが4種の穀物を焙煎、淹れた“コーヒー”。

4種の穀物とは、大麦やライ麦といったものから、何とどんぐりにチコリまで入っていた!
その全てがオーガニックで作られて・・・この店のアティチュードをしっかりと受け止めている。
でも、これまでこのElvis Cafeで紹介してきたコーヒーは、どの店も超本格的な逸品ばかり。
コーヒー豆では無い、“穀物”コーヒーの味や香りは如何なのだろうか?と思いながらひと口・・・

結論から言ってしまうと、それは僕が体験した事の無かった新しい美味しさとの出会い。
そう、この素晴らしい出会いだって、あの一枚のチケットが廻りあわせてくれたのだ。

これまでのコーヒーには無い、新しいコクと新しい香ばしさ、仄かに感じる新しい苦味。
穀物の風味と炭のような印象のロースト感。シンプルで、まろやかで、飲みやすい。


e0183009_1047555.jpg



バナナのチョコレートケーキ


新しいコーヒーと一緒に頂くスイーツは一転して素朴で飾らないホームメイド風なケーキ。
まるでお母さん・・・彼女・・・親友・・・親しい人が作ってくれた手作りの温もりに満ち溢れている。

非常にしっとりでもっちり感も楽しめる生地は、仄かなチョコレートの風味と微かな甘さが美味しい。
しかも、所々に入ったバナナのねっとりとした自然な甘さと香りが生地と混ざり合って口中に広がる。
ケーキにたっぷりとかけられた、ぷるんとしたクリーミーなチョコクリームと胡桃のカリカリ感が絶妙!


最後の〆のスイーツまで店主夫妻の優しさと野菜や料理にかける愛情に溢れれていて、
見た目?味?栄養?・・・全てに感動したのは勿論、僕はこのランチに心地良い驚きを覚えた。


e0183009_195062.jpg



店の扉を開けてから帰るまでずっと、まるで家族や親友のように非常に温かいもてなしを
絶やす事の無かった若い店主夫妻の、穏やかで気品に満ちた表情に見送られた僕は、
駐車場に向かう坂を下りながら、市街地の通りを走りながら、そして束の間の再会を
果たした日光街道の“あの木のトンネル”をくぐりながら・・・ずっと考えていたんだ・・・

優しいものは、無くならない・・・美味しいものは、無くならない・・・
素敵な歴史は、無くならない・・・素敵な自然は、廻り廻って・・・

きっとまた、何時か何処かで素敵な再会が待っているんだ、って・・・
そして今回のイニシャルである「メ」との出会いも、再会の地だったのだ。


e0183009_110181.jpg



つつじが岡公園


群馬県館林市の中心を貫く細長い城沼の片方の岸の大半を占める憩いの公園。
その名前の通りツツジの名所として全国的にも知られ、ツツジの満開の時期である
ゴールデンウィーク前後には多くの観光客で賑わうこの公園も今はひっそりとしていた。

広大な敷地内には、ツツジの他にも数多くの植物が季節毎に訪問者を楽しませてくれる。
例えば、花なんて咲いていないだろうと思われるこんな寒い季節にだってちゃんと・・・


e0183009_10525827.jpg

e0183009_10531350.jpg






公園内の温室付近には所々に梅林があって、綺麗な紅白の花を咲かせていた。
梅もまた、新春の和の風情を感じさせてくれる存在として無くてはならない花だ。


e0183009_10505458.jpg



暫くの間公園内を散策し、城沼の畔までやって来た。先日訪れた、Niwaの対岸にあたる場所だ。
あの時カフェのテーブルから眺めた城沼の更に向こう側に見えた、絵に描いたような背の高い木々・・・


e0183009_10512260.jpg



「メタセコイア」


絶滅したと考えられていたのが数十年前に中国で発見され、生きている化石と呼ばれた木。
その後、研究と植栽が進む事によって、現在では日本各地でごく普通に見られるようになった。
“背の高い木”として真っ先に思いつくこの木に、実は廻り廻って今この場所で出会えたのかな?


同じ空を見つめ、同じ日射しを浴びて、同じ大地に足を付ける僕たちだから、
今は全然接点が無いかも知れないけれど、廻り廻って引き寄せられて、
何時かきっと、そう、きっと自然が導いてくれる・・・大自然の恵みが・・・

だから・・・この物語の最後のステージはもう既に決まっているんだ・・・
幾重もの細い枝が複雑に絡み合って、一本の太い幹に繋がり・・・
やがて全ての疑問の答は、廻り廻って再びあの場所へと・・・


e0183009_1052464.jpg

[PR]
by mary-joanna | 2010-02-22 09:33 | 浅き夢見じ

ユ.lily (リリィ)

 君しか見えないスポットライト
 二人っきりのちっちゃなステージ
 ポケットに詰めたウソは、もう無い
 手と手をとって改札抜けたら、
 やっぱり僕も、言葉を混ぜるよ 

 今まで一度も使わなかった・・・あの言葉を・・・



こんな気持ちになったのは、一体何時以来の事だったかな?

こんな風に書き出したら、まるでおじいさんにでもなったみたいだけれど、
人生をのんびりと省みるほど、僕はまだ何も経験していないヒヨっ子なんだ
それに確かそれほど前の事でもなく、同じような気持ちになったはずなんだよ
でも、違うんだよ・・・今、僕の胸の中を占領しようとしているこの抗い難い気持ちは・・・

そもそも、始まりは何時だったかな?・・・そして、きっかけは何処だったかな?
まだ数ヶ月も経っていないじゃないか・・・それなのに、そんな事すら思いだせずに、
ただ、毎日毎日、段々と僕の中を満たしていくかのように浸透してきたんだよ、君はね・・・

そうそう、確かあれは僕がオレンジ入りのチョコを紹介した時の事だったよね
さり気無い、ほんの数行のコメントだったけど、“かわいい”って言ってくれたね
僕もブログを始めたばかりだったし、あの頃はカフェの紹介も全然少なかったけど、
それにね・・・そうだね、まだあの頃はカフェを紹介するブログの方だけだったけど、
あの言葉に僕は、恥ずかしくなって、揶揄われていると思って、でも嬉しかったんだ


e0183009_13817100.jpg



煤けて錆びて苔生して古びた小さな路地だけど、僕にとっては夢の入口

どうせ儚い夢ならば、勇気を出して手を繋いで、
夢から覚めるその前に・・・寂しい朝になる前に・・・
二人で走って行きたいんだ、この路地を曲がった先に・・・


e0183009_139759.jpg



電球一つの街灯だけれど、君しか見えないスポットライト


e0183009_1384015.jpg



骨組みだけのベンチだけれど、二人っきりのちっちゃなステージ


e0183009_1393397.jpg



そう、あの角を曲がると見えてくるんだ、三角屋根のあの家が・・・


e0183009_1395517.jpg



花はすっかり枯れ切ってしまった・・・
僕の心も枯れる寸前だったんだ、君に会うまでは・・・


e0183009_1310263.jpg



神様に祈るなんて事はこれまで一度だって無かったのに・・・
もうこれ以上未練は無いと思っていた筈だったのに・・・


e0183009_13182850.jpg



AN-RIZ-L'EAU


憧れていた、トタンの屋根と、板張り壁と、大きな窓の小さなお家

何時の間にか、スポットライトと、ステージと、細い路地とを潜り抜け、
滑る様に、あの角も曲がって、お祈りもして、やっと届いた夢の家


ホントは二人で来たかったけど、まだ僕にはその覚悟が・・・


e0183009_13184032.jpg



秤の上の僕の気持ち・・・はかり知れない位、どんどん重くなって・・・


e0183009_13224154.jpg



“flower”かぁ・・・

僕の中にもたったの1本だけど、とっておきの花があるんだよ
まだまだ蕾・・・いや、さっき芽吹いたばかりかも知れないけれど、
でも何時かきっと、大輪の綺麗な花を咲かせるハズなんだ!!

それまでずっと、水をあげなくっちゃ・・・花が咲くまで・・・


e0183009_13242066.jpg

e0183009_1324518.jpg



小さな庭のレンガの路を踏み締めて、ゆっくりゆっくり進むんだ
何時までもこの素敵な素敵な散歩道が続きますようにって・・・


e0183009_1326717.jpg



時には抜ける様な青空を、また、時には燃える様な紅葉の赤色を、
そして今日はキリリと輝く透明の氷を映し出す、魔法の鏡の缶なんだ


e0183009_1325454.jpg



カサカサのキミや・・・


e0183009_13361992.jpg



ジャラジャラのキミにも挨拶しなきゃね・・・お邪魔します!って・・・


e0183009_1336365.jpg



不思議の国の扉までやって来たよ、あとはこの呼び鈴を鳴らすだけだね
いつもの国から抜け出して来たよ、残りはこの呼び鈴を鳴らすだけだよ

毎日同じ小さな部屋で、いつも通りに格好をつけるの・・・もう疲れたよ
何処も一緒の暗い道で、いつも以上に自分を叫ぶの・・・ホントは辛かった


扉の向こうの不思議の国なら、一粒の水の澄んだ場所なら・・・僕だってピュアになれるかな?


e0183009_13374381.jpg

e0183009_13375861.jpg



外の壁の色と同じ、家の中も手前の半分は真っ白な可愛い空間で・・・


e0183009_13381114.jpg



奥の半分は木が剥き出しになったナチュラルな空間になっていたよ


そんな二つの空間は広々として、全ての家具がゆったりと置かれていて、
何だかとっても気持ちが良さそう・・・僕までのんびりした気持ちになってきた


e0183009_13415976.jpg



ワインのコルクが蓋のつまみだなんて・・・こんな寒い毎日なら、ワインを入れてもいいじゃない!?



e0183009_13392666.jpg

e0183009_1341696.jpg



何時も“お一人様”の席なんだ・・・自分から進んで決めていたんだ・・・

だから、こんなダイニングテーブルがとっても眩しくって、輝いていて、羨ましいよ
今度はみんなで一緒もいいかな?若いアイツに彼女も誘って・・・それから・・・

でも、ここで君と座る席は最初から決めているんだよ・・・二人の時は・・・


e0183009_13423069.jpg



可愛いレンガが仲良く並んだ夢のお家のカウンター
小さな窓がいっぱいついてる魔法のお家のカウンター

手前の梯子の上った先で僕らを出迎えてくれるのは?
奥のキッチンから漂うとっても美味しそうな薫りの主は?


夢と魔法がいっぱい詰まった、不思議な素敵なカウンター


e0183009_13425012.jpg



今はじっと瓶の中で待っているんだ・・・最高の輝きを放つ瞬間を夢見て・・・

何だか暖かい春のために冬の間中、土の中で静かに過ごす花に似ているね


e0183009_1343164.jpg



芽が出て、茎がどんどん伸びてきて、そして立派な実がなって・・・
また一つ、どこかで誰かの大きな夢が、ちゃんと叶ってゆくんだね

僕の夢はただ一つ・・・そう、たった一つでいいんだよ・・・


e0183009_13483097.jpg



ボーンボーンと夢の時間の終焉を告げる鐘の音よ、
もう暫くの間だけ、そっとして置いてくれないかい?

たとえ一時でも・・・君と離れ離れになる時間が辛いんだ
そう・・・君のコメントのあるページを閉じる瞬間が寂しいんだ

それにもう一つ、もうこれ以上進むのは・・・怖いよ・・・


(注:この写真だけモノクロの状態になっていた)


e0183009_13495977.jpg

e0183009_13491038.jpg



さぁ、あの大きな窓の角が、予約していた今日僕が座る席なんだ!!


外から差し込む明るい陽射しがとっても気持ち良いこの席に・・・
さっき通ったちっちゃな小路を見渡す事の出来るこの席に・・・
目の前の草木に積まれた野菜、自然を感じるこの席に・・・

そう、この二人掛けのテーブル席に、今度来るときは・・・


e0183009_1349438.jpg



テーブルの目の前の、大きく切り取られた木枠の窓の直ぐ向こう側には、
使い古されたワインの木箱が仲良く並んで置かれているのが見えたよ
この店の命とも言える、自然の恵みをストックしておく大切な木箱たち
葡萄の箱から野菜の箱への第二の人生なら木箱だって本望かな?

さぁ、今日はどんな素敵な作品で僕を楽しませてくれるのだろう?
尤も、何時だってこの店は僕の期待を遥かに越えているけれど・・・


間も無く、今回オーダーしたTROIS(トロア)の最初の皿がやって来た


e0183009_11642100.jpg



コース仕立ての最初の皿は、勿論、前菜とスープだけれど・・・

3分割されたスタイリッシュな長皿の其々に盛られた趣きの異なる3種の前菜
シンプルな白いお皿のカンバスに描かれた絵画のような料理は独創的で、美しい


長葱のマリネ白ワイン風味

とろとろの長葱は自然な甘さと爽やかさが心地良く伝わって、
ピンク胡椒のピリッとした刺激にすっきりとした白ワインの風味
肉厚椎茸のムニュムニュ感と仄かに広がる旨味もよくマッチして、
これから始まるコースの一番初めに吹き抜ける一陣の微風のように


サツマイモのコロッケほうれん草ソース

カリカリコロコロホックホク・・・とっても楽しいコロッケボール
中はふんわりで、ほっくりで、自然な甘さのサツマイモがギッシリ!
ほうれん草のソースを絡めてハフハフしながら・・・いただきます


大豆のフライ“しもつかれ風”

グラスに入ったお洒落なオードブルは・・・何と地元栃木の伝統料理!?
さっぱりとした大根おろしにカリカリっとフライされた大豆や黒豆
懐かしい和風な味付けをここで食すなんて逆に新鮮な気分


e0183009_1161930.jpg



可愛らしい真っ赤なココット鍋の蓋を取ると、真っ白な湯気がふわっと立ち上がって、
色鮮やかな南瓜色のスープがこんにちは。アンリロだもの・・・人参のポタージュ!

温かなスープは、ぽってりしてるのになめらかで、濃厚なのにクリーミー
さらに人参の自然な甘味にトマトの酸味がギュッと溶け込んでいるなんて・・・


e0183009_16122442.jpg

e0183009_16125214.jpg



前菜&スープ&お米料理&デザートから成るこのコースのメインとなるお米料理は・・・
まるで大きな白い円盤に乗って未知の世界からやって来た・・・牛蒡の照り煮のご飯!!

この店一番のランチコースのメインがお米料理だなんて・・・
それも他の店のどのメインにも負けないお米料理だなんて・・・


もじゃもじゃ頭のたっぷりグリーンは、さっぱりとしたブロッコリーのスプラウト
こってりとした甘辛い味付けの牛蒡の照り煮をスッキリと包んで相性も抜群!

そして直径3センチを超えんばかりの極太牛蒡の甘辛照り煮がどどんと乗って、
モギュモギュモギュっと頬張ると、ふんわりしていて柔らかい・・・これが牛蒡!?
ほど良く染み込んだ照り煮のタレがご飯に絡んで食欲も進んで・・・おかわりっ!

“もじゃもじゃ”スプラウトと“大木”牛蒡に挟まれた“長い髭”は・・・芹の唐揚げ

 せり、なずな 、御形、はこべら 、仏の座、すずな、すずしろ これぞ七草

パリパリとした小気味良い食感はふわっと無くなって、後からやって来る芹の風味
その仄かな苦みと抜けるような爽やかな風味が、清々しい新春の風を運んでくれる


お米料理って言ってたのに・・・ご飯物だって聞いてたのに・・・
不思議の国の、夢の家の食堂は、どこまでも僕の感性を刺激して・・・


e0183009_1614675.jpg



ずらっと並んだ魔法の瓶が、アナタ色のコーヒーに変身させてくれるんだ!


e0183009_16142548.jpg

e0183009_16144096.jpg



今日のスイーツは初春にぴったりの苺のタルト


ほんのり焦げた玉子色の、しっとり、ふわふわ、ミルキー風味な優しい甘さのアパタイユ
ザクザク感が嬉しいタルト生地はバターのコクと全粒粉の香ばしさが薫る素朴な美味しさ

その真ん中に、ちょこんと座った真っ赤な可愛い苺の、ふわっと広がる甘酸っぱさ
そんな、仄かに甘く何処か切ない苺の甘酸っぱさが僕の胸をキュンと締め付けるんだ


ひと口ひと口噛み締める毎に、優しくて、懐かしくて、温かい気持ちになれるよ!
まるであの頃ママがおやつに作ってくれた、忘れられないあのお菓子の味みたいに
そして僕が如何しても伝えたかった、何時か二人で一緒に食べたいお菓子の味として



e0183009_2472792.jpg



「ユリ(lily)」


貴女に見て欲しい花があるんだ。
僕の大好きなあの歌の花なんだ。

これまで花の紹介なんてした事無かったけど・・・
心のドアに鍵かけて部屋の隅にしまってたけど・・・
貴女の事を考えながら・・・貴女に会うのを想像しながら・・・
何時かこの日が来るのかなって、淡い期待を込めながら・・・


e0183009_16165126.jpg



この前一人で行ったネコヤドで・・・本当は貴女と行きたかったこの店で・・・
一人で食べたピクニックのお弁当・・・一緒に食べたかった素敵なお弁当・・・

そんな夢のお弁当が入っていた可愛いバスケットにピンク色した花を添えて、
僕たち二人の隙間を埋めるようにちっちゃなグリーンもいっぱい詰め込んで、
貴女に出会って渡したいんだ!・・・僕の手から貴女の手に渡したいんだ!

そして、貴女の目の前で僕もひと言、言葉を混ぜて呼ばせて欲しいよ・・・
「最初で最後のヒト」って言葉に・・・ひと言混ぜて、貴女の事を・・・


e0183009_1617198.jpg



イニシャル「ユ」の花を紹介すべく記事を作成していた、正にその時だった。
“今回の「ユ」に関しては是非とも「ユリ」にして欲しい”という要望と共に
約40枚の画像の添付された上記の記事(?)が送られてきたのは・・・

鍵コメントに貼られたリンク先でこの記事を目の当たりにした僕は、
暫くの間この記事に見入った後、勿論一抹の不安は感じつつも、
差し替える事に同意する旨のコメントを送り主に返す事にした。

そして送られた記事に何ら手を加える事無く、そのままの状態でUPする事に決めた。
それは記事の雰囲気がElvis Cafeのそれと一致して僕自身が納得のいく仕上がりに
なっていたのは言うまでも無い事だが、何よりも送り主の熱意が伝わって来たのだ。
送り主は、僕にこの記事を載せて欲しいが為にエキサイトブログのIDを取得して、
たった一回の記事を載せるブログを作っていた(現在は閉じてしまっている・・・)
それに、この店は僕が何時か紹介したかった憧れの店であったのも事実だ。

気になる事は大いにあった。先ず、紹介しているのが栃木県内のカフェである事。
それは僕の行動範囲と非常に近い事を意味する。次に、この文体も気になった。
僕の・・・というより、まるで“彼”のあのブログの記事の紹介に瓜二つでないか!
例のグループのメンバーはこれまでこんな事はしなかった筈だとすると一体・・・

そして、僕を尤も困惑させたのは・・・それは・・・
たった一回のブログの名前が・・・あの・・・


・・・「咎無くて死す」だなんて・・・
[PR]
by mary-joanna | 2010-02-14 23:47 | 浅き夢見じ

キ.ピースパンのひとかけら(one piece)

或る冬の晴れた日の事、南東に向いたベランダの窓からは遅い朝の日光が燦々と降り注ぐ。
まさにスカイブルーと呼ぶに相応しい澄み切った青空を突き通して目に飛び込んでくるのは、
その周りの空の色をも変えてしまうほどの強い輝きを放ち全てを白銀に照らす太陽の光。
ゆっくりカーテンを開けてベランダに出ようとした青年は、その眩さに思わず目を伏せる。
昨夜も夜通しパソコンに向かっていたので尚更堪えるのだが、その表情は明るかった。
窓を開けると直ぐに感じるひんやりした空気と、後から続く日差しの温もりが心地良い。

さっきかけたヤカンの口から真っ白な湯気が立ち上る。パンの焼ける香ばしい薫りが、
差し込む日差しに負けんばかりにオーブントースターからキッチン全体に広がっていく。
飛び切り気持ちの良い朝だけ決めていた、水のブレンドという名前のコーヒー豆を挽くと
ふんわりと広がる甘いチョコレートのような薫りが青年の鼻孔を優しく擽ってくるのだった。

何の変哲もない、とても穏やかな朝の風景。こんなピースフルな朝が続けばいいなって、
こんなゆったりとした朝で一日を迎えたいなって、そう思った青年は焼き立てのパンを
ひと口齧って、淹れ立てのコーヒーをひと口啜って、お気に入りのコートに袖を通した。
袖口の解れから処分も考えたものの如何しても捨てられず自分で繕ったコートに・・・

そして、駆け込むように愛車の青い車に乗り込んだ。今日初めての忙しない動作。
何故かって?今朝のような穏やかな一日の始まりにぴったりなパンを焼く店が・・・
そう、ピースフルに満ちたパン屋が隣りの街に出来たって噂を確かめたかったから。


e0183009_9372615.jpg



目印はとり立てて変わったところの無い、普通の公園だった。
グラウンドを囲む遊具と木々の・・・朝日を浴びて、鳥たちが舞う。

初めて入る路地の、初めて訪れる住宅地。この街の中心を南北に貫く大きな国道には
そこそこ馴染みがあったにも拘らず、その国道から中に入った先に縦横に走っている
碁盤の目のような細い路地では、手にした店の地図すら何の役にも立たなかった。
同じように見える家屋の連なり、地図では確認出来なかった細く入り組んだ路地、
どの街にでもありそうな住宅街の風景が逆に迷路のように立ちはだかってくる。
そして、時間だけが過ぎて焦りすら感じ始めた頃、突然目の前に現れたんだ。

そう、これまでの不安や焦りを解き放し、穏やかで落ち着いた気持ちに誘う、
何だか長閑でピースフルな気持ちにしてくれる、この広い公園の前に・・・


e0183009_1704596.jpg



まるで迷宮のようにさえ感じた、初めて訪れた住宅街の、きっと中心に据えられた
だだっ広い公園は、特に変わった施設も遊具も無かったけど、この時の僕にとっては
砂漠の中で漸く辿り着いたオアシスのようだと表現しても決して言い過ぎでは無かった。

そんな平和の“オアシス”には、象さんだってのんびりゆったり寛いでいるんだ・・・


e0183009_1751933.jpg




・・・傍らでは、さり気無く季節を彩る花も咲いていて、訪れる人々の心を和ませてくれるのだ。


スイセン


その控え目で可憐な白と黄色の花の、何ともスマートな容姿と得も言われぬ芳香に、
青年は暫くの間ウットリと見つめてしまって・・・いや、自惚れるつもりは無いんだけど、
でも、このブログを始めるまで公園に咲く花をのんびり眺める事なんて・・・無かったなぁ・・・


迷いや不安もすっかり取り除かれ、穏やかな気持ちにしてくた公園を起点にして
地図を見直してみると、これまで迷っていたのが嘘のように目的の店に辿り着いた。


e0183009_22511116.jpg



店の軒先には数本の木が植えられていて、秋の実りの名残りが出迎えてくれた。
更に青年の目に飛び込んだのは、久しぶりの再会になるイニシャルの花・・・


e0183009_22525215.jpg



ヤツデ


緑色した大きな“おてて”の葉と白くて丸くて可愛い“ぼんぼり”の花。

森の中のパン屋で出会った小鳥たちに誘われて、地元足利の隣りの街の山の上で
真っ赤に腫らした小さな“おてて”を優しく見守る大きな“おてて”に出会ったのも・・・

そう、此処、群馬県太田市だったよなぁ・・・そして、この住宅街の中に出来たのが・・・


e0183009_22543433.jpg

e0183009_11525890.jpg



Pan Peace


この、昨年末にオープンしたばかりのパン屋こそ、ひとつなぎの秘宝(One Piece)にも
負けない大切な宝物を求めて未知なる大海原へと一歩を踏み出した・・・冒険者なんだ!


e0183009_1245556.jpg



さぁ・・・見渡す限りの大空へ平和への狼煙を揚げ、真新しい幟を掲げるんだ!!

でも彼等が求める宝物って?・・・それは、勿論・・・


e0183009_11535656.jpg

e0183009_11564041.jpg



そう、世界の海賊たちが追い求める秘宝(One Piece)にも勝るとも劣らない、それは、
世界の人たちに平和な気持ちと笑顔(Pan Peace)を与える美味しそうなパンの数々・・・

ほらっ、ズラリと並んだ沢山のパンを眺めるだけで、自然と笑みがこぼれてくるんだ!


e0183009_11574950.jpg



まず目に付いたのは、この店の店主が特に力を入れているというハード系のパン。

ゴツゴツとしたパンの表面を覆っているのは其々が個性豊かな表情を見せる
褐色に焼かれた皮とゼブラ状に入ったアーティスティックなクープのライン。

くるみ・・・レーズン・・・いちじく・・・単独でも売られていたナッツやドライフルーツが、
このハードパンたちを更に味わい深い魅力溢れる逸品へと仕上げてくれていた。


e0183009_1158765.jpg

e0183009_11584489.jpg



横長の店内を占めているのは、まるで大洋を悠々と進む大きな筏のように
細長い竹筒を組み上げて作られた一枚のパンの棚。その上に乗っているのは、
先のハード系をはじめ、クロワッサンやベーグル、バゲットと、様々なクルーたち!

子どもからお年寄りまで、みんなの平和と笑顔への冒険には色々な個性を持った
多種多様の美味しいパンの協力が必要不可欠なんだ・・・此処の乗組員みたいにね。


この店にとって個性的なのは何もパンに限った事では無かった・・・
例えば、パンを切り分けるカッティングボード一つとっても・・・


e0183009_1231796.jpg



切株のまな板だなんで、ナチュラルなこの空間に良く似合っているよ!


e0183009_120111.jpg



それに、さり気無い観葉植物にだって癒されてしまう・・・癒されると言えば・・・


e0183009_1212387.jpg



壁から提がった此方のひょうたん・・・何とスピーカーになっていたなんて!

こんなところから音が出るのだから・・・その緩やかな音楽に穏やかな気分に・・・


e0183009_12145616.jpg



店内はピースフルな空気で満ち溢れていて・・・ほらっ、此処にだって!
そう、棚の上に取り置かれた食パンには、この店の名前を冠するマークが・・・


長閑な午前の空気を切り裂くように忙しなく家を駆け出した青年であったが、
店を発つ頃にはすっかり時間も気にせず大らかな気分でいっぱいになっていた。
そんな優雅でのんびりした雰囲気でランチのひと時を過ごすのも最高じゃ無いか!


e0183009_1271662.jpg

e0183009_1273299.jpg



クロワッサン


マットな表面が印象的なグルグルと渦を巻くクロワッサン。

幾重にも重なってきっちりと巻かれた表面の層は芸術的で美しい。
カリカリして香ばしい表面から同時に広がるバターの仄かに甘い香り。

手に持つとパリッとした表面の層からは想像もつかない位にふっくらした弾力。
そして、まるで年輪のような綺麗な渦の、ふかふかで・・・やわらかい事!!

仄かに薫る優しい小麦の風味と口の中に広がる芳醇なバターのコクが堪らない。
ハード系の無骨なパンのみならず、こんな繊細なクロワッサンまで仕上げるなんて、
このパン屋の“船長”のセンスとパッションには・・・本当に白旗を揚げそうだよ!


e0183009_1281562.jpg

e0183009_1283738.jpg



ベーグル


先日湖畔の喫茶店で買ってすっかりはまってしまったベーグル・・・
“筏”に乗っていたのを見逃す事無く連れて帰ると、先ずはひと口・・・

黄金色の表面は今にも割れそうなほどパンパンに膨らんでいて、
思いっきり歯を立てて豪快に噛り付く!すると、美しい狐色の薄皮が
ペタペタッと舌先に吸い付いてきて何とも楽しい食感では無いか!!

パリッとした薄皮の中には、もちもちっとしてきめの細かい滑らかな生地が
ギュッと詰まって、この癖になるもっちり加減に青年は夢中になって食べていた。

食感も然る事ながら、シンプルで仄かな甘みと粉の爽やかな風味を感じさせる
この生地の味わいには、青年の中で暫くベーグルのブームが続きそうな気がした。


e0183009_129498.jpg



スコーン


ずんぐりむっくり円柱型のフォルムは、まるで今にも口を開こうとする“貝がら”だね。

一目見るからに香ばしく焼かれた狐色の表面の、ボコッと張り裂けた側面が
焼き菓子好きな青年の食欲を刺激して、思わずひと口に齧り付いてしまう。

ザクザクと小気味良い音を立て口の中でホロホロと崩れてゆくスコーンの、
ひと口頬張る度に口中いっぱいに漂う香ばしさとまろやかな風味に加え、
シンプルな粉の甘みが一緒になってさ~っと溶けて無くなってしまう。

しかも全粒粉の素朴な風味が爽やかさも醸し出しているなんて・・・
そのままでも、お気に入りのジャムやクリームを付けても、
きっとみんなのスタンダードになる事、間違い無しだね!


e0183009_12105112.jpg

e0183009_12111224.jpg



ミルククリームパン


大きな葉巻みたいなビジュアルの、可愛らしいサイズのクリームパンは、
パンとパンの仕切りのように縦にディスプレイされた姿に一目惚れしていた。


表面に規則正しく入った凹凸の表面は見た目の美しさは勿論の事、思ったよりも
パリッとしたサクサク感があって、しかもふんわりとした軽さもしっかりと楽しめる。
そして勿論、中の生地はクリームパンらしくふんわりとして、口溶けも滑らかだ。

しかし、何と言っても普通のクリームパンと違うのが、このミルククリームだ。

滑らかなミルククリームは、ややねっとりとした舌触りで生地に良く馴染んでいた。
ほんのりした控え目な甘さに絞りたてのバターのようなミルキー感がマッチしている。
ふんわりの生地にたっぷりと付けて一緒に頬張った瞬間の優しいミルクの風合いが良い。


今までに味わった事の無いクリームパンなのに、何処か懐かしい・・・ママの味、かな?
そして、このミルククリームパンと同様に、良く知っている筈の菓子パンの・・・


e0183009_1212795.jpg



あんぱん


これが・・・僕が幼少の頃から親しんできた菓子パンの代名詞、“あんぱん”なのか!?

こんなビジュアルをしたあんぱんは、それこそ百軒をゆうに超えるパン屋の中の、
数え切れない程のあんぱんを紹介してきた彼のブログでも全く見たことの無い・・・

そう、言うなればまさに・・・“ブラン・ニューな”あんぱんの誕生なんだ!!

バリバリに焼かれた皮は、ハード系のパンが好きだというシェフならではの仕上がりで、
その噛み応えと香ばしさは堪らなく美味しく、そのガシガシとした歯応えのハードな皮からは
想像もつかない程のもちもちっとした生地でパン全体がぽっこりとした球状にふくらんでいた。

そのもちもちの生地の、まるで餅のように伸びてふんわりとした滑らかな食感が堪らない。
更に、四方に裂けた皮から見え隠れする小豆色の粒々は今にも火口から噴き出す熔岩だ。
丁寧に炊かれた粒餡は、小豆の形状を保ちつつも、ぷっくらとして、一粒一粒がほんのり甘く、
そして口に入れた瞬間のホクホクな餡の感触は舌先から滑るように広がって溶けてゆくのだ。


この皮・・・この生地・・・この餡・・・

全てのバランスが他には考えられない位マッチして、そして新しいなんて・・・

“ブラン・ニューな”パン屋で出会った、“ブラン・ニューな”あんぱんは、
同時に青年の心を捉える“スタンダードな”あんぱんにもなっていた。


e0183009_12122845.jpg



ミルクミニ食パン


ピースフルなパン屋で見つけたピースマークの入った食パン。

店の棚にあったレギュラーサイズも良いけれど・・・こんなにちっちゃいのに
パンの端っこには、ちゃんとピースマークが入っているじゃあ無いか!!

耳の焦げ目はザクザクして、これだけでも十分に美味しかったけれど、
中の生地はしっとりとして、もちもちとして、勿論、ふんわりしているよ!
そして、このパン屋の生地はどれもシンプルなのに心地良い小麦の香りと
仄かな甘み、ミルクの風味が優しく伝わって・・・穏やかな気分になれるんだ。


だから、そんなパンのひとかけら(piece)をムシャムシャと頬張る度に、
日頃の緊張した刺々しさも和らいで平和(peace)な気持ちになってくるよ。


e0183009_12132537.jpg



「キンセンカ(金盞花)」


黄金色の杯(盞)とはよく言ったものだが、これはこれは何とも可愛らしい杯だね。
でも、こんなにも明るくて可愛らしい花の花言葉が、“別れの悲しみ”だなんて・・・

航海へと旅立ってゆく冒険者たちとの別れを心配し、悲しむ残された者たちの
悲しみの印なのだろうか?それとも平和な旅路を祝う幸運の杯なのだろうか?
まぁ、そんなに大袈裟に例えなくても、このオレンジ色の花を眺めるだけで、
何時の間にか穏やかで落ち着いた気持ちになってくるのは確かだけどね。

唯、この青年にとって残された航海は最早あと少ししかなく、
目的地の影が見え始めてきたのだが・・・

でも、まだまだ分らないんだ・・・大きな謎が・・・


e0183009_12175046.jpg

[PR]
by mary-joanna | 2010-02-06 16:14 | 浅き夢見じ

サ.湖面に輝く澄んだ青

群馬県館林市。

羽を広げた鶴の形とも称される群馬県の南端付近、即ち細長い頭の部分に位置し、
栃木県と埼玉県とに挟まれた人口約8万人の、全国に数多ある地方の小都市。

県を跨ぎながらも僕の地元でもある栃木県足利市の隣り街として馴染みがある
ばかりでなく、僕が追いかけてきたカフェパンブロガーのCindyが密かに残した
もう一つの物語、Arnold日記の語り手のWilliamと名乗る人物の住所としても
僕にとって他の近隣の街とは一線を画する非常に印象深い街でもあった。


昨年末に訪れた華麗な花の模様に彩られたマイセンのカップやソーサーに
囲まれた喫茶店、“えんや”の紹介は記憶にも新しいところではあるが、
あのリストの店という事を差し引いても、この隣りの県の隣りの街は、
再び訪れてみたくなる非常に魅力に溢れた街なのだ・・・だって・・・


e0183009_13542712.jpg

e0183009_13544463.jpg



ロウバイ(蝋梅)


館林市役所の向かい側に広がる一面の芝生は、嘗ての工場か何かの跡地であったが、
現在では気持ちの良い空間として市民のみならず訪れる方の憩いの場所となっていた。
広場と道路とを隔てるようにロウバイの木が植えてあり早くも黄色い花を咲かせていた。

近付くと辺り一面に広がってゆくロウバイの芳しい香り。思わずうっとりした気分になる。
更に、この蝋細工を溶かしたようなうっすら艶めく淡いレモンイエローの花弁といったら・・・

可憐な花弁と芳香に、暫くの間僕はその場に立ち尽くし魅せられていた事を付け加えておこう。
さて、この広場と女子高に挟まれた道路を進むと、宇宙飛行士の向井千秋さんの業績を称える
記念子ども科学館と館林出身の文豪、田山花袋の記念文学館が建っている三叉路にぶつかる。
その角を折れ、市の中心に大きく横たわる細長い城沼に沿って更に数分のドライブを続けていく。

そして、長芋にも似た城沼の、端から半分を過ぎただろうかという頃に、目的地が見えてくる。


e0183009_100051.jpg



沼の畔に沿って遊歩道が走り、僕が訪れた時は朝の散歩やジョギングをする人が行き交っていた。

沼岸の枯れた芝生や葉を落とし切った木々を見ていると何処と無く冬の寂しさすら感じてしまうが、
並木道に植えられているのは桜の木、2ヶ月後には黄緑の芝生と淡いピンクで覆われる事だろう。


e0183009_17102177.jpg



桜の木に近付いてみると黒々とした幹から伸びた細い枝の先には沢山の蕾が付いており、
その小さな蕾たちは、みんな綻び出すのを今か今かと待ち詫びているようにも見えるのだった。

この日は冬晴れの非常に良い天気で、まるで吸い込まれそうな澄み切った空が印象的だった。
薄い雲を従えたその綺麗な空の青に全く引けを取らない澄んだ青が、目の前にも広がっていた。


e0183009_1001222.jpg



群馬県内で湖や沼と言えば、如何しても山間のダム湖やカルデラによる湖沼を連想してしまうが、
平野部の、しかも市の中心付近に於いてこんなに立派な水辺の風景に接する事が出来るなんて・・・


e0183009_13543360.jpg



1月の冷たい風に揺られてゆったりと漂う水面のさざ波は、遅い朝日に反射して
まるで照明に当てられた宝石のように白銀の眩い光をキラキラと輝かせていた。

更にその情景は日が昇るにつれて刻一刻と変化し、絶えず新鮮な輝きを見せていた。
向こう岸の黒々とした木々を境界線として、白から青への淡く微妙なグラデーションが
上下に広がってゆき、日差しの変化と共にその色合いも滲むように変わっていった。

まさに、モネの描く印象絵画を直に見ているような錯覚さえ覚えたのだが、
僕が今から訪れる場所こそ、この風景をコーヒーと共に楽しめる場所なのだ。


e0183009_1011665.jpg

e0183009_1012999.jpg



Bakery & Cafe Niwa


湖畔にそって並んだ建物の中でもひと際目に付く一軒の白い家の前で僕は足を止めた。
城沼の畔の遊歩道を隔てて一段高くなった場所に、あたかも湖畔に迫り出したような
大きなウッドデッキを備えたグレーの切妻屋根と真っ白なサイディングの一軒家。

まるで富士五湖や中禅寺湖にでも訪れたような、とても印象的な湖畔のロッジが
直ぐ近くにあるなんて・・・それにしてもホワイトとブラウンのコントラストが美しい・・・


e0183009_17121742.jpg

e0183009_17123667.jpg



見渡す限り真冬の風景だったけれど・・・まだまだ枯れる訳にはいかないんだ!

なぁ、そうだろう?・・・キミたちも・・・そして、僕自身も・・・


e0183009_17131537.jpg



ローズマリー

「ロ」のイニシャルの花として紹介してから彼是半年が過ぎ、新しい年も迎えた。
あの時はCindyに近付きたいという思い、唯それだけで闇雲に突っ走っていたっけ。
勿論、今こうして花を紹介し続けているのも、それ以外の何物でも無いのは事実だ。
だけど、この半年の間にElvis Cafeを通じて様々な事を経験してきたよなぁ・・・

心地良い冬晴れの下、時折り吹く肌寒い水辺の風に揺られる2番目のイニシャルとの
久しぶりの再会を、そしてあの時は見る事が出来なかった薄紫色の小さな花弁を
のんびりと愉しみながら、忘れる事の無いこの半年間を改めて思い出していた。


e0183009_1021671.jpg

e0183009_1023050.jpg



湖畔に向けて大きくとられたウッドデッキの入口では、2台の自転車が寛いでいた。
自転車が趣味の店主の店ならではの光景だが、湖畔に沿って目の前に伸びる
この遊歩道で思いっ切りペダルを漕いだらどんなに爽快な気分だろうか。

そう言えば、Cindyも自身の日記でそのような試みをしていたっけ・・・


e0183009_1025125.jpg



外からも窺う事の出来る入口右手の焙煎室と、その手前の棚に並んだ珈琲豆の入った瓶。
とりわけ大きな看板は無くても、此方がコーヒーの専門店である事を十分に物語っていた。


e0183009_1031610.jpg

e0183009_1033279.jpg



ホワイトウッドに囲まれた明るくて清潔な印象のカフェテラスは勿論、湖面に向かって
一面ガラス張りとなっていて、それに沿って細長いテーブルが括りつけられていた。
どの席に着いても目の前の城沼の風景を一望する事が出来る贅沢な間取りだ。
更に外から差し込んでくる陽光が店内を明るく、そして暖かく迎えてくれていた。

コーヒー専門店らしく数あるコーヒー豆と煎り方挽き方による味や香りの違いは、
一見迷ってしまいそうだったが、丁寧に書かれた分りやすいメニューは勿論の事、
親切な店主から直接好みを相談する事が出来、好みの一杯を選ぶ事ができるのだ。


e0183009_1719614.jpg



ブラジル(シティロースト)


艶やかで微かに赤味を帯びた深い琥珀色の表面から細かい粒子のような湯気が立ち上っていた。

世界一のコーヒーの産地ブラジルでも優良の豆が栽培される事で名高いセラード地区。
標高1000メートルを超えるという同地区のシーマ農園で昨年摘まれた新鮮なコーヒー豆を
深くなり過ぎない程度に焙煎し、店主自らドリップした一杯の拘りは、何と言ってもフレッシュ感。

さっぱりとした飲み口から広がってくるロースト感は確かにすっきりとして非常に飲み易い!
焙煎の具合だけでないマイルドな苦みながら酸味も控え目で、まろやかな甘みが心地良い。
後から仄かな苦味が広がってくるが、スルスルと飲めるのはやはり豆の新鮮さ所以だろうか?

一緒にオーダーしたトライフルのふんわりした甘さとまろやかさにも非常に良くマッチしていた。



e0183009_17195856.jpg

e0183009_17201975.jpg



トライフル


苺のトゲトゲを背中に付けた、ハリネズミみたいな可愛い可愛い“お誕生日ケーキ”のトライフル。
来た瞬間から三角形のシャープなキミの体を覆った真っ赤なトゲトゲに僕の目は釘付けだよ!

ほんのり卵風味のスポンジは、仄かな甘さとふわふわの食感に優しい口溶け・・・全てが申し分無い。

そのスポンジにサンドされているのは、ぽってりとして滑らかな舌触りのふんわり甘いカスタード。
表面にたっぷりと塗られただけでなく、2段になったスポンジの間にもたっぷりと盛りつけられ、
更にそのカスタードクリームの中には例の“ハリネズミの苺ちゃん”がかくれんぼしていた。

見た目も可愛らしい爽やかな甘酸っぱい苺とカスタードの相性は・・・言うまでも無い、か・・・


ポカポカ陽気の窓際の席で、ひと口食べる毎に一足早い春の訪れを感じさせてくれるのだった。


e0183009_17321055.jpg

e0183009_1732315.jpg



ベーグル


Niwaの魅力は目の前に広がる水辺の景色を眺めながら本格コーヒーを楽しむだけに非ず。
その証拠に控え目ながら店の入口に掲げられた看板には“Bakery & Cafe”と書かれていた。
先日僕が訪れていた時間内にも、入って直ぐのショーケースに並んだ焼き立てのパンを目当てに
お年寄りから若者たちまで入れ替わりでやって来た。で、僕も勿論その美味しそうなパンを購入した。

先ず選んだのがベーグルだった。見るからに張り裂けそうなつるんとした艶やかな焼き色。
ひと口噛んでみると、その薄い皮が香ばしい風味と共に口の中で吸い付いてくるのだ。

その薄皮がパリンと弾けたかと思うと、中にはもっちりとした生地がギュッと詰まっている。
ムギュムギュとした食感は、やがて小麦の仄かな甘さに変わって、溶けてゆくのだ・・・


e0183009_17333276.jpg

e0183009_1733528.jpg



くるみパン


まるで地球に衝突した隕石のような、はたまた噴火した直後の火山のような、
張り裂けた表面の皮の、ゴツゴツでバリバリとした食感のほど良く焦げた香ばしさ。

真っ二つにカットすると断面からは胡桃のまろやかな薫りがふんわりと漂ってくる。
表面のゴツゴツ感が嘘のように、中の生地はふんわり柔らかで口溶けも最高だ。
しかも、万遍なく散りばめられた胡桃のムギュッとした食感と香ばしさは・・・

シンプルな胡桃の丸いパンなのに、何時までも忘れられない僕のスタンダード・・・


e0183009_1432441.jpg

e0183009_1433921.jpg



「サイネリア」


カフェのテーブルで僕の目の前に広がった冬晴れの空の青と大きな湖面の澄み切った青。
二つの美しい青色にすっかり魅せられた僕は是非「サ」のイニシャルでも紹介したかったのだ。

そもそも青い花って、何とも不思議な、何処かミステリアスな魅力すら感じてしまう。

じっと眺めていると段々惹き込まれて、何処までも深く入ってしまいそうな気がして・・・
果てしなく広がる深遠な大空のブルーに、湖面に輝く澄み切った水のブルー・・・

そして、その深みに一度魅了されてしまったら後は先に進むしか・・・
そう、最後のイニシャルまでもう後戻りの出来ない今の僕みたいに・・・


e0183009_13422976.jpg

[PR]
by mary-joanna | 2010-02-01 14:13 | 浅き夢見じ