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ヨ.秋風吹いて

秋の便りがやって来た。
風に揺られてやって来た。
いっぱい乗せてやって来た。
みんなのトコロにやって来た。

・・・そしてアナタは、いま何処?


そんな秋の風に誘われて、僕はまた例の地を訪れる事にしたんだよ。
Elvis Cafeの記念すべき第一回目訪問地として紹介したあの場所にね。

あの夏の日からまだ2ヶ月ほどしか経っていなかったけれど、
一見変わらぬ一面の緑色の中にも、次第に変化していく秋の装い・・・
そう、季節の移り変わりを感じる事が出来るのではとの思いがあったのだ。

それに何と言っても今回のイニシャルは「ヨ」なのだ。
このイニシャルに関しては、僕は最初から決めていたのだ。

だから、初回だってこの広大な渡良瀬遊水地からスタートさせた訳だし・・・


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此処から見る川の流れに、いつもハッとさせられていたんだ。
そう、まるで二つの橋が競い合っているかの様に連なった光景。
そして、その下を我関せずとばかりに緑を従え悠々と流れる渡良瀬川。

僕の街に流れる渡良瀬川だって情緒溢れる光景で楽しませてくれるけれど、
目の前の渡良瀬川は僕が毎日慣れ親しんでいるそれとは何処か異なる気がする。
何と表現したら良いのか分からないけれど、ただ広く大きくなったと言うよりむしろ・・・

何か途轍もない場所に飲み込まれてゆく様な・・・
しかも、こんなにも大きな川と周りの深い緑を一度に・・・
そう、もう何もかも全てを飲み込む大きな何かがこの先に・・・


何時もはいったん川沿いの道を外れて湖に向かって南下するのだが、
今回は是非立ち寄ってみたい場所があったので、このまま川沿いの道を
直進して栃木県藤原町の街中を外れ田畑と住宅が混在する中を走り続けた。

そして辿り着いたのが今僕がいる渡良瀬川の支流の土手の上なのだが、
地図を見るとこの辺り一帯は“第3調整池”と呼ばれているそうだ。


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そんな姿になるまで、ずっとずっと見守っていてくれたんだね・・・

川はきれいになってきましたか?
木や草はみんな元気ですか?
此処で深呼吸出来るかな?


アナタはいつも真面目で真っ直ぐで正直で・・・

でも、そんな頑張り屋さんのアナタの事を・・・ほらっ!


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アナタはとっても素敵ですよって・・・

少し離れたトコから恥ずかしそうに・・・

そんなに顔を真っ赤に染めちゃって・・・


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土手では早くも冬に向けての準備が始まっていた。
僕が紹介したい「ヨ」の彼だって、もう頭のてっぺんは・・・


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ワルナスビ&キツネノマゴ


星型に大きく開いた薄青紫の花弁の中心に鮮やかな黄色い子房。
風貌だけを見れば“ナスビ”というのも十分に頷けるのだが、
棘のある葉茎に加え一度生えると駆除しづらいばかりか、
黄色いミニトマトに似た実には毒もあるとの事だった。

直ぐ傍には、そんな“ワル”に睨まれてしまった非常に小さな花。
“キツネノマゴ”とのネーミング通りの、何とも可愛らしい花が
穂状に伸びた花序の先からチョコンと顔を出していた。

まるで、あの大きな黄色いくちばしに怯えているみたいで・・・




調整池の土手を後にした僕は、湖の方に向かって再び車を走らせた。

広大な遊水地は同じ敷地とは言え町がすっぽりと入ってしまう広さだ。
従って、この調整池から広場や史跡のあるゾーンまでは車でも20分はかかり、
湖を取り囲む様に流れている川沿いをちょっとしたドライブ感覚で進む事になる。


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土手を過ぎ、橋を渡ると、湖へと入るエントランスのゲートに差し掛かる。

夕方には閉じられてしまうそのゲートを越えると、いよいよこの先は
例の形をした大きな湖の、まさに“心臓部(ハート)”へと入ってゆくのだ。


ヨシ原の中を突っ切る様に真っ直ぐ続く道路の両脇にはこの様に街路樹が
植えられていたが、暫く走っているうちにとても気になって車を停めてみる事にした。


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コブシ


へぇ・・・此処にはピンクのぶどうの実なんてのもあるんだ・・・なんて・・・


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サルスベリ


この夏の間、街中でも僕の目を楽しませてくれたふんわりとしたピンクの花も、
そろそろお別れの時期が迫ってきたみたいだったけど、昨年までは“サルスベリ”って
名前から連想するのは幹の方ばかりだったのだから・・・僕にとっては素敵な出会いだったかな?


さて、いよいよ広場のあるゾーンまでやって来た僕は、駐車場に車を停めて
売店や自転車貸出し所が並ぶ棟の脇にある入り口から中に入る事にした。

この日は休日と言う事もあり、家族連れを中心に大変賑わっていた。


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子供広場ゾーンと言っても、中は見渡す限り爽やかな芝生が広がり、
その周りにはゆったりとしたサイクリングロードや遊歩道も設けられていた。

本格的なサイクリングやジョギングに汗を流す者、芝生でキャッチボールをする者、
のんびり散策する者、ベンチで横になる者まで、みんな思い思いに広場を満喫をしていた。


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子供広場ゾーンに隣接して史跡保全ゾーンと呼ばれる場所があった。

実はその二つのゾーンの境目辺りでこの時期にこの場所でしか見ることの出来ない
ある花に出会えるとの情報を手に入れた僕は、早速向かってみる事にした。


史跡保全とは、かつてこの遊水地一帯に村があった事を後世に伝える為、
今僕が立っている周辺には当時の村役場跡や神社跡などが残されていた。
小高く盛り上がった丘の周りでは、彼岸花が朱色の花を寂しそうに揺らせていた。


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彼岸花の後ろに立つ杭に書かれていたのは・・・


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明治時代の谷中村、ひいては渡良瀬川と言えば・・・悲しい歴史が此処に・・・

・・・合掌・・・


さて、僕が探していた“それ”は意外にも直ぐに見つける事が出来た。
しかも、この辺り一帯に比較的広域に群生しているみたいだった。


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ワタラセツリフネソウ


秋風に揺られてサワサワと音を立てながらざわめく緑色の大海原に、
淡い桃紫色の船体を仄かに輝かせた船の一団が姿を現してきた。

キュッと窄まった船尾の一番先についた、そのクルンと丸まったスクリューと、
対照的にパックリと大きく開いた船首から成る可愛らしい船体は、どれも皆、
同じ方角を向いてゆったりと緑色の波間をプカプカ浮かんでいる様だった。


渡良瀬の水辺にこの季節だけ停泊する可愛らしい船団に別れを告げて、
史跡保全ゾーンの遊歩道を歩いていると更にもう一つ、黄色い花に・・・


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コウゾリナ?


タンポポともまた少し違った・・・恐らくキク科の花が点々と咲いていた。
タンポポよりも小さく、花の直径はせいぜい3cmほどであったろうか?

既に綿毛に変わっていたものもあったけれど、健気にも元気いっぱいに
咲いているその姿にすっかり心癒された僕は、ちょっとしゃがんで眺めていた。


此処に来ると少し歩いただけで実に様々な草木に出会う事が出来る。
街で見かけるもの、植物園で出会ったもの、山地でしか見れないもの・・・

そしてこの広大な自然の楽園を形作り、維持しているのが・・・


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第一回目の際は目にも眩しい黄緑の絨毯だったけれど・・・

9月も後半、今、僕の目の前には黄金色に輝くヨシ原が目の前に広がっていた。


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「ヨシ」


春の訪れと共に真っ黒に焼かれて炭の様になったキミたち。
その中からあっちに・・・こっちに・・・可愛らしい薄黄緑が芽吹き出して、
初夏の声を聞く頃には生命力でいっぱいの濃い緑を猛々しく天に突き出し、
何時しか黄金色に輝く穂先を涼しくなってきた秋の風にゆったりと身を任せて、
冬の頃、吹きさらしの荒野にまるで突き刺さっているかの様に枯れた茎が立っている。

そしてまた新たな春を告げるべく、この枯れた茎に火が点されるのだ。
また新しいキミに出会う為に・・・そして、この地の貴重な植物たちと再会する為に・・・


土手の上から・・・水門の所から・・・湖の側から・・・

何時も僕の視界いっぱいを埋め尽くすキミたちを眺めていたんだ。
キミたちの向こう側には、遠くの山々と・・・もう空しかないじゃないか!
キミたちを見ていると、本当に僕の存在なんてちっぽけだよね。
そう、何処までも広がっているキミたちに圧倒されて僕は・・・


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そして第一回目の時がそうであった様に、今回もまた、僕は同じ場所へと向かった。
遊水地を南に下り、湖の付け根に架かる大きな橋を渡ると、茨城県古河市へと入ってくる。

最近ではどの街もそうだろうが、大きな国道に面した郊外の賑わいに比べ、
駅の周りの所謂“市街地”は何処か閑散と・・・いや、何となくひんやりとしていた。


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遠くに見える背の高いマンション・・・

そう言えば僕の住んでいる足利だって街中に建つのって、
近頃はマンションかビジネスホテルくらいだったよなぁ・・・

そして、この街をずっと支えてきた商店はどんどん朽ち果ててゆくのかな?


でも、そんな朽ち果てた様な所謂“市街地”に・・・やっぱり此処に足が向かってしまうんだ。

だって、このElvis Cafeにとってこの場所は特別な場所なのだから・・・


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大きな葉っぱの街路樹と赤い街灯に守られた四角い建物。
スッキリとした印象のスカイブルーのストライプとレンガの外観。
はめ込まれた窓枠の濃いブルーとホワイトがとてもカッコいいんだ。

あの時と同じ、とてもスタイリッシュで・・・何処か懐かしい姿に、思わずホッとしてしまう。
まだ2回しか訪れた事が無いのに・・・子供の頃からずっと知っている様な懐かしさに・・・


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窓際にはくるくるって葦簀が巻いてあって・・・そうだったね、キミ、此処でも活躍してたっけ・・・

さあ、中に入ってゆっくりと休もう・・・今日はいっぱい散策したから・・・


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この前来た時もそうだったけれど、この空間に僕はすっかり魅了されていた。

使い古された木製のテーブルやあまり見かけなくなったビニール製の椅子、
テーブルの端や棚に置かれたガラス瓶や陶器など、この中にある全てのモノが
この空間ではまるで魔法をかけられた様にこれまでに無い新しい輝きを放っていた。


此処にいると心が安らいでウットリした気持ちになって・・・
このキラキラした世界に僕はずっと憧れていたんだ・・・


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はにかんだ少年と思わず目が合った。
子供たちはやっぱり笑顔が一番似合っているね。

最近、無邪気に笑った事なんてあったかなぁ・・・


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この空間には様々な“光”が存在していた。

表の窓から差し込む眩いばかりの真っ白な午後の日差しと溶け合う様に、
各テーブルには一つ一つ異なったランプシェードが仄かな明かりを照らしていた。

やわらかなオレンジ色のランプの明かりの下でまどろむ午後のひと時。
どの光も非常にパーソナルで、優しく包み込んでくれるみたいに・・・


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この前は入って直ぐのカウンターに座った僕だったけど、
今回は奥の部屋の、このテーブルにしようと決めていたんだ。

彼が始めてこのカフェを紹介した際に着いたテーブルにね。


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棚の上を見上げると・・・やっぱりカフェなんだなぁ・・・


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おや、此処にも一人・・・すっかり貫禄がついちゃって・・・


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初めての時は、この席だったよね・・・


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この秘密部屋からも紹介していたっけ・・・


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この前はとってもラヴラヴな二人だったけど、
今日僕の前にやって来たのは・・・元気いっぱいのボク!

ニコニコのキミをみていると、僕も楽しい気分になってくるんだ。
それに、だんだん温かい飲み物が恋しくなる季節になってきたよね。
カップから伝わる温もりとボクの温かい笑顔に癒されながら、のんびりと・・・


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クリームブリュレ


おやっ、新しいメニューを見つけたよ。
彼、クリームブリュレが大好きだったから、コレを見たらきっと、
いいなぁ~って、思いっきり羨ましがるんじゃないかなぁ・・・

パリパリのほろ苦いカラメルの中はふんわりまったりとろ~りで、
まろやかな卵の風味とやさしい甘さが口の中いっぱいに広がって・・・


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秋風吹いて


何だかとっても寂しくなって・・・
何処かちょっと切なくなって・・・
何故だかすごく悲しくなって・・・

秋の風が僕の心の窓からピュ~っと吹き抜けてゆくと、
一人ぼっちの僕の心は両手でバンっと窓を閉めちゃうんだ。
でも、またそっと窓の端っこから外の様子が気になっちゃって・・・
本当は風サンとも一緒に遊びたいんだよ!・・・って・・・




本当に大変ご心配をおかけしましたが、何とか復活できました・・・
更に(?)まったり更新になるかもしれませんが、これからも宜しくお願いします! m(_ _)m
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by mary-joanna | 2009-10-13 13:30 | 我が世誰ぞ
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