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紹介したお店の名前&イニシャルの花を一覧にしてみました。

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また、現在『Walki'n With Cindy !!』というカフェ&パン屋さん紹介の
ブログを綴っておりますので、是非ともご覧になって下さい♪

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# by mary-joanna | 2011-12-31 00:00

ン(ス).Walkin' With Cindy (後篇)

  ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集まってるねえ。
  あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのはぼくのお母さんだよ。


                                     「銀河鉄道の夜」 宮沢賢治



そう言えばElvis Cafeが始まって10回にも満たない初秋の頃、僕は例のグループの一員・・・
Brit boyと名乗る青年に会う為に東京まで赴き、その帰りにイニシャルの花に出会った。
シュンと真っ直ぐに伸びた茎を覆い尽くさんばかりのシャープなフォルムの深緑の葉が
幾重にも重なって放射状に生えており、そのシャープな葉と葉の間からまるで騎士に
守られたお姫様のように、柔らかな淡い紅紫色の花弁が可憐な姿を見せていた。
“悲しさや淋しさへの誠実なまでの愛情”と紹介した、そのイニシャルの花・・・

今、紫のりんどうの花は線路のへりのみじかい芝草の中にも咲いてはいないだろうけど、
僕だってアナタの為なら、何処にだって飛び下りて、花を摘んできてあげたいんだよ。
危ない目に逢うかって?・・・とんでもない、何時だって胸を躍らせてきたんだよ。
そうして僕はアナタに一目見て欲しくって、47もの花を集めてきたじゃないか!

それなのに・・・アナタが僕に投げ掛けた言葉ときたら・・・


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natural french cafe mikumari


午後1時20分


Cindyが発したあの言葉の直後、今度は僕のスープが運ばれて再び沈黙が訪れた。
そして食事を終えた僕達二人は、食後のデザートを頂く為に壁際のカウンターを後にした。

ズシリとした重みと存在感が腕に伝わる陶器の水差しを手にし、二人が向かった先は・・・
入り口の扉の横に備え付けられた梯子のような急な階段を、頭を気にしながら上った先は・・・


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あの物語に登場する二人の少年にとっての“秘密基地”であり、僕にとっての・・・
そして恐らく目の前の彼にとっての、心の片隅で輝き続ける“夢の屋根裏部屋”なのだ。

この類い稀なる空間でのひと時は、もう一つの待ち望んでいた場所で過ごすもう一つの時間。
この9ヶ月間、常に僕の心と頭の中心にいた貴方がぼんやりと思索に耽りながら過ごした空間。


僕は緊張のあまり、自分自身でもはっきりと分るくらい表情が強張っていた。

彼はというと、純白に覆われたこの狭い空間を忙しなく動き回りながら、
其処此処に置かれ掛けられたオブジェ達を無邪気に眺めていたのだ。
これまで何度と無く見てきたであろうにもかかわらず・・・
まるで旧友との再会を懐かしむように穏やかな目で・・・


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いよいよ全てが整ったのだ・・・彼の物語のクライマックスを飾ってきたこの狭い屋根裏部屋には、
今、僕と彼しかいないのだ・・・僕の物語のクライマックスを飾る舞台として物語を彩ってくれるのか?

でも・・・本当にこの場所で良かったのか、という小さな疑念が僕の心の隅で燻り始めた・・・


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非常に個性的な、それでいて“コチラ側”の空間に自然に溶け込んだ半円形の建物。

僕にとって、言わばこの空間のモニュメント的な存在であるmikumari頂点の一角・・・
そう、この店の2階に設けられた屋根裏部屋の更に最上部の更に最も高い場所に
切り取られた長方形の窓の向こうに広がっているのは、果てし無い大空と大地・・・
即ち、此処は“橋の外側の世界”に向けた大いなる旅の始まりの場所なのだ。

あの物語の少年たちが行李や地球儀に囲まれながら時が経つのも忘れて
語り合った秘密基地・・・夢や希望を乗せた未だ見ぬ地への大冒険を・・・


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斯く言う僕だって、あの初夏の午後、此処から壮大な計画を実行に移したではないか!
確かにこの地に帰って来るべく物語を進めてきた訳だが、此処は終着駅には似合わない。
此処は僕の物語を飛び抜けていったあの鳥が、一筋の風と共に下り立つ巣箱では無いのだ。


この間、二人の間には全く会話は無かった。不思議な沈黙がこの空間に広がっていた。
暫くしてスイーツの盛られた皿を運んできた店主がゆっくりと階段を上がってきた。
皿とカップを窓枠に沿って括り付けられたテーブルに置くと、僕達に語り掛けた。


 今日の料理はお口に合いましたか・・・“二人の”Cindyさん。

 ところで此方でのスイーツもオススメなのですが、実は今月初めに
 新たにギャラリーを設ける事になりました・・・もし宜しければ、
 その部屋も是非お二人にご覧になって頂きたいのですが・・・

 
 わぁ~・・・以前話して頂いたギャラリーが・・・遂に完成したのですね!
 また一歩、店長さんの理想の空間・・・“まぼろしの店”に近付きましたね!
 Little君、折角だから僕達も見せて貰おうよ・・・何だかワクワクしてきたよ♪



まるで遊園地か動物園にでも連れて行ってもらう約束をした小さな男の子みたいな
嬉しそうな表情は、先ほど下の階で僕に見せたそれからは想像もつかなかった。
この感じ・・・この雰囲気・・・これこそ僕が憧れていたCindyの姿だった。

そして、僕達二人は店主の後に続いて階段を下りる事にした。


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galerie fu-shu (ギャルリ・フウシュ) 風趣


  風の吹き抜けるこの場所で、風の吹くまま気の向くままに・・・


一ヶ月ほど遡るだろうか。この店の店主が綴る日記に『風の行方 完』が載ったのは・・・

僕は、この店の店主の豊かな感性から紡ぎ出される、この地で日々体験し、感じ取り、
想い描いてゆく日常を綴る店主のブログを読むのが大好きだった。今、目の前で僕達に
話し掛けるその穏やかな雰囲気が、日記の端々にも満ち溢れており、橋の“コチラ側”の
自然、生き物、食材、そして、この地を訪れる全ての人々に限りない愛情を注いだ文章・・・

2月初めに書かれた『風の行方 完』と名付けられた店主の日記には、
吹き抜ける一陣の風に身を任せてやって来た一羽の鳥が描かれていた。

風の行き先・・・その風に乗った鳥の目的地・・・僕は此処に来たかったんだ!!


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これまで(と言っても今日で2回目であるが・・・)僕が体験したmikumariとは
全く趣きを異にする新鮮さと、それでありながら、まるで、遠く離れた故郷に眠る
今は亡き父の書斎に久しぶりに戻って来たような懐かしさの両方を兼ね揃えた空間。

古木の薫りと温もりに包まれ・・・煌びやかなシャンデリアの光が揺らめき・・・


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異国の本や時代に取り残された品々を慈しむ父の背中を見てきたんだ・・・


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でも、そんなセンチメンタルな感傷は一瞬にして目の前の現実に引き戻された。
部屋の隅に置かれた重厚な書斎机と瑠璃色のビロードが張られたチェアーに
ゆったりと腰を下ろしたCindyは、机に両肘を突きながらその手を組んでいた。


 Little君・・・此処が僕と君とが辿ってきた風の行き先だ、窓の外を・・・


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 ええ・・・僕が追いかけて来た鳥は、きっと此処に帰る途中だったのでしょう・・・
 そして、僕の行き先でもあった貴方の下にも遂に辿り着く事が出来ましたよ・・・
 
 Cindyさん、聞かせて下さい・・・あの物語は・・・『Arnold日記』は一体・・・

 

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この部屋には二つのチェアーが置かれていた。一つはCindyが座っている青い椅子。
そして、青い椅子とは反対の方角を向いた、山吹色の座面の木製の椅子に僕は座った。

僕の目的はこの場に於いても首尾一貫していた。即ち、一つはCindyに会う事で、
それは今こうして現実となった。そしてもう一つは・・・彼がブログを閉じた訳だ。
だが、僕の質問を遮るように彼は質問を浴びせた。それは勿論、彼女の・・・


 なぁLittle君、もし差し支えなければ僕に教えてくれないかい?
 一体、君は彼女から何処まで僕たち兄弟の事を聞いているんだい。


 Cindyさん、聞くも何も・・・僕が彼女から聞いたのは、自分が『Arnold日記』に
 出てくるショコラノワール本人だという事と、貴方が捜しているCindyという人物は、
 同時に自分(ショコラノワール)を捜しているようだ、という事の二つだけなのです。 
 その事で、“Little ”Cindyの方である僕に、協力して欲しい事があると・・・


 僕(Cindy)を警戒しているのは分るが、君(Little Cindy)だって十分怪しいだろう!


 ええ・・・ですが、ある人物から僕には会って話をするべきだ、と忠告されたって・・・
 それと、CindyさんがArnoldと何らかの関連があるという事も仄めかすように呟いて
 いましたが・・・直ぐに否定して、「そんな事は・・・決して有り得ない・・・」って風に・・・


 ええっ!?・・・では、彼女は僕とArnoldが兄弟だって知らないのかい・・・
 確かにその事を隠す為に名前を変えたのだけれど・・・でも僕はブログで・・・



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 Little君・・・僕はね、何もショコラノワールに復讐じみた事をしようなんて、
 これっぽっちも思ってはいないんだ。むしろね、ネットを通じて兄を励まし、
 そして仲良くしてくれた事を感謝したいんだよ・・・でもね、だからこそ・・・
 僕には分らないんだ。如何して兄が彼女に会うと約束したその日に・・・
 いや・・・何となく分るけれど・・・もしそれが理由なら、僕は尚更・・・

 兎に角、僕は彼女に会って目の前で彼女の口からその事を聞きたかった。
 しかし、僕には直接彼女と連絡を取る術が無かった・・・いや、試みたんだよ・・・
 それにね、僕は僕の・・・そして、兄の方法で彼女の所へと到達したかったんだよ!
 だから僕は直ぐに二つの行動を開始したのさ。一つは生前、兄が綴っていたブログで
 兄と交流のあった人物たちとコンタクトを取る事だった。そして、もう一つはと言えば・・・

 大袈裟だと思われるかも知れないけれど、兄が志半ばで儚くも折れてしまった・・・
 大好きだったカフェとパン屋を紹介するブログを僕の手で完成させる事なんだ!
 きっとそれは彼女の・・・ショコラノワールの下にまで届いてくれるって信じて・・・



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 ええ・・・Cindyさんの想いは、ちゃんと彼女の下に届いていますよ!
 彼女は僕に、『Cindy's WALK』の大ファンだとおっしゃっていました。
 だからこそ、Cindyさんは決してブログを閉じてはならないのです・・・

 それなのに・・・折角、星を継ぐあの店まで紹介したのに・・・



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 Little君、僕はもうこれ以上待っている事なんて出来なかったんだ!!

 ブログの中でもし僕がArnoldの弟だと彼女にばれてしまったら・・・
 彼女はきっと警戒してしまうだろう・・・だから僕は2年前に改名をした。
 Williamという名前を捨てて、Cindyとしてカフェやパン屋を回り続けた。
 でもね、やっぱり隠し通すなんて出来ないし・・・彼女に見つけて欲しかった。

 兄と同じように、顔文字も記号も使ってフレンドリーな文体で書き続けた。
 兄、Arnoldが訪れた思い出の店を回り、彼女の下に繋がるヒントを探った。
 Little君がElvis Cafeでやった事を僕はCindy's WALKでやっていたのさ。
 しかし2年が過ぎても尚、彼女に至る有力な手掛かりは得られないままだった。



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 2年もの間続けてきて僕には分ったんだ・・・このままでは・・・
 このままでは、僕の・・・そして兄の想いも、風化されてしまう・・・
 2年って歳月が・・・全てを都合の良い思い出へと変えてしまうから・・・

 僕はやり方を変える事を選んだのさ。これまで積み上げてきた全てを
 捨ててでも、Cindyと決別してでも、ショコラノワールに会いたかったんだ!
 僕が突然ブログの世界から姿を消せば、きっと僕の後を追いかける人物が
 現れるのではないかってね。そして、僕に代わってその人物に捜してもらおう。
 その人物に気付かれないようにうまく誘導して、最後に彼女の下へと辿り着く・・・
 そう、Elvis CafeとLittle君の存在は、全て僕の計画通りに進んでいた筈だった。
 そして最後のイニシャルで遂に・・・Little君、君は此処で彼女に出会うんだよ・・・

 どうだい、完璧な計画だろう?そして君はこの前の・・・david painの紹介で、
 果たして僕が思い描いてきたように彼女と会う約束を公開したんだ。君が僕を
 誘い出そうとして敢えて知らせたのだとしても、そんな事は構わないんだよ。
 僕にとっては彼女に会う、唯それだけの為にこの計画を続けたのだから・・・
 だから、さっき君が僕の前に現れた時、彼女も一緒なのではないかって・・・

 でも、君は僕の計画よりも前に、既に彼女に会っていたなんて・・・
 そして、それを逆手に取って“僕だけ”を引っ張り出すのだから・・・




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ケーキ盛り合わせ


クレームカラメルと・・・テリーヌフロマージュと・・・そして、フォンダンショコラから成る、
mikumariのスイーツ3種全てが一つの皿に盛り合わされた、非常に贅沢な一品。
僕にとってはオーダーするのは勿論、お目にかかるのも初めてであり、そして・・・
Cindy's WALKでもArnold日記でもこの盛り合わせを見た事は無かった・・・


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このとろける舌触りのフォンダンショコラ・・・きっと貴方のお兄様も・・・そして彼女も・・・
そうか、如何してCindyの日記には兄を慕う弟の物語が多いのか分ったよ!


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 僕はかつて兄のブログにコメントのあった人物の中で、特に交流が深かった数名に
 コンタクトを試みたんだ。彼等も僕と同様に兄のブログが突然終わってしまった事に
 とても驚き、そして悲しんでいたからね・・・僕が知っている事実・・・僕と兄の関係や、 
 兄と・・・を打ち明け協力してもらうのだから、それは慎重に計画し、行動したんだ。

 当時大学生で多少軽率な言動が気にはなったが、積極的に協力してくれた青年。 
 ほら、Little君は一度会っているじゃないか・・・確か丸の内のVIRONだったね!
 更には、ブログでは東京都内のスイーツ好きなOLといった表現に留めていたが、
 実際には冷静で物怖じせず、何よりも先の青年を上手く引っ張ってくれた女性。

 今回の計画では裏方に徹してくれた者達も含めて、『Arnold日記』でArnoldと
 一緒に語らい、楽しいひと時を過ごしたかけがえの無い“常連さん”なんだ・・・
 だから僕は彼等の為にも必ず兄の・・・Arnoldの死の真相に迫りたかった・・・
 
 そう・・・Arnoldの死の真相を知ると思われる唯一の人物の下にね・・・
 


大いなる大地の恵みは何も食の物だけに限った事ではない。この日の僕達の訪問の為に
店主が自らセレクトしてくれた此方のカップの、落ち着きと安らぎを感じさせるフォルムと色彩。
手に取った瞬間から伝わる、滑らかな肌触りと柔らかな温もり。その全てが、偉大なる先人が
大地から頂いた貴重な自然に英知と感性と情熱で以って新たな生命を吹き込んだ結晶なのだ。


 Cindyさん、僕はショコラノワールさんから言伝を頼まれて此処に来ました。
 彼女が僕に協力して欲しい事とは、その言伝をCindyさんに届ける事なのです。

 それは・・・「今は貴方に会う事は出来ませんが、貴方が知りたがっている人物との
 数ヶ月間について、近々必ず告白するつもりでいますので、どうかそれまでの間、
 待っていてくれませんか。それまでそっとして頂けませんか。」というものです。

 

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 兄が・・・ある理由で生きる希望を失い掛けていたのは事実なんだ。
 そして、彼女のおかげで兄は支えられていた。それに僕だって兄を・・・

 それなのに・・・如何してあんな事になってしまったんだ・・・
 生きてればこそ・・・死んでしまったら何も残らないじゃないか!



彼は話すのを止めて、目の前にある古い地球儀をぼんやりと眺めていた。

もうすっかり日も傾きかけて、ダイニングの方から入ってきていた明るい日光も、
何時しかこの風趣の窓から差し込んでくる淡いオレンジ色の西日へと変わっていた。 


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西日がストーブに差し込み、反射したオレンジの光が僕の顔を仄かに照らす。
彼の、バチバチと店内に鳴り響いていた熱い鼓動もすっかりと静まり返り、
何でも今年の火はこの日を以って完全に落とされるのだと店主は言う。

僕の鼓動もこのストーブと同様に、この日を以って終焉を迎えるのだろう・・・
そしてCindy、貴方もそうなのかい?・・・もう、あの物語は続かないのかい?
否、それは違う・・・貴方の鼓動はまだまだ熱く燃え盛っているではないか!

えっ、何処に?・・・無理しなくてもいいんだ・・・もう火は消えているのだから・・・


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 よく見てごらんよ、メラメラと燃え盛っているじゃないか!!


・・・なんて、貴方だったら直ぐにそう答えてくれますよね・・・まだ枯れてないのですから・・・


 Little君・・・君の・・・そして、彼女の言葉を信じてもう少し待つ事に決めたよ。
 いや、どの道、今日でケリをつけようと思っていたんだ。グループの方も今日で
 解散するってメンバーの皆には伝えてあるんだよ・・・今回一緒に行動してくれた、
 Brit Boyもパピヨンも、その他のメンバーも全員、Elvis Cafeが大好きなんだよ!

 
 Cindyさん・・・メンバーと言えば、ハニーさんには大変お世話になりました。
 実は、彼女がショコラノワールさんと引き合わせてくれたのです・・・それに・・・


 ハニー・・・Little君、僕も驚いているのだけれど、僕達はハニーとの交流が無いんだ。
 足利在住で、更にArnoldに最も近い人物の一人だったから簡単に接触できると思って
 この2年間働き掛けていたのに・・・だからElvis Cafeにハニーがコメントを入れたのを
 見つけた時は僕達は本当にびっくりしてしまったんだ・・・彼女は一体何者なんだ・・・


 えっ、本当ですか・・・僕はてっきり・・・それから“咎無くて死す”というメッセージ・・・


 あぁ・・・あれは僕が送ったものだ。その意味については、もう今更言わなくても・・・
 あとlillyのタイトルで君に送ったAN-RIZ-L'EAUの日記は兄のPCから見つけたものだ。
 恐らくあれは兄が彼女の事を想って綴ったのだろう・・・でもUPされる事は無かったようだ。
 好きな人を想って書いたラブレターを出すのを躊躇って引き出しの奥に仕舞い込んだ・・・
 そんな兄の想いを僕は彼女に伝えたかった・・・だから君に託してみる事にしたんだ・・・



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 そうそう、Cindyさんにプレゼントがあります!


そう言って僕は今日一日僕と行動を共にしてきたこの小さな紙袋を差し出した。
最後のイニシャルの花をCindyにプレゼントする・・・あの可愛い少女のイニシャルを・・・


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「スミレ」


 あぁ・・・これが例の・・・davidさんの菜園の縁で咲いていたスミレだね・・・
 この前見せてもらったけれど、Little君、davidさんと奥さんにちゃんとお礼した?
 こんなに綺麗に咲くまで世話して貰ったのだから・・・見張り役のスミラーちゃんにもね♪


 えっ、如何してこのスミレがdavidさんの菜園から持って来たって知っているのですか?
 davidさんも、奥さんも・・・Cindyさんが来てたなんてひと言もいってくれませんでしたよ!!


 そりゃあ、僕の方が付き合いが長いからね・・・黙っていてくれって頼んでおいたんだよ。
 それにね・・・まだまだ僕には敵わないだろう・・・ねっ、“Little”君!


 あっ、ひどいですね、Cindyさん・・・ははは・・・



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午後4時50分


風の趣きに身を委ねていると、時間が流れてゆく感覚が麻痺してしまうようだ。
この部屋に案内されて2時間半が過ぎ、店はCloseの時間を迎えようとしていた。
ゆっくりした風の流れ・・・ふわふわした空気の流れは全身から伝わってくるのにね。


 Cindyさん・・・僕からお願いがあります。どうか再びブログを始めて下さい!!
 もう一度、Cindyさんのカフェやパン屋を紹介するブログが見たいのです・・・


 うん、そうだね・・・じゃあ、『Walkin' With Cindy』ってタイトルはどうだい?
 これまでの僕のブログと同じように、曲名をもじって今考えてみたけれど・・・
 また前みたいに楽しいカフェパンツアーのブログにするよ・・・だから・・・



スミラーちゃんのお花の入った紙袋を左手に持った彼は、玄関先で店主と少し話した後、
僕に向かってお辞儀をして店を後にしていった・・・これが、彼、Cindyとのたった一度の
出会いのひと時だった・・・そして、花とCindyを追い求める僕の旅も終わりを告げた・・・

会計を済ませようと厨房のカウンターに向かうと、一羽の鳥が僕の方を見て言った・・・ 
それはまるで彼が僕に言い掛けて去ってしまった最後のひと言を代弁するように・・・


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アリガトウゴザイマシタ。


みなさんこんにちは、mary-joannaこと、Cindyです! 
いつも長いCindyのブログですが、9ヶ月にも渡ってこんなにも
長い物語を綴るなんて思ってもみませ・・・ん・・・でしたかなぁ・・・(^-^;)ゞ

ここまで付き合って下さったPCの前の皆さん、そして勿論・・・
Cindyの申し出に快く応じて下さったお店の店長さん&スタッフの皆さん・・・

本当に本当にありがとうございました!!! m(_ _)m

同じエキサイトで『Walkin' With Cindy !!』というブログを立ち上げました!
以前のCindy日記のスタイルで気軽にカフェ&パン屋さんを紹介しておりますので、
是非ともご覧になって下さい♪・・・それから、Elvis Cafeの続編も近々upしたいと思います。
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# by mary-joanna | 2010-05-14 02:32 | 咎無くて死す

ス.Walkin' With Cindy (前篇)

  愛するとは、
  互いに見つめ合うことじゃない。
  ふたりで同じ方向を見ることだ。
     「Terre des Hommes」 Saint-Exupery



今日、この日まで・・・もし偶然何処かの街ですれ違ったとしても、僕は未だ
アナタにとって他の数百の人物と何ら変わる事の無い一人の人間に過ぎない。
僕はアナタにとって全く必要とされていないし、僕もまたアナタの輝きに気付かない。
僕もアナタも・・・お互いに街を通り過ぎてゆく数多の人物の一人に過ぎないのだから。

でも、あと数時間後、もしこれまでの僕の行いに間違いがなければ・・・
僕の願いが届くなら、僕はアナタにとって忘れる事の無い・・・ 


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この9ヶ月もの間、僕は旅し続けてきたんだ。あの前方に小さく見える橋をスタート地点にして、
自分の背丈より高い葦の森を掻き分けて、日常から忘れ去られた路地の裏を彷徨い歩き、
果てしなく続く大木のトンネルを潜り抜け、無機質に刻まれる都会の喧騒を走り切った。
そう、あの前方に見える橋の向こう側から一枚のメモを手にして橋を渡った瞬間から、
僕の、決して止まる事も躓く事も許されない・・・長く曲がりくねった旅路を・・・

そして、イロハニホヘト・・・全てのイニシャルを従えて、再びこのスタート地点に戻ってきた。
まるで時の歩みを止めてしまったような、微風が何一つ遮る事無く優しく囁く向こう側の世界。


今、一羽の鳥が僕の頭上を羽ばたいて橋の向こう側へと飛び去っていったような気がした。
直ぐに空を見上げた時には既にその黒い軌跡が微かな残像として残るので精一杯だったが、
僕はその黒い影に、この9ヶ月もの間、何度も出くわし、会話し、問い掛けてきた気がしたのだ。

これから始まるであろう、僕の最後の宴を先回りして待っているからとでも言いたそうに・・・


時の流れを止めたこの世界だったが、季節の移り変わりは橋の反対側より正確に刻まれていた。


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 田植えの時期から1ヶ月は過ぎたであろう、6月下旬・・・
 アスファルトの農道の左右を埋め尽くさんばかりに広がる黄緑の稲穂



前回僕が此の地訪れた際に“例の橋”の手前で感じとり、綴った情景は、
3月後半の今日、9ヶ月の時の流れを感じさせるべく一変していたのだった。

初夏の田植えを待たんとする煤茶けた剥き出しの土面から匂い立つ、
決してうっとりとした芳香とは言い難い、力強い大地と生命とが躍動する
それでいて何処か懐かしさを思い出す匂い。その周りを取り囲む土手から
湧き出るように敷き詰められた黄緑の敷物と薄紫や淡い黄色のの絨毯には、
春の訪れと言ってしまえば簡単ではあるが、僕の住む街では簡単に見る事が
出来なくなった毎年変わる事の無い、それでいて一時しか会えない情景なのだ。


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 コチラ側とアチラ側との “分岐点”


この前訪れた時と何一つ変わる事の無い、風雨に晒され汚れたコンクリートの小さな橋。
あの時拍子抜けしたちっぽけな橋を、今こうして再び渡る際の僕の心から湧き上がる、
この9ヶ月に及ぶ様々な旅の想い出・・・そして恐らくこれが最後の“ムコウ側”への・・・

そう、“ムコウ側”への体験だと思うと僕は・・・尤も、未だ2回目に過ぎないのだが・・・
あっけ無く渡ってしまったかって?・・・この橋に1時間も佇む余裕は無いんだ・・・

だって、もう既にあの黒い鳥は“ムコウ側”へと飛び去ってしまったのだから!


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橋を渡り(確か)二つ目の十字路を右に曲がると前方に見えてくるんだ。
左側にあのアーチ型の建物が・・・そして、これも半ば約束事であるように、
肝心の建物を素通りして小路の向かい側にある例の赤い水門へと歩み寄る。

写真で見ていたのよりも随分とちっぽけで、所々錆で赤茶けて塗装の剥げた、
あの水門に乗る為に、雑草を越えてコンクリートの用水路へと下りていく。


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何だよ、此処でも麗らかな春の訪れを僕に印象付けるつもりなのかい?

そんな事は十分に分っているんだ・・・“コチラ側”は何時までも変わらない・・・
変わってしまうのは僕等の方なんだって・・・でも、彼まで変わるなんて・・・


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natural french cafe mikumari


午前11時20分

平日の、Openの10分前に到着した店の駐車場には、1台の白い乗用車が
駐車場の一番端っこの、塀との間ギリギリに停められていただけだった。

ただ、車内には誰の姿も無く、駐車場から庭へと上がる階段の脇には
白くOpenと書かれた錆びた鉄板が、早々に掲げられていたのだ。


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駐車場には何処からか飛んで来て根を張り花を咲かせた蒲公英が彼方此方で
この店を訪れる人たちを出迎えているように感じた・・・端っこに停まっていた
白い乗用車がやや不自然なくらいに塀寄りだったのは、この蒲公英の花を
踏み付けないようにとの配慮なのでは、と深読みしていた・・・だって・・・


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だって、僕が思っていた人物なら、きっとそうするんじゃないかなって・・・

僕がこの店に予約を入れた時間は、Openと同時の11時半では無かった。
そこで、時間になるまで暫らく付近を散歩する事にして駐車場を後にした僕は、
店の前の小路を更に先へと歩く事にした。直ぐ先に小高い山があり、手前には
鳥居と石段が設けられていたので、その場所を目指してとぼとぼと歩き始めた。


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鳥居の傍らに立てられた掲示によれば、古墳塚に建立された神社との事。
この石段を上るのに躊躇は無く、不思議と何も考えずに境内まで上り切った。


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深い緑と静寂に覆われた空間で、遠くで聞こえる鳥の囀りと狛犬の鋭い眼光だけが、
僕の身体の全神経を捉えて強く刺激しているように感じた。それは緑に包まれるように
穏やかに、でも、全てを突き刺すような眼光に恐れおののく・・・不思議な間隔だったのだ。


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深緑の隙間から垣間見える“コチラ側”の全景が僕に安らぎを与えてくれた。

これで最後なのだって・・・今日、此処で決着を付けるんだって・・・
意気込んで此処までやって来たのが、嘘のように落ち着いてゆく・・・
これは、彼がこのカフェを紹介する際に綴っていた常套句ではないか!
僕は最後の最後で、彼のフィーリングに少しでもシンクロ出来たのだろうか?


ずっと眺めていた気がしたが、実際の時間はそれ程長くは無かった。
そして、約束の時間になり、僕はこの景色に別れを告げて石段を下った。


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時刻は既に正午を過ぎており、このアーチ型の建物の前にある駐車場には
地元栃木の宇都宮やとちぎナンバーは勿論の事、県外からの訪問者と思しき
複数の都県に渡るナンバーを付けた様々な車種の車によって埋め尽くされていた。

そして、僕はあの重厚な焦げ茶色の扉の前で呼吸を整え・・・ドアノブに手をかけた。


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あの時・・・そう、9ヶ月前に初めて訪れた時と全く変わる事の無い、木の温もりと
穏やかな日差しに優しく包まれている、ゆったりとした空気と薫りの流れる空間。

そして、この空間で店主の作る料理ともてなしで過ごすひと時の心地良さ・・・
やはり、この空間はそれまでの緊張を一時忘れさせてくれる夢のような・・・

いや、忘れてはいけない大事な目的を持って僕はこの空間にいるんだ。
それは探すまでもなく、最初から・・・そう、最初から分っているのさ・・・


穏やかな雰囲気とは裏腹に、全てのテーブルは予約した人たちで
埋め尽くされていた。その大半は2~3人の女性によるグループだった。
そして僕は迷う事無く、店内のある一角へと目を向けた。それはテーブルと
言うよりは壁を向くように設置されている、一枚板から成るカウンター席だった。


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向かい合っていない事からも主に一人の客の為に設けられているのだろう。
そして3つの椅子が並ぶカウンター席の真ん中に、一人の客が食事をしていた。
正午を過ぎたとはいえ、未だ他のテーブルに料理が並んでいない事から考えると、
先ほど駐車場に停められていた車の・・・つまり、今日の一番乗りがこの人物だった。


僕はその、運ばれたばかりの何ら手のつけられていないメインのカレーに、
これからスプーンを立てようとしている痩せた背の高い男性の隣りに座った。


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その男は少し驚いた面持ちで、スプーンを刺す手を止めて皿の上に置いた。

耳に掛るくらいのストレートの髪をやや中央で分け、色白でほっそりとした顔立ち。
年の程は20代後半から30代前半といったところだろうか・・・スキニーなジーンズと
タイトなライダースのシングルジャケットが細身の身体を更に強調しているようだった。


沈黙はほんの数秒で終わりを告げた。周りは談笑する他のお客でむしろ賑やかなくらいだ。
でも、僕の耳には周りの喧騒は伝わってこなかった。恐らく目の前の細身の男性も同じだろう。
先に沈黙を破ったのは他ならぬ僕の方だった・・・初めて・・・初めて彼に声をかけた瞬間だった。


 はじめまして・・・遂に・・・遂に会う事が出来ましたね・・・Cindyさん。


その男は一瞬驚いたような表情を見せたが、それは他に原因があるようにも思えた。
何故なら、僕の言葉を聞くと、僕ではなく僕の周りをキョロキョロと見回したからだった。

一瞬、あの狛犬のような鋭い視線を感じたが、直ぐに穏やかな表情に戻り、僕に答えた。


 そうか・・・君が・・・Little君なんだね・・・此方こそ、はじめまして。
 お互いに・・・色々と聞きたい事は山ほどあるだろうね・・・でも・・・
 折角のカレーが冷めてしまっては悲しいので、申し訳ないけど・・・


 勿論です、Cindyさん。何時まででも待ちますのでゆっくり召し上がって下さい。

 
 そうか、僕もこの後の予定は入ってないから、時間だったら大丈夫だよ。
 でもね・・・それならばLittle君、悪いが僕の右側に座ってくれないかい?
 だって・・・僕はポールの役だって事くらい君だったら既に分っているだろう?



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黒カレープレート


やっぱり彼、Cindyにはこのmikumariの黒カレーが良く似合っているよね。

Cindyの日記が未だ“Cindy's TALK”と名乗っていた頃の初めての紹介で
例のグループに名を連ねているあの青年がチョイスしたメニューでもあり、
何と言っても、“Arnold日記”でArnoldが最後に紹介したメニューが
mikumariのレギュラーメニューでもある、この黒カレープレート。

パソコンのモニター越しに、感嘆と羨望の眼差しを何回送った事だろうか・・・
そして、それは僕のこの日の為の・・・彼と会った記念の為のメニューでもあるんだ!


どうか今回だけは食事の実況シーン(?)は割愛させて頂きたいと思う。
尤も、決して上手く撮れた写真とは言えないが、この写真を見て頂ければ、
黒カレーのこの上ない美味しさや素晴らしさは多少なりとも伝わると思うので・・・


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 Little君・・・如何して君は僕が今日、この場所にやって来ると分ったんだい?


 Cindyさん・・・それは貴方が・・・僕ではなくて・・・僕が本来此処で会う筈の・・・


 えっ、それでは彼女は此処には来ないのか!?・・・ショコラノワールは!?



偶然にも周りの客たちの話し声が大きかったので目立たなかったが、彼の声と・・・
そして、その時の表情は、先ほど僕が初めて話し掛けた時の比ではない程だったのだ。


 ええ・・・彼女は来ませんよ。だって彼女に協力してもらったのですから。
 今日、此処で会う約束をElvis Cafeに書けば、必ず貴方が此処に来るって・・・



僕の言葉を遮るように、やや早口でCindyは僕に尋ねた・・・


 でも、如何して君が彼女と・・・何処でそんな・・・


 分りませんか、Cindyさん・・・僕はElvis Cafeに書きましたよ。


 ・・・!!! cafe la familleだね!!・・・そうか、だから・・・


 はい・・・流石Cindyさんですね・・・実はあの夜、彼女に会ったのです。
 そして、Cindyさんがショコラノワールさんの事を捜しているって事も・・・



僕は更に続けて言った・・・そう、僕が如何しても聞きたかった事を・・・


 Cindyさん、何故貴方はショコラノワールさんを追いかけているのですか?
 Cindyさんとショコラノワールさんの間には、何があったのですか?



彼からの返答は、思いの外冷静だったような気がした・・・あんな答えだったのに・・・


 Little君・・・Arnoldって人物は実在したんだ・・・彼は僕の実の兄だ。 
 そしてArnoldは、何らかの理由で、ショコラノワールと初めて会う・・・
 初めて会う約束をした、その日の朝に自殺したんだよ・・・
 





本来なら今回で終わらせる筈だったのですが、容量の関係で如何しても
一話で収める事が出来ず、今回だけ前後篇とさせて頂く事にしました・・・
次回こそ完結及び今後の報告をさせて頂きたいと思いますので、
どうぞ宜しくお願い致します・・・Mary-Joanna
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# by mary-joanna | 2010-05-04 20:50 | 酔ひもせず