「ほっ」と。キャンペーン

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ア.あの木のトンネルの先では

 あの木のトンネルの先では、
 嘗て置いてきた大切なものに
 再び出会う事が出来るだろう・・・

 でも一度置いてきたものは、
 決して持ち帰る事は出来ない
 あの木のトンネルの先からは・・・



あぁ・・・もうあれから2年が過ぎようとしているなんて・・・

“光陰矢の如し”とはよく言ったもので、本当にこの2年間はあっという間だった。
あの時は・・・そう、「ア」のイニシャルの花を紹介する頃は僕の計画も終盤に差し掛かって、
偶然を装って日光街道を北上するなんてベタなシチュエーションを演出したものだったけれど、
まさか、最後の最後であんな展開が待っていたなんて・・・今思い出してみてもビックリするよ・・・

でも、あれで良かったのかも知れない・・・あれ以上やってしまったら、僕も・・・貴方も・・・


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日光を訪れるのも、そして杉並木を通るのも2年ぶり、本当にあの時以来の事だった。
あの時は3つのコースから杉並木を上ってゆくコースを選んだって紹介していたけれど、
僕にとって日光に行くという事は、この日光街道の緑のトンネルを上る事を意味するのだ。


2年前の春にElvis Cafeを終了してから、僕はブログもカフェ巡りも辞めてしまっていた。
実はあの年の4月、僕は勤務先の学習塾の人事異動で地元の足利市を離れていたのだ。
そして今日、約2年ぶりに日光の地を訪れているのも、勿論、今こうして栃木県内にいるのも、
冬期講習と私立高校入試が一段落して遅い休暇をもらったので、地元に戻っているからだった。

それにしても・・・
まるで何処までも続いている尖塔の回廊の中を一心不乱に突き進んでいるような・・・
あるいは、おとぎ話の登場人物になって、深く暗い森の中を彷徨い続けているような・・・
前回の時もそうだったけれど、この杉並木を通っていると不思議な気分になってくるんだ。

尤も400年の歴史あるこの日光杉並木、たったの2年で変わる訳は無いか・・・
それともう一つ・・・森林浴のような爽快感も、あの時と同じ・・・本当に気持ちが良い。


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そして、果てしなく続くように思えた木のトンネルを抜けると、“街”に辿り着く。
2年前に置いてきた、“目に見えない大切なもの”が詰まった思い出の場所だ。

思い出と言えば、Kさんが惚れ込んだ旧今市の市街地に入り組んだ路地裏。
どんなに表の大通りが様変わりしても、昭和にタイムスリップしたようなこの情景は
2年やそこらご無沙汰していたからと言っても、全く変わる事なんて無いんだよね・・・

それに、建物のバックに聳えているのは日光連山・・・これも何時までも一緒なんだ・・・


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この裏通りを歩いてゆくと、前に訪れた際に目印にしていた神社の参道へと辿り着く。
石畳が敷かれた参道から奥に鎮座する境内を守る正門までの風景。僕の街の神社と同じ、
これまで何百年もの間大切に守られ、この先ずっと代々受け継がれてゆく身近な歴史なんだ。

そして、確かこの参道から程なく進んだ場所にあった筈だ・・・本当に見落としそうな場所に・・・


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あったよ。さっき路地裏で建物の間から見えた雪に覆われた日光の山々と同じ、
真っ白に聳える日光連山の更にその上に、誇らしげに掲げられた三つの店のロゴ。

NIKKO COFFEE・・・analog books・・・COCOLOYA!!

そして、この2階建ての家屋と向かいの平屋建てに挟まれた路地と言うには
あまりにも狭い、人がやっと通り抜ける程しかない隙間のような空間こそ・・・


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玉藻小路


鹿沼が“根古屋路地”ならば、此処、今市の路地裏には“玉藻小路”が伸びているんだ。
建物一つ分の、直ぐ向こう側へと届いてしまいそうな短い小路に過ぎないけれど・・・

果たしてこの路地の先は本当に目の前に見える空間に繋がっているのかな・・・

それとも・・・何処か違う世界へと通じる秘密の入口だったりして・・・


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日光珈琲


Elvis Cafeで紹介する為に初めてこの店を訪れたのは、出来て未だ半年足らずだったが、
“あの鹿沼の饗茶庵”が日光に新店舗をオープンさせるとの事でネットの口コミやブログの
レポは勿論、栃木県内の情報誌のみならず全国紙やカフェの専門誌、果てはテレビの
バラエティーにまで登場する程の大きな話題になっていた、まさにその時の事だった。

当時は週末毎にこの小路に長い行列が出来てしまうくらいの賑わいぶりだったので、
それこそ綿密に計画を立て、日程を調整して、予約も入れて・・・そして、勿論・・・
ありったけの気合とワクワクドキドキ感もバッグに詰めてあの杉並木のトンネルを
越えた僕だったけれど、2年経った今でもその人気は全く衰えを見せる事は無く、
逆に現在僕が生活している地方にもその名を轟かせる程の存在になっていた。

そして勿論、あの時感じたワクワク感はこれっぽっちも色褪せていないよ!!


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いきなり中に入るのが照れ臭かった訳では無いが、窓から窺った店内の様子は、
漆喰の白壁から成る広々とした空間に縦横に伸びる柱や梁、格子戸の木枠など、
落ち着いた純和風建築の趣きのある姿を垣間見る事が出来て・・・懐かしいなぁ・・・

2年前も前にたった一度、しかもほんの数時間の滞在していただけだったのに、
まるで数年ぶりに連絡無しで故郷の我が家に帰ってきたみたいな気分だった。
そう、このカフェ・・・空間全体が、そんな郷愁の薫りで包まれていたのだ・・・


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更に入口にはこんな物まで提げてあって・・・これでは本当に正月に帰省した気分だ・・・


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扉を開けて玄関に立つと正面には年代物の箪笥と、4人掛けのテーブルと・・・


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・・・このタイル張りのカウンターが僕を出迎えてくれる。

カウンターの手前まで進み、スタッフに挨拶を済ませた僕は直ぐに左右を見渡す。


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日光珈琲を象徴する風景と言っても過言では無い広い店内を真ん中で分けている中央通路。

2年前に様々な雑誌で見て、実際にこの光景を目の当たりにした僕は思わずこの中央通路こそ、
この日光珈琲のもう一つの“小路”そのものではないか、と興奮気味に紹介していたけれど・・・
今こうしてこの場所に立ってみると“小路”であるばかりでなく、頭上の柱や梁の隙間から
降り注ぐ木漏れ日のような淡い日差しは・・・さっき通ってきた杉並木と同じではないか!

そう、此処にも清々しい“木のトンネル”が存在しているんだ・・・
しかも、その先の、一番奥に掛けられていた額縁には・・・


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そしてもう一つ。背面に大きな棚を擁するこのカウンターキッチンも、
僕にとっての日光珈琲をイメージするのに必要不可欠な場所なのだ。

彼、Cindyが鹿沼の饗茶庵のキッチンを紹介した画像を一目見た時から、
棚の中で真っ白な皿やカップが積まれ、器やグラスが整然と並んだ光景、
今、目にしているこの光景こそ、僕にとってカフェのキッチンの姿なのだ!


更にこのカウンターの手前には、此処、日光珈琲ならではの“オブジェ”がある。


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恐らく毎日休む事無くシュッシュと真っ白な湯気を噴き出している大きなヤカン・・・
あの時と変わらず今日も健在で、そしてれからも不可欠な存在になってくれるだろう。


でも、キッチンの直ぐ側で、僕は2年前とは異なった“変化”を見つけた。


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格子戸越しに僕の目を捉えたのは真っ黒なボディーの大きなストーブだった。
前回訪れた後、このカフェの最初の冬を迎える際に新たに加わった仲間・・・

そう、歴史の息吹を感じさせるこのカフェは、同時に常に進化し続ける場でもあった。


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このカフェには一見同じトーンに見えつつも非常に個性的な様々な寛ぎの場が存在する。

以前、昭和の高度経済を影で支えた“UFO”と称した、ヘルメット型の大きなランプの下で
過ごすのも、目の前の小路を眺めながらも側の棚に並んだ美術書をめくるのも、乙なものだ。


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嘗ての遊郭を改築した、歴史情緒の雰囲気をいっぱいに湛えた純和風家屋だと、
実のところ良くは分ってはいない大正ロマンに浸りつつ視線を上に向けると・・・

何ともゴージャスなシャンデリア・・・良い意味での和洋折衷リノベーション建築なのだ!


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“華の世界”への入口を潜って上の階へと向かって・・・そう、其処にあったんだよんね・・・

2年前に僕が追い求めていた、「ア」のイニシャルの“花”は・・・


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この市松模様の壁面には本当に度肝を抜かれた思いに駆られたけれど、
今改めて見直しても、あの時の強烈なインパクトは全く変わらない・・・

そして、この場所で見つけたのだけれど・・・うわぁ、懐かしいなぁ・・・


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ずっと探し続けて・・・
やっと見つけ出して・・・
ようやくキミに出会えて・・・

2年前、僕は此処で「ア」のイニシャルの花に対面する事が出来たのだった。

同じ棚の上に置かれた花瓶には例の花はおろか、一輪の花も活けられていなかった。
もう2年も前の話なのだから・・・当たり前と言えば当たり前の事なのだけれど・・・

 大切なものは、目には見えない

僕にそう教えてくれたのは他でも無い、あの木のトンネルの先にあるこの空間ではないか!
目を閉じれば今でも瞼の裏にあのほっそりとした美しい姿の「ア」の花が鮮明に映っているんだ。


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心の中での再会を果たした僕が選んだのはこの席・・・うん、あの時と同じ席だ。


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おや?・・・窓の外に見えるあの花は・・・


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スミレ(パンジー)


あぁ・・・何という巡り合わせなんだろう!!
まさか、今日、この場所でこの花に出会うなんて!!


・・・Elvis Cafeの一番最後に咲いた可愛いあの子の花に・・・


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特製スープカレー


地元栃木のしかも日光という土地柄と、杉並木沿いに点在する蕎麦屋に触発されて
前回は地場産の食材をふんだんに使用したガレットをオーダーした僕だったが、
今日は鹿沼の饗茶庵の人気メニューであるこのスープカレーに決めていた。


とろみの無いサラサラした舌触りはスープと謳っている通りのものであったが、
サラリとしながらも同時に舌先に程良く絡み付いて、存在感は抜群だった。
熱々のスープは徐々に広がるピリリとした辛さと心地良い刺激に加えて、
スッキリとした酸味と仄かな甘味の絶妙なバランスが非常に味わい深く
更には様々なスパイスの風味、香り、コク等が複雑に絡み合ってくる。

このカレーのメインとなるのが、じっくり炊いた柔らかな骨付きのチキン。
皮の部分のトロリとしたゼラチン質の、クセになる食感が堪らない!
更に、直ぐ内側の肉は繊維にそってはらはらと裂けて・・・柔らかい!

ふんわりとした肉質・・・ジューシーな肉汁・・・とろけるような食感・・・
じわじわと広がってゆく鶏の旨味はもう言葉に出来ない程だった。

ゴロっと入った地元栃木産の新鮮な野菜の自然な甘さと食感が、
スープカレーにじわりと染み込んで一層美味しさが引き立っていた。
カレーとの相性抜群の白米と添えられたシャキシャキで甘い葉野菜、
極めつけは、爽やかな酸味のレモン塩による未体験の新たな美味しさ・・・


2年ぶりだとか・・・思い出の場所だとか・・・一瞬全てを忘れ、このカレーに魅了されていた・・・


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2年前の訪問の際、Kさん自らスイーツのプレートを持ってきてくれたっけ・・・
あの時は本当にビックリしたけれど、Kさんの嬉しそうな表情が脳裏に甦るよ・・・


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林檎のタルト


饗茶庵には一本の林檎の木があって、その木に生った林檎でスイーツを作ると言う・・・

そう、この日僕がオーダーした季節の果物のタルトには、その林檎が使われていた。
ホロホロと崩れるほんのりと甘いそぼろ状の表面は何処か懐かしさを感じる味だ。
土台のしっとりとした食感のタルト生地は、口の中で軽やかに消えてゆくのだ。

入れ替わるように口の中いっぱいにふわっと広がる爽やかな甘さの林檎の香り。
シャクシャクっとした歯応えと瑞々しくジューシーな林檎の果実感に加えて、
トロリと甘く煮詰められた、濃厚であり且つ、まろやかな風合いが堪らない。


カフェが所有するたった一本の林檎の木から採れた林檎で作った特別なタルト。
ひと口ひと口、目の前のスミレを眺めながらゆっくりと頬張る事にしたのだった。
眺めると言えば、僕は饗茶庵のドリンクをぼんやりと眺めているのが大好きだった。

まるでグラスに閉じ込めた宝石のようなカラフルでキラキラと輝く様を見つめて・・・
そして、今回スタッフの方に是非どうぞと勧められたドリンクも・・・
まるで初恋した時の心のときめきを表わしたような・・・


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木苺のソーダ


まるでクリスタルのようにキラキラと透明に澄んだ輝きを放つグラスの中には
ルビーのように真っ赤な粒選りの木苺が可愛いらしく繋がって浮かんでいた。
この非常にキュートなグラスに何時までも見つめていたい衝動に駆られて、
中々手をつける事が出来ずにウットリと眺めていたのは言うまでも無い。

グラスの底で真っ赤な木苺ジャムがキラキラ弾けるソーダの泡と混ざり合い、
とろんと滑らかな甘酸っぱさと冷たくてシュワシュワした心地良い刺激が
ゆっくりゆっくり溶け合っていく・・・ひと口毎にキュンとなりそうで・・・

クリスタルのような澄んだ輝きの氷の表面に浮かんだぷるんとしたフランボーズ。
名残惜しそうに一つすくって口の中に放り込んだ瞬間口中に広がるぷるんとした
表面の感触とプチプチと弾け出す果肉のジューシーでフレッシュな甘酸っぱさ。

饗茶庵のドリンクに、何時も恋に落ちてしまいそうなんだ・・・
だから・・・きっと彼もこのカフェに来るんだろうね・・・



そして日光珈琲を後にした僕は、直ぐ向かい側の建物の、小さな扉を潜る事にした。
あれから一時も忘れる事の無かったもう一つの“大切な思い出”との再会を果たす為に・・・


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COCOLOYA


先の日光珈琲の突き抜けるような広がりに比べると、其処はまるで雑然とした・・・
しかしながら心ときめく宝箱のような空間であり、そのこじんまりとした店内には、
“ジャンク”の文字でで括るには惜しい魅惑溢れる品々で埋め尽くされていた。

例えばほら、店に掲げられた明かり一つとってもご覧の通りである。


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この二つが一つになるなんて・・・そして、このランプに優しく照らされた一枚の絵がある。
そう、此処は静かな情熱溢れるアーティストの素敵な感性が形となって現れる場所なのだ。

2年前に僕の目を・・・いや、“目”では無く“心”を鷲掴みにしたあの絵は既に無かった。
しかし、その絵にも負けない絵だったのだ・・・大きな木の下にぽっかりと空いた穴の先には・・・


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GOING WITHIN 


・・・あの木のトンネルの先では、きっとアナタが来るのを心待ちにしている人が・・・


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あの日光への小旅行から約2年後のこの日、再び彼の地を訪れ、木のトンネルの先で
2年前に置き去りにしてきた“目に見えない大切なもの”との再会を果たしてきた僕は、
同じく2年ぶりに出会ったあの花瓶に花を活けようと思い、ある花を購入し帰宅した。

勿論、実際の花瓶に活ける事は出来なかったので、嘗て花を撮影していた場所に
花の鉢を置いて暫く眺めた後に、目を閉じて心の中で花瓶と重ね合わせてみた。


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「アネモネ」


冒頭にも書いたけれど、僕はあの春の日を最後にブログも、更にカフェ巡りからも離れてしまった。
そして、その後Cindyとは勿論、あの半年間にElvis Cafeで知り合った例のグループの人々と
コンタクトを取る事はおろか、彼等の名前をネット上で見掛ける事すら終ぞ無かったのだった。
そうして地元の栃木県から遠く離れた土地で今日まで過ごしてきた・・・いや、一度だけ・・・

そう、たったの一度だけ、それも2年前の最後の日から少し経ったあの日・・・6月半ば・・・
Christineと称する女性の日記を開いた事はあったっけ・・・本当に告白するんだなって・・・


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「analog booksの本と、本の家具展」

会期 2010年1月16日(土)~2月27日(土)←会期が延長しました!
会場 analog books
    栃木県日光市今市754 玉藻小路
    13:00~18:00(土曜19:00まで)

電話 090-7909-7072
休日 月曜日
主催 analog books + APARTMENT
後援 「日光森と水の会」 「All About Nikko」



先日お邪魔した際、analog booksの店長さんから上記の展示会の話を聞き、
是非とも此方の記事で紹介させて頂きたいと思いましてリンクさせてもらいました。
現在(1/27)開催中ですので、機会がある方は是非ともお立ち寄り下さいませ。
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by mary-joanna | 2010-01-27 02:52 | 浅き夢見じ

テ.hibiの花

日々の暮らしをちょっぴり豊かにしてくれる場所があるという・・・

 衣食足りて礼節を知る

素敵な衣装や美味しい食べ物と一緒なら、もっと大らかな気持ちになれるよね?
頭の片隅でそんな事を考えながら、僕はある街に向かって車を走らせていた。

普段の生活を今より少しだけ華やかにする為に・・・
お気に入りのものに囲まれた毎日を過ごす為に・・・
変に無理して派手に着飾ったりするのではなく・・・
緊張してずっと肩肘を張ったりするのでもない・・・

・・・そう、日々の暮らしを大切にしたいから・・・


シンプルだけれど長く愛用したくなる、そんな日々の宝物を探しに・・・
そして、ゆったりとした気持ちで心から寛げる大好きなカフェに・・・

1月も後半になり新年という言葉を持ち出すのも憚れる今日この頃、
唯ひたすら彼のいる場所に向かって突き進んだ忙しない毎日を、
イニシャルの花を追い求めて奔走したこの半年に渡る日々を、
少し立ち止まって・・・ペースダウンして・・・振り返って・・・


そんな僕が自分を見つめ直す為に訪れる場所と言ったら、勿論・・・
あの場所に決まっているんだ・・・Elvis Cafeなのだから・・・


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三国橋


群馬・・・栃木・・・埼玉・・・そして、茨城と、4つの県にまたがる場所・・・渡良瀬遊水地。
この三国橋を渡ると直ぐに古河の市街地へと入ってゆくが・・・この橋の向かって右手には、
視界いっぱいに谷中湖とヨシ原が広がっていてその圧倒的な景色に何時も魅入ってしまう。

橋を渡って直ぐの角を折れて大通りから外れ、古河の旧市街地へと向かって更に進むと、
道幅に比例するかのように小さいけれど味のある古びた建物が軒を連ねるようになる。
そんな昔の面影を残す情緒ある路地沿いに僕がこの街で必ず立ち寄るカフェがある。


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Ocha-Nova


駅の直ぐ側にある脇道は車がやっとすれ違える程の道幅しかなかったけれど、
オリオン商店街と名付けられた細い路地には何処か懐かしい空気が漂っていた。

そんなオリオン商店街をするすると暫く進んでいくとやがて前方に見えてくるのが、
インパクトのある真っ赤なポールと爽やかなスカイブルーのスクエアーなこの建物。

僕にとって特別な存在であるこのカフェは、同時にふらりと寄れる日々のカフェなのだ。
ある時は、目的の花を求めて広大な遊水地を歩き回ってヘトヘトになったその後で、
またある時は、街の外れのケーキ屋に立ち寄るその前に、更には古河の街中の
路地裏にある雑貨屋巡りのお伴として・・・このカフェは欠かせない存在だった。

そう、毎日の生活の一部として全く気兼ねする事の無い寛ぎの場所・・・


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中に入って直ぐの、カウンターの向かい側には、さり気無く植物が飾られている。
どの鉢も生き生きとして、瑞々しいグリーンの手足をゆったり伸ばして寛いでいた。

間口に対して奥行きのあるこのカフェの、一番奥の空間が僕のお気に入りとなっていた。
これまでもそうであったように、挨拶を済ませた僕は直ぐに奥のスペースへ向かう事にした。

この前此処に訪れたのは秋の風に遊水地のヨシ原が黄金色に揺れる9月の終わり頃、
もう彼是4カ月もの歳月が過ぎ、頭を垂れていたヨシの稲穂もすっかりと枯れ切っていた。
そんな季節の移ろいは、この奥の開けたスペースでも直ぐ感じ取る事が出来た・・・だって・・・


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 冬はつとめて。
 雪の降りたるは言ふべきにもあらず、
 霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、
 火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。



オープン直後の早い時間にお邪魔した事もあり、“寒いでしょう?”と、
さり気無くストーブに火を入れてくれた。時間と共に上に乗せたやかんに
白い湯気が立ち上ってゆく・・・これぞまさに、日々の冬の情景ではないか!


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更に、隣りのベンチにはもこもこっとして温かそうなブランケットも置かれていて・・・

本当・・・“いとつきづきし”・・・だよね・・・


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Ocha-Novaで僕が着く場所と言えば、決まってこの二人掛けのテーブルなんだ。
あの彼もお気に入りのテーブルだったけれど、この日は小さな先客が寛いでいた・・・


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やぁ、気持ち良さそうに羽を休める小鳥さん、またキミに会う事が出来たね!
キミは何時だって僕がお気に入りにしているカフェに先回りしているんだ・・・

ところで・・・キミの家って、一体何処にあるんだい?
今度キミが寝床にしている“巣”を紹介してくれないか?


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何時ものあのテーブルは小鳥さんに先を越されちゃったし・・・
じゃあ、今日は前から気になっていた此方のテーブルにしようか。

えぇ~っと、メニューは何処に・・・あっ!


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チリンチリン・・・このテーブルにはキミが運んできてくれるんだね。
そうか、じゃあ・・・ちょうどお腹も空いてきたところだし、これにしようか!


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ハニーチーズトースト


カリッカリにトーストされた表面の熱々でパリパリとっした香ばしい食感・・・
豪快に両手で引き裂くと中からふんわり広がってくる仄かな甘い薫り・・・
絹のように滑らかでしっとりふかふかな分厚い生地の優しい舌触り・・・
そして表面や生地にもマッチするモギュモギュした歯応えの耳も・・・

パンだけでも生地から耳まで最高なのに・・・

トッピングされたチーズとはちみつが表面の熱で溶け出して、
チーズのまろやかな風味とはちみつの濃厚な甘さが一緒になって
とろとろ~っと温かいトーストの中に染み込んで絶妙に絡み合っていく。

更に、身体全体に沁み渡る温かい野菜スープまで付いてくるなんて・・・
毎日食べている朝食トーストもこのカフェなら最高のごちそうになるんだ!!


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カフェラテ


毎回とても楽しみにしているラテアート君、今日はどんな子に会う事が出来るのかな?

あぁ、そうだったね・・・年男の元気なキミが新年の挨拶に来てくれたんだね。
春までの付き合いになるかも知れないけれど、また遊びに来るからよろしくね!


さて、お腹もいっぱいになったし可愛い虎クンにも会ったし、そろそろ出掛けようか?
僕の毎日を更に楽しく、そして大切に感じさせてくれる・・・日々の宝物を探しに・・・


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所々剥げ落ちているのが却って歴史の重みを感じさせる大層立派な赤煉瓦の塀。
その中には煉瓦造りの塀にも負けない重厚な漆喰の蔵が綺麗に残されている。
近くに小さな神社があり、境内に不釣り合いな程の大きな銀杏が立っていた。

先のオリオン商店街から更に細い路地に入って暫く進んだ通り沿いには、
まるで昭和の、いや、更に前の古き良き古河の街にタイムスリップしたような、
風情のある歴史の風景を垣間見る事が出来た。そして、僕が訪れる場所だって・・・


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hibi


以前は理容店であった此方の建物。嘗ては街の人々の身だしなみを整えてくれるばかりか
憩いの場でもあったであろう小さな平屋は、時を経た現在も、街の人々の毎日の生活に
欠かせない衣食住の大切なモノを提供してくれる場としてこの路地沿いに佇んでいた。

ちょっぴりくすんだブルーのドアが優しく見つめているのは・・・あの大きな銀杏の木!


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実際の間取り以上に感じる広々とした空間には、大きなテーブルと大きな食器棚。
其処には陶器を中心に食器類がゆったりと並べられて・・・どれも気持ち良さそうだね。

この空間でのんびりと食器を眺めていると、僕の方もゆったりとした気持ちになるんだ。
そう、このゆとりが欲しかったんだ・・・これまでずっと、追い立てられて今日まできたから・・・


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大浦裕記さん


ポットに・・・カップに・・・花器まで!毎日の生活に必要なものだからこそ、お気に入りのものを使いたい。


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視線を先の方に向けてみると、奥に一段高くなったスペースが広がっていた。
左端に置かれたアンティークのガラス棚が気になったので近付いてみる事にした。


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棚の傍に掛けてあったのが針金で作られた此方のキューブ。シンプルな形状なのに、
何時までも眺めていたい衝動に駆られ・・・様々な事を連想するうちに無心になっていく・・・


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関昌生さんの針金細工


遠くの方に街が見えるよ・・・
まるで針金みたいにほっそりと・・・
何だかキラキラと輝いている・・・

遠くの方に街が見えるよ・・・
どんなに沢山歩いてみても・・・
全然大きくならない街だ・・・


遠くの方に見える街には・・・
たったひとつの移動手段だ・・・
希望という名の飛行機で・・・


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そう、ほっそりとして、キラキラとして・・・
この先ずっと色褪せない飛行機で飛ぶんだ・・・

遠くの方に見える街には・・・


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奥のスペースは“衣”の空間となっており、その突き当りには帽子がディスプレイされていた。


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平岡あゆみさんの帽子を被って・・・


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オールドマンズテーラーのジャケットとストールで決めて・・・


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warangwayanのバブーシュ履いて・・・


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・・・バスケット片手にお出掛けしよう!!


毎日のお散歩もこれならきっとウキウキするよね!


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手前のスペースに戻った僕は、この店で如何しても手に入れたかったアレを探す事にした。


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安藤雅信さん


氏の作り出すうっとりするような滑らかな白い器は、ずっと触れていたくなるんだ。


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松徳硝子 うすはりグラス


創業大正11年、東京の下町、墨田区で誕生した電球用のガラス製造工場は、
当時のハイテク製品でもあった電球の球の製造から約90年の長い歴史を経て、
その伝統の職人技を今に伝える老舗の町工場として国内外から注目を集めていた。

そして、あのコミカルでありながらそれ以外には考えられない形状となった電球の球の、
ポコっとした薄いガラス球を吹く技術を究極に進化させたのがこの“うすはりグラス”なのだ。

そう、この下町の職人による粋な伝統の技の結晶こそ、今回僕が手に入れたかった
“日々の生活”を彩る器であり、この“類い稀な日用品”と共に紹介したかった花こそ・・・


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「デージー」


・・・“日々の花”として、毎日の生活に彩りを添えてくれる、この「デージー」なのだ!

真っ白なボンボンの中から“おひさまの目”が僕たちを見守ってくれる。

綺麗な冬の青空の下、今日も一日変わりは無いかい?って、にこやかに・・・
そんな毎日の生活をもっと楽しく、そしてもっと大切に送りたかったんだ・・・

日々の楽しみ・・・
日々の食卓・・・
日々の装い・・・
日々の花・・・

古びた細い路地裏だけど・・・とっても小さな一軒家だけど・・・
日々の生活を素敵に過ごすエッセンスがいっぱい詰まった可愛いお家。


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古河の街に別れを告げるのが心惜しかった僕は、駅の周りの旧市街を散策する事にした。
江戸時代に宿場町として栄えた歴史を感じさせる街並みは、今なお街の随所に残されており、
通り沿いを散歩していると趣きのある古い家屋を確認する事が出来、その情景に暫し浸っていた。

更に街の奥へと路地を進むと、前方に何かの石碑が立っていたので思わず近付いてみる事にした。


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日光街道・古河宿道標


へぇ・・・この道は遠く日光まで続いているのか・・・

次のイニシャルは・・・もう「ア」の花になるんだったね・・・
そう言えば、“あの花”を活けてあるから遊びにきなよ!ってKさんも誘ってくれたっけ・・・
それならば、もう躊躇する事なんか無いじゃないか!だってこの道を真っ直ぐに進めば・・・


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次回のElvis Cafeですが、少し“時間軸”がずれた?設定になります。
・・・勿論、「ア」のイニシャルの花は紹介しますが・・・
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by mary-joanna | 2010-01-20 13:32 | 今日越えて

エ.See Emily Play

自然の摂理を揶揄しようなんて大それた事はこれっぽっちも考えてないし、
何を今更・・・と、お咎めを受ける事も承知で、敢えて綴らせて欲しいのだが、
花には時期というものがあり、小さな子供でも良く知っている有名な花でさえ
少しタイミングを外しただけで全く見る事が出来なくなるというのは、僕自身が
この半年間に幾度となく体験してきたのだから十分過ぎる程理解している筈だ。

でも、だからこそ四季折々の花の移ろいがかけがえの無い非常に尊い存在の一つとして、
華道のような高尚な文化を語るまでも無く日々の生活に於いても大切な要素であるのも、
四季の変化が比較的明確である、此処、日本ではとりわけ顕著であるのかも知れない。
確かに、西洋のフラワーアレンジメントが、一年中華やかで、そしてファッションのように
色彩や形状等の流行があるのに対して、日本の生け花では季節感を最重視している。
また、俳諧や短歌など古典文学の世界での季節と花の関係は言うまでもないだろう。

こんな事をぐだぐだと述べるなら、その時最高の輝きを放つ花を紹介し続ければ良かろう!
と、愈々以って非難の声が上がるやも知れないけれど、そう簡単には事が進まないのだ。
何故なら、僕はイロハ順に花を紹介し続け、しかも春に終わる様に調整していたからだ。
だから、花の開花時期とその花のイニシャルとが一致していないと、どんなに美しく、
またどんなに有名でも、紹介する事が出来なかった。Elvis Cafeをスタートさせるに
於いて彼と交わした条件であった為仕方の無い事とは言え、これは歯痒かった・・・

そこで、僕はその時のイニシャルの花以外にも同じ場所で出会った素敵な草花を
紹介しながらこの物語を綴る事にした。そうしてこのElvis Cafeが進むにつれて、
以前に紹介した花のイニシャルの順番がやって来たり、反対に未だ咲き始めの
段階で紹介したイニシャルが花期を迎えたりと、イニシャルと花本来の季節とで
同じ花を二重に紹介出来るといった、考えてみなかった嬉しい誤算も経験した。


実は今回僕が訪れたカフェの花も・・・そして、イニシャルの花も・・・
以前紹介した際には、また再び出会えるとは全く思っていなかった・・・

“嬉しい誤算”?・・・いや、今回は“必然の巡り会い”だと思っているけど・・・


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足利から国道50号線を東に向かってひたすら進み、あのカフェがある結城の街も更に越え、
その隣りの、かつて下館と呼ばれていた街の外れまで唯の一回も曲がる事無くやって来た。
群馬~栃木~茨城と、北関東を結んでいる大きな国道も何時しか車線が1本に減っていた。

市街地から離れ郊外の工場や空き地がチラホラと目に付く頃、この白い建物に辿り着く。
そして、長かった今回の僕のドライブも目的地に到着だ・・・長いのは毎度の事だが・・・


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ネメシア・メロウ


真っ白カフェの入り口で一番最初に出迎えてくれたのは、石の蔵のチョコ屋で紹介した、
淡いピンク色したリボンみたいな可愛らしいキミたち・・・そう、「ネ」のイニシャルだったね!

あの時はふんわりリボンの花弁が葉っぱの型の板チョコを華やかに飾っていたっけ・・・
またキミたちに出会う事が出来るなんて、ビックリしたっていうより何だか懐かしくって・・・

尤も今回のイニシャルに僕が選んだ“再会の花”は、こんな穏やかな雰囲気で語るには・・・


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そして、草花も枯れる真冬の庭先で元気いっぱいに咲いている小さな白い花。
キミたちを眺めていたら・・・うん、何だか僕も元気が出てきたみたいだよ!


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一見物寂しげな冬の庭でも、周りには可愛らしい先客たちが思い思いに寛いでいた。

例えば、白い木の台の隣りではワインの空き瓶が仲睦まじく寄り添っていた。
そう・・・このカフェには是非とも気になる人を誘って二人で一緒に来て欲しい。
きっとこのワインみたいに、二人の距離が更に近くなる筈だから・・・でも僕は・・・


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Cafe RAGBAG


お気に入りのラグのように柔らかくって、長年愛用のバッグのように何でも包み込んでくれる。
はじめて訪れたカフェなのに・・・まだ店の中にも入っていないのに・・・そんな気がするんだ。

なぁ、そうだろう・・・まるでこのカフェみたいな白い椅子の上でまったりしている水差し君!


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吊り下げられているのは錆びて色褪せた小さな缶かも知れないけれど、
きっと中には溢れんばかりの夢と希望で満たされているに違いないんだ!


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ブルーグレーの扉は所々剥げ落ち、ドアノブの周りに至っては完全に地の木肌が現れていた・・・

ワクワクしながらやって来て、そして、名残惜しそうに去ってゆく皆を見守ってきた証しだよね。
そんな僕だって、この素敵な建物の中がどうなっているのか、凄く気になっているんだよ!


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味のある木枠の棚と美しい意匠のアイアンフェンスが設えられたキッチンカウンター。
そのカウンターを埋め尽くすように整然と並べられ、積み上げられたグラスや皿。
エスプレッソマシーンと・・・ミルと・・・コーヒー豆の入った大きなガラスの瓶と・・・

このシーンに収まっている全てが、僕の大好きなカフェのキッチンの風景なんだ!


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直ぐ隣りにはアンティークの雑貨コーナーもあって・・・あっ、コレ、可愛いなぁ~!


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キッチンの向かい側はカウンター席になっていて、一人でふらっとやって来て、
誰に気兼ねをする事無くゆっくりと食事を楽しめるだろう・・・今度は此処で・・・


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ダイニングの長いテーブルは家族や友人と水入らずのひと時を過ごすのに丁度良い。


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店内には様々なランプが吊り下げられていて、各テーブルが其々微妙な色合いで照らされていた。
優しい温もりが感じられる仄かな明かりの中で心も癒されて、更に長居したくなってくるんだ・・・

ランプの明かりで席を決めるなんてのも、何だかいいよね・・・でも、この日の僕は・・・


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店内を見回し、窓に面したこのテーブルに決めた。何故なら僕は窓の側が好きだったのだ。
そして、席に着いて直ぐに窓の外をぼんやり眺めているのも、お気に入りの仕草だった。

唯、このカフェの窓の直ぐ向こう側は大通りという訳ではなかった。店内と通りの間には・・・


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何ともお洒落なテラス席が用意されていた。緩やかな日差しの下でワインを頂く・・・素敵だなぁ・・・


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店内には各テーブルにさり気無く草花が添えられている。僕の席は・・・元気に伸びるミドリたち・・・


さて、何時もの事ではあったが、暫くの間メニューとにらめっこを続けた後、迷いながらも
+ パスタランチ +をオーダーする事にした。旬の食材を使ったパスタが気になったのだ。


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サラダプレート


サラダと銘打ってはいるが、パンに生ハムにキッシュに・・・
何てバラエティー豊かでボリュームたっぷりのプレートなんだ!


パン

焼き立てでパリッとした薄皮から薫る芳ばしい皮の焦げた香り。
可愛らしいまん丸パンを二つに割ると中から薄っすらと湯気が立ち上り、
ふわぁ~っとまろやかな小麦のいい香りが広がってきて、思わずひと口。

ふわふわで、もちもちっとした食感と仄かな甘みと塩味が良い塩梅で、
きっとこの後のメインの付け合わせなのだが・・・全部食べてしまった・・・

マッシュポテト

丁寧に裏漉しされたジャガイモの滑らかな食感が口の中でさらさらと溶けて、
ジャガイモ本来の自然な風味が心地良く広がる。更に、アクセントにチーズが
練り込まれていて、スタンダードであり、同時に新鮮な味わいも楽しめるなんて・・・

ピクルス

あっさりとした甘酸っぱさとカリカリの歯ごたえから広がる瑞々しさが美味しい!
このさっぱりとした爽やかさいっぱいのピクルス、箸休めで片付けるには惜しいよ・・・

生ハム

アンティパストの定番の生ハムはそのままの状態でサーヴされるからこそ、難しい食材。
果たしてこのカフェはと言うと・・・舌先に絡み付くとろりとした舌触りから広がる生ハムの、
脂のコクがたっぷり乗った旨みとジューシーな食感・・・もっと欲しくなる衝動に駆られる。

ラタトゥユ

此方もアンティパストのプレートにはお馴染みの、言わば、イタリアの“お袋の味”。
とろとろに煮込まれた柔らかな野菜から染み出すトマトの甘い濃厚な風味が絶品だよ!

キッシュ

そして、僕が最後に頂いたのが可愛らしくカットされたこのキッシュだった。
しっとりした質感から伝わるシンプルな、そして優しい卵の風味が何とも堪らない・・・


プレートに盛られた一つ一つを取っても、店主の拘りと情熱がたっぷりと詰まっているのだった。
そんなバラエティーに富んだサラダプレートを食べ終わった頃、メインのパスタが運ばれてきた。


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牡蠣の醤油バターソーススパゲッティ


一見するとパスタを素で出しているかのような、非常にシンプルなビジュアルだが、
テーブルに置かれた瞬間、白い湯気と一緒にふわっと広がる食欲をそそる良い香り。
堪らず山盛りのパスタから数本を巻いて口に入れた途端に伝わる豊かなバターの風味と
仄かに漂う醤油の香ばしさが絶妙に絡み合った、シコシコ食感の喉越しの良いスパゲッティ。
その見た目からは全く想像もつかない位の複雑に絡み合って一つのハーモニーを奏でていた。

そして何と言ってもこのスパゲティの主役は、パスタの山の頂上に乗ったぷりっぷりの牡蠣!
その牡蠣を噛むと、ぷるぷるっと弾け出して中からミルキーで程よい酸味と潮の香り、ほろ苦さ、
濃厚なコクでいっぱいの、まさに“美味しい海のミルク”が口中いっぱいにジワァ~っと広がってゆく。

更にキリリと引き締まった胡椒のアクセントも加わり、全てが絶妙なバランスで調和した最高の一皿!
街の外れの、大通りにポツンと一軒建っているカフェでこんなにも素晴らしいパスタに出会えるなんて・・・


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それにしても、此処はまるで自宅のダイニングにいるみたいだよ!
初めて着いた席なのに、こんなにも落ち着いて食事が出来るなんて・・・


そろそろデザートのスイーツが運ばれてくる頃だね・・・


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バナナのシフォンケーキ・ヨーグルトソルベ添え


切り分けようとしたフォークを優しく押し返すふんわりとした感触のスポンジ生地は
その軽いふわふわ感はそのままに、しっとりとした食感も持ち合わせているばかりか、
まろやかな口溶けは、バナナの仄かな甘い香りと一緒に消えていくようにとろけていった。

更にチョコソースと生クリームがシフォンケーキを一層引き立てて・・・本当に美味しかった!


そのシフォンケーキに添えられていたのが、この時期だからこそ却って欲しくなる、
ひんやりとしたスイーツなんだ!乾燥した外の空気と暖かな店内に僕の喉もカラカラ、
こんな爽やかで冷たく喉を潤してくれるソルベに思わずスプーンも止まらなくなるんだよ!

ほんのりとした甘酸っぱさが心地良いまろやかなヨーグルト味に清々しい気持ちになって・・・


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カフェ・アメリカーノ


甘いデザートの〆は、キリリとビターなコーヒーでスッキリと、でもまったりと・・・


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角砂糖を積み上げるのは彼の癖だったよね・・・


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センニチコウ


久しぶりだね、元気だったかい?この前キミに出会ったのは確か未だこの物語を
始めたばかりの、あの夏の日の事だったね・・・緑に囲まれた気持ちの良い場所だった。

実は、今日僕は、キミたちが誰かに見つけてもらうのを、何処か店の片隅で
ひっそり待っているんじゃないかなって気になって、ずっと捜していたんだ。

このカフェの・・・RAGBAGのショップカードでひんやりとしたくすんだ白い壁を背景に、
少し緊張した面持ちを湛えながら凛とした佇まいでポーズをとっていたキミたちを・・・
そして、緊張した撮影も無事に済んで、まったり寛いでいるキミたちをね・・・


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「エリカ・ファイヤーヒース」


センニチコウのほっそりとしたグリーンの身体と恥じらうようにほんのりピンクに染めた頬・・・
久しぶりに再会した可愛らしい姿に魅せられながらの帰り道、僕はある花の事を考えていた。
同じく緑色の細い茎にやや不釣り合いの存在感のあるピンク色の小さな花弁を付けたあの花を・・・

そして、今回のイニシャルの貴方・・・大変ご無沙汰しておりましたが、御変わりはありませんか?

まるでこの世の地獄から這い上がって来たかのような刺々しくも注目してしまうシェイプされた体躯。
先のセンニチコウにも負けない淡いピンクの顔立ちもすっかり痩せ細って、どれも項垂れているなんて。
でも、悲愴感すら漂う可憐な姿からは、心の奥底でメラメラと燃え盛っている情念の炎のようにも見えた。


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そう、久々に再会したこの花は・・・復讐の炎を燃やす彼の名を冠しているではないか!!



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実は当初、僕は今回の「エ」のイニシャルに別の花を紹介する予定でいたんだ。

でも、真っ白なカフェでゆったりと寛ぐセンニチコウと久しぶりの再会を果たした事に加え、
あの人物からの一連の告白・・・いや、悲痛な願いと形容した方が相応しいのかも知れない、
例のメールを受け取った僕は、今回紹介するイニシャルをこの「エリカ」に変える事に決めたのだった。
しかも、品種名は“ファイヤーヒース”・・・これからの僕の・・・いや、彼の心の中にぴったりじゃないか!

それにしても、再会と、そして・・・復讐だなんて・・・
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by mary-joanna | 2010-01-15 13:49 | 今日越えて

コ.プライドのかけら

彼、Cindyが落ち込んだ時に立ち寄る店がある。

彼の日記が存続していた間、有名無名を問わず、僕が気になった店に神出鬼没に現れては、
まるで雑誌の巻頭特集から抜き取ったような写真の数々と、それに負けない熱の籠った紹介文・・・
そんな、自信に満ち溢れた日記を綴ってきた彼も、大好きだった店が残念ながらCloseした際には
その寂しさを和らげる為に、そして、折れかけた自信を取り戻す為に、決まって足が向かう店があった。

先日、僕も寂しい別れを経験したばかりだ。彼は新たな場所で大きな夢に向かって頑張っている最中だろう。
そして僕だって、半年かけて漸く此処まで積み上げてきたじゃないか!その一つ一つの欠片(かけら)が、
更なる自信となって積み上げられてゆく。此処まで来たのにガラガラと崩れ落ちる訳にはいかないんだ!


だから、僕も彼と同じ店に行く事にしたんだ。

彼が失意と落胆から立ち直る糧となった、自信とプライドを僕も分けてもらいに・・・
そしてより強固なワンピースを積み上げ、頂上で待っている彼の元に辿り着く為に・・・



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僕が降り立ったのは、東急目黒線の奥沢駅。付近の自由が丘や大岡山、田園調布に比べると
何ともこじんまりとした下町風情の漂う駅前の風景で、“オシャレな街並み”とも何処か違った。


決して広いとは言えない(むしろ狭い)駅前広場の大半を占めているのが、殆んど唯一の
待ち会いスポットである石積みの小さな噴水池で、周りを囲むようにベンチが置かれている。

奥沢駅(と広場)は交差点の角に位置している為、此処から四方に向かって通りが伸びていたが、
僕が進む方向は勿論決まっていた。噴水広場に別れを告げる前に目の前の建物の壁を見上げた。


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恐らく駅前の歴史と共に歩んできたであろう趣きあるマンションの壁に掛けられた、
何とも可愛らしい飾り時計・・・はじめて降りた駅の、不安や緊張を優しく解してくれた。


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駅前の広場から伸びる商店街の、まるで路地のように細い通りの左右に向かい合って
同じ位の間口をした、昔ながらと形容したくなる商店が肩を寄り添うように連なっていた。
八百屋、魚屋、花屋、酒屋、本屋・・・北関東の車社会で生活する僕にとって生活必需品を
揃える場所と言えば決まって郊外の大型ショッピングセンターであったが、僕の地元では
もう既に絶滅してしまったと思われた光景が、この小さな商店街では輝きを放っている。

歩道に沿ってずらりと並び、細い通りを更に狭くしている無数の自転車と、その自転車を
縫うように往来してゆく絶え間無い人の流れ・・・此処には非常に活気のある商店街の姿が
今尚顕在しており、規模こそ違えど先に言及した近隣の有名スポットにも決して劣っていない。
そう、人情味に溢れ気取らずのんびり買い物が出来る商店街の魅力がいっぱい詰まっていた。


これから僕が訪れようとしている店も、この細い商店街の一角に位置していた。
店の方角に向かって歩み始めた矢先の事だった。通りの中にとても気になる
“モノ”を見つけた僕は、商店街を進むのを中断してその方向に近寄った。

それは、未だ商店街に入って直ぐの場所に建つ病院の、入口の花壇にあった・・・


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シクラメン


花の種類が少なくなる冬の季節、花屋の軒先を埋め尽くすように彩るピンクや白のシクラメン。

その名前の語呂からか、見舞いや病院にはタブーであるとかなり前に聞いた事があったが、
此処では(敢えて?)入り口に華やかさを添えていた。このハート形の可愛らしい花弁を
見ていると、病床での陰鬱になりがちな気分を和らげてくれるような気もするのだが・・・

香りを残さずそっとアナタの側でハートを伝える、ピンク色の恥ずかしがり屋さん・・・


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葉牡丹


更に、この季節の花壇の主役の一つとして欠かせないのが、この葉牡丹だろう。

まるでキャベツのように幾重にも折り重なった葉っぱが牡丹の花を演じているみたい。
本来の小さな黄色い花は春までお預け。でも、他の葉野菜たちのように地面すれすれに
地味な姿でじっとしているのが耐えられず、派手に着飾ったキミはとってもオシャレさん・・・


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クリスマスローズ


あの時うなだれていた彼も、本来のシーズンを迎えて何だか生き生きとしてきたようだね。
顔を上げ、花弁もピンと広げて、持ち味の華やかで品のある仕草をいっぱいに表現しているよ。

あの時見せた物憂げな慎み深い表情も捨て難かったけれど・・・うん、やっぱりキミは、今の姿が
とても良く似合っているよ!・・・何処か自信に満ち溢れていて・・・そうか、キミも此処で貰ったんだね。


冬の花との出会いは、駅を降りるまでの少し切羽詰まった気分だった僕の心に余裕を与えてくれた。
花を眺めていると心配や不安を和らげてくれるみたいで・・・そう、誰だって病院に入る際は不安だもの・・・

心持ち足取りも軽くなった僕は、更にこの細い商店街を進んでいった。で、目的の店は直ぐに見つかった!


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ARTISAN BOULANGER CUPIDO


だって、このアイアン製の看板を雑誌や本、そして勿論、彼のブログで何度目にしてきた事か。
それに正真正銘、本物のこの看板を見る事を、僕はどれ程心待ちにしてきた事だっただろうか。

そして今、僕の両方の目が“ソレ”を捉えているのだから・・・これだけでも元気を貰ったようだ。

黄金の王冠を誇らしげに載せているのは、店の名前と・・・麦の穂!!
この店のプライドと自信がまるでオーラのように伝わってくるじゃないか!


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あともう一つ・・・そう、“職人”のBOULANGERがいる店だから・・・


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看板と同様に、僕にとってはすっかりお馴染みとなっていたのがこの店の外観だった。

シックな黒い庇の中央に書かれた店のロゴ、非常にシンプルだが逆に印象深くもあった。
そして、板チョコを貼り付けたような色と質感の外壁と、焼き立てパンにも負けない艶やかな
狐色の木枠の扉と窓には通りからも店内が良く窺えるように大きな硝子がはめ込まれていた。

これまで通りを埋め尽くしてきた昔ながらの商店街の、やや古びた感じの店構えとは少し異なった、
スタイリッシュな外観が目を惹いたが、同時に、この商店街の風景に溶け込んでいるような気もした。
この店がオープンして3年が過ぎたとの事で商店街の大事な一角を担う店として貫録すら感じられた。


看板と外観、確かにずっと待ち望んでいた光景であったが、それ以上に会いたかったシーンが、
そう、この店を語る上で無くてはならないシーンがこのドアの向こう側に広がっている筈なのだ。



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・・・と、その前に、店に入ると直ぐに可愛らしい松ぼっくりのシカさんが出迎えてくれた。

奥の量りににちょこんと乗っているのは・・・そう、この店と言えば、エッフェル塔だったね!!


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アイボリーホワイトの壁と爽やかな木目の棚に囲まれた広々とした店内は
柔らかな日差しと、清楚な清々しさと、パンの芳ばしい香りで満たされていた。

そして、対面式のカウンターにずらりと一列に勢揃いした様々な種類の小麦色のパンの姿!
この光景こそ、本当に数多くのメディアで紹介され、彼も拘って紹介したショットだった。


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バゲット・アラシェンヌ


以前、某雑誌のパン特集で大きなパンを抱えるシェフの上の方に鎮座する魔法の杖みたいな
非常に印象的な形状のバゲットを見た事があり、それ以来この店で購入したいパンになっていた。

店でもこんな風に並んで立て掛けてあるなんて・・・それにしても見れば見る程、魔法の杖みたい。
これがあればハリーのような魔法使いになれるかな?・・・いや、この店に魔法をかけられているのは
如何やら僕の方みたいだね。だって、何処を向いても溜息の出そうな素敵なパンでいっぱいなのだから。


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ショソン・オ・ポム


 初恋のようなキューンとする甘酸っぱさの、とろっとろに煮詰められた濃厚リンゴ

と、彼が大絶賛していたCUPIDOのショソン・オ・ポム・・・それにしても、美しい曲線だね・・・


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そして、このCUPIDOで忘れてはならないのが、大きく焼かれたハード系のパンを
目の前のスタッフの方に欲しい分量を伝えてその場で丁寧に切り分けてもらう・・・

分量は、グラムでも良し、枚数でも良し、値段でも良し、本当にその人の好みと用途を
最大限に尊重し、ほんの一切れから丸々一個(又はそれ以上)まで自由にチョイス出来る。
まさに商店街の肉屋にも負けない、オーダー販売をしてくれるのだ。でも如何して此処まで・・・


僕も幾つかのパンを選んだ後、ランチを取る為に奥のテーブルに腰を下ろす事にした。
僕も彼と同じ事がしたかったんだ。パンを切り分けてもらって、奥でゆっくり食事する。

そんな僕がオーダーしたセットだって、彼が元気と自信を分けてもらう為に如何しても
食べたがっていたと言う、CUPIDOのパンをシンプルに味わえるセットメニューの・・・


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店の奥に設置されたカフェスペースの、更に一番奥のテーブルに腰掛けた僕は、
料理がサーヴされるまでのひと時を店内をぼんやりと眺めながら過ごす事にした。

パンの売り場と厨房を隔てるステンレス製の台の上には、先程焼き上がったばかりの
バゲットが丁寧に並べられ、店頭に立て掛けられる順番を静かに待っているようだった。


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働き者の大きな“へら”も、パンを焼くのが一段落して暫しの休憩時間かな?


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スープセット


パンが二切れとスープに食後のコーヒーが付いただけのシンプルなセットだ。
でも今回僕は、このシンプルなセットをオーダーしようと最初から決めていた。


ジャガイモのスープ

アイボリーの表面はまるでホイップしたかのようにきめ細かく泡立っていて、
クリーミーでふんわりとした舌触り。しかも滑らかに・・・そして微かに弾ける感触・・・
裏漉ししたジャガイモのぽったりとした食感から広がるジャガイモ本来の自然な風味。
仄かな塩味の奥から、ジャガイモ、クリーム、バターが一体となって体中に染み渡ってゆく。

日本にいながらにしてパリの食卓に着いた気分のまま、夢中ですすっていたけれど、
危うくスープを全て飲み干しそうになってしまった・・・パンに浸して食べたかったのだ!


プレートには2種類のハード系パンが日替わりでサーヴされるとの事で、この日のパンは・・・


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コンプレ

2種類のパンから先ず手に取ったのは、上に乗っていた目の詰まった方だった。

皮だけでなく中の生地も褐色の色合いで、一見、ドイツのライ麦パンが頭を過ぎった。
しっかりと歯応えのある皮はこんがりと焼かれた香ばしさから素朴な外皮の風味も
十分に感じられ、ガシガシとしたパンチの効いた噛み応えも楽しめるのだった。

そしてホロホロと溶けるように広がりながらも食べる程に瑞々しいもっちりした生地。
仄かなコクと爽やかな酸味は彼が指摘していたようにレーズンパンの生地みたい!
更にジャガイモのスープに浸すと、その円やかな酸味が一層引き立ってくるのだ!

“コンプレ”を冠するこのパンには、シェフの“完璧”への拘りが伝わってくるのだ・・・


カンパーニュ

積まれた順番通り次に手にしたのは、僕がこのパン屋で待ち望んでいたカンパーニュだった。
単なる素朴な“田舎パン”に・・・度肝を抜かれたってCindyが興奮気味に語っていたっけ・・・

パリパリに焼かれた皮を噛み切る際に、フワッと口中に広がる焦げた香ばしさ。
皮の直ぐ中側には、たっぷりと水分を含んだもちもちっとしたしっとりの生地。
その、つるんとした食感と共に感じる小粉の爽やかさと仄かな甘み、酸味。
更に生地にたっぷり練り込まれた様々なシリアルのザクザクコリコリ感。

その全てが完全に調和していて・・・これが、CUPIDOのカンパーニュなんだね、Cindy・・・


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このパンのひとかけらの中にも、シェフとスタッフの並々ならぬプライドが詰まっているんだ!!
そして僕は、CUPIDOのパンのひとかけらを口に入れる度に・・・虜になってゆくみたいだよ・・・


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コーヒーのクレマはふんわりしたのに限るんだ・・・だって、Arnold日記にそう書いて・・・


濃いめに淹れた泡がたっぷりのコーヒーに砂糖とミルクを注ぎ、まったりした食後のひと時を送る。
このひと時こそ、僕がこうしてカフェを巡り続けている本当の理由なのかもしれない・・・なんて・・・


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パリで食べたクロワッサンに衝撃を受けてパン職人への道を歩み始めたというシェフ。
その類い稀なる感性と究極を求める飽くなき探求心、尽きる事の無い熱い情熱の元には
何時しか最高の仲間たちが集い、此処、奥沢に“職人の”ブーランジェリーとして開花する。

その評判は、日々美味しいパンを探し求めていた食通たちの間に瞬く間に広まってゆき、
CUPIDOのパンを食した者たちは皆、その美味しさと居心地の良さの虜になってゆく。

そして、このCUPIDO(キューピッド)の放つ矢にハートを射抜かれてゆくのだ・・・


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店を後にした僕は、以前に彼がそうしていたであろうコースを全く踏襲する事にして、
自由が丘の方へと歩み始めた。奥沢からは比較的大きな通りで一本につながっており、
自由が丘駅に近付くにつれ徐々に人通りも多くなり、人気の街としての賑わいを見せていた。

駅からはこの様な緑道や遊歩道が伸びていて、犬を散歩させたりベンチで休んだりと
各人が皆、思い思いに午後のゆったりしたひと時を過ごしていた。賑やかさと穏やかさの
両方を兼ね揃えた点こそ、この街が都内屈指の人気スポットとして君臨し続ける所以だろう。


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唯でさえ賑やかなこの街は、新たな年を迎えてより一層華やかさをましているようだ。
それはまるで、街全体がケーキに乗ったデコレーションのようにキラキラと輝いて・・・


でも、駅からそれ程離れていないにもかかわらず、この薄暗いガードの下だけは
ひっそりと静まり返って、一瞬その華やかな雰囲気も途切れているようだった。
幸せそうな表情だった人々も、このガード下だけは足早に通り過ぎてゆくのだ。

この数メートルの空間だけ、何だか異界にでも迷い込んだ空気に覆われて・・・
そして、此処にいたのだ・・・人々の目から隠れるようにひっそりと佇んで・・・


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この薄暗く、ひんやりとしたコンクリートの中で待っていたのは・・・そう、花の妖精たち。
街全体がデコレーションを施されたケーキのような自由が丘の情景とは全く相反する、
何の飾りも付いていない裸のままの妖精たちが唯一その身に着飾っていたのは・・・

真っ赤な花の髪飾り・・・そう、ピュアで・・・ナチュラルで・・・どんな宝石より美しい・・・
そして、彼女たちの話し相手をしているかのように目の前にいたのが、今回の・・・


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「ゴールドクレスト」


クリスマスのシーズンにはこの街の姿とと同様に、そして世界中のキミたちがそうであるように、
キラキラと輝かんばかりの無数のデコレーションを全身に施された事であろう、ゴールドクレスト。

クリスマスも終わり、今はそのゴージャスだった飾り付けも全て剥がされて裸のままで佇んでいた。
あれほど注目されていた存在だったのに、この場所を過ぎ去る人たちももう全く見向きもしていない。


でも、この尖塔のようなほっそりとした風貌の黄緑色した姿こそ、本当のキミの姿なんだよね!
それに・・・綺麗な黄緑色のスッキリしたAライン・・・クリスマスには気付かなかったけれど、
とってもスマートで、爽やかで、清々しくって、何も付けていないのも凄く魅力的だよ!!


何も身に付けていなかったけれど、ちょっと誇らしげなゴールドクレストと別れた僕は、
自由が丘の絶える事の無い雑踏に紛れ、駅の中へと吸い込まれるように向かった。



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クロワッサン・レスト


これまで僕が目にしてきた彼が紹介するクロワッサンは、確か店名の“クピド”と名付けられていたが・・・
大きく巻かれた三角形の、薄っすらと狐色に焼かれた層から成るクロワッサンの何て美味しそうな事!!


表面の薄い層はパリッとした口当たりでありながら、ひと口食べる毎にふんわりと溶けてゆく。
更に、何層にも折り重なった生地の層はギュッと詰まっていて、尚且つしっとりとした食感に
またひと口と、食べる手も止まらない。その生地の中からジワっと染み出すバターの香り。

ほんのりと甘くコクのあるバターの豊かな風味が口の中いっぱいに広がっていって・・・


これが、シェフが衝撃を受け、パン職人を決意したクロワッサンの美味しさの片鱗か・・・


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ショコランタン


チョコ好きの彼のブログに無かったショコランタン、それもその筈、今秋の新商品との事だった。


キラキラと輝くキャラメリゼされた表面に、たっぷりと散りばめられたアーモンドスライス。
甘いものが大好きな人間なら、この組み合わせだけでも既にノックダウンってトコだろう!

その、ぽっこりと膨らんだ表面を一口かじると、パリパリで、甘くって・・・香ばしい!

サクサクっとしたデニッシュ生地はほんのり甘いバターのリッチな風味が広がって、
段々中に進むにつれてふんわりと軽い食感へと変わってゆくのが堪らないけど・・・

何と言っても、程良い酸味とほろ苦さに仄かな甘さのチョコレートがデニッシュと
絶妙にマッチして美味しい事と言ったら・・・そうか、彼はこれを未体験だなんて・・・


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フィグ


夢だったんだよ、CUPIDOでパンを切ってもらうのが・・・その夢が、遂に叶ったよ!
そして今回僕が迷いながらも切り分けてもらったハード系のパンが、このフィグだった。

このパン生地の配合は仏産の小麦粉88%、同じく仏産のライ麦粉が残りの12%の2種類。
そうしてブレンドした粉を自家培養の干し葡萄から起こした天然酵母で醗酵させて焼いたパン。


コンプレにカンパーニュ、そしてこのフィグと3種類のハードパンを食したけれど、
どのパンも本当にガシガシと歯応えのある香ばしい皮としっとりもっちりとした生地。
むにゅっと粘り気すら感じられる、保湿分いっぱいの生地には仄かな甘みが美味しい。

と言うのも、生地の中には大き目の無花果がゴロゴロと入り、存在感を醸し出していた。
ねっとりとした果肉の中から、じゃりじゃりとした楽しい食感とジューシーさが広がり、
同時に伝わってくる、後を引く濃厚な甘さが素朴な風味の生地に絡み合ってゆく。


ドライフルーツのパンというと真っ先にレーズンを連想するのだけれど・・・
そう言えば、パンのブログを始めてからいちじくの美味しさを知ったと
語っていたのも、Cindy、他ならぬ貴方でしたっけね・・・


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バゲット・アラシェンヌ


シェフが拘り抜いた仏産小麦粉100%を、同じく拘り抜いた石臼で挽いたバゲット・アラシェンヌ。

他のハード系のパンが1%単位の分量でブレンドしているのに対して、此方は100%ピュアなパン。
そう・・・“これだ!!”っていう小麦粉があるからこそ、このストイックなまでのシェフにゴー・サインを
出させた小麦粉で焼かれたバゲットだから・・・その仕上がりには絶対の自信が感じられるのだった。

果たしてその味わいは、バリバリの香ばしい皮は既に他のハードパンで体験済みだったので
覚悟が出来ていた筈だったけれど・・・スッキリした焦げ具合と香ばしさには正直、脱帽だ!

香ばしさは中の気泡たっぷりの瑞々しい生地をも更に美味しくさせているように感じた。
鼻孔を抜けてゆく爽やかな麦の風味がふんわりもっちりとした生地と一体になって・・・


シンプルな小麦だけの生粋のパンなのに・・・この杖の魔法にかかったみたいだよ!!


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たった1%の配合にさえ拘り抜いたシェフのプライドと、そのシェフが作り出した渾身のパンたちを
最高の状態で、そして最高の気分で味わってもらう為のホスピタリティに尽力するスタッフのプライド。

決して妥協する事の無い、この店の1%のプライドが僕に100%の自信を与えてくれる・・・
待っていてくれ、Cindy。これで僕は必ず貴方の待つ場所まで登りつめる事が出来そうだよ・・・
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by mary-joanna | 2010-01-10 23:22 | 今日越えて

フ.仰げば尊し

僕が勤務する某学習塾の今年度の冬期講習も、3学期の始業を前にした冬休み最終日を以って終了した。
例の病気により欠席者の数が少々多かった事を除けば、例年通りの冬期講習期間だったともいえるだろう。
特に受験を控える(既に高校によっては入試を迎えていた)中学3年生にとっては最後の追い込みでもあり、
手応えを感じ自信に満ちた顔付きになった生徒もいれば、逆に今回の講習で準備不足を浮き彫りにされ、
焦りや不安の表情を覗かせ、突然、猛勉強を始める生徒も(非常に?)多くいた事も付け加えておこう。
尤も、これは毎年この時期に繰り返される光景だった。最終的にどの生徒も合格による喜びの笑みや
達成感による安堵の面持ちを満面に湛えて新たな大空へと巣立ってくれるものであり、その瞬間こそ
これまで共に頑張ってきた僕たち塾の職員にとっても最高に充実したひと時でもあるのだが・・・

そんな、中学3年生にとってはまさに正念場の受験シーズンへと突入した冬休み明けの大事な時、
一人の中学3年生が僕の勤めている学習塾を退塾した。理由は至って明確で、両親の離婚によって
母親方について行く事になったその生徒は、母親の実家へと引っ越しする事が急に決まったからだ。
うちの塾に長く在籍した生徒でもあり、他のスタッフからもこんな大事な時に何故?と心配の声が
あがっていたが、その家庭の事情であるし、此方は単なる学習塾に過ぎないのだし、そして何より
当の生徒は未だ中学生、この如何する事も出来ない突然の境遇を唯歯痒くも見守る外は無かった。

とりわけ僕にとってその生徒との付き合いは長く、僕が足利の教室に赴任した約3年前の4月、
中学校に入学したばかりの彼の英語のクラスを担当して以来、都合3年間ずっと教えてきたのだ。
英語の成績としては中の上といった程度であったが、比較的理数系の科目が得意だった事もあり
全体的には学年でも上位に位置し、地元足利市内の公立進学高校への合格も有望視されていた。
しかし、僕と同じバスケ部だった為か、はたまた休み時間によく出していた推理系のクイズ(?)が
気に入ってもらえたのか、僕のところにやって来ては勉強の相談をはじめ、部活やクラス、更には
普段の生活での気になった点、興味を持っている事など本当に様々な話をしていたものだった・・・

・・・たったひとつ、両親の問題を除いて・・・

そう、知らせを受ける前日の、講習最終日も別段変わった様子は見せずに普段通りに授業を
受けて帰っていったのだが、今にして思えば、心なしかやや元気が無かったようにも感じられた。
だから、その知らせを受け取った際、僕はその事実に驚き、彼の行く末を案じ、自分の無力に憤り、
そして、何よりももう彼に会えなくなる事が寂しかった・・・どの道、あと2ヵ月で卒業してしまうのに・・・


3学期も数日が過ぎ、いよいよ受験までカウントダウンとなったある日、それは突然送られてきた。
出社すると僕のデスクには一通のシンプルな白い封筒。机上に郵便物が置かれている事自体は
珍しい事では無く、仕事関連の封書や葉書の整理によって一日がスタートする日も多々あったので
最初は気にも留めていなかったが、この封筒を僕の机に置いた同僚が早く開封するように急かすので
何事かと思い宛名を見ると・・・何と、彼からの手紙ではないか!開封までの、何ともどかしかった事!


  先生、突然退塾する事になってしまい大変ご心配をおかけしました。
  今はまだ、引っ越しの整理も全然片付いていないような状況でして、
  実はこの手紙もダンボール箱に囲まれた中で書いていました。
  新しい学校ですが、まぁ慣れる慣れないなんて悠長な事を言ってる
  ひまも無く、早くも私立高校の学業特待入試を一つ受けたとこです。
  名前も良く知りませんでしたが、この地区ではみんなが受験する高校
  だって聞いたので・・・もちろん僕は受かりましたよ~!!

  もう少し足利にいたかったのですが、結局はコチラで生活するので、
  なるべく早く引っ越しこちらでの公立入試に備える事にしました。
  ですので・・・先生には3年間お世話になったのにちゃんと挨拶も
  できずに別れてしまい、本当に申し訳ありませんでした・・・

  また公立入試が終わりましたら、改めてご連絡したいと思います。
  それでは先生もお元気で・・・受験、頑張ります!! 
 


たった一枚の便箋を両手に持ったまま、暫くの間僕は席を立つ事はおろか身動き一つとる事も出来なかった。
人目を憚らず号泣するなんて格好付けた事は出来なかったけれど、その夜、家族が寝静まった後にたった一人、
薄暗い部屋のデスクの上で再びこの手紙を広げた時は、熱いものが込み上げるのを抑える事が出来なかった・・・

そして、暫くこの手紙を見つめた後、僕は決心したんだ・・・彼に一足早い“アレ”を見せてあげる事を・・・
次の休日、早速僕は行動を開始した。向かった先はお隣りの群馬県。何故ならば“アレ”は其処でしか
見る事が出来ないし、その前に如何しても立ち寄りたい場所があるんだ!!・・・そう、例の“勉強部屋”に・・・



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cafe wabisuke



群馬県伊勢崎市の中心からやや外れた郊外にあるテナントの一角に僕はやって来た。
オープンから一年が経っていたが、良い意味で注目を集める事無くひっそりと営業を続け、
群馬近郊のカフェ好きな人たちの間では県内の数少ない隠れ家的な存在として愛されていた。

テナントとは言え、真っ白な壁にはアンティークと思しき古びた味のある木枠のドアや窓枠、
更にはベンチが絶妙なバランスでゆったりと配され、店主のセンスが十分に感じられた。

でも、花を追い求める僕を出迎えてくれたのは、このカフェの店名を冠する・・・


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ワビスケ(白侘助)


縦に伸びた細い枝には小さな猪口咲きの白い花が咲き誇っており、まさにこの花の時季を迎えていた。

花弁の質感や形状は勿論、葉の色艶や形等からもこの花が冬を彩る寒椿の仲間である事は確かだが、
他の寒椿に比べて花弁の控え目な開き具合や落ち着いた色合い、そして何と言っても“侘助”という名が
何も無い真っ白でシンプルな外壁のキャンバスに伝えたいオブジェを大胆に配置するセンスとも相まって、
何とも“侘び寂び”を感じさせてくれるではないか・・・花だけでも気になるのに、それが“侘助”だなんて・・・


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このカフェにやって来るまで、このドアは果たして何処でどの様な人々を迎え入れてきたのだろう?
そんな思いに浸りながら、僕はこの趣きのあるドアに手を掛けた。その先に広がっていたのは・・・


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中に入った僕を真っ先に出迎えてくれたのは、シンプルな棚に置かれた硝子の小瓶だった。
一輪挿し・・・グラス・・・キャニスター・・・その用途によって異なった様々な形状の小瓶たちは
其々が個性的な表情で僕を見つめているようで・・・しかも瓶の中にはカラフルなビー球にボタン。

可愛らしい彼等を眺めていると、何だか小さかった頃の自分に戻ったみたいな・・・
まるで未だ学校に通っていた頃の・・・あぁ、このドアに迎えられる人たちってきっと・・・


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広々として簡素な部屋の中には以前のオーナーの愛着が感じられる、丁寧に使い込まれて
絶妙な風合いを感じさせるアンティークの上品な調度品の数々が、ゆったりと配されており、
それは開放感と寛ぎは勿論の事、適度なプライベートも保たれる空間に仕上がっていた。

外の世界との接点でもある窓枠に嵌め込まれた磨りガラスから差し込む午後の陽射しは
ほんのりとしたミルク色になって部屋に広がり、穏やかな時間と空間を演出してくれる。


なぁ、此処にいれば受験勉強の焦りや不安も優しく解き解してくれるんじゃないか?


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たまには気の置けない友人とお茶でも飲みながら将来を語り合うのも必要だぜ!

そして、きっと心優しいお前の事だから、母さんに心配掛けまいと何事も必要以上に
自分一人でこなそうと無理しているんじゃ無いか?・・・でも、ずっと部屋に籠ってばかり
いないで、母さんや家族の方と一緒に食卓を囲んで談笑するのもお互いに安心出来るぞ!


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そう、こんな時こそ、ダイニングの大きなテーブルで・・・家族全員で食事して・・・
他愛の無い些細な事だっていいじゃないか・・・もっと母さんの顔を見てあげなくちゃ・・・


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そんな時、テーブルの端にさり気無く花が添えられていると・・・思わずホッと和むんだ。


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今年の冬は飛び切り寒いらしいからな、ちゃんと膝掛けして勉強するんだぞ!!


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あと、栄養もしっかりと採らないとな。偏った食生活ばかりじゃなくて、果物とかも
ちゃんと食べて、ビタミンも・・・えっ、先生に言われたくはないって!?・・・ははは・・・


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じゃあ、そろそろ・・・“勉強部屋”の方に案内するからついてきなよ・・・


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コイツに花を活けているなんて・・・まぁ、“勉強部屋”のインテリアにはぴったりかな?


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ようこそ、此処が僕の“勉強部屋”だよ。どうだい、この書斎机?かなり使い込んでいるけれど、
褐色の地肌を優しくさすってやると、良く馴染んだ温かな木の感触が手の平全体に伝わって、
忙しなかった一日の疲れをこの重厚感溢れる机が包み込んでくれる気がしてくるんだよ・・・

それに、手の届きやすいように直ぐ背面に置かれた棚の中には欠かす事の出来ない・・・


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年代物の鉛筆削りと算盤が出番をゆったりと待っているんだ・・・


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更に、店主の宝物のテープカッターや・・・


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今ではめっきり見る事も無くなった、こんな量りだってあるんだぞ。

それにしても、このメモリの数、すごいだろう!!
この量りだったら、お前のでっかい夢だって量る事が出来るかもなぁ・・・


うん、そろそろ夜食を持ってくるか?夜遅くまで勉強していると腹も減るだろう・・・
部屋で一人で食べるのは寂しいけれど、後で振り返ってみると良い思い出になるんだ。

何を食べるのかって?夜食って言ったら勿論、熱々でスタミナもあって、みんなの大好きな・・・



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焼きカレー


寒い夜にぴったりの、身体も心もポカポカに温めてくれる夜食といえばやっぱりこれだよ。
肉にゆで卵にチーズに栄養もスタミナも満点で・・・後もうひと頑張り、これで乗り切ろうぜ!!


そして、ドリンクだって冬にぴったりのを用意しているんだよ。


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ゆずティー


そう、この季節、仄かな柚子の香りと焼きカレーで火照った身体を心地良く冷ましてくれる
このスッキリとしたゆずティーにまったりと包まれれば、受験の張り詰めた緊張感だって
優しく解き解れていって、きっと心の芯からリラックス出来るんじゃないかな・・・

爽やかな柚子の香りと一緒に頂くのは、勿論・・・甘いデザートしかないよね!


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キャラメルチーズケーキ


脳をいっぱい使ったら、甘いものも必要だぞ!

キャラメルのまろやかな甘さとチーズのなめらかな風味が絶妙にマッチして美味しい、
このしっとりとしたふんわりチーズケーキを食べて・・・気分も一新、更に勉強も捗るよ!



さぁ、腹もいっぱいになったし、眠くなる前に“勉強部屋”を発つ事にしよう。
此処は至極居心地が良いから、気付いた時には書斎机で寝ていたなんて事も・・・

目的の地までは同じ群馬県内でも数十キロの隔たりがあり、しかも其処は山の中なのだ。
だから現在僕がいる伊勢崎市からは暫くの間はドライブを続けなければならなかった。
車を走らせる事数十分、街並みは田畑へと変わり、めっきり民家も無くなった頃・・・


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目の前には見渡す限りの雄大な景色が広がっていたのだった。

四方を取り囲むように折り重なる山の稜線・・・眼下に小さく見える麓の集落・・・
僕は群馬と埼玉の県境に位置する、群馬県旧鬼石町の外れの山間まで来ていた。


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何故この場所なのかって?・・・それは勿論、今、此処でしか見る事の出来ない・・・

でもその前に、ほら、其処彼処で咲いている綺麗な花を見てみなよ!


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山茶花


この季節にはこの季節の、まさに今が旬の最高の輝きを見せてくれる花々を!
お前だってずっと頑張ってきて、今、一番輝く時がやって来たんだよ!!


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だけどね、本当はお前と一緒に見たかった花があったんだよ・・・
それは、もう少し先の、春にならないと咲かない花だったんだ・・・

そう、お前にとっても僕の生徒たち全員にとっても、本当の春に咲く花・・・


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「フユザクラ」


みんなで一緒に、桜の花弁が舞い散る下で合格の喜びを分かち合いたかったんだ。
みんなで一緒に、桜の花弁が舞い散るように儚い塾の思い出に浸りたかったんだ。

でも、お前だったら大丈夫だ!頑張り屋のお前なら絶対に第一志望に合格するよ!!
だから・・・少し早いけれど、僕からお前への合格祝いにこの桜を見てくれないか?

いや、気を抜かせるつもりも、逆にプレッシャーをかけるつもりも無いんだ。
唯、如何しても見て欲しかったんだ。困難な状況でも美しい花を見せてくれる
この白い“合格の印”を、僕からの受験のお守りとして受け取ってくれないかい?


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今は未だちっちゃな蕾だけれど、何時かきっと大輪の花を咲かせて・・・


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真っ白な帆をピンと張って、風を捉えて未知なる大海原へと旅立とうとする君。

希望と不安を胸いっぱいに秘めながら、どんな困難が待ちうけるやも知れない海へ・・・
この先、志し半ばにして挫けてしまいそうになる事だって多々あるかも知れないが・・・

でも、大丈夫、お前だったらきっと最後までやり遂げる事が出来るって!!
3年間ずっと見守ってきた僕が保証するのだから、絶対に間違いは無いって!!


暫しのお別れだけれど、高校に入って落ち着いたら必ず会いに来てくれよ。
そして・・・僕とお前の、お互いのでっかい夢をとことん語り合おうぜ!!

その頃・・・そう、足利の街中でも桜の花弁が舞う頃には、きっと・・・
僕の夢も、ケリがついている頃だから・・・きっと・・・
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by mary-joanna | 2010-01-04 18:11 | 今日越えて