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コ.プライドのかけら

彼、Cindyが落ち込んだ時に立ち寄る店がある。

彼の日記が存続していた間、有名無名を問わず、僕が気になった店に神出鬼没に現れては、
まるで雑誌の巻頭特集から抜き取ったような写真の数々と、それに負けない熱の籠った紹介文・・・
そんな、自信に満ち溢れた日記を綴ってきた彼も、大好きだった店が残念ながらCloseした際には
その寂しさを和らげる為に、そして、折れかけた自信を取り戻す為に、決まって足が向かう店があった。

先日、僕も寂しい別れを経験したばかりだ。彼は新たな場所で大きな夢に向かって頑張っている最中だろう。
そして僕だって、半年かけて漸く此処まで積み上げてきたじゃないか!その一つ一つの欠片(かけら)が、
更なる自信となって積み上げられてゆく。此処まで来たのにガラガラと崩れ落ちる訳にはいかないんだ!


だから、僕も彼と同じ店に行く事にしたんだ。

彼が失意と落胆から立ち直る糧となった、自信とプライドを僕も分けてもらいに・・・
そしてより強固なワンピースを積み上げ、頂上で待っている彼の元に辿り着く為に・・・



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僕が降り立ったのは、東急目黒線の奥沢駅。付近の自由が丘や大岡山、田園調布に比べると
何ともこじんまりとした下町風情の漂う駅前の風景で、“オシャレな街並み”とも何処か違った。


決して広いとは言えない(むしろ狭い)駅前広場の大半を占めているのが、殆んど唯一の
待ち会いスポットである石積みの小さな噴水池で、周りを囲むようにベンチが置かれている。

奥沢駅(と広場)は交差点の角に位置している為、此処から四方に向かって通りが伸びていたが、
僕が進む方向は勿論決まっていた。噴水広場に別れを告げる前に目の前の建物の壁を見上げた。


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恐らく駅前の歴史と共に歩んできたであろう趣きあるマンションの壁に掛けられた、
何とも可愛らしい飾り時計・・・はじめて降りた駅の、不安や緊張を優しく解してくれた。


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駅前の広場から伸びる商店街の、まるで路地のように細い通りの左右に向かい合って
同じ位の間口をした、昔ながらと形容したくなる商店が肩を寄り添うように連なっていた。
八百屋、魚屋、花屋、酒屋、本屋・・・北関東の車社会で生活する僕にとって生活必需品を
揃える場所と言えば決まって郊外の大型ショッピングセンターであったが、僕の地元では
もう既に絶滅してしまったと思われた光景が、この小さな商店街では輝きを放っている。

歩道に沿ってずらりと並び、細い通りを更に狭くしている無数の自転車と、その自転車を
縫うように往来してゆく絶え間無い人の流れ・・・此処には非常に活気のある商店街の姿が
今尚顕在しており、規模こそ違えど先に言及した近隣の有名スポットにも決して劣っていない。
そう、人情味に溢れ気取らずのんびり買い物が出来る商店街の魅力がいっぱい詰まっていた。


これから僕が訪れようとしている店も、この細い商店街の一角に位置していた。
店の方角に向かって歩み始めた矢先の事だった。通りの中にとても気になる
“モノ”を見つけた僕は、商店街を進むのを中断してその方向に近寄った。

それは、未だ商店街に入って直ぐの場所に建つ病院の、入口の花壇にあった・・・


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シクラメン


花の種類が少なくなる冬の季節、花屋の軒先を埋め尽くすように彩るピンクや白のシクラメン。

その名前の語呂からか、見舞いや病院にはタブーであるとかなり前に聞いた事があったが、
此処では(敢えて?)入り口に華やかさを添えていた。このハート形の可愛らしい花弁を
見ていると、病床での陰鬱になりがちな気分を和らげてくれるような気もするのだが・・・

香りを残さずそっとアナタの側でハートを伝える、ピンク色の恥ずかしがり屋さん・・・


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葉牡丹


更に、この季節の花壇の主役の一つとして欠かせないのが、この葉牡丹だろう。

まるでキャベツのように幾重にも折り重なった葉っぱが牡丹の花を演じているみたい。
本来の小さな黄色い花は春までお預け。でも、他の葉野菜たちのように地面すれすれに
地味な姿でじっとしているのが耐えられず、派手に着飾ったキミはとってもオシャレさん・・・


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クリスマスローズ


あの時うなだれていた彼も、本来のシーズンを迎えて何だか生き生きとしてきたようだね。
顔を上げ、花弁もピンと広げて、持ち味の華やかで品のある仕草をいっぱいに表現しているよ。

あの時見せた物憂げな慎み深い表情も捨て難かったけれど・・・うん、やっぱりキミは、今の姿が
とても良く似合っているよ!・・・何処か自信に満ち溢れていて・・・そうか、キミも此処で貰ったんだね。


冬の花との出会いは、駅を降りるまでの少し切羽詰まった気分だった僕の心に余裕を与えてくれた。
花を眺めていると心配や不安を和らげてくれるみたいで・・・そう、誰だって病院に入る際は不安だもの・・・

心持ち足取りも軽くなった僕は、更にこの細い商店街を進んでいった。で、目的の店は直ぐに見つかった!


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ARTISAN BOULANGER CUPIDO


だって、このアイアン製の看板を雑誌や本、そして勿論、彼のブログで何度目にしてきた事か。
それに正真正銘、本物のこの看板を見る事を、僕はどれ程心待ちにしてきた事だっただろうか。

そして今、僕の両方の目が“ソレ”を捉えているのだから・・・これだけでも元気を貰ったようだ。

黄金の王冠を誇らしげに載せているのは、店の名前と・・・麦の穂!!
この店のプライドと自信がまるでオーラのように伝わってくるじゃないか!


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あともう一つ・・・そう、“職人”のBOULANGERがいる店だから・・・


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看板と同様に、僕にとってはすっかりお馴染みとなっていたのがこの店の外観だった。

シックな黒い庇の中央に書かれた店のロゴ、非常にシンプルだが逆に印象深くもあった。
そして、板チョコを貼り付けたような色と質感の外壁と、焼き立てパンにも負けない艶やかな
狐色の木枠の扉と窓には通りからも店内が良く窺えるように大きな硝子がはめ込まれていた。

これまで通りを埋め尽くしてきた昔ながらの商店街の、やや古びた感じの店構えとは少し異なった、
スタイリッシュな外観が目を惹いたが、同時に、この商店街の風景に溶け込んでいるような気もした。
この店がオープンして3年が過ぎたとの事で商店街の大事な一角を担う店として貫録すら感じられた。


看板と外観、確かにずっと待ち望んでいた光景であったが、それ以上に会いたかったシーンが、
そう、この店を語る上で無くてはならないシーンがこのドアの向こう側に広がっている筈なのだ。



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・・・と、その前に、店に入ると直ぐに可愛らしい松ぼっくりのシカさんが出迎えてくれた。

奥の量りににちょこんと乗っているのは・・・そう、この店と言えば、エッフェル塔だったね!!


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アイボリーホワイトの壁と爽やかな木目の棚に囲まれた広々とした店内は
柔らかな日差しと、清楚な清々しさと、パンの芳ばしい香りで満たされていた。

そして、対面式のカウンターにずらりと一列に勢揃いした様々な種類の小麦色のパンの姿!
この光景こそ、本当に数多くのメディアで紹介され、彼も拘って紹介したショットだった。


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バゲット・アラシェンヌ


以前、某雑誌のパン特集で大きなパンを抱えるシェフの上の方に鎮座する魔法の杖みたいな
非常に印象的な形状のバゲットを見た事があり、それ以来この店で購入したいパンになっていた。

店でもこんな風に並んで立て掛けてあるなんて・・・それにしても見れば見る程、魔法の杖みたい。
これがあればハリーのような魔法使いになれるかな?・・・いや、この店に魔法をかけられているのは
如何やら僕の方みたいだね。だって、何処を向いても溜息の出そうな素敵なパンでいっぱいなのだから。


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ショソン・オ・ポム


 初恋のようなキューンとする甘酸っぱさの、とろっとろに煮詰められた濃厚リンゴ

と、彼が大絶賛していたCUPIDOのショソン・オ・ポム・・・それにしても、美しい曲線だね・・・


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そして、このCUPIDOで忘れてはならないのが、大きく焼かれたハード系のパンを
目の前のスタッフの方に欲しい分量を伝えてその場で丁寧に切り分けてもらう・・・

分量は、グラムでも良し、枚数でも良し、値段でも良し、本当にその人の好みと用途を
最大限に尊重し、ほんの一切れから丸々一個(又はそれ以上)まで自由にチョイス出来る。
まさに商店街の肉屋にも負けない、オーダー販売をしてくれるのだ。でも如何して此処まで・・・


僕も幾つかのパンを選んだ後、ランチを取る為に奥のテーブルに腰を下ろす事にした。
僕も彼と同じ事がしたかったんだ。パンを切り分けてもらって、奥でゆっくり食事する。

そんな僕がオーダーしたセットだって、彼が元気と自信を分けてもらう為に如何しても
食べたがっていたと言う、CUPIDOのパンをシンプルに味わえるセットメニューの・・・


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店の奥に設置されたカフェスペースの、更に一番奥のテーブルに腰掛けた僕は、
料理がサーヴされるまでのひと時を店内をぼんやりと眺めながら過ごす事にした。

パンの売り場と厨房を隔てるステンレス製の台の上には、先程焼き上がったばかりの
バゲットが丁寧に並べられ、店頭に立て掛けられる順番を静かに待っているようだった。


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働き者の大きな“へら”も、パンを焼くのが一段落して暫しの休憩時間かな?


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スープセット


パンが二切れとスープに食後のコーヒーが付いただけのシンプルなセットだ。
でも今回僕は、このシンプルなセットをオーダーしようと最初から決めていた。


ジャガイモのスープ

アイボリーの表面はまるでホイップしたかのようにきめ細かく泡立っていて、
クリーミーでふんわりとした舌触り。しかも滑らかに・・・そして微かに弾ける感触・・・
裏漉ししたジャガイモのぽったりとした食感から広がるジャガイモ本来の自然な風味。
仄かな塩味の奥から、ジャガイモ、クリーム、バターが一体となって体中に染み渡ってゆく。

日本にいながらにしてパリの食卓に着いた気分のまま、夢中ですすっていたけれど、
危うくスープを全て飲み干しそうになってしまった・・・パンに浸して食べたかったのだ!


プレートには2種類のハード系パンが日替わりでサーヴされるとの事で、この日のパンは・・・


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コンプレ

2種類のパンから先ず手に取ったのは、上に乗っていた目の詰まった方だった。

皮だけでなく中の生地も褐色の色合いで、一見、ドイツのライ麦パンが頭を過ぎった。
しっかりと歯応えのある皮はこんがりと焼かれた香ばしさから素朴な外皮の風味も
十分に感じられ、ガシガシとしたパンチの効いた噛み応えも楽しめるのだった。

そしてホロホロと溶けるように広がりながらも食べる程に瑞々しいもっちりした生地。
仄かなコクと爽やかな酸味は彼が指摘していたようにレーズンパンの生地みたい!
更にジャガイモのスープに浸すと、その円やかな酸味が一層引き立ってくるのだ!

“コンプレ”を冠するこのパンには、シェフの“完璧”への拘りが伝わってくるのだ・・・


カンパーニュ

積まれた順番通り次に手にしたのは、僕がこのパン屋で待ち望んでいたカンパーニュだった。
単なる素朴な“田舎パン”に・・・度肝を抜かれたってCindyが興奮気味に語っていたっけ・・・

パリパリに焼かれた皮を噛み切る際に、フワッと口中に広がる焦げた香ばしさ。
皮の直ぐ中側には、たっぷりと水分を含んだもちもちっとしたしっとりの生地。
その、つるんとした食感と共に感じる小粉の爽やかさと仄かな甘み、酸味。
更に生地にたっぷり練り込まれた様々なシリアルのザクザクコリコリ感。

その全てが完全に調和していて・・・これが、CUPIDOのカンパーニュなんだね、Cindy・・・


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このパンのひとかけらの中にも、シェフとスタッフの並々ならぬプライドが詰まっているんだ!!
そして僕は、CUPIDOのパンのひとかけらを口に入れる度に・・・虜になってゆくみたいだよ・・・


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コーヒーのクレマはふんわりしたのに限るんだ・・・だって、Arnold日記にそう書いて・・・


濃いめに淹れた泡がたっぷりのコーヒーに砂糖とミルクを注ぎ、まったりした食後のひと時を送る。
このひと時こそ、僕がこうしてカフェを巡り続けている本当の理由なのかもしれない・・・なんて・・・


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パリで食べたクロワッサンに衝撃を受けてパン職人への道を歩み始めたというシェフ。
その類い稀なる感性と究極を求める飽くなき探求心、尽きる事の無い熱い情熱の元には
何時しか最高の仲間たちが集い、此処、奥沢に“職人の”ブーランジェリーとして開花する。

その評判は、日々美味しいパンを探し求めていた食通たちの間に瞬く間に広まってゆき、
CUPIDOのパンを食した者たちは皆、その美味しさと居心地の良さの虜になってゆく。

そして、このCUPIDO(キューピッド)の放つ矢にハートを射抜かれてゆくのだ・・・


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店を後にした僕は、以前に彼がそうしていたであろうコースを全く踏襲する事にして、
自由が丘の方へと歩み始めた。奥沢からは比較的大きな通りで一本につながっており、
自由が丘駅に近付くにつれ徐々に人通りも多くなり、人気の街としての賑わいを見せていた。

駅からはこの様な緑道や遊歩道が伸びていて、犬を散歩させたりベンチで休んだりと
各人が皆、思い思いに午後のゆったりしたひと時を過ごしていた。賑やかさと穏やかさの
両方を兼ね揃えた点こそ、この街が都内屈指の人気スポットとして君臨し続ける所以だろう。


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唯でさえ賑やかなこの街は、新たな年を迎えてより一層華やかさをましているようだ。
それはまるで、街全体がケーキに乗ったデコレーションのようにキラキラと輝いて・・・


でも、駅からそれ程離れていないにもかかわらず、この薄暗いガードの下だけは
ひっそりと静まり返って、一瞬その華やかな雰囲気も途切れているようだった。
幸せそうな表情だった人々も、このガード下だけは足早に通り過ぎてゆくのだ。

この数メートルの空間だけ、何だか異界にでも迷い込んだ空気に覆われて・・・
そして、此処にいたのだ・・・人々の目から隠れるようにひっそりと佇んで・・・


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この薄暗く、ひんやりとしたコンクリートの中で待っていたのは・・・そう、花の妖精たち。
街全体がデコレーションを施されたケーキのような自由が丘の情景とは全く相反する、
何の飾りも付いていない裸のままの妖精たちが唯一その身に着飾っていたのは・・・

真っ赤な花の髪飾り・・・そう、ピュアで・・・ナチュラルで・・・どんな宝石より美しい・・・
そして、彼女たちの話し相手をしているかのように目の前にいたのが、今回の・・・


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「ゴールドクレスト」


クリスマスのシーズンにはこの街の姿とと同様に、そして世界中のキミたちがそうであるように、
キラキラと輝かんばかりの無数のデコレーションを全身に施された事であろう、ゴールドクレスト。

クリスマスも終わり、今はそのゴージャスだった飾り付けも全て剥がされて裸のままで佇んでいた。
あれほど注目されていた存在だったのに、この場所を過ぎ去る人たちももう全く見向きもしていない。


でも、この尖塔のようなほっそりとした風貌の黄緑色した姿こそ、本当のキミの姿なんだよね!
それに・・・綺麗な黄緑色のスッキリしたAライン・・・クリスマスには気付かなかったけれど、
とってもスマートで、爽やかで、清々しくって、何も付けていないのも凄く魅力的だよ!!


何も身に付けていなかったけれど、ちょっと誇らしげなゴールドクレストと別れた僕は、
自由が丘の絶える事の無い雑踏に紛れ、駅の中へと吸い込まれるように向かった。



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クロワッサン・レスト


これまで僕が目にしてきた彼が紹介するクロワッサンは、確か店名の“クピド”と名付けられていたが・・・
大きく巻かれた三角形の、薄っすらと狐色に焼かれた層から成るクロワッサンの何て美味しそうな事!!


表面の薄い層はパリッとした口当たりでありながら、ひと口食べる毎にふんわりと溶けてゆく。
更に、何層にも折り重なった生地の層はギュッと詰まっていて、尚且つしっとりとした食感に
またひと口と、食べる手も止まらない。その生地の中からジワっと染み出すバターの香り。

ほんのりと甘くコクのあるバターの豊かな風味が口の中いっぱいに広がっていって・・・


これが、シェフが衝撃を受け、パン職人を決意したクロワッサンの美味しさの片鱗か・・・


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ショコランタン


チョコ好きの彼のブログに無かったショコランタン、それもその筈、今秋の新商品との事だった。


キラキラと輝くキャラメリゼされた表面に、たっぷりと散りばめられたアーモンドスライス。
甘いものが大好きな人間なら、この組み合わせだけでも既にノックダウンってトコだろう!

その、ぽっこりと膨らんだ表面を一口かじると、パリパリで、甘くって・・・香ばしい!

サクサクっとしたデニッシュ生地はほんのり甘いバターのリッチな風味が広がって、
段々中に進むにつれてふんわりと軽い食感へと変わってゆくのが堪らないけど・・・

何と言っても、程良い酸味とほろ苦さに仄かな甘さのチョコレートがデニッシュと
絶妙にマッチして美味しい事と言ったら・・・そうか、彼はこれを未体験だなんて・・・


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フィグ


夢だったんだよ、CUPIDOでパンを切ってもらうのが・・・その夢が、遂に叶ったよ!
そして今回僕が迷いながらも切り分けてもらったハード系のパンが、このフィグだった。

このパン生地の配合は仏産の小麦粉88%、同じく仏産のライ麦粉が残りの12%の2種類。
そうしてブレンドした粉を自家培養の干し葡萄から起こした天然酵母で醗酵させて焼いたパン。


コンプレにカンパーニュ、そしてこのフィグと3種類のハードパンを食したけれど、
どのパンも本当にガシガシと歯応えのある香ばしい皮としっとりもっちりとした生地。
むにゅっと粘り気すら感じられる、保湿分いっぱいの生地には仄かな甘みが美味しい。

と言うのも、生地の中には大き目の無花果がゴロゴロと入り、存在感を醸し出していた。
ねっとりとした果肉の中から、じゃりじゃりとした楽しい食感とジューシーさが広がり、
同時に伝わってくる、後を引く濃厚な甘さが素朴な風味の生地に絡み合ってゆく。


ドライフルーツのパンというと真っ先にレーズンを連想するのだけれど・・・
そう言えば、パンのブログを始めてからいちじくの美味しさを知ったと
語っていたのも、Cindy、他ならぬ貴方でしたっけね・・・


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バゲット・アラシェンヌ


シェフが拘り抜いた仏産小麦粉100%を、同じく拘り抜いた石臼で挽いたバゲット・アラシェンヌ。

他のハード系のパンが1%単位の分量でブレンドしているのに対して、此方は100%ピュアなパン。
そう・・・“これだ!!”っていう小麦粉があるからこそ、このストイックなまでのシェフにゴー・サインを
出させた小麦粉で焼かれたバゲットだから・・・その仕上がりには絶対の自信が感じられるのだった。

果たしてその味わいは、バリバリの香ばしい皮は既に他のハードパンで体験済みだったので
覚悟が出来ていた筈だったけれど・・・スッキリした焦げ具合と香ばしさには正直、脱帽だ!

香ばしさは中の気泡たっぷりの瑞々しい生地をも更に美味しくさせているように感じた。
鼻孔を抜けてゆく爽やかな麦の風味がふんわりもっちりとした生地と一体になって・・・


シンプルな小麦だけの生粋のパンなのに・・・この杖の魔法にかかったみたいだよ!!


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たった1%の配合にさえ拘り抜いたシェフのプライドと、そのシェフが作り出した渾身のパンたちを
最高の状態で、そして最高の気分で味わってもらう為のホスピタリティに尽力するスタッフのプライド。

決して妥協する事の無い、この店の1%のプライドが僕に100%の自信を与えてくれる・・・
待っていてくれ、Cindy。これで僕は必ず貴方の待つ場所まで登りつめる事が出来そうだよ・・・
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by mary-joanna | 2010-01-10 23:22 | 今日越えて
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