「ほっ」と。キャンペーン

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リ.シークレット・ラヴァーズ Ⅰ

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2009年8月某日、現在の時刻は・・・

僕は東武足利市駅構内の、改札口に設置してある時計に目を向けた。
午前10時20分、僕が乗る予定の特急列車の発車時刻までは20分近くもあった。

僕の周りでは、後ろ手を組み掲示板を眺めている人や荷物を抱えている人、
急いで切符を買おうとしている人など、ごく普通に駅で見かける光景があった。

構内のベンチに腰掛けた僕は、昨夜ネットで調べた乗り換えの経路を思い出しながら、
財布に仕舞い込んでいた特急乗車券を取り出したりデジカメのメモリを確認したりしていた。
まるで修学旅行に行く前の学生みたいに全く落ち着きが無いのは自分でも分かっていたのだ。

彼との約束場所は東京駅から歩いて数分の場所にあるビルの1階に面した店だった。
これまで地元の栃木や群馬、茨城といった北関東に限定してきた僕にとって、
このブログを通じて東京に行くというのは考えてもみなかった事だったし、
ましてや東京に行く事自体、ここ数年来の大変久しぶりの経験だった。

更にそれ以上に僕を緊張させていたのは・・・これから会う人物が・・・



1時間半後の正午過ぎ、予定通り東京駅までやって来た僕だったが、人だらけの
広い駅の中でかなり迷った挙句、大分遠回りして漸く丸の内方面に出る事が出来た。

Cindyはこの駅の中も目的地を目指してスマートに進んでいったのだろうか?
そして、東京駅の中をグルグルと彷徨っている間、“そもそも彼は何者なのか?”
という半ば自ら封印していた疑問が再び僕の頭の中を駆け巡っていた。


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有名な東京駅赤レンガ駅舎はまさに復興工事が進められている最中だった。

竣工当時の姿を再現するべく、今現在はグレーのシートに覆われてしまったものの、
赤レンガに白いラインが入ったモダンな雰囲気のヴィクトリアン・ゴシックとも呼べる外壁と
その重厚な近代建築が駅舎として視界いっぱいに左右に伸びて続いていく圧倒的な存在感は
工事作業中の大型重機や取り囲まれたフェンス越しからでもはっきりと見てとる事が出来たのだった。

大正初めの帝都東京、延いては近代日本の陸の玄関口に相応しい荘厳な佇まいで
100年経った21世紀の現在でも周りの高層ビル群を凌駕するインパクトを醸し出していた。
忙しなく進み続ける東京の中枢として再開発の進む丸の内一帯の中で、この駅舎周辺だけが
まるで時間の歩みを止めてしまったかの様に古き良き大正モダンの穏やかな薫りに包まれていた。

そう、その奥にうっすらと霞んで見える新しいビルがひょろっと縦に伸びてゆくのに対して、
目の前でどっしりと構える赤レンガの姿に歴史が持つ重みや威厳を改めて感じていた僕だった。


とは言え、視線を駅舎の反対側の皇居方面に向けると、視界いっぱいに飛び込んでくるのは・・・


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東京駅と皇居とを結ぶ僅か数キロの通りはその目的から行幸通りと呼ばれている。
東京駅を出るとすぐ目の前に皇居を確認する事が出来る位の距離なのだが、手前には
全長に対して非常に幅広い大きな通りを見守るかの様に左右に聳える2本の巨大な塔がある。

近隣のビル群の中でも一際目を引くこの2本の塔の、新しい方の1本でもある
此方の塔に初めてCindyが潜入したのは、彼是2年以上も前の事だった。
それは未だこの塔もCindyの日記も誕生して間もない頃である。


その塔の中では、一見何の関連も無いバラバラの“点”と“点”とが
魔法の様な妙技で結ばれて、1本の素晴らしい“線”となってゆくと言う。

この塔にあるパン屋のシェフによる類稀なる感性や情熱、才能が
和洋に縛られない様々な素材をパンという食べ物を中心に繋いでいき、
今までに無い“パンのある食事の風景”という新たな“線”を紡ぎ出してゆく。

彼が丸の内で真っ先に紹介したがっていたこの店が2年経った現在でも
塔の奥深くで燦然と輝いている訳が、僕にも分かる様な気がした。


だが、コメントの主が指定した場所はこの塔の中では無かった。


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僕は駅舎と塔に挟まれた大きな交差点を足早に渡り、丸の内のビル街の間を
縫う様に通り過ぎ、雨露に濡れる街路樹に囲まれた石畳の通りを有楽町方面に進んだ。

その通りを暫く歩いてゆくと、前方にはビルの一部ではあったが
それまでのオフィス街とは明らかに趣きを異にする一角が見えてくる。


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通りに面したガラス張りの外観、そして何よりもこの建物を印象付ける真っ赤な外壁、
また、建物を優しく取り囲む様に街路樹の緑が配されていて清々しい光景を見せていた。
鮮やかでセンスのある赤と緑のコントラストは、一分の隙も無い位に完璧な絵に映っていた。

更に、その店の壁と街路樹の間に沿って円型のテーブルが一列に並んでいる様は、
この場所が丸の内のビル街である事を忘れさせてくれるのには十分であった。

一瞬ではあったが、僕はパリのカフェにやって来たのだと錯覚してしまった・・・


そして、まさにこの場所こそがコメント主との待ち合わせの場所だった。


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慣れない東京駅構内でもたついていたせいもあり、店の扉に手を掛けた際に
ちらりと覗いた腕時計の針は約束の僅か5分前である12時25分を指していた。

この店は店内で食事が出来る他にパンやスイーツなども販売しており、
確か先のパン屋と同じ時期の2年前にCindyもこの店のパンを紹介していた。


先程から強まってきた雨脚のせいだろうか、非常に人気のある店の昼時という事で
もっと多くのお客さんで店内は混雑していると思った僕は、僅か一人の若者が
熱心にパンのショーケースを眺めている姿に少々拍子抜けした。

そして、その若者は後ろに立っている僕の姿に気がつくと、
パンを選ぶのを止めて全く躊躇する事無く僕に話しかけてきた。


 はじめまして・・・って言うのかな、“Little” Cindyさん!


僕はこの一言を返すのに非常に長い時間を要したと記憶している・・・
だが、その時何を言ったかは、改めて思い返してみても全く覚えていない・・・


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店はランチの時間帯になっており、店内でのカフェのみの使用は出来なかった。
決して格安の店と言う訳では無かったが、店内での食事を予定していた僕は、
それなりの(金銭的な)準備をしてこの店にやって来たつもりだった。

しかし店員からランチの説明を受けた彼は、直ぐにドリンクのみをオーダーすると、
ショーケースの方に向き直して先程までしていた様にパンを選び始めたのだった。

 
 この店はパンが最高なんだよ!今日は天気も今一つで寒いから、
 君もホットの飲み物を注文して・・・あっ、あれなんか美味しいよ!



彼に促されるままに僕もドリンクとパンをオーダーする事にした。
そして二人は店を出て外に並んだ円形テーブルを二つ繋げて席に着いた。


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 やぁ、本当に会ってくれるかは半信半疑だったから、あのコメントに貼った
 俺のアドに返事が来た時は嬉しかったってゆ~か、マジで興奮したよ!

 でもさぁ、Cindyが引退宣言したのもビックリだったけれど、それから
 “Little”なんてフザけた名前で、「イロハ順」に花を紹介するなんて
 いつもの彼のシャレにしてはキツ過ぎるって思ったりもしたんだぜ!

 ところが、どんどん話が進んでいくから・・・コレってマジで別人?って思った訳。
 で、面白そうだし“Little”の方なら会ってくれるかもって、コメントしたのさ!

 君からOKのメールが来た事を知らせたらみんなも驚いていたぜ!!
 だから、今日の俺のレポ、みんなスッゲー楽しみにしてるんだよ!

 遂に、Cindyの秘密が明かされるってね!!

 

そう、確かに僕は彼、Brit Boyと名乗る人物の鍵コメントにあったアドレスに
返事を書き、会う約束をし、こうして実際に会って話をしている・・・

何故、今時の若者の風貌をした一見大学生風の青年に会おうと決心したのか。
それはひとえに、僕の方こそどんな事でもいいから彼、Cindyの事が知りたかったから。
そして、目の前にいるこの青年は、Cindyが僕に教えてくれた数少ない自身の情報を
あの鍵コメントの中でさらりと言及していたからに他ならなかったのだ・・・

しかも、本当に信じて良いのか分からないけど・・・Brit Boyってハンドルネームは・・・


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僕がCindy's WALKの最後のお店に行き店主から彼の本名とアドレスを教えてもらった事。
そして、Cindy本人とメールの交換をして彼の後を継ぐブログを始める様になった事。
更には“Little”の称号(?)を冠する様になった経緯に至るまで、僕は語った。

目の前の青年は、如何してCindyは僕に返事をくれたのかという点が納得出来なかった
(と言うか、少々不満そうに感じていた)様だったが、彼自身の事について僕が殆んど
知らないのを悟ると(かなりあからさまに)落胆した表情を見せていた・・・


 Cindyの本名とメルアドは俺たちも知っているんだよ!!
 だって、彼、けっこう色々なお店に名刺を配っていたからね。

 でもさぁ、“Little”クンだけなんだよ、彼から返事をもらってるのって・・・
 俺たちだって彼にメールを送っているんだよ・・・また前みたいに・・・



青年はそれ以上の事は語ろうとしなかったし、此方から聞ける雰囲気でも無かった。
それから程無くしてドリンクとパンが運ばれ、僕たちは食事をする事にした。


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カプチーノ


僕たちがテラスにいた時間は正味3~40分位だったろうか。
決して長いとは言えないその間にも時折激しい雨が降り、
街路樹を濡らし、石畳の歩道を強く打ち付けていた。

今年の夏は本当にどうしてしまったのだろう。

七分丈のシャツ1枚ではどうにも肌寒く、袖口から腕先をさすりながらの
食事となってしまったが、恐らく店内で出されるより温かく感じたであろう
このカプチーノの熱いカップを両手で包み込む様にそっと抱え、ひと口ひと口
ゆっくりすする度に表面に描かれたハートの優しい鼓動が伝わってくる感じがした。


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バゲット・サンド “コッパ”


僕が選んだこの日のランチは、この店を代表するメニューの一つでもある、
カスクルートと呼ばれるバゲット(所謂フランスパン)のサンドだった。

カリカリの香ばしい表面でありながら中は驚くほどもっちりとした食感で、
このバゲットは是非とも買って家に持ち帰りそのままでも食べたいと思った。


だが、更に僕を驚かせたのがサンドされている具材の数々だった。

サンドの名前にもある、“コッパ”と呼ばれるイタリア産生ハムの、
はち切れんばかりの食感と弾力から広がるハムの堪らない旨味とコク。
加えてジューシーな茄子に濃厚な酸味のトマト、癖になる食感のキノコや
自然な甘みと鮮やかなパプリカもマリネとなって葉野菜と共に添えられていた。

この店が単なるパンやスイーツの店に留まらず、ブラッスリーとしての
確固たる地位を僅か数年で築き上げたのも納得の、素晴らしいサンドだった。


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青年がチョイスしたのは、ショコラ・ショーとヴィエノワ・サンドだった。

チョコレートのドリンクとふんわり甘いパンの組み合わせを選ぶなんて・・・
流石は“あの物語”の登場人物に名を連ねるだけの事はあるなぁ、と僕は感心した。


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食事が終わるや否や、青年は急に用事が出来たからと言って席を立った。

出会いも突然だったなら別れの方も全く以って突然の事で、人を呼び出しておいて・・・
といった青年の不躾さを感じる間も無く、僕は狐にでも化かされたかの様にポカンとしていた。

まぁ、彼なりに気を遣ったのだろうか、別れ際に僕のブログを期待していると、
振り向き様に付け加えてはくれたのだけれどね・・・


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テラスに座っている間、通りの反対側に見えていたバスの一団が気になったので、
東京駅に戻る道すがら、通りを横断して直ぐ側まで近づいてみる事にした。

如何やら東京駅丸の内南口から線路に沿って、はとバスの発着所になっていた様だ。
はとバス自体はテレビ番組などで良く知っていたが、実物を見るのは恐らく初めてだった。
この様に連なって停まっているのかと感心していたが、特に気になっていたキティ仕様に
ペイントされた最後尾のバスに近寄った僕は、バスの中に気付いて少しビックリした。


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キティちゃん、キミも一緒に旅に出るんだね。
僕も旅に出たところなんだけど、目的地を決めた筈なのに、
今回の旅は果てし無く遠く・・・そして、何処かとても謎めいていて・・・

キミみたいにいつも元気で明るくてみんなを笑顔にしてくれる様な、
そんなブログにしたかったのだけれど・・・そう、彼のブログみたいにね・・・



少しの間キティを眺めていた僕だったが、視線を前方に向けると来た時と
同じやや足早の歩調で東京駅に吸い込まれる様に戻っていった。

この短い時間に様々な思惑が僕の頭を巡り、すり抜けていったが、
僕にはもう1カ所、前々から訪れてみたい店があったのだ。
直ぐに気持ちを切り替えるなんて出来なかったけど・・・


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2軒目の店も無事訪問する事が出来て、帰りに乗り換えの駅構内で
偶然にも見つけたのが、此方の豪華な寄せ植えの展示だった。

何でもこの駅では専門家がこうして季節毎に寄せ植えを展示しており、
今回は夏の山野草及び花をメインテーマとして展示しているとの事だった。

勿論電車の出発時刻を待つという目的はあったものの、暫くの間、
夏を彩る華麗で繊細な草花たちの共演に無心で魅入っていたが・・・


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そう言えば、非常に大事な事をすっかり忘れていたよ・・・
今度のイニシャルは、確か・・・「リ」、だったよね・・・


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「リンドウ」


お盆や帰省先のお墓参り等で重宝されるこの時期の切り花の中に、
可愛らしい蕾と鮮やかな青紫色で花屋の軒先に一際目立っている花がある。

歴史のある花なので秋の七草に名を連ねていないのが不思議な位だと
思っていたけれど、残念ながら憶良の時代には未だ日本に存在しなかった。

先日の「チョコレートヒマワリ」で大変お世話になった自宅近くの花屋さんに
相談を持ち掛けたところ、敢えて青色を抑えた淡い紅紫色の束を渡してくれた。


殆んど見る事の無い茎から放射状にシャープなフォルムを見せる葉と、
その葉に守られる様に弱々しくも可憐な花弁で見る者を魅了する柔らかな花。

悲しさや淋しさへの誠実なまでの愛情・・・今の僕が求めている事なのかな・・・


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デルフィニウム


今回の「リンドウ」が紅紫色だった事と、僕のブログに毎回温かい励ましのコメントを
下さっている方が好きな色という事もあって、もう一つ青い花もリクエストしていたのだった。

このポピュラーな園芸品種は、先日にも“トリック”と呼ばれる品種を紹介したが、
お店のショーケースの中で、透き通る程の透明感を持った綺麗な青色が
僕の視界を一瞬にして独占し、思わずお店の方に指差してしまった。


キリリとした清冽な澄んだブルーとふんわりした花弁とのコントラスト、
花瓶に活けてファインダーを覗いた僕の手が一瞬止まってしまう位だった。



先の店では勿論パンも購入していた。

だって、あの青年も“パンが最高!”と語っていたし・・・
Cindyが紹介した東京の店のパンを買う機会は貴重だったし・・・

そして何より、ショーケースのパンがどれも本当に美味しそうだったのだ!!


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バゲット“レトロドール”


この店の象徴とも言うべき、この拘り抜かれたバゲットを僕も購入してみた。

パリパリと音を立てて細かく割れていくカリカリに焼かれた仄かに焼き色の付いた皮は、
まるでその小気味良いリズムまでが計算され尽くした美味しさの一部であるかの様だった。

更に、スライスしてみるとポコポコっとした大小の気泡が生地全体に入っており、
もちもち感としっとり感の両方を爽やかな粉の風味いっぱいに堪能する事が出来た。


店では野菜のマリネとのサンドで頂いたが、シンプルな中での奥ゆかしさ・・・?
僕にはグルメ的な感想は全く向いていないみたいだった・・・


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ショーソン・オ・ポム


僕があの青年の言葉を信じて会う約束を取り決めた訳、それは・・・

Cindyがカフェ&パン屋を紹介するブログを始める前に別の名前で
mixiをやっていた事を青年が知っていたから、そしてmixi上で
彼とはマイミクの関係だったと書いてあったからだった。

Cindy's WALKにはそんな事は一切書かれていなかったし、
多分Cindyもその事をブログ上で語ったりはしないだろう・・・


この店のクロワッサンと、このショソーン・オ・ポムは彼の日記の中で
“イチオシ”として紹介されていたが、プロフィール写真の事を尋ねた際に
そのツーショット写真をmixiで使った時期があったとメールに書いてあった。

だから青年がこの店を指定した時は僕の方こそ興奮していたのだ。
彼、Cindyの秘密が明らかになるよ、って・・・


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カヴァット


平べったくて細長い容姿が名前の由来になっている、このカヴァット(ネクタイ)。

ふんわりと焼かれたブリオッシュは平たい分だけ表面のサックリ感が増して、
スナック&焼き菓子的な要素も合わせ持ったパンに仕上がっていた。

中からはみ出してくる濃厚でほろ苦いトロトロの甘いチョコチップ、
更にまろやかでクリーミーな風合いのカスタードが絶妙にマッチして
このしっとりふんわりな卵の優しい風味のブリオッシュにサンドされていた。


菓子パン専門のCindyがこの店で必ず購入するのも頷ける美味しさで、
もし僕がもう一度この店を訪れても、きっと再びチョイスするだろう・・・

斜めにカットしたカヴァットの半分を頬張りながら、僕はそう思っていた。



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あの青年との会話の中からCindy自身の事における情報は殆んど得られなかった。
けれど、僕の頭の中を占領してしまう位の非常に大きな収穫・・・いや、謎?を知った。

それは、彼を取り巻き、彼の事を知ろうとしているグループが存在する事・・・
そして、そのグループは、mixiと・・・“あの彼の物語”に何らかの関係がある事・・・


僕は一つの海を渡り切ろうとして、より大きな海原へと流れ着いてしまったのだろうか?
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by mary-joanna | 2009-08-27 17:42 | 散りぬるを

チ.Wake up. Don't fear.

  眩いばかりの陽射しが辺り一面に燦々と降り注いでいる・・・


まるで物語でも見ている様な彼の“あのお店”の日記から丁度1年が過ぎた8月某日。
冷夏だの台風だのと鬱陶しい天気が続く今日この頃なので、肝心のこの日も上記の様な
美辞麗句はお世辞にも言えない一日であったが、何とかこの日に都合をつける事が出来た。

どうして休みを調整してでもこの日でなければならないのかって?

それは、あの少年にとって“特別の日”だったから・・・


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もうこんなに登ってきたのか・・・

深い緑の木々に囲まれた山間の麓に点在する小さな集落の屋根を見下ろしながら、
僕はこの夏休みに毎朝畑に出て父親を手伝うあの少年の姿をぼんやりと想像していた。


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そして少年が強い意志と情熱で黙々と歩いたこの道を、
普段の山道よりも幾分ゆっくりとしたスピードで運転していた。

うっすらと濡れ、ひび割れ波打つアスファルト・・・
所々苔生した、急角度に切られたコンクリートの壁面・・・
そして、左右、更には前方から伸びて迫り来る木々の鮮やかな緑・・・

壮大な山の自然は、一人の少年にとって時として脅威に映るかもしれない。
そんな風にして彼の日記の情景を頭の中で膨らませながら、僕は車を走らせた。


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やがて湖と、其処を横切る背の高い橋の傍までやってきた。
地図によればこの湖を越えると例のトンネルあり、目的の場所にも・・・

この足のすくみそうな絶景の橋を筆頭に、この先の湖へと注ぐ川の急流には
大小幾つもの橋が架かっていて、確かあの少年も赤い橋を渡るシーンが載っていた。


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例の場所までもう直ぐの所までやって来た僕は、車から降りて少し歩く事にした。

この辺りまで登ってくると川の様子も渓流と呼ぶに相応しい感じになって、
上流からザアザアと激しく音を立てながら白い飛沫が翡翠色の淵へと
止め処無く流れ込むのを眺めながらあの人の事を思い描いていた。

それは少年の憧れであり、目標でもある兄の様な存在。
そして、僕の憧れであり、目標でもある彼の様な存在。

でも、恐らくその彼にとっても、あの人は憧れであり目標でもあったのだ。
それは彼、Cindyが作る物語の中での架空の人物なのだろうか、それとも実際に・・・


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なぁ少年、お前はよく頑張ったよなぁ~。
だってたった一人で此処まで登ってきたんだろう。
しかもトンネルを越えて未だ見ぬ領域に足を踏み入れるなんて・・・

だって、このトンネルの先は僕にとっても未知の領域なのだから・・・


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そして、トンネルを抜けて程無く進むと見えてくる木の板の看板・・・
そう、少年が焦り、迷い、躓き、それでも己の意思と兄への強い想いで
遂に辿り着いた、細い山道に沿って流れる支流を越えた脇道に置かれた看板。

此処に看板があるという事は、直ぐ側にはもしやあの花も咲いているのでは!?
暫くの間辺りを見回した僕だったが、それらしい花を見つける事は出来なかった。


彼の日記にあった“さらさらと流れる川のせせらぎ”は、
ここ数日の天候で耳に突き刺す激しい響きへと変わっていた。

夏の陽射しも届かない深緑の林が作り出す薄暗い陰の世界に逆らう様に
剥き出しの地面は白く輝いていたが、小鳥のさえずりさえも掻き消してしまう
川底から湧き上がる水の音、更には望んでいた探し物に出会う事も出来なかった
焦りから、僕はマガーリ少年で無くても不安で躊躇するのも無理はないと思い始めていた。


そんな僕を見兼ねてだろうか、支流の側の灌木からひょっこりと顔を出すモノが・・・


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ひゅ~~~ん・・・


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パァ~~~ン!!


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1年前にマガーリ少年が、そのまた1年前に彼の兄が出会った思い出の白い花の
直ぐ側で僕に笑顔と勇気をくれた小さな小さな昼の花火にお礼と別れを告げた僕は、
自動車すら入る事の出来ない泥と砂利の道を一歩一歩踏みしめる様に進んだ。

だって僕は未だあの場所に辿り着いていないじゃないか!!
それに、あの場所でこの花を彼に捧げるんじゃなかったのかい?


そう、僕は手に花を抱えて此処まで来たのだ。
それは、数本ではあったが漸く手に入れた茶色の花・・・

もう往ってしまった貴方とそして・・・その後を追う貴女に捧げる褐色の花・・・


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草木に囲まれた緩やかに傾斜する小道を進むと程無くして3つの小屋に辿り着く。

一番手前の煙突の突き出た小屋とその隣りにある風変りな印象の真っ黒の小屋、
そして一番奥に位置するのが、最も大きく堂々とした佇まいのログハウスだった。


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奥のログハウスが目的の場所であるのだが、其処へと続く石畳の小路の左右には
この時期の綺麗な花が咲き誇り、さながら秘密の花園を抜けていくといった感じだった。

どの花もこのロケーションによくマッチした穏やかな印象を僕に与えてくれた。


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シュウカイドウ(秋海棠)


秋海棠、以前はほんのりピンクだったのに透き通る様な白い肌の君は、
何処か物憂げでその黄色い眼で寂しそうに遠くの方を見つめているんだね・・・

まるで誰かに怯え、でもその人の帰りを待っているかの様に・・・
誰にも打ち明ける事の出来ない耐え難い悲しみを内に秘める様に・・・


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ギボウシ(擬宝珠)


次に出迎えてくれたこの小さくも存在感のある花の控えめな淡い薄紫色は、
雨露に濡れて滲んでしまったのでは?とも感じさせる微妙な色合いを見せていた。

非常に清らかで凛とした佇まいに、僕はまるで仏閣の貴重な宝物を
拝見しているかの様に、暫くの間この可憐な花に見入っていた。


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フロックス(花魁草)


花魁が塗っていた白粉の香りがこの花の語源との記述を目にしたけど・・・

純白から桃色へとキリリと変化していく様が江戸の街を彩る遊女の肌を思わせ、
また、一つ一つの小さな花が集まり絢爛華麗な花の束を作り上げる点も
何処か華やいだ遊郭に集まる遊女たちの様子を連想させてくれて、
バラやユリとはまた違った華やかさを感じる事が出来た。


そして、趣きのある愛おしい花たちに出迎えられて僕がやって来たのが・・・


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これまで目にしてきた花にも負けない、淡い水色の扉。
僕も遂にマガーリ少年と同じ場所にまで辿り着いたのだ!!

この扉で待っていてくれるのは、勿論・・・


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  ようこそいらっしゃいました。

  美味しいお菓子が待ってます。
  緩やかなひと時が待ってます。


優しく僕に語りかけてくれる気がした・・・


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僕は本当に建物の中にいるのかな?

表には可愛い花々、
優しい木の香りに包まれ、
その周りを爽やかな緑が取り囲み、
やわらかなオレンジ色の空気に満たされる・・・


まるで花咲く森の道に遊びに来たみたいな・・・

そして僕は此処で誰と出会うのだろうか?
どんな大切な物を落としてしまうのだろうか?


この中にいると身体の疲れはもとより、此処まで付いて来た
不安や焦りまでもが何時の間にか何処かに消え去っていく気がした。


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「チョコレートヒマワリ」


僕も花を探しに来たんだ。
君が僕に笑顔をくれたあの白い花を・・・

確かに僕は、此処に来るまでずっと焦っていたのかも知れないね。
花の事に気を取られて、肝心な事を忘れていたのかも知れないね。
だから結局少年が見つける事の出来たあの白い花には出会えなかった。


でも、君のお陰でこんな素敵な場所に来る事が出来たんだ!
だから、そのお礼にこの場所で君に見て欲しかったんだ!

もう1年も前に姿を消してしまった、君が憧れるあの人物と・・・
そして、その彼の秘密を知っているあの女性をイメージしたこの花を・・・


彼の物語のイメージ通り、そしてこのお店のイメージ通り、
店主はチャーミングな笑顔が印象的な、穏やかで清楚な方だった。

そんな店主が心を込めた、まるで子どもの為にお母さんが作るスイーツ・・・


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スコーン


手に取るとごつごつとした質感から想像もつかない優しい温もりが伝わってきた。

そのサックリとした香ばしい表面と、中の生地のふんわりしっとりの感触、
更には全粒粉の風味豊かな粉の香りが口の中いっぱいに心地良く広がってくる。

更に生地の食感にマッチする仄かな甘さとまろやかさは、そのまま頂いても
付け合わせのブルーベリーや生クリームと合わせても最高の美味しさだった。


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レモングラスティー


8月に入っていたが、ここ最近の肌寒さすら感じる真夏とは思えない気候に加えて
山間の深い緑の中で頂くスイーツやドリンクは、このような温かいものが丁度良かった。

スッキリと爽やかなレモングラスの香りとほろ苦さが口の中は勿論、
テーブルいっぱいに広がって、まったりとした空気に包まれている様だった。
このひと時が何時までも続いてくれれば、と僕は思いながら少しづつ飲んでいた。


そう・・・
マガーリ少年の心の悩みを解きほぐしてくれた店主の優しさと
マガーリ少年のお腹を満たしてくれたスイーツに僕も酔いしれてた。


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まるでトトロみたいな形をした、ちょっと不思議で可愛らしいサボテンと目が合った。

  サボテンくん、何だかとっても寛いでいるじゃないか!!
  それに、素敵な場所と優しいご主人さまに囲まれて・・・
  
  俺はオマエが本当に羨ましいよ!!



店主にお礼を言い、名残惜しそうに庭の花を眺めていた僕だったが、
この店を出る際の僕の表情にもちょっとだけ希望の笑みがこぼれていた。


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今回の僕の小さな夏の旅は、そう、丁度1年前の夏に彼が作り出した二つの物語に
触れる旅であり、また、その登場人物たちにささやかながらプレゼントを送る旅でもあった。

花を通じて彼の物語に繋がっていきたい、そして新たな物語を綴っていきたい・・・
僕の中で想像とも妄想ともつかない強い想いがどんどんと膨らんでいって・・・


そんな想いでこの物語を紹介した時だった。
僕の下に彼では無いある鍵コメントが届いたのは・・・

しかも、僕に会って話がしたいだなんて・・・


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by mary-joanna | 2009-08-21 11:06 | 散りぬるを

ト.夏の陽の思い出

職業柄、不規則ではあったものの数日間の休暇を得た8月は半ば。
今一つはっきりしない今年の夏空は、肝心の日に台風の接近も重なり
予定していたあの場所への再訪も少々心配になってきたのは事実だった。

でも、菜園の向日葵の様に明るいダヴィッドさんの笑顔と彼が作る愛情たっぷりの
美味しいパンに魅せられた僕は、天候の好転を信じて予定の時間に足利を出発した。

それに今回のつくばツアーにはどうしても訪れたい場所があと二箇所もあるんだ!
それは、Elvis Cafe を綴る僕にとって夏の思い出を作るのにぴったりの場所・・・

そう、“夏の陽”の思い出に・・・


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さわさわと風にたなびく薄黄金色をした麦の穂の遥か向こう、
緑に覆われたなだらかな裾野の中腹に小さく見え隠れする朱色の鳥居。

筑波山の麓までやって来た僕は、流れる雲が山の頂上を覆ってゆくのが
とても気になって、付近の駐車場に車を停めて暫くの間眺めていた。


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白・・・黒・・・緑・・・何本もの直線が一点に集まるその先に小さく見える筑波山。
この何処までも果てしなく続いてゆくかの様に思われる深緑の回廊を進み、
つくばの街を縦断しきった頃に辿り着くダヴィッドさんのパン屋さん・・・

彼が此処を訪れた際、この街路樹は必ずと言ってもいい位紹介されていたっけ・・・

ダヴィッドさんと(そしてご家族の皆様にも!)素敵な再会を果たした僕は、
筑波山の方から南下してきたこの国道を筑波大学の辺りまで戻って来たのだ。


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つくば植物園


この通りを隔てて大学の真向かいに位置している国立の植物園こそ、
今回僕がどうしても訪れてみたかった最初の目的地だったのだ。

非常に大きな植物園は、屋内外を合わせ約3000種類もの世界の植物が
栽培されており、広大な敷地は当然の事ながら生息環境ごとに区分けされていた。


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ヤマユリ


まだ十回にも満たないこのElvis Cafeだが、お気に入りの花であるのは勿論、
初夏にスタートしたという事もあって百合の仲間を紹介する機会が多かった。

大きく開いた純白の花弁の真ん中に入った黄色いラインと茶色の斑点、
更にその表面を漂うオレンジ色の細長い葯とまるで恒星の様に鎮座する柱頭。
その全てがあたかも計算しつくしているみたいな完璧なフォルムとバランス。

そんな、夏の花の王様と形容したくなってしまうこのヤマユリだけれど、
僕が真っ先に思い出すのは、やっぱり彼のあの日記の中だった。

兄弟と父の“ひと夏の思い出”・・・僕も思い出を求めて此処まで来たんだ!


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キヨスミギボウシ


この植物園では、普段お目にかかる事の出来ない希少な植物に出会えたりもする。
その名の通り清楚な淡紫の君を見掛けた僕は、先日の“清く澄んだ”日を思い出していた。


そして中央広場では、この季節の野草としては非常に人気の高いあの花が咲いていた。


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サギソウ


透き通る様な白い翼を大きく開いて可憐に羽ばたこうとしている白鷺の花は、
同時にあの悲しい物語をも連想させる悲哀に満ちた表情をも覗かせている様だった。

その美しく舞う姿に、一年のほんの一時だけ酔いしれてしまうのだ・・・


綺麗な白鷺に別れを告げた僕は、温室の方に行ってみる事にした。


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熱帯資源植物温室


まるでジャングルの中に突然現れたガラス製のピラミッドみたいな大きな三角形の温室は、
一瞬でアマゾンかインドネシアの熱帯林にワープした気にさせる不思議な空間だった。

でも、そんな非日常的な、ドキドキする感覚を期待して僕は中に入った。

非日常?・・・ドキドキ?・・・此処はディズニーランドでも映画館でも無い単なる
植物園の温室で、いくら珍しいと言っても唯の植物が並んでいるに過ぎない。
でも、どういう訳か今の僕には此方の方がずっと魅力的に感じるのだった。

此処にあるモノたちが・・・“リアル”だからかな?


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そう、此処はリアルな植物に覆われた“ジャングル”なんだ!!

そして真っ先に僕を出迎えてくれたのが・・・



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バナナ


まるで此方に手招きしているみたいなコミカルな風貌の萼の付け根からは、
この姿から想像もつかない可愛らしい花が咲き、やがて例の黄色い実をつける・・・

Cindy、君の日記には幾度となくバナナが登場するけれど、こっちは見た事無いんじゃない?


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カカオ


更にもう一つ、君の大好物の“本来の姿”を紹介しておくよ。

それにしても、これがあの甘くとろける魅惑のチョコレートの元の姿だなんて、
初めてチョコレートを作り、食した人々には驚きを通り越して感嘆の念を覚えるよ。

君もそう思うだろう・・・いや、そんな事は考えないよね・・・(褒めているんだ!)


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ウツボカズラ


思わず微笑んでしまいそうなユーモラスな植物を見た僕は、
先日遊びにきた甥っ子が持っていたポケモン図鑑を思い出した。

今思うと、あのアニメには珍しい花や植物をイメージしたキャラクターが
少なからず登場していたけれど、最近まで全く気にも留めていなかったっけ・・・


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温室を後にした僕は、この広い植物園を更に散策してみる事にした。
敷地内には池や湿地もあって、其処に生息する希少な植物にも出会えた。

そんな中、絶滅危惧植物が植栽されているエリアで見つけたのが・・・
今回のイニシャルでもある、「ト」の花だった。


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「トラノオスズカケ」


細長い茎から等間隔に付いた葉は一枚ずつ左右交互に出ていて、
葉の付け根から小さな円錐状の紫の穂がちょこんと伸びていた。

淡い紫の付け根と爽やかな黄緑の穂先のコントラストが清々しいけど、
この可愛いフォルムとツートーンのバランスから僕が連想したのは・・・

何を隠そう“アポロチョコ”だった!!
彼に負けじと、僕もチョコやお菓子が大好きなんだ・・・


本来は山伏が修行の際に身に付けた鈴懸と太くて荒々しいイメージの虎の尾が
名称の由来なのだと言うのだけれど、僕の中ですっかり“アポロ”になってしまった
イニシャル「ト」の君には恐らくこの様な場所でしか会う事が出来ないのかも知れないね。

本当の虎だってもう動物園でしか見る事が出来ないんだ、21世紀の現代では・・・


中央広場から入り口までのプロムナードを歩いていた僕は頭上を覆い尽くす
街路樹の無数の黄色い葉っぱと、木漏れ日の優しい日差しをぼんやりと眺めた。


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「トチノキ」


僕の地元、栃木県の県木がこのトチノキである事は小学生の頃から知っていた。
でも、こんな形の木でこんな色の葉っぱをつけるなんて、今まで意識した事も無かった。

植物のブログを始めて僕が知ったのは花や草の事だけでは無くて・・・

そう、僕が住んでいる土地の風土や歴史、いつも見ていた(筈の)木や空の色、
更には空気や土の香り、風の心地良さまで新鮮な感じがした・・・


トチノキのプロムナードを渡り正門を出た僕は、もう一つの目的の場所に向かった。
僕が忘れていた自然の恵みを思い出させてくれる、もう一つの場所に・・・


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市街地に位置しながらも大きな通りからはかなり奥まった場所に位置していた。
周りを竹林に囲まれ、すぐ側にはお寺もあって、本当に此処が開発著しい
研究学園都市の街中なのだろうか?と感じてしまうロケーションだった。

このスタイリッシュな外観と、全く相反する様なお店の名前・・・
都市と自然、現代と歴史が絶妙に溶け合った、そんな印象が此処にはあった。


そして一歩中に足を踏み入れると・・・


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目の前に広がるカウンターを彩るスイーツの数々に僕はすっかり舞い上がった!

これは彼がウットリとするのも無理は無いだろう・・・僕もそうなのだから・・・


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スッキリとした印象の洗練された店内は奥のカフェスペースまで続いていた。
真っ白な背の高い壁と無垢材のテーブルは、意図的に装飾を極力排していた。

その訳は・・・視線を上の方に向けてみると・・・あっ!!


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そう、此処では“本物”が店内を飾ってくれているのだ。


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先程“何の装飾も無い”と告げた店内だが、二つばかりの例外があった。
一つはワインを陳列している棚の上に掛けられた非常に大きな葡萄の絵画、
そしてもう一つが、カフェスペースの真っ白な壁に掛けられた4枚の植物の絵。

四季だろうか、それとも此処つくばの自然だろうか、同じサイズの正方形の4枚は
其々が個性的でありながら一枚の絵巻物の様に繋がっている風でもあった。
それらの絵画があたかも4つの窓越しに覗く風景の様に自然に存在していたので、
部屋を飾っているというよりこの建物の必要不可欠な一部といった印象がした。

そんな4枚の絵の中で一際僕の目を捉えた一枚があった。
全てを受け止めてくれるカンバスいっぱいに広げた大きな白い花弁、
そのゆったりで泰然自若な佇まいは穏やかで落ち着いた気分にさせてくれた。


そして、“それ”は店内に陳列されていたワインの木箱の中で休んでいた。


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あぁ、見つけたよ・・・
僕は“夏の花”を求めて、此処つくばにやって来たのさ。

実は事前に取り置いてもらっていたのだが、こうして木箱に入った
彼を見ていると何だかこっちまで安らいだ気持ちになってくるんだ・・・


知る人ぞ知る自然派ワインとスイーツのお店ではあったが、
更にもう一つ、このお店で忘れてはならないのが・・・


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クマさん、キミもお腹が空いていたんだよね。
大好きなチョコレートパン・・・あっ、彼の大好物でもあったよね。


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まずサーヴされたのはひんやりとしたこのスープだった。

ぽってりとした舌触りは、野菜の質感をなめらかに感じられるギリギリの
バランスを保っていて、スープでありながら野菜そのものを食している気分だった。

以前、このブログをスタートさせるきっかけになったあのお店で
最初にスープが運ばれた際に店主が言ったひとこと・・・

  先ずこのスープで身体をチューンナップして下さい

一口、また一口、僕はその言葉を思い出しながらスプーンを口に運んだ。
野菜の甘みとコクがまるで身体の隅々に沁み渡っていくのを感じながら・・・


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キッシュと塩味パウンドケーキのお皿


キッシュ・・・パウンドケーキ・・・サラダ・・・そして、デザートまで!!

思わず歓喜の声をあげてしまいそうな、バラエティーに富んだこの一皿は、
更にキッシュとパウンドケーキを好みに応じてチョイスする事も出来た。

メニューに踊る魅力的な食材の数々から一つだけを選ぶ時のワクワク感に、
プレートが運ばれるまでのドキドキ感とテーブルに置かれた際の感激と言ったら・・・


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キッシュプロバンサル


なす、トマト、ズッキーニといった夏野菜がたっぷりと入ったキッシュの、
ふんわりとした卵のまろやかさの中から溢れ出すジューシーな野菜たち。

ほど良いやわらかさとギュッと詰まった食感の野菜本来が持っている
甘み、酸味、コクと旨みの全てrがサクサクの生地とふわふわ卵にマッチして・・・

太陽の恵みをいっぱいに受けたプロヴァンス地方の郷土料理を
そのまま頂いている様な、陽気で元気な夏に相応しいキッシュだった。


更にパウンドケーキも夏らしいひと品に決めていた・・・


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ケーク・オリーブシトロン


このお店のスペシャリテと呼ぶにピッタリの塩味のパウンドケーキは、
そのまま頂いても勿論最高なのだけれど、このプレートに合わせた際の
他の料理との絶妙の相性は他では決して体験する事の出来ないものだった。

ふんわりでしっとりとした食感の生地から仄かに薫るレモンの爽やかな香りと
心地良いほろ苦さ、そして微かな塩味が生地の優しい甘さをも一層引き立てていた。
思わず夢中で頬張っていくと、所々にオリーブの実がゴロっと散りばめられて、
ムギュっとした食感と共にオリーブ特有の香りが丁度良いアクセントになっていた。


キッシュがプロヴァンスならパウンドケーキはイタリア南部だろうか、
共に地中海のそよ風をいっぱいに感じさせてくれるプレート・・・


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ハーブティー


食後にのんびりと頂く温かいハーブティーは胃腸の調子を整えてくれるばかりか、
食事での興奮を穏やかな気持ちに誘ってくれ、とてもまったりとした気持ちにしてくれる。

香り立つハーブの心地良さに、僕は暫くの間席を立つ事が出来なかった。


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つくばで出会った2回目の向日葵は、竹林に覆われた“フランスの田舎”の、
ピュアな空気がゆったりと漂っている、この真っ白な建物の中だった。

足利を出る際の何処か不安を掻き立てる様な鼠色の空模様は、
何時しか真夏の抜ける様な青空と雲へと変わっていた。


まるでビールやソーダの様に栓抜きで開栓すると、ポンっと響く軽やかな衝撃と共に
キラキラと輝く白金色の液体がシュワシュワと音を立てながらグラスに満たされていく。

暑い休日の午後、やや強めに冷やされたワインはスッキリとしたのど越し、
爽やかな味わいはそのままに、夏の薫り・・・大地の薫り・・・太陽の薫り・・・

葡萄と自然と作り手の情熱が一つになった綺麗なグラスをぼんやり眺めながら、
僕はこの1ヶ月の、そう、Elvis Cafeが始まったこの夏の思い出を噛み締めていた。


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ポタジェとカンパーニュ・・・
向日葵とヒマワリ・・・
パンとワイン・・・

この夏つくばの地で二つの“夏の陽の思い出”を作った僕だったけど、
まだまだ暑い夏は終りを告げてはいなかった・・・恋焦がれる様な褐色の・・・
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by mary-joanna | 2009-08-16 13:35 | 色は匂へど

ヘ.清く澄んだ街角にて

 何処に向かっているんだい、そっちは街中じゃあないか!!


勿論分かっているさ、でもね・・・

此処には森林に負けない深い緑がある。
此処には庭園に負けない華麗な花が咲く。
此処には草原に負けない爽やかな風が吹く。

此処、清住に向かう大通りには・・・


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先日の日食では何ともロマンチックな太陽のかくれんぼを見る事が出来たが、
この日、お天道様を隠していたのは空一面を覆い尽くしていたどんよりとした雲。

とても7月の終わりとは思えない空模様であったが、僕は栃木県宇都宮市にやって来た。


JR宇都宮駅から続く市街地の中では随一の大通りは、商業施設は勿論、
付近の通り一帯も含めると裁判所や地方銀行の本店、美術館に学校などの
政治、経済、文化に渡るまさに街の大動脈とも言えるメインストリートとなっていた。

そんな市の中心に位置する大通りに沿って進んでゆくと、例のコンビニが現れる。
彼がこの街で大のお気に入りの、“あのカフェ”へと続く曲がり角だ!


勿論僕だってあの穏やかな時の流れを体験したくてこの街を訪れたのだが、
この中々右折出来ないコンビニを曲がる前に、もう一軒行く場所があった。

そう、今の僕にとっては本題とも言うべきその場所は、コンビニのすぐ先なのだが・・・


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しっかりと舗装された片側2車線の通りには途切れる事無く車が往来し、
広めにとられた歩道には街路樹すら備わっているものの、ぐるりと見渡して
目に飛び込んでくるのは数階建てのコンクリートの建築物や店の看板ばかり・・・

と、これまでお腹一杯なくらい目にしてきた“今の”市街地に有りがちな情景に、
一杯の爽やかな涼茶が差し出された様な、清々しい出で立ちの古民家が一軒。


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この大通りにあっては明らかに異質な存在なのに、何故か全く違和感無く、
この風景のこの場所に無くてはならない存在としてマッチしている様に思えた。

更に、この建物の軒先を埋め尽くさんばかりの大小様々な夏の草花は、
まるでこの古木の柱やトタンの赤屋根に寄り添う様に自然と溶け込んでいて・・・

そんな優しさすら感じさせる繊細な野草たちの中に、最近様々な紙面で
目にする“あの白鷺”より小さくて可愛らしい“鷺の群れ”が飛び立とうとしていた。


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建物の正面には何とも存在感のある重厚な扉が備わっていた。

昔ながらの伝統的な蔵戸をリフォーム時に合わせたとの事だったが、
みんなをしっかりと支え、守ってくれる大事な扉が頼もしく見えたりもした。


実は此処こそが、僕が今回どうしても訪れてみたかった場所・・・
つまり、“お花屋さん”なのだが、此処は本当には花屋さんなのだろうか?

この重厚な扉の向こう側でまず始めに出迎えてくれたのが・・・


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そう、やっぱり花屋さんだもの、暖簾にだってちゃんと描いてあるじゃ無いか!

そして、建物の中をぐるっと見回した僕は思わず感嘆の声を漏らした。
確かにこの建物は、取り壊しを免れた築数十年の古びた家屋かも知れない。

でも、この空間を満たしているものと言ったら・・・


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そう言えば、これまでの僕のブログで紹介してきた草花はどれも皆、
太陽の下でのびのびと咲き誇って、生い茂っていたよなぁ・・・

花屋なのだから建物の中は当たり前だって?

うん、でもこの花屋さんの草花たちを見てごらんよ!

適度に抑えられた仄かな明かりの下でのんびりと寛ぐ草花たちは、
まるで此処が建物の中とは思えない程とっても生き生きとして楽しそう。


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例えば・・・ほら、水色の玉とピンクの玉がプカプカ浮かんで仲良く遊んでいるよ。

まるで、サイダーの泡を見ているみたいに・・・キラキラ輝いているみたいに・・・


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まるで道端にひっそりと咲いているかの様に何処か控えめで、
でも、立ち止まってくれた人に笑顔になって欲しくって・・・


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トリック


栃木県一の街の、しかも市の中心の大通りで、こんなにも外の喧騒を忘れて
穏やかな気持ちにさせてくれるなんて・・・何かトリックでもあるのかい?


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「ベロニカ(トラノオ)」


店員さんに僕のブログの主旨を打ち明け、今回のイニシャルについて
相談すると、奥から紫色の穂をした細長い花の束を持ってきた。

一目で気に入った僕は、直ぐに購入する事を店員さんに告げた。

突然の僕の申し出にも、非常に親切かつ丁寧に説明をしてくれた、
二人の店員さん、そして店長さんにはこの場でお礼を申し上げたいと思う。


さて、少々長居し過ぎたかも知れない。時刻もお昼を回り、僕のお腹も空いてきた様だ。
購入する花の取り置きをお願いした僕は、先程のコンビニを予定通りに曲がって進んだ。
恐らくCindyが何度と無く通ったであろう例の細い路地に入って、そう、あの場所へ・・・


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その細い路地を右に左に2回ほど曲がると見えてくる、あの平屋の一軒家。

さっきの花屋にも劣らない、正真正銘、まさに“昔の”家屋に着いたよ。


そして、僕はこの場所で再び昭和にタイムスリップするんだ!!
懐かしいセピア色で満たされた、けれども未だ一度も体験した事の無い・・・


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初めまして、牛さん。
これからは彼に代って僕が君を紹介させて頂くよ。

まだまだ僕は“ちっちゃい”けれど、何時かきっと、君の様にどっしりと
腰を落ち着けていたいんだ・・・そうすれば彼だって・・・


中に入った僕は店長さんのご厚意で部屋を見せて貰った。


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この部屋は確か昨年の夏、“シェーブル”が残した手記を
物語にした際にあの人が食事した場所・・・

部屋の中央を占めている長テーブルに掛けられたクロスは・・・


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そうだね、君たちもしっかりと紹介しておかなきゃ、ね!


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無数についた柱の傷が、この建物の歴史を物語っていた。

現在の住人はというと、細長い腕と緑色の可愛らしい手を
いっぱいに伸ばして僕に挨拶をしてくれている様にも見えた。


そしてまた一つ、この柱に生きた証が加わってゆくのだ・・・


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柱にはもう一つ、昔の家の大黒柱には必ず掛けてあったボンボン時計も。

ねぇ時計クン、お願いだからもっとゆっくりと時を刻んでくれないか!


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このお店の店長さんはとても研究熱心だ。

でも、その根底には非常に柔軟な発想と・・・
何よりもワインやチーズに対して大きな愛情を注いでいらっしゃる。

だからこのお店は安らぎや温もりで満たされている気がして・・・


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まるで大正時代の洋館の一室と彼が語っていたのも頷ける、
このダイニングで、僕もロマンチックで優雅な食事を堪能したいな。

でも、僕が座るべき席は最初から決めていたのだった。


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昔風なら縁側の廊下とでも呼びたくなる(実際に呼ばれていた?)、
部屋と庭とを隔てるスペースに配された円テーブルとラタンのチェアー。

そう、この席こそ彼、Cindyの大のお気に入りだった席でもあり、
“Little”と称する僕が紹介する事をずっと夢見てきた席でもあったのだ。


雲に遮られた緩やかな白い光が硝子戸から差し込んで、
この空間にある全ての物に微妙な陰影を作り出していた。

何て、ゆったりとして落ち着いた気持ちになれるのだろう・・・

日々の事が遠い彼方へと消えていきそうだよ・・・
いや、それはこの清住の地にやって来た時から感じていた事、
先の花屋さんから此処へと繋がる路地は時空をも超えてしまうのかな?

そんなとりとめの無い妄想に駆られそうになっていた時だった。


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あの頃のスパゲティミートソース


最近の凝った作りではなく、とてもシンプルで子供の頃お母さんが
手づくりで煮込んでくれたあのミートソースの、あのスパゲティ。

たっぷりの挽き肉と野菜が入った、味も栄養もスタミナも満点のスパゲティ。

でもこのお店のミートソースには、仕上げのひと手間があるのだ!
店長さん自らその場ですり下ろしてくれるたっぷりのハードチーズの
コクと風味が、ミートソースの旨味をも更に引き出しているみたいで・・・

そう、此処は美味しいチーズのお店なのだものね!!


絶妙の茹で加減でつるつるしこしこのスパゲティに良く絡んだミートソースに、
まるで子供の頃に戻ったかの様に僕は我も忘れてパクついてしまった。


そして他では味わう事の出来ないスペシャルなチーズは、
勿論追加でオーダーしたスイーツにだって!!

このお店の夏のスイーツと言ったら・・・


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自家製アイスクリーム


蒸し暑い曇り空の、ちょっぴり物憂げな午後の窓辺で、
涼しげな籐の椅子にのんびり腰掛け、ひんやりとしたアイスを一口。
ミルキーな優しい甘さの中に、アイスの冷たさで抑えられたチーズの香りと
チーズの刺激が舌先にちょこんと伝わってきて思わずビックリ、そしてニッコリ。

やがて口内の体温で溶けて広がるチーズ本来のふんわりとした芳醇な風味、
更にまったりとした舌触りは、このアイスを最高のスイーツに仕上げてくれた。


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アイスティーのグラスに付いた水滴が滲んでいくのを眺めながら、
この時間が何時までも続いてくれればなぁ・・・って思う僕だったけど、

さっきの花屋さんとこのチーズ屋さん、それにこの細い路地の風景は、
何十年も前からずっと変わらずに、そしてこの先もずっとずっと
このままでいてくれる様な気がして・・・

そう、この清住の路地裏の、古びた一角は・・・


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「ベロニカ(トラノオ)」


ピンと真っ直ぐに伸びた茎の先、フサフサした青紫の小さな花の穂は、
ピョコっとコミカルに曲がってて何とも可愛らしいトラさんのしっぽ。

きっとキミだったら、吠えられても微笑んでしまいそう。

何処か懐かしくって、でもこれまで目にした事の無い花屋さんから連れて帰った
可愛らしいトラさんは、偶然草むらで出会えそうな親しみに溢れながらもハッと
見惚れてしまう綺麗な紫の尾っぽを軽やかに揺らしているのだった・・・


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これまで湿原や森、高原など自然の中で野の花を中心に紹介してきた
“Little”Cindyでしたが、今回初めて“花屋さん”のお花を紹介しました!!

勿論、野草にはこだわらず、これからも花屋さんやそのお店で購入したお花、
更にはガーデニングなどなども載せていきたいなぁ~って思っていますが、
最初に紹介する花屋さんはココってブログ開始前から決めていました♪ (≧∇≦)b

Cindyの大好きだった清住のチーズ屋さん(&路地裏の雰囲気)にも
ピッタリとマッチするコチラの花屋さん・・・

これからもこの“清く澄んだ”ツアーが楽しみなLittleクンなのでした♪  ( 〃∇〃)ノ
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by mary-joanna | 2009-08-12 21:44 | 色は匂へど

ホ.祇園の宵を照らす華

  こんばんは・・・コチラでは初めましてですね♪ ( 〃▽〃)ノ

  そして何よりも・・・
  “Elvis Cafe”のスタート、本当におめでとうございます!! ヾ(≧∇≦)〃

  先月の、渡良瀬遊水池に撮影に行かれたとのメールを頂いて以来、
  メリジョナさんのブログの完成を心待ちにしておりましたが・・・
  いつの間にか4回も綴られていたなんて!! Σ(〃▽〃;) オオッ!!

  しかも、ブログ完成の旨を知らせて頂いたメールまで送って頂いたのに、
  今日までお返事できなかった事、本当にお詫び申し上げます m(_ _)m

  言い訳になってしまうのですが、ある事情がありまして、実はこのコメントを
  送るまで、ブログはおろかメリジョナさんのメール(3回来てました!)も
  拝見する事が出来ない状況にあったのです・・・(´・ω・`)ゞ

  それにしても・・・スゴイ、スゴイですよ~~~!!! O(≧▽≦)O
  とってもキレイなお花と・・・パン&スイーツの数々♪
  もう、“Little”なんて外しちゃいましょう!! (≧∇≦)b




“メリジョナ”って・・・まあ、それは普段と変わらぬ口調で語られていたのだった。
でも、今の僕にとって彼、“Edger”からの鍵コメントは何よりも嬉しかったしホッとした。

コメントにあった通り、“Elvis Cafe”をスタートさせる前後から
事実上音信不通の状態になっており、それは僕を不安にさせていた。
でも、必ず何処かで、そして何らかの理由でこっそりと見ていてくれたと
僕は心の底で思っていたし、そう思い込ませながら綴ってきたのだった。

“メリジョナ”こと、mary-joannaというID(彼にはこの名でメールを送っていた)
にしても、彼のもう一つの名前“Edger”が在籍するバンドの曲名から拝借した
名前だったし、maryといえば、そう、mary-chain・・・“Cindy”にも関わっているんだ!!

僕にとっての憧れの存在だった彼が、(ネット上ではあるが)遂に交流を持つ事になった彼が、
この僕のブログにコメントを入れてくれるなんて・・・僕の夢だったじゃないか!!


そんな僕の感傷的な気持ちを知ってか知らずか、何と彼のコメントは2通になって届いていた。
(単に長くて1回では入り切らないというのもあったのだが・・・)



  ところで・・・メリジョナさんに折り入ってお願いがあるのですが・・・

  実は本来でしたらこの時期にどうしても紹介したいお店があるのです!!
  Edgerが敬愛しております、月の夜に現れる輝く水面のような目を持つ
  ネコさんに是非とも見て頂きたい夏限定のスイーツがあるのですが、
  もうEdgerには紹介する事が出来ないのです・・・(´・ェ・`)

  そこでなのですが・・・




分かっているよ・・・僕は直ぐに彼にOKの返事を送り、そのお店の紹介を読み直した。

貴方のブログに登場するあのネコさんに紹介したい特別なお店とスイーツ・・・
そして、何故この時期(7月半ば頃)なのかだって大丈夫、承知しているって。
だって、僕は"Cindy's WALK”なら貴方に負けないくらい見ているんだよ!

だから、そう言う事なら・・・と、僕が向かった先は・・・


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そのお店は僕が住む栃木県足利市のお隣り、群馬県桐生市の
市街地からやや奥まった路地沿いにあるのだが、その前にどうしても
訪れたい場所があった僕は、市街地を抜けて山の方へと車を走らせた。


かなり山の方までやって来ただろうか、直ぐ手前の駐車場に
車を停めると、上の写真にある階段までは徒歩での移動となる。

そして、左右を緑が眩しい木立に囲まれたこの階段を上った先には・・・

四季折々の植物を眺め、自然な姿の動物や昆虫に出会い、
そして里山の森の中で自然を五感で触れ合う事のできる空間・・・


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階段を上り切ると、散策の起点となるネイチャーセンター前の広場に到着し、
此処でガイドマップを手に入れた後、様々なルートへと別れて観察を開始する。


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麓のなだらかな場所に位置しているとは言え、里山の中腹にある森では
舗装の無い剥き出しの坂道は勿論、所々にこの様な階段が設置されており、
全くの軽装だった僕も靴だけはちゃんとトレッキングシューズに履き換えていた。

最近の運動不足が解消されるかな?なんて軽い気持ちでいたのも束の間、
森の中を歩き続けるにつれて自分の体力の無さを痛感させられる羽目になった。


しかし、そんな代償を差し引いても此処に来た甲斐は十分にあった!


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見渡す限り木々に囲まれ、遠くの方で・・・いや、僕の直ぐ近くでも
はっきりと聞こえる“複数の”鳥の囀りや植物のスッキリとした匂いは、
本やパソコンの画面で見ていたのでは決して体感できないものだった。

そして、今の僕が一番関心を持っていると言っても過言では無い
様々な植物との出会い・・・そうだ、僕はこれを楽しみにして来たんじゃないか!


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それは何も視線の下の方にばかりあるとは限らなかった。

木漏れ日の差し込む木々の枝を目を細めながら見上げてみると、
プックリとした十文字とでも形容したくなる変わった形の実が生っていた。


今回紹介する予定の花は、当然“例の”イニシャルで始まるのだけれど、
その他にも非常に魅力的な花々に出会う事ができ、夢中でシャッターを切っていた。

そんな緑の中で揺らめく淡い炎の様な花たちのテーマは・・・ズバリ“橙色”!!


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まず入り口付近で群生しているこの花を偶然見掛ける事ができた。


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花時に葉見ず、葉時に花見ず・・・

こんなにも可愛らしい花なのに、僕はキツネにでも化かされているのだろうか・・・


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ヤブカンゾウとノカンゾウ


先日の渡良瀬遊水地で会う事ができた君と、会えなかった君。
今日は二人仲良く会う事ができたね。

八重の君は貴方のスマートな姿をとても羨んで、
一方、六枚の花被片は彼の華麗な出で立ちに嫉妬する・・・


僕にはどちらの君も最高に美しいのだけれど・・・



さて、此処に到着してから既にかなりの時間が過ぎていた様だが、
“例の”花を求めて森の中を彷徨う僕は何時しか当初の目的を忘れ、
緑の下での偶然の出会いが待っているこの散策を楽しんでいた。


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鬱蒼と生い茂る木々や一定のリズムで合唱する蝉の鳴き声に囲まれながら、
水色の身体を軽やかに翻しながら飛び交う蜻蛉の池に設けられた木道を通り・・・


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小高い斜面に沿った小路を上り、進んでゆくと道端には・・・あっ!


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やっぱり此処は自然の宝庫。君だって立派な森の住人だものね。


歩き始めた頃に心配していた運動不足や疲れも忘れて
この森での自然探検にすっかり夢中になっていた僕だったが、
だからと言って日が暮れるまでずっと此処にいる訳にはいかなかった。

もう一箇所、本来の目的でもあるEdgerと約束した大事な場所に
今日、行かなければならなかったのだ・・・あの花を僕のカメラに収めて・・・

楽しみから不安へと変わりかけたその時だった。
もう一度地理を確認しようとネイチャーセンターに戻った僕の下に、
突然の予期せぬ訪問者が現れた・・・舞い降りたと言った方が良いだろう。


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オオムラサキ


この地には“オオムラサキの森”と称された場所もあり、この季節はガイドによる
観察会も催されるとの事ではあったが、此処で見られるのは非常に稀であり、
センターの方からは「宝くじを買った方がいいよ!」なんて冗談も言われた。

でも、君に会えたのだから(しかも僕の足で“休憩”していくなんて!)
宝くじはともかく、きっとこの場所で“例の”花にも出会えるよね!


そして、その想いが通じたのだろうか・・・


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「ホタルブクロ」


 ほ、ほ、ほ~たるこい 
 あっちの水はに~がいぞ 
 こっちの水はあ~まいぞ 

 ほ、ほ、ほ~たるこい 
 行燈のかげから笠着てこい

 ほ、ほ、ほ~たるこい



 やっと捕まえる事ができたよ!
 僕だって兄さんみたいに捕まえられるんだ!!
 そう言えば兄さんは捕まえた蛍を紫のお花に入れて、
 両方の手でそっと包むように僕に見せてくれね・・・

 指と指の間からもれる蛍の光は花びらに透けて
 ほんのりやさいい紫色をしていたっけ・・・



探していたイニシャル「ホ」の君にも本当に出会う事ができたよ。

提灯花の別名もある蛍たちよ、今宵の祭も華麗に照らしてくれないか?
そうそう、そして今宵の祭りには無くてはならない花があったね・・・


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ヒオウギ


平安京の貴族に愛された檜の薄皮で作った扇に由来するというこの花は、
時代を隔てた現在でも、祇園祭の際に生けられる風習があると言う。

美しい橙色に紅色の斑点の入った、まさに扇の様な楕円形の花弁には
雅な歴史の情緒を花で伝える古人の繊細な感性に触れる事ができる様で・・・


さぁ、そろそろ僕も山を下りて祭を堪能しに行こう。



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そのお店は幹線道路から外れた古い住宅街の細い路地の中にあった。
目の前にはお寺もあり、本当に祇園の小路に迷い込んでしまったかの様だった。

この趣きのある外観を目にすれば、そんな錯覚を抱くのも無理はないと僕は思った。


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古都京都の情緒を湛えているのは外観だけでは無かった。

門をくぐり店の敷地に入ると日本庭園が設えてあり、目の前の東屋に腰掛けながら
鹿脅しから流れる水の音に耳を傾け紅葉の若葉を眺めながら寛ぐ事ができるのだった。


そして勿論この空間が作り出す情趣は店内へと続いてゆくのだ・・・


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まるで平安の物語や大和絵に出てきそうな板張りの室内、
突き当たりの格子戸からは石灯籠が顔を覗かせている。

更に中央に盛り上げられた白砂の、頂点の切り取られた円錐の様は、
銀沙灘と共に銀閣の側に鎮座しているあの向月台を強く連想させた。


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其々の座敷を隔てる御簾から仄かな淡い明かりが漏れている。
何て心地の良い、落ち着いた気持ちにさせてくれる空間だろう。

此処には京都の・・・そして、平安の雰囲気が息づいていた。
こんな情景をまさに“いとをかし”と表現するのだろう・・・


ところで、彼が僕にその任を託した、ネコさんとの約束の一品とは、
“この季節限定”のかき氷との事だったのだが・・・


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「祇園祭」


濃い緑が眩しい大きな山の頂は、日光に照らされキラキラと輝いている。
山の向こう側は真っ白な雪で覆われ、夏の木々とは違った景観を見せていた。
更に麓には白と緑と小豆色の楼閣が建ち並び、まるで東山が凝縮されている様だった。


宇治ミルク金時のかき氷の中には黒蜜アイスや抹茶の寒天が忍ばせており、
その稀に見る極上の味わいも然る事ながら、上品な遊び心で愉しませてくれる・・・

豪華にして優美、絢爛でありながら繊細な“祇園の祭”にピッタリの涼菓・・・
夏の京都に想いを馳せ、甘く冷たい夢に酔い、涼やかに彩る一時の贅沢・・・


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そしてまた今年も祭の季節がやって来る。

梅雨明けも近い7月半ばの茹だる様な暑さの毎日、
夜の帳が下りた後も、ギラギラと照り付けた太陽の熱気が
未だ冷め切らずに僕らの身体に粘りつく様にまとわりついてくる。

そんな鬱陶しさを忘れさせてくれるほんの数日の一陣の風。
そう、全てを吹き飛ばしてくれる風に僕らは身を委ね、舞ってゆく。


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あぁ・・・

お囃子の小気味良いリズムが聞こえてくる。
大きな鉾を乗せた山車がゆっくりと近づいて、自然と心も躍り出す。

そして何時までも途切れる事無く続かんばかりの華やかな祭の情景は
何時しか静寂の闇に包まれ、絢爛たる一団も四条の通りを去ってゆく・・・

千年を隔てた悠久の平安の都へと・・・


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湿原に高原、そして今回、森の中での草花との貴重な出会いは
僕の視野を大いに広げ、感性をも豊かにしてくれる気がした。

でも、草花を紹介するブログを綴っていこうと決めた僕は、
これまで訪れる機会が殆んど無かったある場所への訪問を計画し、
そしてその日がやって来るのを心待ちにしていたのだった・・・


其処は山でもなければ森でもなく、直ぐ目の前には車が引っ切り無しに
走り去ってゆき、視界の上方は見渡す限りコンクリートで覆われている・・・

でも、僕の心を捉えて離さなかったのは、“キヨクスンデ”いるからなのかな?
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by mary-joanna | 2009-08-08 01:12 | 色は匂へど

ニ.霧晴れて雲もとぎれて晃笑む

ダヴィッドさんに元気を分けて貰った7月初旬から中旬にかけて、
ハンゲショウの他にもう一つ僕の心を大きくときめかせた花があった。

それは、僕が栃木県に住んでいる人間だから?
それとも、この時期にしか会う事のできない花だから?

そのどちらも当たっていると思うけど、視界を覆う様に広がる
一面の緑の傾斜に咲き誇る仄かに淡く黄色い花弁の可憐な花々。
本や写真で見たあの印象的な光景が忘れられなかったのかも知れない。


今回の“お花ツアー”の計画には、何と僕の家族も同行してくれる事になった。

計画していた12日がたまたま日曜日で、しかも僕の誕生日という事もあったが、
これまで行った数回のツアーでは“元祖Cindy”ばりの計画を打ち明けた段階で
却下される憂き目に会って来たのに対し、今回に関しては場所と目的の両方とも
家族(両親と4歳年上の姉の3人)の関心を引いてくれる結果になったのだった。

そしてツアー当日、普段車で移動している僕が選んだ交通手段は・・・


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たまには車窓からの景色をぼんやりと眺め、家族と語らいながら
期待に胸を膨らませてのんびり旅をするのもいいんじゃないかなぁ?


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自然と歴史の玄関口でもある東武日光駅の直ぐ隣りに目を向けると・・・


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・・・交通手段を問わず、日光を訪れた際に僕が常に立ち寄る店がある。

嘗てこの日光が西洋人の避暑地としてその名を馳せていた明治の頃に
建てられたアメリカ人貿易商の別荘を改築した有形文化財の建物をはじめ、
市内は勿論、栃木県内、いや、全国の数多くのファンをも唸らせるレストラン。

そのレストランで饗されるスイーツのテイクアウトショップ&カフェが、
東武日光駅の傍に店舗を構えているのだ。

和と洋の、更には歴史と文化の貴重な遺産でもあるメインダイニングを
イメージしたその内外装には、同店のプライドや拘りが随所に感じられた。
結局彼の日記には登場しなかったけれど、本当は気になっていたんじゃない?


此方のお店でスイーツを購入したのは実は帰りの事であって、
駅に降り立った僕ら一行は目的の地に向かう為に更なる移動手段に・・・

そう、霧降高原行きのバスへと乗り換えたのだった。


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バスに揺られる事、数十分。
辺りはすっかり山の景色へと様変わりしていた。


僕の今回の一番の目的は何と言っても此の地がその名の由来にも
なっているあの花の群生をその目に焼き付けたいというものであったが、
その場所に近づくにつれて一抹の不安も無い訳では無かったのだ・・・

この日12日は、毎年開かれているこの花のキャンペーン最終日でもあり、
まさにお花畑と呼ぶに相応しいピーク日からは一週間以上過ぎているとの事。

更にこの日は下界の天気も思わしくなかった為、僕が期待していた
あの光景を見る事ができなかったとしたら・・・それにこの花のイニシャルは・・・

どうやら到着したみたいだ。
バスの停留所から道路を挟んだ反対の場所にある第1リフトに乗り、
やや急にも感じられたスロープをゆっくりと上がった僕らの眼前に広がるのは・・・


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霧降高原キスゲ平


標高約1600mの小丸山の斜面に群生する黄色い花々。
その花たちを眼下に、優雅な空中散歩を楽しめる手段は・・・


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こうしてみるとやはりピーク時の一面に広がる黄色の絨毯とまでは
いかないながらも、此処までやって来た甲斐は十分にあった。

3つのリフトを乗り継ぎ一番上まで行ってみたが、一番てっぺんは
7月中旬とは思えない肌寒さで、長袖のシャツの上から両方の腕を
さすりながらこの花の繊細さを自らの肌で感じる思いだった。


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場所によっては黄色い印象絵画を連想させる風景もあり、
その幻想的な光景に思見惚れると言っても過言でなかった。

そして今回の主人公こそ、この黄色い花・・・


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「ニッコウキスゲ」


栃木県に住んでいる僕が今回の試みを始めるにあたって
必ず実現させてみたいと思っていた計画の一つでもある・・・

地元栃木県の地名に因んだ植物の紹介。
そして、その願いは4回目にして早くも達成されたのだ!


花弁の表面のほんのり艶やかな肌にうっすらとのった淡いイエロー。
その一枚一枚が、まるで星の様に緩やかな弧を描きながら広がっていく。
星の中心に見える6つの葯が大きく開いた黄色い花弁の波の上で、
優雅に漂っている様にも、必死で彷徨っている様にも感じられた。

清楚な印象を保ちながらギリギリのラインで艶かしさすら感じる質感は、
これまで本や写真、パソコンの画面でしか見た事の無い僕にとって
ちょっとした・・・いや、十分にカルチャーショックを覚えたものだ。


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あっ、また君と出会えるなんて・・・
少し前までは君の姿をちらっと見ただけで恐れを為して逃げ回っていたのにね。


場所の名称からニッコウキスゲばかりに目がいってしまいそうだが、
標高1000mを優に超える高原ではこの時期様々な草花が楽しめるのだ。


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しかも、栃木の地名を冠する植物はニッコウキスゲだけでは無かった。


栃木県に多く生息する事からその旧名が与えられたらしいが、
花弁の中心にゆくにつれて徐々に濃い紅色に染まる非常に小さな花が
鋸歯状の葉をふんわりと覆い、やわらかに染め上げているのが印象的だった。


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まるで雪の結晶を散りばめたミニ・クリスマスツリーを見ている様な、
可愛らしい小さな白い花は初夏の高原に更なる清涼感をもたらしてくれた。

その科名からも何処かロマンチックな“雪”の情景を連想してしまう・・・


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ヨツバヒヨドリソウだろうか?

真っ直ぐに伸びた小豆色の茎のてっぺんに、四肢に広がる鋭い若葉に囲まれた
この花特有の小さな筒状花の蕾がまるで宝石の台座に守られた薄ピンク色の
ジュエリーの様であったが、同時に“チュッパチャップス”にも見えてしまうのは、
僕も彼のブログに影響され過ぎた証拠なのだろうか・・・

両方とも同じくらい可愛らしい例えだと思ってしまうのだが・・・


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で、存在感のある此方の花に至っては、同じ“花”でも・・・“カリフラワー”!!

閑話休題・・・

これだけの花なので恐らく辺り一帯に振り撒く芳香もまた格別だったのだろう。
この花のたっぷりの蜜を求めて虫たちが引っ切り無しに飛び回っていた。


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ユリの花が一輪、草むらの中で凛とした佇まいを見せていた。

透き通る様なオレンジ色の非常にシャープなフォルムは、
まだ若さを感じさせながらも何処か風格すら漂わせていた。

燃える様な情熱的な外観と熟し切っていないフレッシュな感覚、
それでいて何となく冷静で冷めた様にも見える一輪のユリの花に、
僕はすっかり魅了され、家族に促されるまでその場を離れなかった。


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小さな小さな白い花はお行儀良く列を成し、四方八方へと広がってゆく。
まるで、一瞬の流れ星の細い軌跡を時間を止めて見ているかの様に・・・

ウットリと眺めていると、これはヤマブキショウマだよって教えて頂いた。


高原の天気は変わり易い。しかも、霧降と名の付くこの地なら尚更の事。
ポツポツと降り出した雨を潮時に、僕ら一行は下山する事にした。


で、勿論先に紹介したお店に寄ったのは言うまでも無い。



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「カボチャのプリン」


チーズケーキが有名な此方のスイーツだけど、僕のお気に入りはこれ。


大き目の真っ白な陶器の器にたっぷり入った綺麗な山吹色と
清涼感溢れる爽やかなシナモンの香りは・・・

今日出会ったニッコウキスゲと高原の空気を思い出すよ!


丹念にカボチャを裏漉しして作り上げた様なぽってりとした舌触り、
そんなピュアな滑らかさの中から感じる自然なカボチャの甘み、香り。

そして素朴な風合いの、一番最後に漸く登場してくるクリーミーさは、
シンプルでノスタルジックな雰囲気に満ちていながらも、他の店では
決して味わう事のできないこの店ならではの個性も存分に感じられる。

重厚な歴史の中にオリジナリティーを忍ばせるなんて・・・
まるでこのレストランそのものが凝縮されているじゃあ無いかい?


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更に「フィナンシェ」や「ヌガー」に・・・


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コロコロっとした「スコーン」もお土産に購入して、
少しずつこの一日を思い出しながら頂く事にしようかな?

そう、あの緑の中に可憐に揺れる黄色い花弁の事を・・・


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まだ4話目ではあったのだが、最近めっきりと減ったコメント欄の数字が
一つ増えている事に気付いた僕は、特に何を期待する事無く開いてみた・・・

そして・・・言葉を失ってしまったのだった・・・

だって、そのコメントの主は・・・Edgerと名乗っていたのだから!!
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by mary-joanna | 2009-08-04 02:23 | 色は匂へど