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ア.あの木のトンネルの先では

 あの木のトンネルの先では、
 嘗て置いてきた大切なものに
 再び出会う事が出来るだろう・・・

 でも一度置いてきたものは、
 決して持ち帰る事は出来ない
 あの木のトンネルの先からは・・・



あぁ・・・もうあれから2年が過ぎようとしているなんて・・・

“光陰矢の如し”とはよく言ったもので、本当にこの2年間はあっという間だった。
あの時は・・・そう、「ア」のイニシャルの花を紹介する頃は僕の計画も終盤に差し掛かって、
偶然を装って日光街道を北上するなんてベタなシチュエーションを演出したものだったけれど、
まさか、最後の最後であんな展開が待っていたなんて・・・今思い出してみてもビックリするよ・・・

でも、あれで良かったのかも知れない・・・あれ以上やってしまったら、僕も・・・貴方も・・・


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日光を訪れるのも、そして杉並木を通るのも2年ぶり、本当にあの時以来の事だった。
あの時は3つのコースから杉並木を上ってゆくコースを選んだって紹介していたけれど、
僕にとって日光に行くという事は、この日光街道の緑のトンネルを上る事を意味するのだ。


2年前の春にElvis Cafeを終了してから、僕はブログもカフェ巡りも辞めてしまっていた。
実はあの年の4月、僕は勤務先の学習塾の人事異動で地元の足利市を離れていたのだ。
そして今日、約2年ぶりに日光の地を訪れているのも、勿論、今こうして栃木県内にいるのも、
冬期講習と私立高校入試が一段落して遅い休暇をもらったので、地元に戻っているからだった。

それにしても・・・
まるで何処までも続いている尖塔の回廊の中を一心不乱に突き進んでいるような・・・
あるいは、おとぎ話の登場人物になって、深く暗い森の中を彷徨い続けているような・・・
前回の時もそうだったけれど、この杉並木を通っていると不思議な気分になってくるんだ。

尤も400年の歴史あるこの日光杉並木、たったの2年で変わる訳は無いか・・・
それともう一つ・・・森林浴のような爽快感も、あの時と同じ・・・本当に気持ちが良い。


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そして、果てしなく続くように思えた木のトンネルを抜けると、“街”に辿り着く。
2年前に置いてきた、“目に見えない大切なもの”が詰まった思い出の場所だ。

思い出と言えば、Kさんが惚れ込んだ旧今市の市街地に入り組んだ路地裏。
どんなに表の大通りが様変わりしても、昭和にタイムスリップしたようなこの情景は
2年やそこらご無沙汰していたからと言っても、全く変わる事なんて無いんだよね・・・

それに、建物のバックに聳えているのは日光連山・・・これも何時までも一緒なんだ・・・


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この裏通りを歩いてゆくと、前に訪れた際に目印にしていた神社の参道へと辿り着く。
石畳が敷かれた参道から奥に鎮座する境内を守る正門までの風景。僕の街の神社と同じ、
これまで何百年もの間大切に守られ、この先ずっと代々受け継がれてゆく身近な歴史なんだ。

そして、確かこの参道から程なく進んだ場所にあった筈だ・・・本当に見落としそうな場所に・・・


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あったよ。さっき路地裏で建物の間から見えた雪に覆われた日光の山々と同じ、
真っ白に聳える日光連山の更にその上に、誇らしげに掲げられた三つの店のロゴ。

NIKKO COFFEE・・・analog books・・・COCOLOYA!!

そして、この2階建ての家屋と向かいの平屋建てに挟まれた路地と言うには
あまりにも狭い、人がやっと通り抜ける程しかない隙間のような空間こそ・・・


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玉藻小路


鹿沼が“根古屋路地”ならば、此処、今市の路地裏には“玉藻小路”が伸びているんだ。
建物一つ分の、直ぐ向こう側へと届いてしまいそうな短い小路に過ぎないけれど・・・

果たしてこの路地の先は本当に目の前に見える空間に繋がっているのかな・・・

それとも・・・何処か違う世界へと通じる秘密の入口だったりして・・・


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日光珈琲


Elvis Cafeで紹介する為に初めてこの店を訪れたのは、出来て未だ半年足らずだったが、
“あの鹿沼の饗茶庵”が日光に新店舗をオープンさせるとの事でネットの口コミやブログの
レポは勿論、栃木県内の情報誌のみならず全国紙やカフェの専門誌、果てはテレビの
バラエティーにまで登場する程の大きな話題になっていた、まさにその時の事だった。

当時は週末毎にこの小路に長い行列が出来てしまうくらいの賑わいぶりだったので、
それこそ綿密に計画を立て、日程を調整して、予約も入れて・・・そして、勿論・・・
ありったけの気合とワクワクドキドキ感もバッグに詰めてあの杉並木のトンネルを
越えた僕だったけれど、2年経った今でもその人気は全く衰えを見せる事は無く、
逆に現在僕が生活している地方にもその名を轟かせる程の存在になっていた。

そして勿論、あの時感じたワクワク感はこれっぽっちも色褪せていないよ!!


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いきなり中に入るのが照れ臭かった訳では無いが、窓から窺った店内の様子は、
漆喰の白壁から成る広々とした空間に縦横に伸びる柱や梁、格子戸の木枠など、
落ち着いた純和風建築の趣きのある姿を垣間見る事が出来て・・・懐かしいなぁ・・・

2年前も前にたった一度、しかもほんの数時間の滞在していただけだったのに、
まるで数年ぶりに連絡無しで故郷の我が家に帰ってきたみたいな気分だった。
そう、このカフェ・・・空間全体が、そんな郷愁の薫りで包まれていたのだ・・・


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更に入口にはこんな物まで提げてあって・・・これでは本当に正月に帰省した気分だ・・・


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扉を開けて玄関に立つと正面には年代物の箪笥と、4人掛けのテーブルと・・・


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・・・このタイル張りのカウンターが僕を出迎えてくれる。

カウンターの手前まで進み、スタッフに挨拶を済ませた僕は直ぐに左右を見渡す。


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日光珈琲を象徴する風景と言っても過言では無い広い店内を真ん中で分けている中央通路。

2年前に様々な雑誌で見て、実際にこの光景を目の当たりにした僕は思わずこの中央通路こそ、
この日光珈琲のもう一つの“小路”そのものではないか、と興奮気味に紹介していたけれど・・・
今こうしてこの場所に立ってみると“小路”であるばかりでなく、頭上の柱や梁の隙間から
降り注ぐ木漏れ日のような淡い日差しは・・・さっき通ってきた杉並木と同じではないか!

そう、此処にも清々しい“木のトンネル”が存在しているんだ・・・
しかも、その先の、一番奥に掛けられていた額縁には・・・


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そしてもう一つ。背面に大きな棚を擁するこのカウンターキッチンも、
僕にとっての日光珈琲をイメージするのに必要不可欠な場所なのだ。

彼、Cindyが鹿沼の饗茶庵のキッチンを紹介した画像を一目見た時から、
棚の中で真っ白な皿やカップが積まれ、器やグラスが整然と並んだ光景、
今、目にしているこの光景こそ、僕にとってカフェのキッチンの姿なのだ!


更にこのカウンターの手前には、此処、日光珈琲ならではの“オブジェ”がある。


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恐らく毎日休む事無くシュッシュと真っ白な湯気を噴き出している大きなヤカン・・・
あの時と変わらず今日も健在で、そしてれからも不可欠な存在になってくれるだろう。


でも、キッチンの直ぐ側で、僕は2年前とは異なった“変化”を見つけた。


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格子戸越しに僕の目を捉えたのは真っ黒なボディーの大きなストーブだった。
前回訪れた後、このカフェの最初の冬を迎える際に新たに加わった仲間・・・

そう、歴史の息吹を感じさせるこのカフェは、同時に常に進化し続ける場でもあった。


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このカフェには一見同じトーンに見えつつも非常に個性的な様々な寛ぎの場が存在する。

以前、昭和の高度経済を影で支えた“UFO”と称した、ヘルメット型の大きなランプの下で
過ごすのも、目の前の小路を眺めながらも側の棚に並んだ美術書をめくるのも、乙なものだ。


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嘗ての遊郭を改築した、歴史情緒の雰囲気をいっぱいに湛えた純和風家屋だと、
実のところ良くは分ってはいない大正ロマンに浸りつつ視線を上に向けると・・・

何ともゴージャスなシャンデリア・・・良い意味での和洋折衷リノベーション建築なのだ!


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“華の世界”への入口を潜って上の階へと向かって・・・そう、其処にあったんだよんね・・・

2年前に僕が追い求めていた、「ア」のイニシャルの“花”は・・・


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この市松模様の壁面には本当に度肝を抜かれた思いに駆られたけれど、
今改めて見直しても、あの時の強烈なインパクトは全く変わらない・・・

そして、この場所で見つけたのだけれど・・・うわぁ、懐かしいなぁ・・・


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ずっと探し続けて・・・
やっと見つけ出して・・・
ようやくキミに出会えて・・・

2年前、僕は此処で「ア」のイニシャルの花に対面する事が出来たのだった。

同じ棚の上に置かれた花瓶には例の花はおろか、一輪の花も活けられていなかった。
もう2年も前の話なのだから・・・当たり前と言えば当たり前の事なのだけれど・・・

 大切なものは、目には見えない

僕にそう教えてくれたのは他でも無い、あの木のトンネルの先にあるこの空間ではないか!
目を閉じれば今でも瞼の裏にあのほっそりとした美しい姿の「ア」の花が鮮明に映っているんだ。


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心の中での再会を果たした僕が選んだのはこの席・・・うん、あの時と同じ席だ。


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おや?・・・窓の外に見えるあの花は・・・


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スミレ(パンジー)


あぁ・・・何という巡り合わせなんだろう!!
まさか、今日、この場所でこの花に出会うなんて!!


・・・Elvis Cafeの一番最後に咲いた可愛いあの子の花に・・・


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特製スープカレー


地元栃木のしかも日光という土地柄と、杉並木沿いに点在する蕎麦屋に触発されて
前回は地場産の食材をふんだんに使用したガレットをオーダーした僕だったが、
今日は鹿沼の饗茶庵の人気メニューであるこのスープカレーに決めていた。


とろみの無いサラサラした舌触りはスープと謳っている通りのものであったが、
サラリとしながらも同時に舌先に程良く絡み付いて、存在感は抜群だった。
熱々のスープは徐々に広がるピリリとした辛さと心地良い刺激に加えて、
スッキリとした酸味と仄かな甘味の絶妙なバランスが非常に味わい深く
更には様々なスパイスの風味、香り、コク等が複雑に絡み合ってくる。

このカレーのメインとなるのが、じっくり炊いた柔らかな骨付きのチキン。
皮の部分のトロリとしたゼラチン質の、クセになる食感が堪らない!
更に、直ぐ内側の肉は繊維にそってはらはらと裂けて・・・柔らかい!

ふんわりとした肉質・・・ジューシーな肉汁・・・とろけるような食感・・・
じわじわと広がってゆく鶏の旨味はもう言葉に出来ない程だった。

ゴロっと入った地元栃木産の新鮮な野菜の自然な甘さと食感が、
スープカレーにじわりと染み込んで一層美味しさが引き立っていた。
カレーとの相性抜群の白米と添えられたシャキシャキで甘い葉野菜、
極めつけは、爽やかな酸味のレモン塩による未体験の新たな美味しさ・・・


2年ぶりだとか・・・思い出の場所だとか・・・一瞬全てを忘れ、このカレーに魅了されていた・・・


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2年前の訪問の際、Kさん自らスイーツのプレートを持ってきてくれたっけ・・・
あの時は本当にビックリしたけれど、Kさんの嬉しそうな表情が脳裏に甦るよ・・・


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林檎のタルト


饗茶庵には一本の林檎の木があって、その木に生った林檎でスイーツを作ると言う・・・

そう、この日僕がオーダーした季節の果物のタルトには、その林檎が使われていた。
ホロホロと崩れるほんのりと甘いそぼろ状の表面は何処か懐かしさを感じる味だ。
土台のしっとりとした食感のタルト生地は、口の中で軽やかに消えてゆくのだ。

入れ替わるように口の中いっぱいにふわっと広がる爽やかな甘さの林檎の香り。
シャクシャクっとした歯応えと瑞々しくジューシーな林檎の果実感に加えて、
トロリと甘く煮詰められた、濃厚であり且つ、まろやかな風合いが堪らない。


カフェが所有するたった一本の林檎の木から採れた林檎で作った特別なタルト。
ひと口ひと口、目の前のスミレを眺めながらゆっくりと頬張る事にしたのだった。
眺めると言えば、僕は饗茶庵のドリンクをぼんやりと眺めているのが大好きだった。

まるでグラスに閉じ込めた宝石のようなカラフルでキラキラと輝く様を見つめて・・・
そして、今回スタッフの方に是非どうぞと勧められたドリンクも・・・
まるで初恋した時の心のときめきを表わしたような・・・


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木苺のソーダ


まるでクリスタルのようにキラキラと透明に澄んだ輝きを放つグラスの中には
ルビーのように真っ赤な粒選りの木苺が可愛いらしく繋がって浮かんでいた。
この非常にキュートなグラスに何時までも見つめていたい衝動に駆られて、
中々手をつける事が出来ずにウットリと眺めていたのは言うまでも無い。

グラスの底で真っ赤な木苺ジャムがキラキラ弾けるソーダの泡と混ざり合い、
とろんと滑らかな甘酸っぱさと冷たくてシュワシュワした心地良い刺激が
ゆっくりゆっくり溶け合っていく・・・ひと口毎にキュンとなりそうで・・・

クリスタルのような澄んだ輝きの氷の表面に浮かんだぷるんとしたフランボーズ。
名残惜しそうに一つすくって口の中に放り込んだ瞬間口中に広がるぷるんとした
表面の感触とプチプチと弾け出す果肉のジューシーでフレッシュな甘酸っぱさ。

饗茶庵のドリンクに、何時も恋に落ちてしまいそうなんだ・・・
だから・・・きっと彼もこのカフェに来るんだろうね・・・



そして日光珈琲を後にした僕は、直ぐ向かい側の建物の、小さな扉を潜る事にした。
あれから一時も忘れる事の無かったもう一つの“大切な思い出”との再会を果たす為に・・・


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COCOLOYA


先の日光珈琲の突き抜けるような広がりに比べると、其処はまるで雑然とした・・・
しかしながら心ときめく宝箱のような空間であり、そのこじんまりとした店内には、
“ジャンク”の文字でで括るには惜しい魅惑溢れる品々で埋め尽くされていた。

例えばほら、店に掲げられた明かり一つとってもご覧の通りである。


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この二つが一つになるなんて・・・そして、このランプに優しく照らされた一枚の絵がある。
そう、此処は静かな情熱溢れるアーティストの素敵な感性が形となって現れる場所なのだ。

2年前に僕の目を・・・いや、“目”では無く“心”を鷲掴みにしたあの絵は既に無かった。
しかし、その絵にも負けない絵だったのだ・・・大きな木の下にぽっかりと空いた穴の先には・・・


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GOING WITHIN 


・・・あの木のトンネルの先では、きっとアナタが来るのを心待ちにしている人が・・・


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あの日光への小旅行から約2年後のこの日、再び彼の地を訪れ、木のトンネルの先で
2年前に置き去りにしてきた“目に見えない大切なもの”との再会を果たしてきた僕は、
同じく2年ぶりに出会ったあの花瓶に花を活けようと思い、ある花を購入し帰宅した。

勿論、実際の花瓶に活ける事は出来なかったので、嘗て花を撮影していた場所に
花の鉢を置いて暫く眺めた後に、目を閉じて心の中で花瓶と重ね合わせてみた。


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「アネモネ」


冒頭にも書いたけれど、僕はあの春の日を最後にブログも、更にカフェ巡りからも離れてしまった。
そして、その後Cindyとは勿論、あの半年間にElvis Cafeで知り合った例のグループの人々と
コンタクトを取る事はおろか、彼等の名前をネット上で見掛ける事すら終ぞ無かったのだった。
そうして地元の栃木県から遠く離れた土地で今日まで過ごしてきた・・・いや、一度だけ・・・

そう、たったの一度だけ、それも2年前の最後の日から少し経ったあの日・・・6月半ば・・・
Christineと称する女性の日記を開いた事はあったっけ・・・本当に告白するんだなって・・・


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「analog booksの本と、本の家具展」

会期 2010年1月16日(土)~2月27日(土)←会期が延長しました!
会場 analog books
    栃木県日光市今市754 玉藻小路
    13:00~18:00(土曜19:00まで)

電話 090-7909-7072
休日 月曜日
主催 analog books + APARTMENT
後援 「日光森と水の会」 「All About Nikko」



先日お邪魔した際、analog booksの店長さんから上記の展示会の話を聞き、
是非とも此方の記事で紹介させて頂きたいと思いましてリンクさせてもらいました。
現在(1/27)開催中ですので、機会がある方は是非ともお立ち寄り下さいませ。
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by mary-joanna | 2010-01-27 02:52 | 浅き夢見じ
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