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ヰ(イ).僕の見つけた小さい秋

明確な記述は無いものの、Cindy(William?)が綴ったArnold日記に因れば
物語の主人公であるArnoldは自身の日記の中で地元・足利の店も紹介していた。

本当によく此処まで続いたなと我ながら感心してしまうこのElvis Cafeであるが、
良く考えてみると、20数回にも及ぶ記事の中で僕自身の地元の足利市に軒を
構える店については、今までのところ唯の一度も紹介してはいなかったのだ。


足利市内のとある企業に勤めて3年目を迎えるが、これまで転勤?はおろか
市外に出向する事も全く無かったので、仕事に関して足利を出る事は無かった。
しかも家族と共に暮らし、偶然ではあるが現在交流の深い友人や・・・彼女までも
足利市に住んでいる為、今年の夏までは日常生活は殆んど市内で事足りていた。

確かに休日は近隣の街だけでなく県外(足利市は栃木県の外れに位置する)等にも
頻繁に出掛けていたし、GWや盆正月には更に遠出の旅行に行く事もあったけど・・・
だからと言ってこれまで足利市内にある店を全然紹介していなかったという事実は
全く意識していなかった分だけ余計に、そして意外と言うか不思議な気分だった。

彼の日記(Cindy's WALK)にも素敵な足利のカフェやパン屋が登場して、
その中の何軒かは実際に僕も訪れた事があった・・・いや、通っていたのだ。
更に、宇都宮の紹介をリクエストしておきながらこれまで沈黙を続けるハニーも
同じ足利市に住む人間という事は、もしや知らずに何処かで会っている事も・・・


あのリストに書き記された・・・あの物語の舞台となった・・・そして・・・
恐らく僕が追い求めている何かを解く鍵となるかも知れない一連の店の一つを
遂に、このElvis Cafeで紹介してしまった僕にとっては、今後の“イロハ計画”を
続けていく上でも、このタイミングで地元の足利の街と・・・店と・・・イニシャルとを
載せてみたいと強く決心したのは、勿論単なる気紛れだけでは無いと思っている。

尤も“満を持して”って表現は、少々大袈裟かも知れないけれどね・・・



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11月も半分が過ぎてそろそろ身の回りも本格的な冬支度に様変わりする頃、
この日はそんな季節の変わり目をより一層強調する、どんよりした曇り空だった。


僕の勤務先は市内の中心に位置する通りに面した場所と、更に北の方角に
進んだ場所との2ヶ所にあり、行き来するのに目の前の大通りを移動していた。
その通り沿いには、市内の観光名所の一つでもある鑁阿寺(通称“大日さま”)に
向かって伸びる石畳の路地の曲がり角があり、通勤途中に幾度と無く目にしていた。

地元住民として恥ずかしい事であるが、この路地に入るのは一体何時ぶりだろう?
Elvis Cafeを始めてから様々な街の様々な路地裏を歩いてきたが・・・灯台もと暗し・・・


細い路地の左右には、昔から営まれたであろう地元の商店や路地の雰囲気にマッチした
情緒溢れる飲食店と土産物を売る店に交じって、少数であるが僕の気を惹く店が見られた。



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例えば、まるでパリの街角からやって来たこの白い窓枠の建物は、どうやら雑貨屋らしい。

残念ながら・・・この日、店内に明かりが灯される事は無かった・・・


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スプレー菊


その代わりなのだろうか、路地沿いの花壇には可愛らしい赤紫の花が僕を出迎えてくれた。
寺社に飾られた大輪の菊も素晴らしいけれど、さり気無く路地に彩りを添えるキミたちも素敵だよ。

通りの片隅に花があるだけで、無味乾燥で忙しなかった“移動”が・・・
視界の片隅に花があるだけで、気にも止めていなかった“背景”が・・・

ゆったりとした“散歩”に・・・華やかな“絵画”に変身するんだ。


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この路地の終点に控えているのは大日さまの愛称で親しまれている鑁阿寺の、
正面の堀に架かる、これまた誰からも愛され此処のシンボルにもなっている太鼓橋。

この橋を恋人と並んで渡ると別れてしまう・・・なんて学生時代に噂されていたなぁ・・・


手前の蔵とのツーショットも、歴史の街である足利の雰囲気を一層盛り上げてくれた。
確かに大日さまの周りには、この手の歴史を感じさせる漆喰の蔵が点在していたが、
“鑁阿寺と蔵”と言えば今は無きあのカフェの存在が思い出されてならないんだ。

彼の紹介にあった様に・・・あれは全て夢の中の出来事だったのかなぁって・・・


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彼の物語を抜きにしても、この空間にいると、まるで無声映画のワンシーンに
迷い込んだみたいな、とても凛とした佇まいの静寂の中に包まれてゆく。


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広々とした境内の彼方此方には様々な種類の木々が植えられており、
11月も半ばに差し掛かった今日、此処足利でも紅葉のピークを迎えようと
鮮やかな赤や黄色で境内の仏閣に彩りを添える木々もちらほら出始めてきた。


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そんな綺麗な木々の中でも、紅葉と言って真っ先に目がいくのは真っ赤な・・・


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紅葉(モミジ)


可愛らしい星型の赤い葉っぱが寄り添う様に集り大きなキャンバスを埋め尽くしていた。

目にも鮮やかな朱色から落ち着いた感じの深紅へ微妙なタッチで仄かに変わりゆく様は
まるで燃え盛る炎の一瞬の揺らめきを捉えた印象絵画を鑑賞している様にも思えた。


やがて情熱的な炎は完全に消えて、後には寒々と焦げた真っ黒な枝が残るのに・・・


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塔と銀杏


だが、今回此処に来たのは如何してもこの時期に見ておきたい木があったからだ。
その木を探す為に境内を彷徨い暫く歩き続けていたが、あの塔の向こうに見えるのは・・・


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「イチョウ(銀杏)」


これが、とちぎ名木百選に数えられている“鑁阿寺の大いちょう”、か。

根元から二手に分かれて大空へと伸びていくこの巨木は、直径約9メートル、
高い所では約30メートルにもなるという、まさに足利随一の“大いちょう”だった。

これまで何度となく大日さまに訪れこの木を目にしてきたが、気に留めた事は無かった。
そんな地元の魅力を改めて僕に教えてくれたのも・・・そう、やっぱり彼なんだよ・・・


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今年の初め頃だったかな、彼の日記に今は無きあのカフェが登場したのは・・・

まるで時間を越えて古き良き足利の蔵の街に降り立った様な不思議な物語に
僕は(時々訪れていたのに)非常に新鮮で、でも何処か懐かしい気分にさせられた。


そんな彼の蔵の店の物語では、裏手の路地で繋がった直ぐ近くこの鑁阿寺と、
今僕の目の前に聳える此方の大いちょうも、非常に印象的に紹介されていた。

彼の日記では丸裸で寒そうだったこの大木も、今は綺麗な黄色い葉っぱを
ふんわりと体いっぱいに身に纏って・・・とてもお洒落で温かそうだよね・・・


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 だれかさんが だれかさんが
 だれかさんが 見つけた

 小さい秋 小さい秋
 小さい秋 見つけた

 目隠し 鬼さん 手の鳴る方へ
 澄ました お耳に 微かに沁みた
 呼んでる口笛 百舌の声

 小さい秋 小さい秋
 小さい秋 見つけた



ほらっ、僕も見つけたよ・・・大きないちょうがくれた小さい秋を・・・


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cathette


元来た路地を旧市街地の方に戻って大通りに出ると車の量もぐっと増えるが、
通り沿いには駐車スペースが殆んど無く、また他の地方都市の市街地同様、
郊外の大型商業施設に客足を取られている感もあり、通りに面した建物は
何処か暗い空気が漂っている様な、活気が欠けている様な印象だった。


そんな通りにあるのが、このグリーンの瓦屋根の白い建物だった。

普段はシャッターが下りていて、あぁ、この店もか・・・と、先の懸念を
連想させてしまいそうではあるが、木曜日のこの日は気持ちの良い
大きなガラス張りの外観を通して穏やかな印象の店内が窺えた。


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nico + shuan


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見た目以上に広々と感じるのは、アンティークのドアやテーブルなどの調度品を、
まるで彼らが気持ち良く寛げる様にと考えてゆったり配置しているからであって、
それは同時に、この場所にいる僕にとっても、十分寛げる空間になっていた。


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nico


そんな緩やかな空間を提供してくれる店だから、パンのディスプレイだって・・・


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どのパンも、のびのびとして、心地良さそうで、そして・・・美味しそうだよ!


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パンが置かれたテーブルの反対側にはレディースの洋服やアクセサリーが
此方もまたゆったりとディスプレイされ、きっとまったりと選ぶ事が出来るだろう。


この空間にはパンや服などの“商品”だけが置かれている訳ではない。


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可愛い絵描きさんのアトリエだってちゃんと用意されているんだ!
それに、その奥の木の椅子にちょこんと腰掛けているのは・・・


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君だって、此処でのんびりまったり寛いでいるんだね。


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shuan


cathetteと名付けられたこの店は、パン職人の店主ことnicoさんと、
もうひと方、リネン素材のレディース服を主に手掛けているshuanさんの
二人の店主が営む非常にユニークな形態のショップで、先程も紹介した通り・・・


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さらりとした肌触りの良さそうな風合いの、シンプルで落ち着いた印象ながら
一目で作家の高いセンスと感性が伝わってくる、リネンの服が飾られていた。

単にお洒落というだけでなく、着る人が自然と和やかな気持ちになりそうな・・・


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更に、アクセサリーがディスプレイされた、こんな素敵なブリキのケースや・・・


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所々錆びたクリーム色の傘立てを眺めているだけで、穏やかな気分になってくるんだ。


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蔓編みの篭たちと一緒に吊るされた古びたランプシェードから零れ落ちる
仄かに揺らめく蜜柑色の明かりがぼんやりと店内を照らし出していて・・・

ファインダーを覗くのを止めて、思わずウットリしてくるよ・・・


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君たちを連れて旅に出たいんだ。
篭の中にはいっぱいのお菓子とパンと・・・

まるで彼みたいな事を言って・・・段々似てくるのかな?


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お菓子系のパンを3個ほど購入する事にした。

実はこの他にも色々と迷っていたパンや焼き菓子があったのだが、
この日は2週間ぶりの販売日であるばかりか、今後冬期に限ってだが、
1~2週間に一度(木曜日)しかパンの販売を行わなくなってしまうそうで、
オープン直後にお邪魔したにもかかわらず、次々と訪れるお客さんによって
パンは見る見るうちに売れていき、考えている間も無くほぼ完売してしまった。

撮影のため、特別にアンティークの台の上にプレートを置かせて頂いた。


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あんバター


元気なあの子のゲンコツ位のコロコロ可愛いまん丸白パン。

あのパックマンが3Dになったみたいにパカッと口を開けて、
その中にはまるで和菓子みたいに落ち着いた印象のしっとりした
紫色のつぶ餡が口の端っこからはみ出さんばかりにサンドされていた。

小麦粉のふんわりとした薫りにすっきりな酵母の優しい香りが
ミックスされて、思わずひと口食べるとホロホロっと崩れながらも
もっちりとした食感が感じられてこの白パンだけでもとても美味しい。

でも、ホクホクに炊かれた餡の滑らかな舌触りから伝わる自然な甘さと
柔らかな粒の感触、餡の奥でキラキラ輝くクリーム色のカルピスバターが
ミルキーな風味が生地とつぶ餡にとろりと絡んで一つになって・・・

僕もモンスターみたいにキミを追いかけてしまうんだ。


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ベーグル(チョコ)


艶やかな焼き色のぷっくり膨らんだベーグルも購入した。

ほど良い厚みのリングに比べて表面の皮は薄くパリパリ・・・とても香ばしい!
中の生地は表面の皮からは想像出来ない位ふっくらでもちもちしていた。
ひと口噛み締める毎にギュッと押し返す様な弾力感が何とも堪らない。

そんなリング状の生地に沿ってぐるりと巻かれた濃厚なチョコレートの、
芳しいほろ苦さと仄かな甘さが口の中いっぱいに溶けて広がっていった。


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おからバナナマフィン


やぁ、こんがり茶色のもじゃもじゃ頭のキャベツ君・・・
彼の大好きだった君にやっと僕も会う事が出来たんだね・・・

サクサクのカーリーヘアは、中がふんわりしっとりしていて、
もぎゅもぎゅした食感から自然なおからの風味も加わってくる。

更には、ふんわり広がるバナナの甘い香りにうっとりしていると、
もじゃもじゃ頭の真ん中のトロトロになったバナナの、濃厚で
ジューシーな甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がって・・・

どうやら僕も・・・君に恋しそうだよ。


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街で見つけた小さい秋は・・・
やっと見つけた小さい秋は・・・

来たかと思ったら、直ぐ何処かに行ってしまって・・・
会えたと思ったら、もうさよならを告げてしまって・・・

だれかさんが見つけた小さい秋は・・・一瞬だけ手のなる方へ・・・
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by mary-joanna | 2009-11-26 10:33 | 有為の奥山

ウ.天国に向かって

 Littleさん、あの夜以来、ご無沙汰しております。
 最近の宇都宮でのご活躍、楽しく拝見させて貰いましたわ。

 でもね・・・

 ハニーのリクエストには三度も応えていらっしゃるというのに、
 先に“予約”した私のリストの方は一向に紹介してくれないとは・・・

 何て連れないお方なのかしら・・・



やはりと言うか、当然と言えばそれまでの事なのだが、
パピヨンとハニー・・・2つの点は一本の線で結ばれていた・・・
それに、蝶々と蜜・・・そうだね、考えてみれば花のブログだものね。

このパピヨンからの(今回は)鍵コメントがElvis Cafeに送られたのは、
“みはし”の通りと橋と、僕を一瞬で虜にしたフレンチの薫りでいっぱいの
あのカフェの、三つの“みはし”を紹介してまだ一日と経たない夜の事だった。

ハニーの沈黙は気になるが、(えこ贔屓する?)僕の作戦は一応成功した様だ。


パピヨンが僕に渡した、一枚の紙に無機質な箇条書きで記載された店の名前。
そう、僕自身が時間も忘れて幾度となくパソコンのモニターを食い入る様に凝視し、
その街や自然の風景に空気の様に溶け込みながらも全く個性的で他には見られない
類い稀なるセンスに圧倒されこの上ない衝撃を受けた、十数軒の素晴らしい店の名前。

・・・残念ながら既に閉じてしまった店も含まれているのだが・・・

その夢の店を僕はこのブログを通じて制覇し尽くすつもりは、さらさら無かった。
更に、例のグループとの約束(少なくとも、あのパピヨンが僕に語った言葉)では、
リストの中からElvis Cafeに紹介する店の数や順序等は僕に委ねられているのだ。


このリストを手にするずっと前から、僕は既に決めていたんだ。
最初からこんなリストが無くたって・・・お前等なんかに会わなくたって・・・

最初から・・・そう、最初から決めていたんだよ。
僕が貴方に伝えたいメッセージとして、あの物語の舞台に登場する店を
もしElvis Cafeで紹介するなら、僕が一番初めに訪れようと思っている店は・・・



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足利市内の外れに位置する小さな駅からの出発となったが、今回の目的地はこの駅から
出発する東武伊勢崎線を、(途中の久喜駅で乗り換えるが)唯ひたすら終点まで目指すのだ。

この日は抜ける様な青空が気持ち良く、高架式のホームからは付近の街並みや収穫を終えて
剥き出しになった田畑の風景、更に北側に広がる小高い山々の木々の様子まで見る事が出来た。


時刻は丁度午前9時、普段は通過するこの寂れた駅にも朝の時間帯の準急列車は
上りに限って言えば、通勤や通学用に比較的頻繁に電車が停車してくれるのだった。
そして、東武伊勢崎線の終点の駅までの約2時間、電車の中で揺られ続ける事となる。

この2時間もの缶詰状態の中、持ってきた本を読みながら過ごそうと思っていたのだが、
今回訪れる予定の店と、もう一ヶ所、如何しても立ち寄っておきたい場所の事を考えると
如何にもページが進まず、一旦捲ったのに全く内容が頭に入っていない事も多々見られた。
結局途中で本を読むのを止めてしまった僕は代わりにバッグの中から数枚の紙を取り出した。


数枚のA4のコピー用紙にはびっしりと文章が書き込まれていたのだが、これは昨夜僕が
あるブログの文章部分をコピーしワードに移し替えた後、改めてプリントアウトしたものだった。

その文章の1行目には、その記事のタイトルとして“04 Come In Alone”と書かれていた。
そう、これから僕が訪れる予定にしている浅草のカフェを紹介した、Arnold日記の写しなのだ。
2時間もの移動時間の大部分、僕はたった数枚の記事を何遍も繰り返し読む事に費やしていた。

・・・今日、これから経験するであろう未知の領域に備えて・・・


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駅前の交差点を何の違和感も無く人力車が闊歩する街、浅草。

東武伊勢崎線の終着点でもあるこの街は、足利からやって来た僕にとって
純粋に交通面に於ける東京への玄関口となっているのは勿論の事なのだが、
それ以上に東京の店が大半を占めている彼の日記への入口に感じてしまうのだ。

駅を出て目の前の交差点を渡れば江戸の街へとタイムスリップする有名なあの風景が
待っているのだが、180度振り返って橋の方に視線を向けるとこの街のもう一つの顔である・・・


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電車の中からこの2つのモニュメントが視界に入る度に目で追ってしまうんだ。
それと同時に、あぁ・・・また浅草にやって来たんだなぁ・・・って思ったりもして・・・

そんな浅草の“今”と“これから”に、もう一つ新たな仲間が加わる事になった様だが、
その前に如何しても行っておかなければならない場所がある・・・それこそ今回の・・・


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雷門


どうだと言わんばかりの圧倒的な存在感で参道の入り口に仁王立ちしているキミこそ、
まさに“浅草の顔”・・・まだまだ彼等新参者たちがこの役を引き継ぐのは早いかな?

記念撮影をしている人たちの間を何とか掻い潜り雷門を通り抜けると先の混雑は
治まるどころか、前方を確認する事すら難しい程の人の波が待ち受けていた。


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仲見世通り


雷門から浅草寺の境内入口の宝蔵門までの、僅か数百メートルの細い路地に、
一体幾つの店が軒を連ね、どれ程の人間がこの通りを練り歩いているのだろう。

そんな仲見世通りに犇めく観光客の波を掻き分けながら、左右の店に目もくれず、
僕はやや小走りにも近い足取りで前方の視界を段々占拠する二重の赤い門を目指した。


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仲見世通りの付け根とも呼ぶべきこの荘厳な入母屋造の門の内部こそ、
いよいよ浅草寺の境内となるのだが、参拝をしに来た訳ではなかったので、
これまでのスピードが嘘の様に落ち、境内の中をぶらぶらと散策する事にした。

目的の店の開店時刻には十分に時間があったのだから仲見世をのんびりと
見て回れば良かったのだが、如何いう訳か人込みの中だと忙しなくなるらしい。


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宝蔵門と五重塔と・・・浅草ビューホテルの新旧スリーショットなんて、どう?

何度か再建や修復を繰り返しているとは言え、東京都内最古の仏教寺院であると共に
下町情緒溢れる浅草の中心的スポットとして国内外から観光・参拝に訪れる人の絶えない
浅草寺のイメージと言えばやはりこの朱塗りで統一された境内の各建物ではあるけれど・・・

その浅草寺の直ぐ目の前に聳える高層ホテルとの風景も、もうすっかり様になってきたかな?
でも、隅田川の反対側には更に度肝を抜くインパクトのスタルク建築と、これから僕が訪れる・・・


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先日宇都宮の二荒山神社で見る事の出来た菊の展覧会は此処でも行われていた。
この時期は全国の寺社で開催されるイベントなのだろうが、大小様々な種類の
色鮮やかな菊が境内の特設さ会場に展示され、参拝客の目を惹いていた。


境内の裏手に回った僕は、もう一つ、先日の宇都宮訪問に欠かせないあの花に出会った。
その際は足利から小さな鉢植えを持参したのだけれど、今回はこんなにも立派な・・・


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ムラサキシキブ


また貴女にお会いしましたね・・・この前よりも更に一層華麗に着飾って・・・
貴女の鮮やかな紫に輝く肌は厳粛な雰囲気漂う歴史的な空間に良く似合いますよ。



予定の時刻が迫ってきた事もあり、浅草寺を後にして第一の目的地でもある・・・
例の場所へ向かって歩み出した・・・彼が未だWに知られる前にひっそり訪れていた・・・


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伝法院通り


先ほどの仲見世とはまた異なった、江戸下町の歴史情緒を感じさせる趣きのある通りだ。
華やいだ仲見世の風情も良いが、この落ち着いた印象の下町の雰囲気も捨て難い。

そのまま伝法院通りを進み、浅草公会堂を少し過ぎると数本の分かれ道に出る。


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六区通り


伝法院通りから浅草演芸ホールまでの、ほんの100メートル弱の僅かな通り。
でもその僅かな距離の左右で出迎えてくれるのは・・・何ともゴージャスな芸人たち!

ほら、僕の目の前には欽ちゃんが待ってるじゃないか!!
そんな欽ちゃんの直ぐ傍にひっそりと立つ小豆色ののぼりには・・・

コーヒーとホットケーキの文字!!


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天国


古びた煉瓦造りの建物に掛けられた、“天国”と書かれた大きなコーヒーカップの看板・・・
まさにArnold日記の、“04 Come In Alone”の回で紹介されたあの看板なのだが、
彼が載せていた写真の姿とは何かが違う・・・何か、こう・・・あっ、看板の色だ!

確か例の写真の看板は脇に立っているのぼりと同じ淡い小豆色をしていた筈だ。
このくすんだモスグリーンは・・・酸性雨で此処だけ色が落ちたとでも言うのか?

尤も、この自然な色落ち具合と何処か哀愁をも感じさせる微妙な鶯色は、
この煉瓦造りの外観は勿論の事、浅草の裏通りに良くマッチしていた。


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正面から見る店の外観は、浅草の商店街の中だけあって間口は狭いものの、
古びた赤レンガ造りが印象的で二つのアーチは碓氷峠に掛る陸橋を連想させた。

右側のアーチはテイクアウトのスタンドになっていて、この店の定番のホットケーキは
勿論の事、ホットドックなどお持ち帰りだけで無く散策のお供にも丁度良いと思った。


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スタンドの隣りの僅かに奥まったチョコレート色の古い木枠のドアを押ス。

ドアの手前の額縁は彼の写真には無く、店主の話だとその後設置したそうだが、
赤色エレジーの、幸子と一郎の悲しい物語は今の僕にとっては彼と彼女の・・・
いや、僕には未だその全容は全く掴めていないんだ・・・だからこうして・・・


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店の中に入ると壁に沿って小さな4人掛けのテーブルが2つ置かれていた。
その向こうには厨房があって、ケーキを焼く様子が硝子越しに見る事が出来る。

最近の洒落たカフェには見られない昭和の喫茶店の風景が僕には新鮮に映った。


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向かい側にはやや小さ目のテーブルが並び、此方は一人客用の席になっている。
更に壁に沿ってオレンジ色のソファーが続いており、窓際にまで伸びていた。


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そして、その窓際の席に着く事にした・・・嘗て彼がそうした様に・・・


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ひと段落ついてソファーに腰掛けると大きな窓からは表の六区通りの様子が窺えた。
のんびりと窓の外を眺めていると、人力車がやって来て僕の目の前で停まった。
其処に乗り込んだのは、外国人の観光客・・・まぁ、当然と言えば当然だが・・・

外国人を乗せた人力車は再び走り去って行ったが、如何やら此処が発着所になっていた様だ。
まぁ、これもこの浅草ならではの光景という事なのだろう・・・とても長閑な時間が過ぎてゆく・・・


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そう、此処は喫茶店だもの、心地良いひと時はお手のものだったよね・・・


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そんなまったりとした空気を感じていると、先ずはじめにコーヒーが運ばれてきた。
シンプルなドリップコーヒーをオーダーしたが、この空間に良く似合っていた。

そして、真っ白なカップには外の看板で目にしたあの“天国”の文字が・・・
このカップをずっと憧れていたんだよ・・・あの写真を初めて見たその日から、ずっと・・・


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ホットケーキ


可愛らしいサイズの真ん丸ホットケーキが2枚、大きさに比べて厚みは十分だ。
仄かに色付いた綺麗な焼き色の表面には“天国”の二文字が刻印されている。

サックリと焼かれた表面の、微かに感じる香ばしさの中は勿論、ふっかふか!
ほんのり優しい甘い香りにしっとりとした口当たりの生地は、懐かしいあの感じだ。

備えられたバターが生地の熱で溶けて、ミルキーな塩味がとろりとした濃厚な
シロップの甘さと混ざり合って気泡でいっぱいのふかふかな生地に染み込んでいく。


遂に・・・遂に此処までやって来たんだね・・・


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店を出た僕は六区通りから伝法院通り、そして仲見世通りと、
来た道をそのまま引き返す様に駅の方に向かって歩いた。

碁盤の目の様に縦横に路地が広がる浅草故に、他にも近道はあったのだが、
この雰囲気を一秒でも長く感じていたかったので、敢えて同じ路を通りたかったのだ。


駅前を過ぎて隅田川に架かる橋を渡ると、最初に見た金色に輝くビルが一層大きな姿を現した。

橋の真ん中辺りから川の方を眺めてみると、直ぐ手前には屋形船も停泊しており、
此処でも尽きる事の無い魅力的な浅草の風景を満喫する事が出来るのだった。


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こんなに近付いたのは初めてだけど・・・何という圧倒的な光景だろう。

ビール会社の建物との事で左のビルの方は容易に想像がつくのだが、
この美術作品さながらのモニュメントの意匠は何をイメージしてのものか、
暫くの間考えていたが、見上げ続けて疲れた為に別れを告げて歩き始めた。


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下町の裏道を歩き続けひと駅分の散歩の末に辿り着いたのは、この運河の畔・・・


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スカイツリー


運河から更に近付くと、周りにはデジタルカメラや携帯電話を手にした沢山の人が
まるで撮影会を行っているかの様に青空に突き出た一本の塔を撮影していた。


まだまだ完成までには1/3にも満たない建設途中の段階ではあったが、
直ぐ傍まで近寄った際の(それでも大分手前で規制されていたが・・・)、
まるで天にまで届くのではないかとも思える圧倒的な迫力と言ったら
とても言葉で表現し切れるものでは無く、唯茫然と見上げていた。




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「ウインターコスモス」


10月の後半までは頻繁に訪れる園芸店の軒先で白と黄色が混ざった可愛い花弁を
ひょろっと細長く伸びた茎の先っちょでゆらゆらと揺らめかせていた筈だったのに、
少し見ない間に枯れ始めて半額の値札と共に店の端っこに追いやられていた。

冬の名を冠しながら、冬の訪れと共に枯れていくなんて・・・
まるで彼の名を冠しながら、彼に会う事も出来ずにいる僕みたいで・・・


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このまま彼に会えずに終わってしまうのかい?
このまま花を見せずに枯れてしまうのかい?

いや、まだ枯れないよ・・・まだまだ伸び続けるんだよ!
あの青空の向こうまで・・・天国に辿り着くまでは・・・

そうだろう?・・・僕も・・・そして、貴方も・・・


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by mary-joanna | 2009-11-21 13:04 | 有為の奥山

ム.点と点を結ぶ架け橋

先ず、闇夜の宇都宮二荒山神社・・・
次に、曇り空の宇都宮城址公園・・・

ハニーから送られたコメントの提案によって宇都宮市を訪れた僕は、
この街の歴史を語るのに不可欠な2ヶ所のモニュメントを紹介してきた。


宇都宮市内の季節の移ろいを紹介して欲しいという彼女の申し出に際して
市内に数多くある公園や施設等の中から敢えてこの2ヶ所を選択したのには
勿論、今回僕が訪れたイベントやカフェがその周辺に位置していたというのが
大きな理由の一つになっている訳だけれど、実際にその近くに行ってみるまで・・・
というよりもむしろ、今回紹介するにあたり宇都宮市中心の地図を確認するまで・・・

この街の歴史と共に歩み続けた二つの重要な要が、実は一直線で繋がっていたなんて・・・
この街で暮らしている方なら、何を今更・・・と鼻で笑われてしまいそうではあるのだが、
神の領域である神社と世俗社会の頂点の城郭が一本で結ばれているなんて・・・

そして、そんなこの街における二つの大きな点と点とを結ぶ一本の線の真ん中に、
まるで相反する二つの世界の境界線とも呼べる小さな橋が架けられていた。
その橋の名前を・・・更にその直ぐ傍に位置する店の名前を知った僕は・・・


躊躇する事無く、宇都宮への三度目の訪問を決めたのだった。



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宇都宮城址公園


闇夜でも無く曇り空でも無い快晴の秋空の下、この日の出発点に決めたのは
先日訪れたばかりの宇都宮城址公園・・・そう、世俗の世界からのスタートであった。

前回と同様に土塁の周りに張り巡らされた堀を渡って早速中へと・・・
いや、実はこの前、気にはなったものの素通りしてしまった場所があった。


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この堀に架かる橋に沿って置かれたプランターや鉢植えの花々は、
公園にやって来た方たちの目を楽しませてくれ、優しく出迎えてくれた。

尤もこの橋を通る人たちの多くは、周りに聳える圧倒的な存在感の2基の櫓や土塁、
堀などに目を奪われ、控え目に添えられた花に気付かず通り過ぎてしまうかも知れない。
とりわけ物珍しい訳でも無いよく目にする園芸品種の鉢植えなのだから、この壮麗な城壁の
脇役としてまさに花を添える様に並んでいたのだが、僕はこの“普通の”花々に会いに来たのだ。


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アメジストセージ


最近、園芸店や公園だけでなく街角でもよく目にする紫色の細長い花。

近寄ってみると、その一つ一つがまるで帽子の飾りについている様な、
鮮やかな紫色のふんわりとした小さなぼんぼんが寄り添って出来ていた。

思わず頬擦りしたくなる様なビロード状の質感と非常に綺麗な発色の紫色に加え、
ちっちゃくて可愛らしい花が鈴生りに連なった株が何本も集まって咲いている光景は、
何処か寂しさの感じる秋の風景に華やかさを演出してくれて、人気があるのも納得できた。


その他にも、この季節に彩りを添えてくれる花々が飾ってあった。


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エリカ


小さな筒状の花が密集して表情豊かな一つの花を作り上げるこのエリカは、
700とも言われる種には僕が目にした筒型以外にも鈴形など多彩にあるらしい。

その愛らしい花のフォルムと純白からピンクへと淡くグラデーションしていく様から、
てっきり女性の名前をイメージして付けられた和名だろうと思っていたのだが、違った。

あの「嵐が丘」の舞台にも登場し、英語名は“荒れ地”と呼ばれるほど
自然界では枯れた土地に咲くとされているこのエリカだけれど・・・


やっぱり疲れた大地を癒してくれる優しい女性の様に感じて・・・


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この日はこの前とは打って変わって、本当にすっきりした心地良い一日だった。
晴れ渡った青空を背景に、プランターの花たちも生き生きとした顔を見せてくれた。


さぁ、花たちにいっぱい元気を貰った事だし、僕もそろそろ元気に出発しよう!


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みはし(御橋)通り


城址公園を後にした僕は、この櫓を背に真っ直ぐ伸びる通りを北に進む事にした。
此処を起点とした道路は石畳に舗装され、場所によっては街路樹が植えられていた。

通りの左右には市の中心部に向かうに従って飲食店や若者向けの店などが増える一方で、
その名の通り、嘗ては神社の表参道として栄えた由緒ある通りだけあり、所々に昔ながらの
趣きを感じさせる店も多分に見受けられ、全体として非常に落ち着いた印象を醸し出していた。

郵便局のある大通りを横切ると、情緒溢れる通りの魅力が一層深まる様な気がした。
そして、先日訪れた神社の境内へと上るあの階段が通りの前方に見え始めた頃・・・


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みはし(御橋)


市街地を横断する様に走る、釜川と呼ばれる小さな川に架かる橋に辿り着くのだ。

先端に擬宝珠が付いた、緩やかに弧を描く鮮やかな朱色の欄干が無ければ
恐らく此処が橋の上だとは気付かない程、通りと一体化した小さな橋であったが、
この小さな橋こそ僕が歩いてきた通りの名前の由来であり、目指していた場所だった。


このまま神社へと進む予定ではあったが、この橋には大事な用事があったので、
一旦歩くのを止めて先日の訪問と同様に携えてきた紙袋の中身を取り出した。
それは勿論、今回のイニシャルの花に他ならないのだが、この橋を背景に・・・


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「ムラサキシキブ」


嘗てはムラサキシキミ(紫重実)と名付けられていたそうであるが、
この小さな株ですら十分頷ける程に、粒状の実が鈴生りに付いていた。

平安の世の、国風文化の完成によって、中国をはじめとして西域から
もたらされた宝飾の類いはすっかり鳴りを潜めてしまったみたいだけれど、
この小さくも艶やかな紫色の輝きはそれらの宝物にも決して見劣りのしない
自然が生み出したまさに宝石・・・これでも残念ながら少々落ちてしまったが・・・


先日のラベンダーが昭和の路地裏へのSF的なタイムスリップであるのなら、
今日のムラサキシキブはまるで千年の時を経て平安の都に迷い込んだ様だね。


直衣を身を纏った彼の君がこの御橋で小袿姿の貴女と待ち合わせて・・・


この古の情緒を湛えた紅の欄干を背景に紫に輝く小さな実を眺めながら、
そんなロマンチックな場面を目の前に映る脂燭色の情景に重ね合わせていた。


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朱塗りの橋を一旦後にした僕は、もう一つの点に向かって再び歩き始めた。
市の繁華街へと進むにつれ、このみはし通りに交差する様に商店街が続いていた。


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父のアイドルだった草刈正雄がこのアーケードをジャズのリズムに乗って疾走していく・・・

最高にカッコいいシーンじゃないか!!


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そしてこの大鳥居を目の前にした時、今回の散策の終着点を迎える。
そう、此処がこの通りの終点であり、僕が目指していたもう一つの点なのだ。

此処に来れば何かヒントが得られる筈・・・きっと何かが・・・


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 やい、真似しんぼ!!
 俺と同じ格好をしなくたっていいじゃないか!



いや・・・もう僕は貴方の真似なんかしていないよ・・・
もう僕は・・・僕は貴方のフォロワーではないんだ・・・

でも・・・貴方の後を追いかけて、何時か貴方に・・・


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平日昼間の境内はひっそりとして、何処か凛とした空気に包まれていた。

スーツ姿のパパやママに手を引かれた可愛らしい晴れ着姿の子どもたちが、
ひんやりした影と木漏れ日の厳かな神社の雰囲気を和らげてくれている様だった。


そして、もう一つこの時期に僕の目を楽しませてくれたのが・・・


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この大輪の菊の花だった。

この時期は寺社仏閣をはじめ様々な場所で菊の展覧会が開催されており、
此方の境内の左右にも白や黄色、淡い紫の非常に綺麗な菊を見る事が出来た。


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僕は願い事なんてしない人間だった・・・いや、違う・・・
僕は願う事が見つからない人間だったのかも知れない・・・

でも、キミに・・・
翼を持ったキミたちに、願いを込めて彼の下へと飛んでくれないか?


階段まで戻った僕を待っていたのは千羽の鶴では無かった。


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鶏は羽に はつねをうつの 宮柱


如何やら僕はキミたちにつくづく縁があるらしいね・・・
僕の新しい門出を導いてくれるのは、やはりキミみたいに・・・

やぁ・・・キミ、此処でひと休みしていたのかい?
で、これから何処に連れて行ってくれるんだい?
この街の・・・宇都宮の大事な点と点とを結ぶ架け橋は
何処で繋がっているのか、お願いだから僕にも教えてくれよ!


 見失わない様に、俺の後についてこい!!


えっ、今何て言ったの!?

一瞬僕の方を振り向いたかと思うと、鳩は大鳥居の方に飛び去ってしまった・・・
その光景を呆然と見ていた僕は我に返り慌ててこの階段を駆け下りて、
そして、先程やって来た通りをあの赤い橋に向かって急いで戻った。


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そう、この橋の直ぐ傍にあったんだ・・・
それに、黄色はこの街にとって大事なカラーだよね?

でも、これから僕が訪れる店は時を越えて古の都からやって来た和の店では無かった。
この、点と点とを結ぶ歴史の架け橋に新しい風を吹き込んでくれるのは・・・フレンチの息吹!!


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近隣の建物とは明らかに一線を画するベージュの外壁の、何てお洒落な事!

気持ちの良さそうな2階の大きな窓に付いた手摺りは生き生きとした
植物の様に優雅な曲線を描いて、ギマールの作品を連想させるのだった。
1階と2階を隔てる大理石のタイルには流れる金の文字で店名がサインされ、
更には、大きく張り出した黄色い庇と重厚感溢れる無垢材の扉が僕を出迎える・・・

そう、全てがパリから切り取った様な存在感のカフェ・・・


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Mihashi Cafe ミハシカフェ


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ジビエ・・・ポルチーニ茸・・・牡蠣・・・

フレンチの薫りは勿論、外観だけでは無いのだ。
それに、この前食べたあのメンチカツサンドだって!!


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扉をゆっくりと開け、店内に一歩足を踏み入れると・・・
其処には僕がずっと憧れていたパリのカフェの風景があった!

Cindyが“大好きだ”と常々語る、キラキラと輝くグラスや様々なラベルが
描かれた洋酒の瓶がずらりと並んだ、あの華麗なカウンターのある風景だ。


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 待ちくたびれたが、如何やら辿り着いたようだな!


あぁ・・・やっぱりキミたちはこのカフェに来ていたんだね・・・


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窓際の席に案内された僕は、上着を脱ぐと壁際の椅子に腰を下ろした。

良く晴れた日差しの強い昼時であったが、表に大きく張り出した庇に弱められ、
店内に差し込む頃にはぼんやりと黄色い微光をテーブルに照らし出していた。


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可愛らしい花柄のレースもこの淡い光に仄かに染まり・・・


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自分の役割を待つハンガーは、何処か物寂しそうに項垂れていた。

尤も、直ぐに次々と目の前の扉が開いては閉じて、最初の皿がサーヴされる頃には
全てのテーブルがランチを待つ嬉しそうな表情の人たちで埋め尽くされてしまった。


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先ず運ばれたのはバゲットと・・・付け合わせのオリーブオイル。

ふんわりとした生地は同時にたっぷり含んだ水分でしっとりとした滑らかな口当たり。
シンプルな粉の風味はこの後の料理との相性も抜群に違いない筈であるが・・・

次の皿を待たずして食べ切ってしまった・・・
(バゲットはおかわりをする事が出来る!)


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温野菜


大き目の皿いっぱいに盛られた温野菜がテーブルに置かれると、
真っ白な湯気がふわっと立ち上って、もうそれだけでニッコリとなるのだ。

人参、蕪、白菜、薩摩芋に・・・何と素揚げした大根まで入っているなんて・・・
たっぷりの野菜でもうお腹いっぱいになったかって?・・・いやいや・・・

更に僕の食欲にエンジンがかかってきた気分だよ!


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ステーキ・フリッツ


カフェでステーキ・・・何ともお洒落でスマートな響きではないか!

カリッと焼かれた表面はサックリとした歯触りに笑みがこぼれる。
香ばしい肉の端から滴り落ちる肉汁に思わず唾を飲み込む音が鳴る。

此処までの散策で腹が減っていた?・・・勿論だよ、でもね・・・

表面の香ばしさからは想像もつかない肉の柔らかさに驚く日間も無く
ジューシーな肉の旨みが口の中いっぱいに溢れ出していって・・・


フライドポテト


そして皿の上にはステーキに負けじとたっぷり盛られたフライドポテト!
そう、フレンチ・ブラッスリーでステーキと言えば付け合わせはこれだよね。

熱々のフライドポテトはサクサクの表面とホクホクとした食感のポテト。
丁度良い揚げ具合と塩加減がポテトを更に引き立て堪らなく美味しい。


バゲットと温野菜とステーキとフライドポテト・・・
全てが素材そのままのシンプルな料理なのに・・・

でも、何処を取っても洗練されていて・・・飛び切り美味しいんだ!!


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ティラミス


ティラミスが盛られたマスタードのプレートにさらりと描かれたチョコレートのラインは
一見シンプルな意匠でありながら絶妙のバランスで、抽象絵画を鑑賞している様だった。

でも、デザートの魅力は何と言っても・・・僕は耐えられずにスプーンを手にした。

ひと口掬うと表面を覆っているカカオパウダーのな香りがふんわり広がり、
チョコレートの濃厚な風味が心地良い刺激となって優しく鼻孔を擽ってきた。

思わず口に入れると、マスカルポーネのクリーミーでまったりとした舌触りが
甘くほろ苦い濃厚なエスプレッソのビスキュイとまろやかに溶け合っていき、
カカオパウダーと三位一体の絶妙のハーモニーを奏でていたのだった。


まさに大人のデザート・・・絵画や音楽を鑑賞した余韻に包まれる、あの感じに・・・


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カプチーノ


パリのカフェに訪れている様な空気が流れる此処でのひと時なのだから、
やっぱり最後はクリーミーなカプチーノで、のんびりまったりと寛ぎたかった。

カップを口に付けた瞬間の、唇に伝わる熱さとふわっと広がるコーヒーの薫り、
ふわふわでクリーミーな温かいミルクのまろやかさと仄かな甘い感じ・・・
更に、窓から差し込むイエローに色付いたやわらかな光に・・・

僕はこの席でずっとウットリと微睡んでいたかった・・・


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何時もそうだったんだ・・・
何時の間にか忘れていたんだ・・・

不安でいっぱいの迷える僕を導いてくれるのは・・・
何も遮る物の無い大空へと解き放してくれるのは・・・
その身体に付いた二つの翼で自由に、そして優雅に舞っているキミじゃないか!
キミは何時だってコチラ側とムコウ側とを結ぶ架け橋になってくれたじゃないか!

彼の待っているあの場所まで、僕も一緒に連れて行ってくれないか?
キミが羽を休めているうちに・・・手の届かない彼方に飛び去ってしまう前に・・・
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by mary-joanna | 2009-11-16 23:52 | 常ならん

ラ.月曜日の食卓

あの秋の夜の祭典から2週間が過ぎ、また栃木県中央公園の中秋の風景や
宇都宮市内の路地裏散策を併せたElvis Cafeでの紹介からも数日が経ったが、
ハニーからのコメントは全く音沙汰が無かった・・・勿論、他の2人からもであるが・・・

コメントと言えば、僕への接触の仕方も先の2人とは異なっていたのだ。
Brit Boyは鍵コメントに自身のメールアドレスを書いてコンタクトを取ってきたし、
先日のパピヨンは、そのBrit Boyのアドレスを用いて直接僕にメールを送ってきた。
まぁ、当然の事ながら世間には殆んど知られていない一個人の趣味のブログであるが、
それでも先の二人は秘密裏に僕に接触を図ってきたのだ・・・それなのに、ハニーといえば・・・

大胆というか、奔放というか、何も包み隠す事無く、大っぴらにコメントしてきたのだ。
自身のハンドルネームは勿論、ご丁寧に僕と同じ足利在住という事まで添えて・・・
でも、よく考えてみれば、あの物語でも彼女はそういうキャラクターであった。
そうすると、今回の彼女の登場の仕方も彼等の想定内なのだろうか?
何だか様々な思惑が僕の頭の中をぐるぐると回っていて、更に・・・


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「ラベンダー」


隣町にある実家に立ち寄った僕は、庭のラベンダーが未だ枯れていないのに気付いた。
何でも、夏の終わりに一度花を落とし切ったのだが、この時期に再び花を咲かせたそうだ。

細長く伸びた大小の茎の先に付いたほんのりと淡い藤色の穂は、微風に揺れながら
得も言えぬ華やかなフローラルの薫りを仄かに放ち、辺り一面を包み込んでいた。
そんな優雅なラベンダーたちも、秋の午後の蜂蜜色に輝く西日に照らされて、
綺麗な紫の穂先を鮮やかな山吹色とのグラデーションに染めあげていた。


このラベンダーを一株譲って貰った僕は、この前の祭典の夜からずっと気になっていた
宇都宮市内に新しくオープンした例のカフェ(?)に、予約のTelを入れる事にした。

もう一度宇都宮を訪れようと決心したのには、3つの理由があった。

第一に、(本当に存在するなら・・・)ハニーの提案の真相を確かめたかったから。
第二に、予約を入れた店に純粋に行ってみたかったから・・・だってその店は・・・
そして三番目の理由は、こんなにも素敵なラベンダーの鉢を頂き、しかも、
今回のイニシャルが「ラ」であるならば、その店の雰囲気は・・・あの・・・

そう、あのSF小説(映画?)のイメージにぴったりだと僕は思った!



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予約した当日、指定した時刻よりも幾分早めに到着する様に足利を出発した。
宇都宮市役所の直ぐ側に位置するという事で、寄り道をしようと思っていたのだ。

市役所からは通りを一つ隔てただけの場所に、公園と呼ぶには壮観な眺めの堀と、
流石に秋も深まった今日、所々枯れかけた芝生に覆われた小高い丘があって、
その丘から突き出したかの様に聳える純和風の歴史建造物は見ての通り・・・

 
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宇都宮城址公園


城郭はCindyの日記でも何回か登場している建築物ではあったが、
この栃木県宇都宮市の、しかも市の中心に存在しているなんて・・・

先日の宇都宮二荒山神社といい、この街を見守り続けた歴史の象徴が
まるで何世紀もの時空を越えてこの21世紀の世の中にタイムスリップして
僕の目の前に忽然とその姿を現した様な、とても不思議な錯覚に陥るのだった。

まさか、今日僕がこれを持ってきたからそんな風に感じるのかな?
この日の僕は、愛用のトートバッグの他にもう一つ紙袋を提げていた・・・


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堀に架かった橋をくぐって芝生の土塁の向こう側へと入ってゆくと、
外から想像していたよりもずっと開けた、広々とした空間になっていた。
如何やら此処にはこの城の本丸が築かれていた事が容易に想像できた。

先日の中央公園もそうであったが、此方の公園の木々もすっかり紅葉しており、
その微妙な褐色の色合いに、勿論僕を含め訪れた人たちの目を楽しませてくれた。
更に視線を地面に落とした際の、落ち葉の茶と芝生の黄緑のコントラストと言ったら・・・


城址公園を後にした僕は、公園とは市役所を挟んで反対側に伸びる路地へと歩いた。
思えばこの路地に入った瞬間から始まっていたのかも知れなかった・・・だってこの香りが・・・


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市役所から程無くして、この細い路地を遮る様に頭上に線路が走っている。
左右を直方体の石垣で組み上げられた、何処かレトロな印象のこの跨道橋は、
空間と空間を繋ぐ“橋”というより空間と空間を区切る“門”の様に思えてならなかった。

跨道橋をくぐった瞬間、そう、一瞬だけ感じた、これまでとは異なった空気の感覚は・・・
僕は何処か別の場所に・・・いや、別の時代へと迷い込んでしまったのだろうか?

僕の背後には、変わる事無く市役所のビルが聳え立っているというのに・・・


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午前中は何とか保っていた曇り空も昼近くになってポツリポツリとし始めた。

念の為に持ってきた傘を広げると、何処からか湿った土の匂いが微かに漂ってきた。
忘れかけていたあの素朴で懐かしい感じの匂いは、小さかった頃の思い出を呼び起こす。
おばあちゃんの家に遊びに行った時の、あの変な匂い・・・でも、何故か凄く落ち着く匂いを・・・


所々朽ち果てびっしりと苔生した石垣の坂道を上ると、電柱の脇に何やら標識らしきモノが・・・


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木の枝にぶら下がっていたのは、シンプルなrecluの文字と・・・可愛らしいパンのイラスト!

そう、この坂の途中の石垣の中こそ、地図が示した場所なのだ。



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石垣の中は築数十年は経とうかといった平屋建ての木造家屋が数軒軒を連ね、
まるで昭和を舞台にした映画に出てきそうな下町の雰囲気に満たされていた。

一番手前の建物の軒先で、小さな赤い実を沢山付けた木が出迎えてくれた。


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recluの食卓


この煤けた焦げ茶色の平屋建てこそ、この秋にオープンしたばかりの・・・

いや、これまで僅か2軒の店で、しかも限られた日時でしか購入する事が出来なかった、
宇都宮周辺のパン好きな人たちから絶賛されてきた店主が満を持して手掛けた店。

しかも、この店は単なるパン屋ではなく、何と・・・“食卓”となっているではないか!
そして、この懐かしさ漂う光景にうっとりと魅入っていた頃、時刻は正午を回り、
建物の中から店主らしき人物が暖簾と看板を脇に抱えてやって来たのだ。


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淡いベージュの無地の暖簾は褐色に覆われた木造家屋の雰囲気を和らげてくれた。
それに何と言ってもあの真っ白な看板は・・・彼の日記で見た事のある、あの看板だった。
懐かしさを感じながらも生まれて初めて訪れたこの場所で、唯一馴染みのある白い看板に、
何処かほっとした様な、親近感の様な感覚がして・・・尤も彼の日記で見ただけなんだけどね・・・

店主に促されるままに僕は暖簾をくぐり、店主に続いてこの引き戸の中に入った。


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恐らく以前からの状態の、すっかり古びて味がある褐色になった玄関の上がり框で
靴を脱いで中の様子を窺うと、先程魅入っていた外観そのままの空間が広がっていた。

上がり框から続く板敷きの床に、柱や梁、備え付けられたであろう台所を隔てるカウンター、
更には箪笥や棚、テーブル、椅子など、建物内に置かれた調度品の数々に至るまで
アンティークというよりは丁寧にずっと使い込んできた自然の風合いで満たされた。

そう、この建物を初めて見た際に感じた印象、心の中に自然に湧き上がってくる感覚・・・
懐かしくて・・・穏やかで・・・心温まる古き良き情景を覚えずにはいられなかった。


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あぁ、確か僕もこんな椅子に腰掛けて教科書を広げた頃があったなぁ・・・

大きな平仮名と大きな挿絵でいっぱいの、まるで絵本の様な教科書。
あれから年を経る毎に文字は小さくなって、絵も無くなっていって、
本当は簡単な筈なのに小難しい言葉で埋め尽くされた教科書。

何時でも思い出すのは、平仮名と挿絵の絵本みたいな方なんだよ・・・


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まるで卓袱台に脚を付けた様なテーブルと、踏み台みたいなスツール。
畏まったりせず気軽に腰掛ける事が出来そうで、この空間にぴったりなんだ。


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そうそう、こんな傘付きのランプだってこの空間に必要不可欠だったよね。

ちょこんと顔を覗かせる裸電球に灯が点されて、真ん中のフィラメントから
オレンジ色の優しい明かりが淡く滲みながら部屋いっぱいに広がって・・・
隙間風が入ってきそうな古びた部屋なのに何だかとても暖かいんだ!


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カウンターでものんびりと寛げそうだけど、僕には無理かも知れなかった。
でも如何してなのかって?・・・それは勿論、直ぐ隣りに置かれている・・・


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美味しそうなパンに目がいってしまうから・・・

使い込まれていい感じにくすんできたステンレスと硝子のケースは、
まるで量り売りのお菓子か何かを入れていた様な印象だけど・・・


居心地が良さそうで、ぴったり似合っているじゃないか!!
どのパンも非常に美味しそうで、迷ってしまうけれど・・・


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今日のキッシュ


こんがりと焼かれた狐色の器の中にはふんわり黄色い玉子がたっぷり。
所々顔を出しているのは・・・ソーセージとほうれん草のコンビ!!

このキッシュをプレートにしてもらい、更に隣りのパンに目を向けた。


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パンに・・・パウンドケーキに・・・スコーンに・・・どれも非常に可愛らしくて、
穏やかで優しそうな店主そのものが、パンや菓子から滲み出ている様だった。

そんなカウンターの向こうでは、やかんの先からポコポコと白い湯気が立ち上り、
店主もランチの準備に忙しそうだ・・・でも、思わず笑顔になるこんな光景から
出来上がる料理って、とても安心の出来る・・・まるで母が作る料理だよね。


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待っている間、僕は何も考えずにぼんやりと縁側の方を眺めてみた。
部屋の向こうは廊下を隔てて中庭どでも呼びたくなる空間も設えてあった。

外の緑を背景に、シュッと伸びた鉢植えの、枝と葉のバランスの妙と言ったら!


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そんな庭を一望する事の出来る、何とも贅沢なテーブルに着く事にした。

それに、この廊下に置かれたテーブルとラタンで編まれたチェアーは、
先日のイベントの為に叶う事の出来なかったとても大好きな店の、
僕も・・・そして彼もお気に入りのあの席を連想させるんだ・・・


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まるで上品な和装のご婦人が、午後の天気を心配して濡れ縁に腰掛けている様な、
何とも風情のある、淡く可憐なピンク色の花弁をゆったりと広げた鉢に魅せられていた。

緑の中にひと際映えるのに全く以って自然に溶け込んでいる様は、
これが和の庭園の魅力なのかな?・・・そんな事が頭を巡っていると・・・


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オーダーした今日のキッシュが、こんなにも素敵なプレートで運ばれてきた。


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今日のキッシュ


狐色に焼かれたキッシュの器はザックリとしたクリスピーな歯応えに
香ばしく焼きしめられた粉の風味が味わい深く、それだけでも楽しめるのだ。

でも、やっぱり中の玉子が気になって、キッシュ生地と一緒にひと口。
甘い玉ねぎが染み込んだふわふわの玉子の何とまろやかな事!

更に香ばしい表面のソーセージをギュッと噛みしめた瞬間、
旨みでいっぱいの肉汁が口中にじわぁ~っと広がって・・・
ほうれん草との相性も抜群にマッチしていて・・・


でも、やっぱり全てを包み込む玉子のふんわり感に夢中で頬張っていた。


サラダ


爽やかな彩りは見ているだけで落ち着いた気持ちにさせられるのだ。

瑞々しい葉野菜のシャキシャキ感は勿論だが、一見ミスマッチとも思える
エビのさっぱりとした旨みと仄かな甘みとホクホク感が美味しいサツマイモに、
更には程よい酸味が癖になりそうな蕪のピクルスとも完全にマッチした美味しさで
全てがまるで、爽やかなハーモニーを奏でているみたいだった・・・

店内で心地良く流れていたガーシュインの楽曲の様に・・・


更にもう一品、サイドメニューも付け加える事にした。

ひたひたに浸かった真っ赤なトマトのスープが食欲を誘う!
芯までじっくり炊かれた豆はホクホクした食感で非常に柔らかく、
濃縮されたトマトの濃厚なコクと酸味がしっかりと豆に染み込んでいて
一見淡白な風味とパサついた感じの豆をより一層味わい深いものにしていた。


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そしてプレートには・・・このブラウニーも付いていた!


ホロホロと口の中で崩れるブラウニーの仄かな甘さとほろ苦さと、
その中から広がる香り深い濃厚チョコレートの何て美味しい事だろう。

更に、散りばめられたナッツの香ばしさと歯応えがチョコレートと絶妙の
バランスで絡み合ってその豊かな風味が心地良い余韻となって残っていた。


チョコレートは子どもの頃から大好きだったけど、良く好んで食べていたのは
甘くてとろける様なミルクチョコレートだった・・・今でもそれは全く変わらないけど・・・

でも、このブラウニーをひと口噛み締める度に、このビターな刺激を感じる度に・・・
何だか少年がちょっぴり大人になった様な、恍惚とした優越感に浸れる気がするんだ・・・


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ドリンクは温かいソイラテに決めた。


ふんわりとした泡がまろやかに広がってカップ全体を包み込んでいく。
仄かに自然でミルキーな口当たりとにさっぱりとした味わいに・・・

ほんのりとした優しい甘さと、キリリとしたエスプレッソのほろ苦さが、
まろやかに溶け合いカップを近付ける度にまったりした気分に誘われる。



まったりとした食後の時間が流れてゆく中で・・・そう、時間の流れが・・・
この日、店主にプレゼントする為にずっと大事に持っていた紙袋を取りだした。

勿論、中に入っているのは・・・


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「ラベンダー」


確かあの映画の結末は、主人公の同級生の少年が実はラベンダーを採集する目的で
未来からやって来た人物であり、主人公を含めた自分に関わる全ての人の記憶を
消し去って元の世界へと帰っていくという、少々切なさの残るものであったが・・・

まさか此処を離れた瞬間、僕もこの場所で体験した一連の出来事の記憶を
すっかり失ってしまうなんて事は無いだろうが・・・まさか、ね・・・


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僕もあの主人公の少女の様にタイムリープをする事が出来るのだろうか?
このElvis Cafeをスタートさせる、その前に・・・いや、Cindyの日記を・・・
そして、決して忘れる事の無いあの物語を見つけるその前に・・・

そうすれば・・・きっと彼等にも会う事は無かったのだろう・・・
そう、現在の僕の大部分を占めている何かも存在しなかった筈だ。

でも・・・でも・・・僕はもう戻りたくないんだよ!!
それに、過去に戻りたがっているのは、きっと彼の方だよ・・・
あの、全ての物語が終わってしまう、その前に・・・

このラベンダーの甘い香りと共に・・・



  あなた、私のもとから
  突然消えたりしないでね
  二度とは会えない場所へ
  ひとりで行かないと誓って
  私は、私は、さまよい人になる
  時をかける少女、愛は輝く舟
  過去も未来も星座も越えるから・・・抱きとめて

  ~時をかける少女~

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by mary-joanna | 2009-11-12 03:37 | 常ならん

ナ.Thursday Night Fever

 Little Cindyさん、はじめまして♪
 いつも楽しみに拝見させてもらっています!!

 カフェやお花を素敵に紹介されているLittle Cindyさんに
 突然ですが、是非行って頂きたい場所(街)があります!

 私が住んでいる栃木県足利市にもフラワーパークをはじめ
 お花の綺麗な公園や施設はありますが、こちらのブログでも
 紹介されている宇都宮市でも最近の寒さにより街の至る所で
 紅葉が色付き始め、また、秋のお花だって美しく咲いています。

 それに宇都宮には素敵なカフェやパン屋さんが沢山あります!
 身勝手なお願いではありますが、行動力の乏しい私に代わって、
 どうかLittle Cindyさんのブログに、今がちょうど見頃とも言える
 宇都宮の紅葉やお花と・・・カフェを紹介して頂けないでしょうか・・・
 
 何とぞ宜しくお願いします!! m(_ _)m




まだ少ないとは言え回数を重ねる毎に徐々にアクセスやコメントの数も増えてきた
このElvis Cafeにとっても、この手のお願い系コメントも本当に少しではあったが、
全く皆無という訳ではなかったので、普通なら“近いうちに是非とも行ってみます”
・・・といったトーンで片付けられていたのかも知れなかった・・・

けれど、今回はこれまでのお願い系のコメントとは幾つかの点で異なっていた。
先ず、コメントの文体が丁寧で、本当に宇都宮に行って欲しいのが伝わってくる点。
更に、コメントの送り主が僕と同郷の栃木県足利市であるという点も非常に気になった。
でも、やはり一番驚いたのは・・・このコメントの送り主が・・・“ハニー”と名乗っている点だ。


Brit Boy・・・パピヨン・・・そして、今回のハニー・・・
僕の所に例のブログの登場人物が3人もやって来た事になる。
そのブログを見た連中のふざけた悪戯か、それとも彼等は実際に・・・

それに、このハニーって人物・・・“行動力の乏しい”って言っている割には、
この時期の宇都宮市内の自然や季節の移り変わりにやたら詳しいじゃないか。

そう言えば、例の日記に於いては何時も一番最初にコメントを入れていたり、
カフェ紹介ブログという設定でも同郷の足利や音楽関連の話を持ち掛けたり、
他の登場人物とは少々異なった存在が彼女、という事になっていたのだ。

僕はこの彼女のお願いコメントに応え、宇都宮に向かう事にしたが・・・


ハニーが彼等の仲間であるなら、如何して彼女は先日パピヨンが僕に直接渡したリストとは
全く別の、ほんの数回しか物語で紹介されなかった宇都宮に行く事を勧めるのだろうか?
更に何らかの形にせよ、ここにきて3人の登場人物が接触を図ってきたという事は、
この物語に出てくる他のキャラクターとも近い将来会う事になるのだろうか?
と言う事は、僕がキーパーソンだと確信していたあの人にも何時か・・・

宇都宮に向かう車中で、僕は段々深まっていく謎で頭が一杯になっていた・・・


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栃木県中央公園


東武宇都宮駅や市役所から約1-2キロほど西に進んだ場所に位置し、
とても市街地にあるとは思えぬ程の広大で豊かな自然を有する公園は、
同じ敷地内に県立博物館まで併設された、言わば自然と科学の憩いの場。

宇都宮の街中で紅葉や秋の草花を散策するには持って来いの場所なのだ。
それに、この公園の直ぐ近くには僕が・・・いや、彼がお気に入りだったあの店が・・・


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公園内に一歩足を踏み入れると、直ぐに様々な種類の木々が出迎えてくれた。
そして、確かに彼女が言っていた様に、既に美しく色付いている樹木も見られた。

爽やかな秋空を背景にキラキラと輝く薄黄緑色と橙色の印象絵画・・・
ここ数日の寒さで秋もぐっと深まり、山の紅葉も僕らの街までお引っ越し・・・


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駐車場と公園とを隔てている小路に沿った背の高いユリノキの並木道も
山吹色の葉を付け、あたかも黄色いトンネルの中を歩いている気分だった。
何処か物憂げで感傷的な気分へと誘う、幻想の世界へと続く晩秋のトンネル・・・

足元では落ち葉の絨毯が時折り微風で舞い上がり、秋の情景を更に盛り上げていた。
そしてこの並木道を折れて内側に入った瞬間、僕の目の前に広がっていたのは・・・


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沈床園


まるでフランスの宮殿にでも迷い込んだ様な、本格的な西洋式庭園。
噴水と芝生とにより構成された幾何学的な敷地は畏敬の念すら感じさせ、
周りを取り囲む自然な印象の木々が、この人工的な雰囲気を和らげてくれた。

周りにはベンチが並び、多くの方がのんびりと寛ぎながらこの光景を満喫していた。
この西洋式庭園だけでも大満足であったが、更にこの奥にはハッとさせられる場所が・・・


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昭和大池


先程の庭園が日比谷公園なら、この池の光景は上野公園とでも表現しようか?
いやいや、此処は栃木県の宇都宮市なのだ。僕が生活し、またElvis Cafeの活動の
中心として飛び回っている栃木県内に、こんなに素敵な都市型自然公園が存在するなんて・・・


しかも種類によって異なる木々の紅葉の違いが、赤から黄色、ひいては淡いグリーンへと
落ち着いた印象の微妙なグラデーションを作り出しており、風情溢れる情景を映し出していた。

この紅葉を見て欲しい、紹介して欲しいというのは十分に理解出来るのだが・・・


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公園を取り囲んでいる遊歩道の周りにも綺麗な秋の花が咲き、
のんびりと散策するのをより一層楽しくしてくれるのだった。

そんな中で僕が見つけたのは、秋には欠かせない山野草の一つ・・・


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杜鵑草 (ホトトギス)


白地に特徴的な赤紫の斑点がホトトギスの胸の模様に似ている事から
その名が付けられたとの事らしいけれど、まるで大きく羽をばたつかせながら
細い茎に止まろうとしている愛らしい小鳥の姿にも感じられ、暫くの間魅入っていた。



10月も末になると日も短くなって、未だ夕方には早いのに西日が眩しく差し込んでくる。
少し肌寒くなるのを感じた僕は、この公園を後にして街の中心の方に車を走らせた。
今日彼女の提案に乗る事にしたのは、僕自身、行ってみたい店があったからだ。

結果的にこの選択が彼女の思惑通りとなる事をこの時の僕は知る由も無かったけれど・・・


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fromagerie l'avedone


清住の路地裏の更に奥の奥・・・またこの店にやって来たよ。
あの夏の日の思い出が忘れられなくて・・・あの穏やかなひと時が・・・

でも、この日は少し様子が変り、何だか前よりもひっそりとしていた。
その訳は入り口に掲げられた黒板の告知で直ぐに解決したが・・・


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そうか・・・この日はイベントで夕方には閉まってしまうのか・・・

偶然と言えばそれまでだったが、実はこの日、僕は終日の予定が空いていた。
平日の夜に自由な時間がある事自体が本当に稀であったし、これまでのElvis Cafeで
夜の紹介をするのだって、後にも先にも・・・あの小山でのパピヨンとの密会しか無かったのだ。


実はこの日、僕は今回のイニシャルとなる花を持参してこの地にやって来た。
それは、この店の雰囲気と、この店の店主のイメージを想像して決めた秋の花・・・


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「撫子 (ナデシコ)」


 草の花は撫子、唐のはさらなり、大和のも、いとめでたし。
 うつくしきものは撫子の花。 (枕草子)
 


その上品で清楚な佇まいによって、古来から日本女性の代名詞とされた撫子。
万葉集には秋の七草の一つに挙げられ、大伴家持はこの花を自ら栽培したという。

とても可憐で愛らしい小さな花だけに現在でも非常に人気があって、
多数の園芸品種が夏から秋にかけて出回り皆の目を楽しませてくれる。

そんな誰からも愛され、日本人の心を再認識させてくれる風情のある花・・・
この昔から変らない歴史情緒に溢れた路地裏でひっそりと佇む古民家の店に、
そしてこの店の上品で親切で優しい店主に、僕はこの撫子をなぞらえたかったのだ。

でもね、店主は常に先を見ていらっしゃる方だから・・・こんなビビッドなピンクが似合うかな?



今夜のイベントは二荒山神社前のバンバ広場にテントを張るとの事だが、
こんな機会は滅多に無いから勿論行ってみる事にした・・・しかも、徒歩で!!

清住のこの店から二荒山神社までは普通に歩いて20分弱との事だった。
大型の商業施設に隣接した繁華街に位置しているので付近には駐車場も多くあり、
またバスやタクシーでの移動も可能だったが、今日はどうしても歩いてみたい気分だった。


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本当に清住には昔から変わらない昭和の路地裏の情景が綺麗に残されていた。
普段大通りを車で走り去ってしまう僕は、この貴重な経験に新鮮な気持ちを覚えた。

細い坂道の先は如何なっているのだろうと考えただけででもワクワクしてくるのだ。


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何時の間にか堀に沿って走る小路に紛れ込んだ僕は、この路を進む事にした。
この石組みの堀と傍の小路が素敵だったし、目の前に新しいビルが見えたからだ。

市の中心に向かっているので、この路に沿って行けば間違い無いだろう・・・
何と宇都宮の街中を歩くのは初めてだったにも係らず、僕は地図を持たなかった。
大体の方角は何と無く分かっていたつもりだったし、何よりもその方が楽しそうだったから。


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そして、歩く事十数分、大通りに並行する裏通りまでやって来た。
この界隈は裏道だけあって飲み屋系の飲食店が多数軒を連ねていた。

が、空が明るいうちはこの裏通りはひっそりと静まり返っているのだ・・・


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特に急ぎながらという訳でも無く、それでも約20分程度は歩いただろうか。
大通りに出てからは通りを行き交う人々と車の量も格段に増えてきて、
僕の地元には無い県庁所在地のメインストリートの活気を感じた。

そして、目の前にパルコのビルが見えた頃、この宇都宮散歩も終焉を迎える。


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宇都宮二荒山神社


どうやら目的地に到着したらしい。

優に千年を越える悠久の時を経て街の中心に鎮座し続け・・・
いや、寧ろこの神社を中心としてこの街が発展してきたのだ。

この神社が現在でも尚、街の人々の精神的支柱であるのは、
僕がこの場所にいる間も途切れる事無く参拝に訪れる人の数と
此処に足を踏み入れる際に見せる厳粛な姿勢からも明らかだった。

そう、この空間の入り口に聳え、神聖な世界との境界となっているのは・・・


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圧倒的な存在感の大鳥居は、まるで外界からこの空間を護るべく
実際の大きさ以上に威厳に満ちた風貌で僕の前に仁王立ちしていた。

だが、直ぐ後ろに見えるのは、その大鳥居を遥かに凌ぐ高さのクレーン。

何と、二荒山神社に隣接してマンションが建設されるとの事であるが・・・
恐らくこの計画が持ち上がった瞬間から(現在も?)賛否両論あるのだろうが、
一見相交わる事の出来ない二つのモニュメントが僕の視界に同時に飛び込んで、
僕はこの二つを見上げたまま、暫く声を出す事も出来ず唯呆然と立ちすくんでいた・・・


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辺りも段々と暗くなって、境内の周りの照明に明りが灯され始めたが、
イベントの開始まで少々時間があったので、境内への階段を上がり始めた。

境内から下の広場や通りの景色を見てみたかったのだ。


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二荒山神社の境内は眩いばかりの黄金色の光とその奥の薄い闇夜の間で
ぼんやりした揺らめくシルエットを仄かに浮かび上がらせているかの様だった。

神々しい光に包まれた幻想的な光景に思わず凛とした気持ちになる。

こうして街を見下ろして・・・街と、その街に集う人々を見守って・・・
千年以上も昔から一日も休む事無く・・・そして、これからもずっと・・・


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一体どれ程の間、この幻想的な境内の光景に見惚れていただろう。
いや、実はほんの一瞬の出来事がったのかも知れないけれど・・・

僕の周りもはっきりと分かる位薄暗くなり、我に返ったかの様に
僕は徐にユナイテッドアローズのグレーのトートバッグの中から携帯を
取り出して現在の時刻を確認したが・・・既に開始時刻を数分過ぎていた!

急いで階段を下りようと、慌てて境内から振り返った僕は進むのを止めてしまった。
だって、日が沈む瞬間の、淡い灰青色とも呼びたくなる様な空に覆われた中で
オレンジ色く輝く街灯や店の照明、更に様々な色彩が彼方此方で輝いていた。
眼下に広がる煉瓦畳の広場こそ、今日のイベント会場、ばんば広場なのだ。

それにしても、あれだけ大きかった鳥居がまるでミニチュアじゃあないか!


おやっ、広場に車が数台やって来て・・・中から荷物を降ろし始めた・・・
それを目にした僕は漸く階段を下りて、車の方に近付いてみた。


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一旦日が沈んでしまうと夜の帳も完全に落ち、宇都宮の街はすっかり暗闇に包まれた。
そして他の街の繁華街と同様、この交差点周辺も昼間とはまた異なった魅力を醸し出す。

おやっ、鳥居の向こうのビルに掲げられているのは、宇都宮餃子の看板。
そう言えば、此処、宇都宮は餃子で有名な街でもあったね・・・でも・・・


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Thursday Night Fever


そう、今夜この場所で僕が楽しみに待っていたのは・・・餃子ではなくフレンチの祭典!!
目の前交差点から伸びるバンバ通り沿いのカフェが作る温かい料理とホットワイン!
そしてもう一軒は勿論、清住のチーズ専門店によるチーズを使ったおつまみに・・・
何とジャンルの垣根を飛び越えてスイーツや日本酒(!)まで饗されるなんて・・・

さあ、待ちに待った“木曜日の夜の宴”の幕が遂に切って落とされた様だ。
何処からともなく聞こえてくる、今宵の祝宴を優しく伝える穏やかな調べは・・・


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厳粛な神社の広場で奏でられるの旋律は日本古来の伝統音楽である
雅楽の音色では無く・・・フルートによるふんわりと軽やかで心地良い演奏。

・・・とてもお洒落で・・・何と風流な事だろうか!!


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フルートの音色に引き寄せられる様に通りにいた人たちがテントに集まってきた。
そして、今宵テントで彼らを出迎えてくれるのは・・・屋外のイベントにぴったりのメニュー!

めっきり肌寒くなった晩秋の夜には・・・ヴァン・ショー(ホットワイン)と熱燗まで揃っていた。
実は足利までの車の運転がこんなにも恨めしく感じた事はこの時まで無かったのだが、
気を取り直してテーブルの上に置かれた美味しそうな品々を物色する事にした。


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テーブルには美味しそうな・・・あっ、もしやあのパンは・・・recluのパンだっ!!
Cindyも大のお気に入りだったrecluのパンは、確かこのl'avedoneと、
もう一軒、宇都宮の南にあるお菓子屋でしか手に入らないというが・・・


 実はこの秋から週2回のカフェをopenしたのですよ。


えっ、それは本当なのか!?もしそうだったら是非ともお邪魔したいのだが・・・


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カップに入ったチーズの詰め合わせに、定番のチーズケーキ、
そして、今回は何とブルーチーズ入りのショコラまであるなんて・・・

やはり、週に一夜の夢の祭典・・・全てが特別なのだろう・・・


今夜のイベントには、Cindyですら未だ訪れていない(のだろう)、
この“バンバの地”には欠かす事の出来ない素敵なカフェが参加しており、
テント脇の黒板でその店を確認した僕は、心を躍らせながら待っていたのだ。

そこで今回は、料理をそのカフェで頂き、l'avedoneのスイーツを持ち帰る事にした。


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ミハシカフェ


ビーフとミートボールのトマト煮込み


運転の関係で酒を飲む事が出来ない僕がこの寒空に選んだ一品が、この煮込みだった。

熱々に煮込まれたトマトのスープが口の中でとろりとした舌触りで絡んできて、
口の中いっぱいにトマトの濃厚な酸味と甘み、そしてコクが広がっていくのだ。
勿論、トマト本来の風味のみならず、スープとしての複雑な味わいも楽しめる。

だが、これは単なるスープでは無い・・・“ビーフとミートボール”の煮込みなのだ。
とろとろになったビーフをハフハフとしながら頬張る瞬間の幸福感と言ったら・・・
肉汁たっぷりのふんわりジューシーなミートボールを噛む満足感と言ったら・・・

もうそれだけで、この夜の寒さも・・・一日歩き続けた疲れも・・・
全てを忘れて目の前の煮込みに夢中で食らいついていた・・・


でも・・・やっぱりこの煮込みと一緒にワインで一杯・・・


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メンチカツサンド


このカフェのテイクアウトも可能な看板メニューが、このメンチカツサンドだった。
冬にはジビエまでメニューに載る本格フレンチの店がメンチカツサンドだって?

左右に膨れ上がったトーストからはみ出さんばかりにサンドされたメンチカツの断面。
カリカリにトーストされた香ばしい表面と内側のふんわりした食感に仄かな粉の甘み。
そして、その絶妙なバランスのトーストに優しく包まれているメンチカツの美味しい事!!

サックリとしながらも、サンドという事で揚げたてとは異なったしっとりした衣の歯触り。
中のメンチカツのふんわりとして肉の旨みたっぷりのジューシーな食感はもう最高。
ほど良く絡んだソースの甘酸っぱさと千切りキャベツのシャキッとした瑞々しさも、
このサンドには無くてはならない大切な存在だった・・・コースの前菜の様に・・・


この店のファンや常連になればなるほどオーダーされると聞いてはいたが、
初めて体験した僕にもこのメンチカツサンドの素晴らしさが垣間見えた気がした。


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チーズ専門店・ラヴェドン


食事の後のお楽しみのデザートは・・・チーズで作ったスイーツ!!

戻らなければならない時間が迫り、スイーツはお土産として持ち帰る事にしたが、
広場に併設されたベンチでは誰もが幸せに満ちた表情を浮かべながらカップや
トレイを手にし、それを横目で見ながら名残惜しくも荷物をまとめ始めた。


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チーズケーキ


彼が自身の日記の、しかも記念の回数にチョイスした特別なデザート・・・
そんなラヴェドンのチーズケーキを、しかもイベントで頂けるなんて・・・


表面のほんのりと色付いた淡い焼き色と、中のクリーミーなアイボリー、
更に見ただけでホロホロとした感触が伝わってきそうな薄茶色のケーキ台。
ふんわりとした優雅な印象の、何とも上品なチーズケーキでは無いだろうか。

ベルベットを撫でている様な滑らかでしっとりとした食感は彼の感想から
ある程度は想像していたけれど、クリーミーでまろやかなチーズの
仄かな酸味と心地良い甘さがこの上ないバランスで広がって、
まったりとした余韻が何時までも続いてゆく様な気がした・・・


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ショコラ(ロックフォール入り)


ブルーチーズとチョコレート・・・!!

一見ゴツゴツとした褐色の塊りは、チーズの“ロック”という響きに反応しそうだけど、
一度口の中に入れると・・・甘み、酸味、ほろ苦さ・・・その全てが微妙で複雑に絡んだ
濃厚でリッチな味わいのチョコの風味と、それを優しく包むクリーミーな風合いのバランス。

もう“ロック”どころか“溶岩”みたいに口の中でとろけ出していって・・・美味しい!!
レーズンのギュッとした甘酸っぱさと・・・この独特の薫りと酸味・・・
舌先に仄かに感じるピリリとした刺激、ほど良い塩加減こそ・・・
まさにロックフォールのうっとりとする様な美味しさなのだ。

彼は初めてラヴェドンを訪れた際、“ドルチェ”という名のブルーチーズを
紹介していたけれど、此方はショコラとブルーチーズによるコラボ・・・

店主の類い稀なる感性とセンスを存分に堪能出来る“ドルチェ”なのだ。


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ほぼ毎週木曜日の夜に開催されるカフェとチーズとお酒の素敵な宴。
彼譲りのお気に入りの店とずっと気になっていたあの店とがプロデュースした
情緒溢れる紅葉と幻想的な光の織り成す神社の広場で行われる秋夜のイベントは、
普段訪れる事の出来ない僕にとって夢の様なほんの一夜限りの特別な思い出となった。

そう言えば、フレンチの薫りを宇都宮に伝えるこの2軒の店のイベントだけに、
11月19日の第3木曜日の夜には、何とボージョレ・ヌーボー解禁を祝う
大きなイベントを予定していると教えてもらったが、この2軒の他に
カフェや雑貨屋、何とバンドの演奏まであるとの事であった・・・

これこそ年にたった一度だけのスペシャルな一夜・・・
あぁ、僕はこの特別な日に仕事だなんて・・・



今回の宇都宮ツアーは、結局ハニーの提案のお陰であったが、
何かメッセージやヒントに繋がるモノは見つける事は出来なかった。

彼女はただ単にこの街の魅力を紹介して欲しかっただけなのだろうか?
それとも僕が紹介する事によって、何か新しい展開が待っているのだろうか?
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by mary-joanna | 2009-11-08 01:54 | 常ならん

ネ.石の蔵のチョコ屋さん

遂に・・・と言うか、やはり僕はまた彼等との交流を持ってしまった。

ネットだのブログだのといった類いは個人の自由だし、彼の場合、若干個性的ではあるが
単なるカフェ&パン屋を紹介するグルメガイド的なものに過ぎないと思っていたから、
見ず知らずの僕をわざわざ呼び出す事までする執着心には驚きを隠せなかった。

でも・・・彼の跡を辿っていくブログを作って彼に近付こうとしている僕は・・・



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・・・彼も頻繁に訪れていた街、栃木県鹿沼市にやって来た。

この街の古い市街地には歴史を感じさせる建物が点在し、僕の目を惹いていた。
そして、今日僕が訪れる事にしていた店も、そんな歴史情緒溢れる建物の中にある。


視界いっぱいに左右に広がった大きな建物は恐らく当時、蔵として所在していたと、
その風貌からも容易に想像がつくのだが、何と言っても圧巻なのはその外壁であった。

煉瓦よりも遥かに大きな直方体の石材を大量に積み上げて建てられた、まさに蔵。
近寄ってみると淡いアイボリーの表面はゴツゴツとし、所々に大小の気候が開いていた。
そんな長年の風雨に曝されて現在に至る重厚で圧倒的な存在感の外壁に取り付けられた
店の木の扉を被っている大きな庇は、何ともビビッドなオレンジ色だが不思議と調和していた。


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アカリチョコレート


扉の横に付いたアイアン製の外灯は、年月を経て風格を増した大谷石と相まって、
まるで中世ヨーロッパの城下町にタイムスリップした様な気分になってくるのだ。
外灯の下に掛けられた小さな看板の主人公は、何とも可愛らしいカメさん。
背中にはリボンのかけられたプレゼントを乗せて、てくてくてくと・・・

チョコレートに特別大きな思い入れを持っていた彼の事だから、
この可愛い看板を見ただけでウキウキしてきたんじゃない?

さあ、僕もこの大谷石で出来た蔵の中に入ってみよう。


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蔵の内壁も勿論この外壁から続く大谷石によって積み上げられていたが、
屋根まで吹き抜けになった高い天井と大胆かつシンプルな間取りの内部は、
控え目に配された照明により仄かに照らし出され、幻想的な空間になっていた。

大谷石の壁は外の明るい日差しとはまた異なった魅力的な色彩を醸し出していて、
他では体験し難い圧倒的な存在感に僕は暫くの間声も出さずに魅入ってしまっていた。

でも、非常に広々としているのに不思議と温かみがあって落ち着いた空間でもあった。
それは、周りを取り囲む大谷石の質感も然る事ながら、天然の木材によって作り出された
無垢材のテーブルやチェアー、アンティークの調度品等が良くマッチしていたからでもあった。

石の温もりと木の温もり・・・大谷石に守られて、そして木に包まれているから・・・
此処にゆったりと座っているだけで心から安心した気持ちになれるのかな?


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ゆったりと配されたテーブルに置かれたランプは、まるで此処だけを
周りの空間から切り取とってしまうかの様にオレンジ色の明かりを照らし、
背景の暗闇にぼんやり浮かんだアナタだけの特別な空間を完成させていた。


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更に僕が気になったのが、壁に備え付けられた幾つかの梯子だった。
そのうちの一つは、高い所に付けられた窓に向って伸びていた。


Catch the sun !

そろそろ僕も光に向かって挑戦してもいいんじゃないかな?
今まで彼の眩い光に両手で目を覆っているばかりだったじゃないか・・・


この広い空間を贅沢に使った1階のカフェスペースの奥にあるのは勿論・・・


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チョコレートの工房と美味しそうなチョコレートが並んだ“可愛いお店”!!

まるでパリやリヨンの街中にあるお菓子屋さんのスタンドみたいで、
この可愛らしい木の扉で出来たガラス窓の向こう側に並んでいるのは・・・


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板の上いっぱいに敷き詰められたチョコレートは、
流石ショコラトリーといった、壮観な光景だったけど・・・

思わず手に取ってしまいたくなる衝動に駆られるよ。


更に敷き詰めると言えば・・・


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大谷の石畳


このお店のショコラティエが地元栃木県の魅力をチョコレートで表現しようと、
素晴らしい感性と卓越した技術によって完成させた他では味わえないスペシャリテ。

こんなに洒落た石畳の上を歩いて・・・いや、無理だね・・・
だって、歩くそばから口に入れてしまいそうで・・・

大谷の石畳と並んで、この店オリジナルのチョコレートが・・・


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チョコロ


コロコロとちっちゃくて可愛らしいチョコのサイコロ・・・

先程紹介したシックな印象の大谷の石畳とはまた違った、
そう、まるで子供たちの楽しみなおやつの時間にピッタリな、
思わず微笑んでしまいそうな、素朴な可愛らしさが感じられた。


あぁ、それにしても、こんな風に積み上げられたチョコロを見ていると・・・

どうしても僕は思い出してしまうんだよ・・・
あの物語の一番最初を・・・全ての始まりを、ね・・・


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何時だってハートの中は甘くとろけそうなキミへの想いでいっぱいなんだ!


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口の周りをチョコレートでいっぱいにして・・・此処だったらお腹も心も大満足だよね。


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2階にはこの広々とした蔵の空間を見渡す事の出来るカウンター席があって、
彼がブログでそうしていたのに倣って僕もこの木の階段を上る事にした。

おや、階段の脇に寄り添う様に2軒の家が並んでいるのを見つけたよ。
きっと、とっても仲良しのお隣りさん家族が住んでいるんだね・・・


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2Fはロフトの様な細長い空間になっていて、大谷石の壁際のテーブル席と・・・


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・・・この、カウンターのテーブル席から成っていた。


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ロフトの突き当りには本棚があり、気になった僕は待っている間に一冊眺めてみようと・・・


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やぁ、こんにちは・・・ちっちゃな図書室の管理人さん・・・ネコさんだって?

アナタのイチオシは・・・えっ、後ろを見ればわかるって!?
どれも最高にイチオシだって・・・確かにそうだけど・・・

全部チョコの本じゃないか!!


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カウンターに腰掛けた僕は、思わずその先に広がる光景に見惚れてしまった。
だって、この建物に入っただけでも魅了されていたっていうのに、此処からの眺めは・・・


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・・・こんなにも素敵な眺めと一緒にチョコレートを頂けるなんて・・・


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ねぇ、リスくん・・・

キミが背負っているのは木の実かい、それとも・・・カカオの実だったりして!
だって此処にいたらキミだってきっと甘いチョコレートの虜になっちゃうよ。


この可愛らしいイラストをぼんやり眺めながらそんな事を想像していると、
店主がドリンクとケーキの乗ったプレートを持って階段を上ってきた。


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長方形のプレートの上にはお揃いのマグカップとケーキ皿が置かれていた。
素朴で落ち着いた印象の容姿は、まるで大谷石で出来たこの蔵をイメージさせた。


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ホットチョコレート


ふんわり泡立つベージュに輝く表面は柔らかくて温かくて・・・
それでいて、スムージーな食感が何とも新鮮な気分にさせてくれる。

しかし、泡の中には・・・何て濃厚なチョコレート!!

カップに顔を近付けると温かな湯気と一緒にチョコレートの薫りが
フワッと広がって、もうそれだけで心地良い気分に誘われる。

とろりとした舌触りから伝わる仄かにほろ苦い濃厚なチョコの風味が、
甘さと一緒になって柔らかな喉越しの後、口の中にまろやかに残っていた。

チョコの余韻が何時までも続いていくみたいに・・・


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ガトーショコラ


一面真っ白な雪化粧のチョコレート広場に描かれているのは、
まるでフィギュアスケートのリンクに残されている優雅な弧の軌跡。
最高得点の演技を終えた後のリンクにフォークを刺して一切れ分けると、
しっとり焼かれたチョコのケーキはギュッとした弾力からふんわりホロホロ崩れて・・・

そして口の中でふんわり溶け出してミルキーな甘いチョコが豊かに広がる頃には、
僕はもうこの濃厚なチョコのケーキに夢中になって次の一切れを刺していた。


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カウンターからの眺めと共に、のんびりとしたひと時の最高に演出してくれる。
まったりとして・・・温かくて・・・此処にいると心からホッと出来るんだ・・・
だから、これからもずっとこの石の蔵のチョコレート屋さんで・・・


これまで積み重ねてきた大谷石の歴史に甘い香りの1ページを・・・


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「ネメシア・メロウ」


“金魚草”の和名でも親しまれているゴマノハグサ科の多年草で、
此方はミルキーピンクと言う商品名の比較的小さめの2色咲きとの事。

ふんわりと広がった薄桃色のひらひらとした花弁は、水中を優雅に漂う金魚の
背びれや尾びれを連想させるけれど・・・真ん中でキュッと結んだ黄色い帯と、
左右に広がったピンクとホワイトのリボンを見ていたら何だかとっても・・・

そっけない茶色のチョコレートを可愛くラッピングしたくなるよね!!
そう、普通のチョコレートだったらね・・・でもね、このお店は・・・
この、石の蔵のチョコレート屋さんの特別なチョコなら・・・


アカリチョコレートで購入したチョコをお気に入りのグレーの皿に乗せると、
今回のイニシャルの花を一本取り出して、その隣りに添える事にした。

だって、チョコレートに良く映えるピンクの可愛らしい花だから・・・


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店主のご厚意で頂いたのは淡いピンクが麗しいカカオポッド型のひと口チョコ。

艶やかなホワイトチョコの中にはストロベリーがふんだんに使用されていて、
クリーミーなチョコの甘さとストロベリーのフルーティーな甘酸っぱさが
このひと口の中で切なくも麗らかな気持ちに誘ってくれる様で・・・


真っ白な肌の貴女がほんのり恥ずかしそうに仄かに頬を赤らめると、
手にした淡い紅紫の花と艶やかさを更に増して僕は見惚れてしまうばかり・・・


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オーガニックフェアトレード板チョコレート(32%)


板チョコと言えば明治や森永でお馴染みの例の形を真っ先に連想してしまうけれど、
最近は各ショコラティエからオリジナリティに富んだデザインもよく見かける様になった。

そんな中で、思わずウットリしてしまうこの優美な曲線の中に描かれたカカオやリーフ・・・
チョコレートに対して並々ならぬ熱い情熱を注ぐショコラティエが一枚のチョコのカンバスに
施したこの意匠は、極限までシンプルでありながら同時に芸術的なな作品に仕上がっていた。


だから、僕はこのチョコレートの葉に今回のイニシャルの花を添えたかったんだよ!!


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彼のお気に入りのチョコレート屋さんのアカリチョコレートにすっかり魅了された僕は、
これまで以上に彼に対する大きな大きなシンパシーを感じる様になってしまった。
だからこそ、如何にかして彼の近況を知りたい、少しでも彼に近付きたいという、
何処か後ろめたさも漂う抗しがたい感情が湧き上がってくるのだった。


そんな僕が次に目指した場所は・・・宇都宮の入り組んだ路地裏。
彼が特別な想いで訪れるあの店に行けば、何かヒントが・・・
それにね、また貰ったんだよ・・・彼等からの・・・

これは挑戦状なのかな?・・・それとも・・・
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by mary-joanna | 2009-11-03 23:29 | 常ならん