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ヘ.清く澄んだ街角にて

 何処に向かっているんだい、そっちは街中じゃあないか!!


勿論分かっているさ、でもね・・・

此処には森林に負けない深い緑がある。
此処には庭園に負けない華麗な花が咲く。
此処には草原に負けない爽やかな風が吹く。

此処、清住に向かう大通りには・・・


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先日の日食では何ともロマンチックな太陽のかくれんぼを見る事が出来たが、
この日、お天道様を隠していたのは空一面を覆い尽くしていたどんよりとした雲。

とても7月の終わりとは思えない空模様であったが、僕は栃木県宇都宮市にやって来た。


JR宇都宮駅から続く市街地の中では随一の大通りは、商業施設は勿論、
付近の通り一帯も含めると裁判所や地方銀行の本店、美術館に学校などの
政治、経済、文化に渡るまさに街の大動脈とも言えるメインストリートとなっていた。

そんな市の中心に位置する大通りに沿って進んでゆくと、例のコンビニが現れる。
彼がこの街で大のお気に入りの、“あのカフェ”へと続く曲がり角だ!


勿論僕だってあの穏やかな時の流れを体験したくてこの街を訪れたのだが、
この中々右折出来ないコンビニを曲がる前に、もう一軒行く場所があった。

そう、今の僕にとっては本題とも言うべきその場所は、コンビニのすぐ先なのだが・・・


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しっかりと舗装された片側2車線の通りには途切れる事無く車が往来し、
広めにとられた歩道には街路樹すら備わっているものの、ぐるりと見渡して
目に飛び込んでくるのは数階建てのコンクリートの建築物や店の看板ばかり・・・

と、これまでお腹一杯なくらい目にしてきた“今の”市街地に有りがちな情景に、
一杯の爽やかな涼茶が差し出された様な、清々しい出で立ちの古民家が一軒。


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この大通りにあっては明らかに異質な存在なのに、何故か全く違和感無く、
この風景のこの場所に無くてはならない存在としてマッチしている様に思えた。

更に、この建物の軒先を埋め尽くさんばかりの大小様々な夏の草花は、
まるでこの古木の柱やトタンの赤屋根に寄り添う様に自然と溶け込んでいて・・・

そんな優しさすら感じさせる繊細な野草たちの中に、最近様々な紙面で
目にする“あの白鷺”より小さくて可愛らしい“鷺の群れ”が飛び立とうとしていた。


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建物の正面には何とも存在感のある重厚な扉が備わっていた。

昔ながらの伝統的な蔵戸をリフォーム時に合わせたとの事だったが、
みんなをしっかりと支え、守ってくれる大事な扉が頼もしく見えたりもした。


実は此処こそが、僕が今回どうしても訪れてみたかった場所・・・
つまり、“お花屋さん”なのだが、此処は本当には花屋さんなのだろうか?

この重厚な扉の向こう側でまず始めに出迎えてくれたのが・・・


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そう、やっぱり花屋さんだもの、暖簾にだってちゃんと描いてあるじゃ無いか!

そして、建物の中をぐるっと見回した僕は思わず感嘆の声を漏らした。
確かにこの建物は、取り壊しを免れた築数十年の古びた家屋かも知れない。

でも、この空間を満たしているものと言ったら・・・


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そう言えば、これまでの僕のブログで紹介してきた草花はどれも皆、
太陽の下でのびのびと咲き誇って、生い茂っていたよなぁ・・・

花屋なのだから建物の中は当たり前だって?

うん、でもこの花屋さんの草花たちを見てごらんよ!

適度に抑えられた仄かな明かりの下でのんびりと寛ぐ草花たちは、
まるで此処が建物の中とは思えない程とっても生き生きとして楽しそう。


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例えば・・・ほら、水色の玉とピンクの玉がプカプカ浮かんで仲良く遊んでいるよ。

まるで、サイダーの泡を見ているみたいに・・・キラキラ輝いているみたいに・・・


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まるで道端にひっそりと咲いているかの様に何処か控えめで、
でも、立ち止まってくれた人に笑顔になって欲しくって・・・


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トリック


栃木県一の街の、しかも市の中心の大通りで、こんなにも外の喧騒を忘れて
穏やかな気持ちにさせてくれるなんて・・・何かトリックでもあるのかい?


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「ベロニカ(トラノオ)」


店員さんに僕のブログの主旨を打ち明け、今回のイニシャルについて
相談すると、奥から紫色の穂をした細長い花の束を持ってきた。

一目で気に入った僕は、直ぐに購入する事を店員さんに告げた。

突然の僕の申し出にも、非常に親切かつ丁寧に説明をしてくれた、
二人の店員さん、そして店長さんにはこの場でお礼を申し上げたいと思う。


さて、少々長居し過ぎたかも知れない。時刻もお昼を回り、僕のお腹も空いてきた様だ。
購入する花の取り置きをお願いした僕は、先程のコンビニを予定通りに曲がって進んだ。
恐らくCindyが何度と無く通ったであろう例の細い路地に入って、そう、あの場所へ・・・


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その細い路地を右に左に2回ほど曲がると見えてくる、あの平屋の一軒家。

さっきの花屋にも劣らない、正真正銘、まさに“昔の”家屋に着いたよ。


そして、僕はこの場所で再び昭和にタイムスリップするんだ!!
懐かしいセピア色で満たされた、けれども未だ一度も体験した事の無い・・・


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初めまして、牛さん。
これからは彼に代って僕が君を紹介させて頂くよ。

まだまだ僕は“ちっちゃい”けれど、何時かきっと、君の様にどっしりと
腰を落ち着けていたいんだ・・・そうすれば彼だって・・・


中に入った僕は店長さんのご厚意で部屋を見せて貰った。


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この部屋は確か昨年の夏、“シェーブル”が残した手記を
物語にした際にあの人が食事した場所・・・

部屋の中央を占めている長テーブルに掛けられたクロスは・・・


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そうだね、君たちもしっかりと紹介しておかなきゃ、ね!


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無数についた柱の傷が、この建物の歴史を物語っていた。

現在の住人はというと、細長い腕と緑色の可愛らしい手を
いっぱいに伸ばして僕に挨拶をしてくれている様にも見えた。


そしてまた一つ、この柱に生きた証が加わってゆくのだ・・・


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柱にはもう一つ、昔の家の大黒柱には必ず掛けてあったボンボン時計も。

ねぇ時計クン、お願いだからもっとゆっくりと時を刻んでくれないか!


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このお店の店長さんはとても研究熱心だ。

でも、その根底には非常に柔軟な発想と・・・
何よりもワインやチーズに対して大きな愛情を注いでいらっしゃる。

だからこのお店は安らぎや温もりで満たされている気がして・・・


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まるで大正時代の洋館の一室と彼が語っていたのも頷ける、
このダイニングで、僕もロマンチックで優雅な食事を堪能したいな。

でも、僕が座るべき席は最初から決めていたのだった。


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昔風なら縁側の廊下とでも呼びたくなる(実際に呼ばれていた?)、
部屋と庭とを隔てるスペースに配された円テーブルとラタンのチェアー。

そう、この席こそ彼、Cindyの大のお気に入りだった席でもあり、
“Little”と称する僕が紹介する事をずっと夢見てきた席でもあったのだ。


雲に遮られた緩やかな白い光が硝子戸から差し込んで、
この空間にある全ての物に微妙な陰影を作り出していた。

何て、ゆったりとして落ち着いた気持ちになれるのだろう・・・

日々の事が遠い彼方へと消えていきそうだよ・・・
いや、それはこの清住の地にやって来た時から感じていた事、
先の花屋さんから此処へと繋がる路地は時空をも超えてしまうのかな?

そんなとりとめの無い妄想に駆られそうになっていた時だった。


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あの頃のスパゲティミートソース


最近の凝った作りではなく、とてもシンプルで子供の頃お母さんが
手づくりで煮込んでくれたあのミートソースの、あのスパゲティ。

たっぷりの挽き肉と野菜が入った、味も栄養もスタミナも満点のスパゲティ。

でもこのお店のミートソースには、仕上げのひと手間があるのだ!
店長さん自らその場ですり下ろしてくれるたっぷりのハードチーズの
コクと風味が、ミートソースの旨味をも更に引き出しているみたいで・・・

そう、此処は美味しいチーズのお店なのだものね!!


絶妙の茹で加減でつるつるしこしこのスパゲティに良く絡んだミートソースに、
まるで子供の頃に戻ったかの様に僕は我も忘れてパクついてしまった。


そして他では味わう事の出来ないスペシャルなチーズは、
勿論追加でオーダーしたスイーツにだって!!

このお店の夏のスイーツと言ったら・・・


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自家製アイスクリーム


蒸し暑い曇り空の、ちょっぴり物憂げな午後の窓辺で、
涼しげな籐の椅子にのんびり腰掛け、ひんやりとしたアイスを一口。
ミルキーな優しい甘さの中に、アイスの冷たさで抑えられたチーズの香りと
チーズの刺激が舌先にちょこんと伝わってきて思わずビックリ、そしてニッコリ。

やがて口内の体温で溶けて広がるチーズ本来のふんわりとした芳醇な風味、
更にまったりとした舌触りは、このアイスを最高のスイーツに仕上げてくれた。


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アイスティーのグラスに付いた水滴が滲んでいくのを眺めながら、
この時間が何時までも続いてくれればなぁ・・・って思う僕だったけど、

さっきの花屋さんとこのチーズ屋さん、それにこの細い路地の風景は、
何十年も前からずっと変わらずに、そしてこの先もずっとずっと
このままでいてくれる様な気がして・・・

そう、この清住の路地裏の、古びた一角は・・・


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「ベロニカ(トラノオ)」


ピンと真っ直ぐに伸びた茎の先、フサフサした青紫の小さな花の穂は、
ピョコっとコミカルに曲がってて何とも可愛らしいトラさんのしっぽ。

きっとキミだったら、吠えられても微笑んでしまいそう。

何処か懐かしくって、でもこれまで目にした事の無い花屋さんから連れて帰った
可愛らしいトラさんは、偶然草むらで出会えそうな親しみに溢れながらもハッと
見惚れてしまう綺麗な紫の尾っぽを軽やかに揺らしているのだった・・・


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これまで湿原や森、高原など自然の中で野の花を中心に紹介してきた
“Little”Cindyでしたが、今回初めて“花屋さん”のお花を紹介しました!!

勿論、野草にはこだわらず、これからも花屋さんやそのお店で購入したお花、
更にはガーデニングなどなども載せていきたいなぁ~って思っていますが、
最初に紹介する花屋さんはココってブログ開始前から決めていました♪ (≧∇≦)b

Cindyの大好きだった清住のチーズ屋さん(&路地裏の雰囲気)にも
ピッタリとマッチするコチラの花屋さん・・・

これからもこの“清く澄んだ”ツアーが楽しみなLittleクンなのでした♪  ( 〃∇〃)ノ
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by mary-joanna | 2009-08-12 21:44 | 色は匂へど
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